表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八枚の翼と大王の旅  作者: 豊福しげき丸
14/31

そして長い旅路は終わり

『やっと辿り着きました。これが、私の旅の、冒険の終わり』


 長い旅路は終わりを迎える。

 マリエルたちは遂に隠れ里に辿り着く。

 そこは果たして楽園か?

 ついでにセントゥリウス隊も大王陣に辿り着き、

 一矢達の元には、かつての宿敵が辿り着く。

 彼らはどんな旅の答を得るのだろうか?


 どうもお久しぶりです。

 予定通り五月にうぷできてほっとしている豊福です。

 新元号新年度に、新しい友達もできてハッピーな方もいれば、五月病の方もおられるでしょう。

 本作品がそんな皆さんの元気の素、勇気の素の一つになれば幸いです。

 それでは本編をどうぞ。 

八枚の翼と大王の旅 ―第14話―


-1-


 大王陣、開拓地。

 数え切れぬ兵が無謬の直線を描き整列する。

 大王を前にしての到着の閲兵である。

「兵二千、確かに受け取った。大儀である。セントゥリウス」

「ははっ」

「これでまた、正義の味方遊びを再開するめどがついたわい」

「あ、遊びとは聞こえが悪うございます」

「遊びで良いのよ。子供が悪い事をした者を叱る遊びが流行れば、それだけでも治安は良くなる。それを見た大人も、子供の前で恥ずかしい真似は出来ぬようになるからの。そのために殺さず叱るのみの遊びにした。わからぬか?」

「――――っ、不明にございました!」

「と言うのは建前で、やってて楽しいからよ」

「へ、陛下~~~」

 思わず崩れ落ちそうになるセントゥリウス。

 あんた渋キャラやったやん(涙)。

「心から同情します……」

 頭痛を押さえるキーパ君であった。

「して、お主はいつまで居るのだ?」

「は、私自身も未来に備え、ジュデッカの地に慣れる必要を愚考し、一月以上はここでの演習に励みたいと」

「うむ。お主も喧嘩を楽しめ」

「……はあ」

 すっかり毒気を抜かれた様子である。

 だが―――

「………なんか僕、嫌な予感がする」

 エセルリーシャの予言も有り、そこはかとなく危機感を募らせるキーパ君であった。

 

 一方。

 男どもはエレッセとサトラにアタックしては振られると言う日々を繰り返していた。

 だが、あるしつこい男が執拗に食い下がった時、

「実は、好きって程じゃないけど、気にしてる人はいるんだ。だから、あんたの好意には答えられない」

 と、洩らしたのである。

 一体誰だ、その果報者は!?

 男達は騒然となった。

 皆の中であまり噂になるものだから、バンデルとゲラードも気になり、久しぶりに彼女らと夕食を取った折、つい聞いてみた。

「と、言う訳なのだが、その意中の男とは誰なのだ?」

「他ならぬお前らだ。応援は惜しまぬぞ」

「所帯を持つ折には便宜も図る」

「いつも力になってくれるのだ。それくらいはさせてくれ」

 エレッセとサトラはその言葉を聞く内に次第に顔を険しくし、その視線は睨むと言ってもいいものとなった。

「「よ、余計な御世話だったかのう?」」

 恐縮する二人を見て彼女たちは顔を見合わせて溜め息をつく。

「しかたありませんわね」

「では、言わせていただきます」

「その相手とは、ゲラード様です」

「バンデル様です」

「「はああ?」」

 彼等は豆鉄砲を食らった哀れな鳩の顔になった。

「お二方は私達を妾にしてくださると言うのですか?」

「ご安心ください。実家を優遇しろだの、国に便宜を計れなどとは申しません」

 揃って詰め寄る。

「ま、待ってくれ」

「こ、こうした事には不慣れで」

「一国の王ともあろう方がですか?」

「嘘を付いて誤魔化すおつもりで?」

「ち、違う」

「余、余らは本当の意味で、国王と言う肩書抜きで女にモテた事が無いのだ」

「その通りである」

「……情けない話だが」

 彼女たちは詰め寄るのをやめ、落ち着いてから訊ねた。

「「まことですか?」」

「うむ」

「モテなかった」

「どちらかと言えば、嫌われてさえおったな」

「正妃や側室にすらな」

「何故?」

「そうです、王様方程の御人が何故?」

「何故も何も……」

「そうさな、今ならようわかる」

「女はな、己を隠し偽る者を嫌うからの」

「人の幸せをおもんばからぬ者も嫌う」

「余らはその両方で在ったのだ」

「嫌われぬ訳があるまい」

「己を偽って人との喧嘩を避けるのは、楽な生き方だったからの」

「王様でもですか?」

「王様でもだ。貴族や重臣、大商人や諸国の大使、顔色を窺わねばならぬ者は山ほど居る」

「そうやって卑屈に生きて、たまった鬱憤は使用人に当たり散らす」

「喜びも無く、己の『よろ』しいの欠けた、ただのこびを撒いておった」

「その癖、自分が我が儘を通す時は、人の幸せなど考えもせず、いや、見て見ぬふりをして自分だけ良ければよかろうと、姑息に楽しんでおった」

「自分が苦しめられておるのだから人も苦しめて何が悪い、とな。恥ずかしい限りよ」

「だがそれは、楽をすればするほど己を嫌う事になり、楽しめば楽しむほど人に嫌われる事になる、結局は己も人もすべての人間を憎まねばならぬ、真の『楽』とは程遠い物であった」

「しかし、大王に諭されて目が覚めた。真の『楽』とは、王道楽土と言う言葉の通り、王道、即ち己を偽らず人を幸せにする道を歩む者こそが掴めるものだと」

「大王だけではない。日々きついとしか思えなかった鍛錬を笑って励む兵にも教えられた」

「昨日出来なかった技が出来るようになったと、笑って酒を飲む兵たち。また次の技を目指して素振りを繰り返して、俺はあと百回は振れるぜと、昨日より楽にできるようになったと大人げなく自慢する」

「それでよかったのだ。それが真の楽であり、人生を楽しむ事だったのだ」

「昔の余共が行っていたのは、ただ己を苦しめる事で、苦しみを乗り越える事とは違う。それに気付けなかったのだ」

「昨日気付けなかった事に気付き、成長し、楽に出来るようになる。それを楽しみ分かち合う。剣の道も己の道も同じであった」


 ―――遊びをせんとや、生まれけむ―――


「昔、それを子供っぽいと鼻で嘲笑っておったのは、今にして思えば僻みであった」

「童心になって向き合う事の出来る、己の好きな道を見つけられなかったが故にな」

「どうせどの道を選んでも、困難にも苦しみにも遭うものなのだ」

「なら、大王の様に、自分の気の済むように生きればいい。なかなかあそこまでは真似できぬがな」

 王達はそこまで語ると、女たちがすすり泣いている事に気付く。

「「ど、どうした?」」

「ぐすっ、王様たちも苦しまれたのですね」

「ひっく、だから私達やバルクやルードの様な者にもお優しく在られた」


 ―――苦労の成果とは、『苦を労わる』が故に身に付く。昔の人はそう記した―――


「そう言うな、こそばゆいではないか」

「勘弁してくれ」

「では、勘弁したら妾にしてくださいますか?」

「どうですか?」

「いや………、それは」

「妃に悪い」

「そうである。世継ぎを産んでくれたと言うのに、今にして思えば、八つ当たりで徒に苦しめて悪い事をした」

「せめて帰った日には、罪滅ぼしをし、労わってやりたい」

 男達は、ほろ苦く笑った。

 女達も、つられてほろ苦く笑った。

 その日の酒はほろ苦く、またささやかに甘酢っぱかった。

 

 -2-

 

 一週間もの日数をかけた砂漠の縦断は過酷を極めた。

 今更人目を避ける必要も無いのに、日光で焼け死なぬ為に今度も冷え込む夜間に歩まざるを得ず、昼間休むにも天幕越しの陽の熱に苦しんで碌に眠れぬ。

 おまけにサソリやガラガラヘビがいつ死を運んで来るやも知れぬ。

 こんな事なら故郷にいれば良かったと、多くの者は最初の内は泣き、日が経つにつれ乾きに涙すら惜しみ、虚ろに暮れた。

 そして歩むこと六日、それは砂丘の向こうに姿を現した。

「でけえ………」

 死の岩火山と言われるベルゼウス山である。

 その標高、実に約六千七百メートル。しかも高さ以上に横幅も大きい。

 これが普通の土地にある山ならば、入念な準備と荷物を持てば征服できたかもしれない。

 だが、この山が過酷なラッカール砂漠のど真ん中にある草一つ生えぬ灼熱のハゲ岩山であるが故に、今まで誰もその山頂に辿り着いた者はいなかった。

「で、オアシスは、隠れ里はどこにあるんですか?」

 曙光に東の空が染まりつつも、まだ冷える手に息を吐きかけながらオフィーリアが訊ねる。

 ザッパはベルゼウス山の、細くたなびく煙を吐く、巨大な台形の山頂を指差す。

「あの中に」

「「「……………………………………」」」

「もうやだ」

 グレガンはあおむけに倒れ、弱弱しくも子供の様にも駄々をこねだした。

「無理無理無理無理無理無理、あんなの登るのなんてできねーよぉ~」

 オフィーリアも頭を抱えて溜め息を衝く。

「いえ、グレガンさん。貴方だけで無く私も含めて全員無理です。あれを登れるのはブランドーさんクラスの超人だけです」

「旦那でも無理じゃない?」

「無理だな」

 ブランドーはしれっとイシュヴァーナに答えながら視線をザッパに向ける。

「当然、洞窟か何かあるのだろう?」

「おや残念。驚かそうと思ってたんですが、旦那にはすっかりお見通しで」

「洞窟ですか、ワクワクしますね!」

「はいっ!」

 はしゃぐルーフェスや子供たちとマリエル。

「………こいつの精神年齢は、成長する事を知らぬのか?」

 眼前の光景よりもそちらの方が頭が痛いブランドーだった。

「誰かさんもじゃないですか?」

 こっそり呟くクロブだった。


 結局、ベルゼウス山に辿り着くまでに、もう一日。麓から洞窟のある中腹に登るのに、更にもう一日を費やした。

「はあ、はあ」

 流石に皆疲労困憊。

「ここです」

 ザッパは麓からは隠れて見えなかった岩陰に皆を導いた。

「おお、この大岩、裏に回れたんだ」

 だが―――

「行き止まりじゃん!」

「どこにも洞窟なんてないよ?」

「騒ぐな。こうした出入口は隠してあると相場が決まっている」

 たしなめるブランドー。

「念の入ったことだ。昔の我が国が見つけられなかったのも無理はない」

 ズーが嘆息する。

「はい! 冒険物語のお約束ですね!」

 はしゃぐマリエル。

「まあ、そうなんですがね」

 ザッパは苦笑しながら、岩壁の一部をずらす。

 そこには鍵穴。

「「「うわあ」」」

 ルーフェスはじめ子供たちが目を輝かせる。

 ザッパが懐からカギを取り出し、差し込み回すのを、キラキラした目でじっと見つめる。

 カチリ。

「あれ?」

「何も動かないよ?」

「そりゃあ、鍵を開けただけで、扉は人の手で動かさなきゃ開きません。勝手に扉が動く魔法仕掛けなんてのは、実際には見た事ありやせんよ。旦那、グレガンさん、扉は重いんで手伝って下さい」

 三人が岩壁の一部を言われるままに、渾身の力を込めて横にずらす。

 鉄の車輪が鈍い音を立てて回り、扉は開かれた。

「うわっ、暗ぁー!」

 地獄の底へ続くのではないかと思われる、暗く深く続く穴。

「さあ、みんな入っておくんなさい。また内から閉めなけりゃいけません」

 言われるままに皆が入ると、また三人で扉を閉め鍵をかける。

 真っ暗になる。

「こわいよぉ」

 口にしたのは子供だが、大人達も怯えている。

「大丈夫。ヒカリゴケが生えてやすから。目が慣れれば、ぼんやりとは見てきますよ」

「……ほんとだ!」

「ハア、良かった」

 それは幻想的な風景。

「ふふっ、冒険の最後には、ご褒美が待っているって、本当ですね」

 マリエルはふわっと重力が無いかのように回った。

「まったくだ」

「いいものが見れた!」

「ありがたや、ありがたや」

「……」

「へえ、流石の旦那も、今度ばかりは浮かれるなってな文句を言わないね」

「っ」

 ブランドーはイシュヴァーナの声で我に返った。

 ―――俺は今、何に目を、心を奪われていた?―――

 頭を振る。

「さて、この洞窟も長いですかね。まずは食事でも摂りやしょう」

 ザッパの声に、オフィーリア達は準備を始めた。

 

 洞窟の入り口で睡眠をとってから、時に狭苦しく険しい隧道を五時間半程進み―――

 そして一行は出口へと辿り着いた。

「……すげえ」

「神の奇跡だ」

「素晴らしいですわね」

「本当だよ!」

「楽園ですよ! ここは」

「っ、昔の私が、ここを見つけ出せなくて良かった………」

「綺麗………、シエラちゃんにも見せてあげたい」

 マリエル達は感嘆の声を上げる。

 ベルゼウス山の火口は直径十三キロにも及ぶ。

 そしてその内部は、大昔の爆発噴火によって深く抉られ、巨大な湖と緑成す野をも内に湛えていたのだ。

 日本で言う阿蘇の様なカルデラ平原である。

「あの湖は、わずかですが雨水と、そして、地下水が火山の熱で熱せられて噴き出す泉から流れて冷めた水とが、混じり合って出来ています。お蔭でどんなに冷え込む夜でも、二十度半ば位には温いんですよ」

 色とりどりの花があり、森があり、畑があり、集落があり、見た事も無い鮮やかな鳥達が飛んでいた。

 遠くに小さく見える動物たちの群れも、下界にはいない種類に見える。

「やっと、辿り着きました。これが、私の旅の、冒険の終わり」

 マリエルはくるりとブランドーに向き直ると、頭を下げた。

「ブランドーさん。今まで我が儘ばかりを言ってすみませんでした」

「…………わかればよいのだ」

 この馬鹿娘もやっと我が儘を言っている自覚を持てたのか。最初に思っていたのとは違うが、どうやら、いくらかは躾に成功したらしい。

 そう思うのに、何故かブランドーの胸に、何かを失くしたかのような、小さな、小さな痛みが起こる。

「ですから、もうしばらくだけ、今度は護衛では無く、友達として、ここで私から色々御恩返しをさせて頂けませんか?」

「……まあ良かろう」

 そう答えると、少し痛みが和らぐ。

「どうせ何かを急ぐ身でも無し」


『エセルリーシャ様! 本当ですか? その、私を見て四回≪ナス≫と仰る方が、私の命が尽きるまで、側に居て守って下さるって?』

『ええ、私の占いではそう出ているわ。そしてここまではっきりと卦に現れた以上、それは人の行いでは変わらない運命。今まで外れた事は無いの』

『どんな方でしょう?楽しみです』

 唇の前で可愛らしく指先を合わせる。

『でも、それは――――』


『――――分かっています。私の命が、もう残り少ない事は』


 -3-

 

 高橋理大も専門学校も、共に夏休みに入って4日経つ。

 だが、一矢達は特に変わり映えもせず風巻本道場の庭を竹箒で掃いていた。

 これも立派な修行である。

 竹箒が長い内は筆のように扱い、短くなるにつれ、刃で削るように扱う。

 慣れれば常に長かろうと短かろうと筆であると同時に刃であるように扱い、そして剣を、刃であると同時に筆であるかの如く扱う、『手の内』を養う意念へと昇華させる。

 皆は黙然と修行に励む。

 本当は今年の夏はどこに遊びに行こうかと騒ぎたいのだが――――

 一矢とシエラの関係をおもんばかって、誰も口を開けなかった。

「あー」

 勇気を振り絞りパランタンが口を開く。

「アロハオエー」

 ダジャレにすらなっていないしょぼいおっさんギャグ。

「……はあ」

 何という事であろう、ツッコミの達人レイチェルですらお手上げである。

「道化の役目、大儀である」

 シエラの感情の見えぬ平板な声。

 ぱきーん。

 おお、なんと云う事だろう、パランタンは自らのギャグの寒さによって凍りついた。

(((哀れな………)))

 ここは網走監獄の中で、自分達は囚人ではないかと言う妄念の錯覚に一同は陥る。

 ふとその時、

「「うん?}」」

 一矢とカロが、石段を登る人の気配に気付く。

 やがて登りきり姿を現したのは―――

「―――堂島」

「久しぶりだな、風巻。俺と勝負しろ!」


 -第15話に続く―


「よし、剣術で勝負だ!」

「駄目だ」

「何だと?」


「本当にブランドーさんは負けず嫌いですね」

「お前に人の事が言えるか」

「えへへ。ばれてましたか」


 旅路は終われども、人生と言う旅も冒険も続く。

 迷い悩む彼らは、本当の意味での楽園に辿り着けるのだろうか?

 次話、『やっと辿り着く楽園<前>(仮題)』に乞うご期待。

 6月アップの予定です。


 それはそうとなかなか読者数が増えないのがさびしいこの頃。(TT)

 面白いと思ったらみんな是非ほかの人にも勧めてね~。(T△T)/

 まあ、なろう初心者の頃勝手がつかめず検索しにくいキーワードだったり、文章量を小分けにしなかったり等と、自分の不手際のせいが多分にありますが(苦笑)。

 それでは来月まで皆様お元気で。

 まったね~。(^^)/ 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ