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八枚の翼と大王の旅  作者: 豊福しげき丸
20/31

反撃の狼煙

 ジュデッカ大陸、ザーダーン王国。

 王都の城門は破られ、今まさに王国は陥落せんとしていた。

 

 アフリカ大陸。

「やはり駄目だ」

 国連軍、ヴァースキ少佐は悲嘆の声を漏らす。

 ここから先はすべての機械―――バッテリーで動く電気電子機器は別だが―――がストップしてしまう。

 難民キャンプを救いに行く手立てが無い。

 

 前進する怪物。

 逃げ惑う難民。

 収拾はつかない。

 

 1ヶ月ぶりの再会、有難うございます、豊福です。

 連載はますますヒートアップ、佳境に次ぐ佳境を迎えております。

 でもポイントは低い(涙)。

 何か、以前と同じくまた一部業界人しか注目しない、所謂幻の作品になりそうな気配がひしひしと。

 俺は楠先生の漫画の神○トオルか何かかよ?(また分かり難いネタを)

 ホーホホ、よろしければ貴方がポイントを入れてくれても良くってよ(ゲームの悪役令嬢の負け惜しみかよ)。

 はあ、ノリ突っ込み疲れたわ(爆)。

 それでも本文に手を抜いてはいない、筈です(おい)。

 貴方の目でお確かめください。

 ではでは、本編をどうぞ。

 八枚の翼と大王の旅 ―第二十話―

 

 -1-

 

「ようこそアフリカへ!」

 空港で一矢達を迎えたのは、一目でイスラム民族と分かる装束を着けた、流ちょうな英語をしゃべる初老の男だった。

「私、ノギ・イスヤーンと申します。お見知りおきを」

「貴方が祖父と曾祖父の知り合いのトルコ商人の御方ですね」

 一矢は右手を胸に当て挨拶する。

「初めまして。風巻剣人の曾孫で一矢と言います」

「スマホの画像でも思いましたが、剣人さんの面影が確かにあられる。ですが、一矢さんの方が少しお優しい感じかな?」

「剣人ほどの貫録が無くて恐縮です」

「ご謙遜を。それよりお連れの美しい方々もご紹介ください。まずはレストランに席を移しましょう」


 アンティークな扇風機の回るレストラン店内。

 だが安っぽい感じは無く、優雅で落ち着いた雰囲気だ。

「お蔭様で私どもはアフリカにもネットワークを築き、ささやかながら商いを手広くやらせて頂いております。これもまた、剣人殿の御助力とアラーの御導きあっての事。感謝に耐えぬ日々です」

「それはなによりです。曾祖父もさぞ草葉の陰で喜ぶでしょう」

「ノギとトーゴーにも幸あれ」

「ノギとは貴方の事でしょう? それとトーゴーとは?」

 シエラが不思議に思い訊ねる。

「私の名は、もともと日本の将軍である乃木閣下から頂いたのですよ。東郷閣下の名を持つトルコ人も珍しくありません。彼等が露助(旧ロシア帝国を揶揄した言い回し)をコテンパンにしてくれたおかげで、露助は怖気づき、侵略の対象だった私どもの祖国トルコは独立を保てたのです」

「すごーい!」

 レイチェルが目を丸くする。

「ハラショー!」

 パランタンの場を弁えぬロシア語のギャグにレイチェルの容赦ない鉄拳。

 KO(合掌)。

「昔の日本は、まこと戦士、サムライの国でした。その後の戦争も、相手が超大国アメリカで無く、ヨーロッパのいずれかの国であれば、勝っていたでしょう」

「戦いに、たらればは無しですよ」

「そうだな」

「だよね~」

 一矢の言葉にカロとエリスロが相槌を打つ。

「それでも、たらればを言うならば、勝ったと騒ぐ人の驕りで、国は駄目になっていたかもしれません。今は今の平和を喜びましょう」

「そう、その潔さがまさに戦士の美質ですな。ライバルの商会が雇ったならず者を叩きのめして下さった、剣人殿とお若い英明殿も潔くあられた。まだ幼かった私と妻が今日あるのはまさしくそのお蔭……。はて? その時一緒に居られた赤毛の御仁とシエラ様は良く似ておられるが?」

「おそらく、私の曽祖父です」

「ああ、やはり。名は名乗られませんでしたが、やはりひとかどの御方でしたな。こんな立派な御血筋を残されるとは」

「御口が上手くあられる」

「おお、褒め殺しに聴こえましたら不徳の致すところです。ただの本心ですよ」

 シエラはぷっと噴き出し、つられて皆も笑う。

「それはそうと、ご注文の品の見本です」

 ノギはカバンから、細長い金と白いエナメルと宝石の塊の棒を取り出した。

「金はめっきですし、宝石もほとんどはガラス玉です。ですが、中身は本物のサムライサーベルですよ」

 日本軍が中国大陸から撤退した時、少なくない日本兵とその装備が、ソ連軍に捕虜と財産として接収された。

 刀もその一つである。

 有名な刀匠の名が刻まれた物は、今でもロシア高官や富豪が持つか、売り払われて世界中のコレクターの手に散って行ったと言う。

 だが、実用本位のクロームステンレス製の現代刀は、骨董美術品価値が無いが故に、ソ連軍高官が持っていた物が連邦崩壊で流出しても、マーケットに比較的安値で残っていたのだ。

 一矢が以前クロースリアで振るった刀の、兄弟とも呼べる剣である。

「長いのが6振りに短いのが4振り、それとトルコの短剣が5本でしたな」

「助かります」

「いえ、そんな事は。こちらも商売ですから。それよりも本気ですか?」

 ノギは6人の若者の眼差しを見た―――。

 ―――そして溜め息をつく。

「わかりました。難民キャンプまではガイドを付けれますが、それ以上は無理ですよ」

「「「十分です」」」


 -2-

 

 ジュデッカ大陸、隠れ里。

 樵のヴァンスは農婦のルチアを森に呼び出していた。

「なあ、いいだろう、俺の女になれよ」

「しつこいわね、それは前に断ったはずじゃない! アタシはタニスが好きだって言ったはずよ!」

「はっ、タニス、あのヘタレ、お前の好意にも気づかずいじいじしてるだけの腰抜けじゃねえか。あんなののどこがいいんだ?」

「彼は優しいのよ! アタシの父さんの病気に必要なキノコをタテに言い寄ってくるアンタと違ってね!」

「なんだとぉ? それこそお前の親父が農夫を続けていられるのは俺様のお蔭だろうが! 口の利き方に気を付けろ!」

「は、それよ、まさにその態度! あんたがその年まで女に言い寄られなかったのはそのせいよ! アタシの事だって別にアタシを好きなんかじゃあない! 言う事を聞かせられる弱みを握った相手がたまたまアタシだっただけさ! この甲斐性無し! アンタこそ本当のヘタレよ! まともに女に惚れる事も出来やしない!」

「こっ、このアマあ!」

 ヴァンスが手を振りかざす。

「ひ、ひぃいイっ!」

 ルチアの顔が恐怖に歪む。

「は、ようやく怖気づきやがったか。だが、そんなくらいじゃ許しは――――」

「馬鹿、そんな事言ってる場合じゃ! 後ろ!」

「は?」

 ヴァンスは間抜けに後ろを見る。

 そこには真黒な怪物がいた。

「「ひいいいいいィイイイイっ!」」

 ルチアは一目散に逃げ出す。

 だが、悲しいかなヴァンスの石化の病は足にあった。

 文字通り片足の脛から下が棒の彼に、素早く逃げる事は出来ない。

 怪物はヴァンスを押し倒し――――

 その額に黒い結晶を埋め込む。

 ヴァンスは黒い液体となって、地面に崩れ流れて行った。

 

 そして湧き上がる無数の黒い影――――――

 

 -3-

 

 ジュデッカ大陸、ザーダーン王国。

 王都の大門は破られ、今まさに王国は陥落せんとしていた。

 王城の天守閣で王は呟く。

「これまでか………」

「貴方―――」

「父上」

 震える妃と王子。

「王城警備長」

「はっ」

 白髪頭と髭の剛直な騎士が首を垂れる。彼は既に王の次の言葉を予期していた。

「妻と子を頼む」

「―――――っ、ははあっ!」

「貴方!」

「父上はどうされるのです?」

「王が、戦士が最後まで戦わねば、逃げ延びるそちどもや民が軽く見られる。ミッデルシアから蛮人に思われているジュデッカにも、ジュデッカなりの、男の、戦士の古い掟が有るのだ」

「ならば私も!」

 幼い王子は剣を掲げる。

「ならぬ。常々言っておるが、そちにはミッデルシアの流儀で生きよと言ってきたはずだ。ヴァーリ大王の陣に落ち延びし時は、その流儀で取り入るが良い」

「嫌です!」

「お前では足手纏いゆえ、戦士の誉れ建てること敵わぬと申しておる。弁えよ」

「~~~っ! うぅぅ~~!!」

 王子は涙を流したが、それ以上抗弁はしなかった。

「行きましょう。王子には逃げ延びる民を率いてもらわねばなりません」

 警備長が王子の肩に手を置く。

「それが朕の役目か?」

「御意」


 王子たちは民を率いて北の国境の荒れ地を目指す。

 いや、既にそこは荒れ地では無いと言う。

 ヴァーリ大王の手によって肥沃な農地に生まれ変わったのだと。

 まるでお伽話だ。

 誰も知らない神の如き魔法でも使ったのだろうか?

 王子、レブルはそうであったらいいなと思った。

 もしそうなら、民達も自分もすべて助かるのに。

 その馬上の夢想は破られた。

「王子、追手が迫っております!」

 警備長が非情の現実を告げる。

「そうか、仕方あるまい。ここで戦い果てる」

「なりませぬ! 王子は我等にこそ戦い果てよとお命じ下さい。王子はその隙に!」

「忘れたか、朕はまだ年端もいかぬ子供だ」

「知っております! 故にこそお逃げください!」

「もう嫌だ。朕にはこの先など見えぬ、暗闇だ、疲れたのだ。我が儘を言いたいのだ! 死なせてくれ!!」

「王子…………」

「レブル――――」

 警備長と王妃は言葉を継げない。

 子供には重過ぎる責任と絶望。

「………分かりました。後はお妃様にお任せしましょう。死出の旅、お供いたします」

 警備長はまさしく血を吐く思いでその言葉を絞り出した。

「感謝する。よき臣を得た」

「―――っ、勿体ないお言葉!」

 警備長は涙をこぼす。

 不甲斐無い。

 大人の自分たちにもっと力が有れば。

 王子は馬首を翻し剣を掲げる。

「戦える者は我に続け!」

 戦士たちは涙を流しながら意気の声を揚げる。

 だが―――

「御待ちを!」

 北から斥候が馬を走らせてくる。

「北から千を超す騎馬群! 旗印から、おそらくヴァーリ大王の軍です!」

「まことか―――――!?」

 王子を始め皆が顔を輝かす。

「皆の者、闘おう! ただし、それは生き延びるためにだ!」


 ザーダーン残党軍を追撃した黒の怪物、千の軍勢は敗北し撤退した。

 それは人類が怪物たちに対して、初めて掴んだ勝利であった。

 

 -4-

 

 アフリカ大陸。

「やはり駄目だ」

 国連軍、ヴァースキ少佐は悲嘆の声を漏らす。

 ここから先はすべての機械―――バッテリーで動く電気電子機器は別だが―――がストップしてしまう。

 難民キャンプを救いに行く手立てが無い。

 立ち往生する戦車や装甲車、トラックたち。

 地上車はまだいい。

 墜落した偵察機のパイロットとは、いまだに連絡が取れない。

 テントを張った即席の陣地にたむろする部下たちの目は虚ろだ。

 自分達は何をしにここに来たのだ?

 自問自答がループする。

「中佐」

 部下の声で現実に還る。

「難民キャンプに物資を運ぶ商人が通行許可を求めています」

「商人? どうやって?」

「馬とロバでです」

「その手が有ったか!」


 複数の馬車を曳く馬の他に、荷を積んだロバ。

 そして護衛と思しき雑多な人種の、馬に跨り腰に剣を吊るした6人の男女。

 彼等はまだ若かったが、馬の扱いも身のこなしも歴戦のそれに見えた。

「失礼、代表は誰かね?」

 ヴァースキの問いに馬車の御者と東洋人の若者が寄って来る。

「私がイスヤーン商会の番頭、サダーフです」

「私が護衛のリーダーでカズヤと言います」

「単刀直入に言う。馬を供出してくれ」

 サダーフとカズヤは顔を見合わせる。だが慌てた様子はない。この要請は予想していたのだろう。

「馬車の半分を、積み荷を下ろして貴方がたを載せて行く事は出来る」

「全部は? それに護衛の乗っている馬は?」

「キャンプに必要最低限の物を持っていかねば、それこそ難民が死んでしまう」

「失礼ですが、怪物には銃が通用しないらしいでは無いですか。もし馬を貸したとしても、貴方がたが騎馬で剣を私たち以上に上手く扱えるとは思えない」

 非の打ちどころの無い正論だった。

「………分かった。貴方がたの提案通りで手を打とう」

 ヴァースキは志願兵を募る。

 装備はマチェット(山刀)と、意外にも斬るのに適したスコップだ。

 怪物は首を刎ねないと、どんな怪我でも死なないらしい。そうすると他に選択肢は無かった。


 怪物たちの数は、ほんの一部の六十にも満たぬ数だった。

 だが、医者とボランティアと痩せ細った難民しかいないキャンプを襲うには十分過ぎる。

 途方に暮れる彼らの前に一体の怪物が進み出る。

『コウフクセヨ』

「………私達は戦えません。受諾します」

 年配の医師長が苦渋の決断を口にする。

『ヨロシイ。ウケイレル』

 その答えに一部の者は安堵の息を漏らしたが―――

『カチクトシテケンコウジョウタイガヨクナイ。マビキヲカイシスル』

 絶望の息を呑む音に変わった。

 前進する怪物。

 逃げ惑う難民。

 収拾はつかない。

 医師長はその場に立ちはだかった。

 絶望に立ち尽くしたとも言える。


 だが―――

 

「突撃するぞ!」

 丘陵を駆け下る六騎の騎馬。

 遅れて泡を吹きながら、馬車も転がり降りて来る。

 

「………騎兵隊だ」

 医師たちは若い頃みた映画のワンシーンを思い出していた。

 怪物たちはキャンプから興味を無くし、騎馬たちに向かって行く。

 六人の騎兵の剣が、次々と怪物の首を薙ぐ。

 遅れて馬車から飛び出した国連軍の兵士達も、スコップとマチェットで斬りかかって行く。


 地球においても、人類の反撃は開始された。

 

 -5-

 

 逃げてきたルチアから告げられた、怪物襲来の報。

 続いて、数え切れぬ数の怪物が森に姿を見せたとの目撃報も入る。

 領民達がこぞって領主の館や頑丈な倉庫に避難する中、ザッパを始め戦える領民と、マリエルとブランドー達、旅の仲間は立ち上がる。

「行きましょう!」

 澄んだマリエルの声は、いつもの歌以上に、皆の胸に響いた。

 

 ―第21話に続く―

「死んで当然よ!」

「死んでよかったわよ!」


「それは違うよ」


「最初の時を思い出していました」


「子供や半病人に自分の脚で歩かせるんですよ! 貴方がた軍人の体力の基準で考えられたら困る!」


「………好きにすればよかろう」


「はあはあ、こんなに個性たっぷりの子が一杯」


「いよいよだな」


 以上、次回予告でした。


 今回は般若阿弥陀の悟りまで行き着けて良かったと一安心。

 伏線を張って回収したら、それ自体がまた次の伏線と言う、まさしくゲームで言うシナジーコンボ執筆生活を送っております。

 てなわけで、自分をゲームのキャラに例えるならば、ララ・キャパシェンあたりでしょうか?

 うわあ、紙装甲(軽火力呪文ですぐ死ぬ)。

 なのに見た目は似てなくて、あっちの方が目付き悪くなくハンサムな好青年。ああ無情。

 それはさておき今回を始め今までの仕込みが、次回以降どう瞬速割り込みで炸裂するかご期待ください。

 来月も貴方とお会いできる事を願って。

 

 まったね~。

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