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レベル255の魔法少女  作者: パラドックス
第三章 世界改変
92/93

終の魔法少女


 【4.001089】 10月10日(祝)


「みんな、集まったわね」


「うん」


「私、しーちゃんのお家初めてです」


「私もちや」


 天月町の高級マンションの一室、志穂の家。

 そこには、莉音と志穂と美春と千代子……


「私は生きてるときに来たかったな」


 ……すみれ。


「大丈夫よ、もうすぐ……生き返るわ」


 志穂はマキャファートから下級金貨の入った桐箱を渡すときにこっそりとすみれのスマホを盗みとった。マキャファートは上級金貨が入ったと勝手に思ってる桐箱に目を奪われその事に気づくことができなかった。


「まず、始めに転移魔法を行う。転移魔法はMPを8000も喰う代物よ。莉音、みんなのMP見えるかしら」


「うん。

 私は1844京6744兆0737億0955万1507

 志穂ちゃんは159

 みはるんは3675

 千代子は4275

 だよ」


「あれっ? 莉音、あなたMPそんなに減ってたの?」


「あの戦いの時に、けっこうみんなに防御魔法と回復魔法をしたからね。学校のみんなの記憶の改竄をするために世界改変もおこなったから。けっこう減っちゃった」


 あの時とは、アイラ戦のことである。500人以上のアイラの部下たちが入り乱れた大混戦となった。通常、ロールプレイングゲームってやつは混戦に弱い。仲間を助けようにもあまりにも乱りに乱れて、同士討ちをしてしまいがちでなかなか助けにくい。

 しかしこの5人の魔法少女たちは違った。同士討ちをしてる。仲間もろとも電磁爆発をしてる。それもこれも莉音の防御魔法により必ず耐えて、すぐさま必ず莉音の回復魔法によって全回復する。莉音の無尽蔵のMPによるチートチームプレーである。


「ちょっと待ってよ、蘇生魔法がMP1844京6744兆0737億0955万1616も喰らうバケモノよ。莉音のMPだったら、足りると思ったのだけど」


「一応、みんなのMPを足してみんかね。あたしと美春と志穂で8000は越えるはずながやけんど」


「えーと、ちょっと待って。1844京6744兆0737億0955万1507+159+3675+4275=1844京6744兆0737億0955万9616 だから、8000の転移魔法を引くと残りが、1844京6744兆0737億0955万1616だから…………ちょうど蘇生魔法の使用MPコストになるわ」


「でしたら、しーちゃんと私とちよちよで転移魔法を行ってから、しーちゃんと莉音さんで蘇生魔法を行う……ということになりますね」


 志穂と美春と千代子は莉音の回復魔法によってHPもMPも全回復させてくれる。しかし、莉音だけは回復できない。自分自身に回復魔法は効かないのだ。故に、莉音のMPは使用すればするほど減っていく。誰からも莉音を回復してくれる魔法少女はいないのだから。

 それにしても、その最大MPに対して107しか減ってないのに『けっこう減っちゃった』とはどれほど回復魔法と防御魔法を使ったのだろう。莉音の防御魔法と回復魔法は超低コストであり1未満のコストで0.000……となっている。やはり、アイラ戦はそれほどまで激戦だったのであろう。


「そういや、すみれのMPはどうなっちゅう?」


「すみれのは数量じゃなくて個数だから。それに個数ということはそれ専用の魔法があるから、他の魔法は無理よ。それとすみれは一度死んだわ。電脳世界に転移された時、MPはそのまま継いだわ。けれど、もう一度現実世界に転移、蘇生したときにはもう魔力はなくなるわ」


「なるほど、そうゆうことやったら……みんなの魔法少女としての魔力は無くなる……」


「……そうよ」


「……………………」


 一同、静まり返る。いろいろあったけど魔法少女で無くなるのは何かと寂しいものがある。

 MP0は魔法少女としての死を意味する。

 HPではなくMPが魔法少女の死の判定となる。


「じゃあ、行くわよ。みんな」


 志穂は球体の転移魔法を取り出し、すみれのスマホを床に置き、みんなはそれを囲うように四方に居並ぶ。


「アクセプトッ!」


 志穂が唱えると、転移魔法はぱあああと白い粒子が舞いすみれのスマホへと吸い込まれるように流れていく。

 すると、みるみるすみれのスマホは電子的な粒子が舞い、消え行く。

 すみれのスマホが消えたと同時に、ぱあああと白い粒子が舞い、みるみるとすみれの遺体が現れる。


「………………」


 その安らかな顔に皆、何も言葉を発っせない。


 すみれの遺体がはっきりと現れた瞬間、ボロボロと砂の置物が壊れるように、美春と千代子のスマホは壊れた。いや、粉々になり土に還ったのだろう。スマホは土から作り出されたものではないのだが。


「な、何だ」


「な、何ですか」


 転移魔法と蘇生魔法は謂わば課金魔法だ。別に魔法少女に変身しなくても、MPさえあればノーマルの状態であっても魔法は使える。

 しかし、MPが無くなったのであればもう魔法少女ではない。魔法少女に変身できるスマートフォンは砂になり二度と魔法少女に変身できることはない。美春と千代子の魔法少女としての死である。



■旧データと最終データ

 

■美春


〈ロール〉妨害

〈カラー〉イエロー

〈レベル〉37

〈最大HP〉2400

〈最大MP〉3675

〈属性〉電気

〈特異性〉波

〈備考〉共振システム



■千代子


〈ロール〉遊撃

〈カラー〉グリーン

〈レベル〉48

〈最大HP〉3700

〈最大MP〉4275

〈属性〉運動

〈特異性〉力

〈備考〉共振システム

    ブレイク性能 ガードブレイク

    アルティメットフット

     スプラッシュジャンプ

     ダブルジャンプ

     ウォールジャンプ

     フロートフット



 ※上記の者たちは剥奪



■莉音


〈ロール〉回復

〈カラー〉ピンク

〈レベル〉255

〈最大HP〉無し

〈最大MP〉1844京6744兆0737億0955万1616

〈属性〉無属性

〈特異性〉無し

〈備考〉広々域におよぶ回復魔法は世界改変を起こす



■志穂


〈ロール〉近接

〈カラー〉ブルー

〈レベル〉0

〈最大HP〉112

〈最大MP〉159

〈属性〉無属性

〈特異性〉連撃 青天井

〈特性〉適応化

〈備考〉必殺技『源始の一撃』とどめを刺す



■すみれ


〈ロール〉戦略

〈カラー〉レッド

〈レベル〉50

〈最大HP〉1961万1030

〈最大MP〉9回

〈属性〉熱

〈特異性〉エネルギー

〈備考〉共振システム

    一撃必殺『グラウンドゼロ』

     大量広域破壊爆弾 MADボム

    一回目、20,770キロ平方メートル

    二回目、120,500キロ平方メートル

    三回目、243,600キロ平方メートル

    四回目、643,800キロ平方メートル

    五回目、796,100キロ平方メートル

    六回目、3,287,000キロ平方メートル

    七回目、9,597,000キロ平方メートル

    八回目、9,857,000キロ平方メートル

    九回目、22,402,200キロ平方メートル




「じゃあ、みんな次は……蘇生魔法よ」








「クソッ!! どこだッ!!」


 マキャファートは魔法少女たちを探していた。魔法少女たちがもっとも集まりやすい学校に来たが誰一人いなかった。


「志穂のヤツ、すみれのスマホまで盗んでえッ!!」


 尻尾をダンッ!! と学校の床に強く叩きつける。今日は祝日で誰も学校にいない。


「次に集まるところは……千代子のレストランか」


 マキャファートは学校を出ると、千原町の千代子が働いているレストラン風見鶏に来た。


「千代子ッ!!」


 マキャファートは叫ぶが千代子はいない。

 レストランに着た客を見渡すが、莉音や志穂や美春のような人物はいない。


「いない」


 マキャファートはきりきりと歯ぎしりをする。


「今日が党の創立記念日だというのに」


 マキャファートは苛立ちながらレストランから出た。


「どこだ。あいつらが集まる場所」


 マキャファートは自分の記憶をたどる。学校、レストラン以外に魔法少女たちが集まる場所は。

 スターダストコーヒー? ディスコ? 公園? 河川敷? もしかして大平洋?


「いや、待てよ。そんな人がいるところで蘇生魔法を使うわけがない。おそらくは建物内、私有地……ということならば、誰かの家」


 マキャファートはもう一度記憶をたどる。マキャファートは魔法少女たちの家を調べた。

 まず、あり得ないのは莉音とすみれだ。

 莉音は水上生活者だ。ボロい船に住んでる。それに狭い。あんな狭さで四人が入れるわけがない。

 すみれはテント暮らしの根なし草だ。それにすみれは死んだ。おそらくすみれは一番ないだろう。

 次にあり得ないのは千代子だ。

 千代子はレストランに住み込みで働いてる。普段からレストランで寝泊まりしてる。しかし、レストランを見たところ千代子はいなかった。他の三人も。

 ということは、美春と志穂の家だ。

 美春は栄原町のマンションに住んでいる。家族暮らしで美春のアイドルの稼ぎで家賃を支払っている。

 志穂は天月町の高級マンションに住んでいる。一人暮らしで近くに会社があって、交通の便がよい。志穂は会社経営をしてる。ビジネス街に住むのがいいのだろう。


「千原町から距離として近いのは美春のマンション。栄原町だッ!」


 マキャファートは駆け走った。弾丸のスピードで駆ける。千原町と栄原町は電車で行ける。マキャファートは路線を走る。電車より速いスピードで。


「ここが、天月町のマンション郡か」


 天月町は歓楽街で西地区に川が流れてある。その川の近くにマンションが建ち並んでいる。マキャファートは美春のマンションの部屋番号を知ってるのでそこまで跳び移る。美春の部屋まで来るとドアに備え付けられている郵便受けに入り込み侵入する。マキャファートのようなネズミにしかできない離れ業だ。


「……いない。家族だけか」


 マキャファートは息を潜み気配を殺す。美春の部屋をくまなく見て回るのだが、美春の母親がテレビのいいともを見てるだけで他に誰かはいない。


「……志穂の家か。…………まぁ、志穂のやりだしたことだからな」


 マキャファートは再び郵便受けに入り外へ出る。美春のマンションから飛び降りると地面に見事に着地、そのまま車道を駆け走り、隣町の天月町へと向かう。


「たしか、警備が厳しかったな」


 マキャファートは神速で志穂のマンション前にたどり着いた。しかし、マンションはエントランスホールでいちいち番号をいれないとドアが開かず無理に開こうとすると警報がなり警備会社から警備員が飛んでくる。美春のように廊下で鍵を開けるのとは違う。エントランスホールと廊下の二回は鍵を開けなければならない。


「荒っぽいやり方でいくか」


 すると、マキャファートはマンションには入らずマンションの裏手に回る。志穂の階は20階だ。


「ハッ!」


 マキャファートはマンションのわずかな窓の出っ張りに乗り、それを一階一階と上がって行き、20階にたどり着く。


「っ、ハッ!!」


 パリーンと、志穂の部屋の窓ガラスを体当たりでぶち壊す。マキャファートは志穂の部屋に入るとそこはトイレだった。マキャファートはトイレのドアを器用に跳び開ける。


「志穂ッ!! 志穂ーーッ!!」


 マキャファートは志穂の名を叫びながら駆け回る。なにしろ部屋が広い。その分走らなければならない。


「志穂ッ!!」




「アクセプトッ!!」


 志穂は右手を突きだし薬指から蘇生魔法を行う。指輪は白い粒子となって舞い、遺体のすみれに入り込む。


「ぅっ…………くっ…………」


 すみれの身体はびくっと動き、息を吹き返した。


「すみれッ!!」


「すみれ」


「スミー!!」


「すみれ!」


 志穂、莉音、美春、千代子と次々と声をかけ、ついに…………。


「…………み、……みんな」


「すみれぇえええ!!」


 四人が一斉に蘇生したすみれに抱きつく。


「スミーいぃ」


 美春は泣きじゃくって泣きじゃくって顔を涙で濡らしながら、すみれに抱きつく。

 皆、頬を濡らしながら生還したすみれを喜び、泣き、抱きつく。

 それを冷たい目線でマキャファートが見ていた。



「…………やってしまったか」


 ガガガガ、ガガガガ


「みんな、魔法少女ではなくなってしまった」


 ガガガガ、ガガガガ、ガガガガ


「莉音、どういうことかわかるかい。君がすべてをなげうって魔法を使いきったことを」


 ガガガガ、ガガガガ、ガガガガ、ガガガガ


「今度はシャレにならないほどの、世界改変だ」


 ガガガガ、ガガガガ、ガガガガ、ガガガガ、ガガガガ


 世界が電子的な粒子に包み込まれ、ねじり、引っ張られ、弾かれ、ちぎられ、ゆがむ。


 最後の世界改変が行われた。


 世界はオーバーライドした。



 【5.000000】or【1.000000】


次回で最終回となります。

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