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レベル255の魔法少女  作者: パラドックス
第三章 世界改変
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魔法少女のウォーゲーム⑨




「……殺れ。…………志穂殿よ」




「必殺……『源始の一撃』ィイイイッ!!!!」




 志穂は高く振り上げる刀をカチャッと握り直し、息を整え神経を研ぎ澄ます。志穂にとっては初めての介錯をする。

 息を吐くと同時に、高く振り上げた刀をアイラの頸椎めがけ振り落とす。

 源始の一撃は必殺技。必ず殺す技。首の皮一枚も遺さない。

 刃がアイラの首に滑り込む。肉を斬り、骨を断つ感触が手に伝わりながら、一気に刀を振り抜く。


 ──一閃。


 かまいたちの速度の白刃の閃きはアイラの首を胴体から斬り離し、生首が宙を舞う。

 頸動脈が破裂して、肉片と骨の欠片が周囲に散らばる。破れた血管がポンプのように血を噴き出す。


「…………」


 アイラは前向きに倒れ、体が何度か痙攣した。完全に死亡した。

 志穂はアイラを斃した。


「…………ふぅ」


 志穂が一息をつくと、ドサッと足下にアイラの首が転がり落ちた。

 志穂は刀を横に薙ぎ払い、刀身についた血糊を 振り払う。


「…………」


 志穂は足下に転がるアイラの首を冷ややかな目で見る。

 これを売り払えば上級金貨を貰えるのだろうか。

 志穂はアイラとアイラの教え子たちの血のついた刀を納刀する。


「…………」


 ふと、周りを見渡す。学校の運動場は戦場後になっていた。

 血の海。肉片と骨の山。

 昭和から戦国時代にタイムスリップしたかのようだった。


「……っ」


 鼻につく臭いがする。血の臭いだ。

 その血の臭いに釣られ、生徒たちが校舎の窓から運動場へと覗く。

 その光景に戦慄し、気を失う生徒も出てくる。


「ちっ、めんどくさいな」


 マキャファートは厄介なことになったなぁと思い、莉音に指示する。


「莉音、回復魔法だ。それで世界改変をしよう。生徒たちの記憶も改竄できる」


 莉音は回復魔法ができても蘇生魔法はできない。死屍累々としたアイラたちは死ぬ前に戻すことはできない。絶命をなかったことにはできない。


「………………」


 志穂はそれを冷ややかな目でやる。

 やはり、マキャファートを信用はできない。


「…………まぁ、最後となればいいのだけど」


 志穂はそう言い、足下にあるアイラの首を拾い上げる。

 志穂はアイラの首をゲットした。


「莉音、やっちゃいましょう。このままにしとくにはいけないわ。変に騒がれたら困るし」


「う、うん。そうね。志穂ちゃん」


 莉音は両手を天に掲げ、世界改変をも起こす広域の回復魔法を行う。


「はぁああ」


 莉音が回復魔法を行うと白い電子的な粒子が舞う。

 電磁爆発で焼け焦げた木々が、何もなかったかのように元に戻る。

 アースブレイクで割れた地面が、何もなかったかのように元に戻る。

 打撃と斬撃と突撃で崩壊した校舎が、何もなかったかのように元に戻る。

 アイラの部下たちの血で海となった校庭が、何もなかったかのように元に戻る。

 ゆっくりと、無音で、ビデオテープの逆回しのように、壊れる前の姿へと戻っていく。

 砕けた敷石がひびを霞ませる。

 割れた窓ガラスが張り直される。

 落ちた看板が持ち上がる。

 折れた校庭のネットが伸びる。

 黒い焼け跡や、薄く澱んでいた煙も消えていく。

 修復の終わった場所からはピンク色の微光が失せ、光景はどんどん元通りになる。

 電磁フィールドに囲われた何もかもが。


 やがて、修復が全て終わる。時間にしてほんの十数秒ほど。

 莉音がおもむろに告げる。


「これで、終わり」


 光と衝撃が沸き起こった。

 すると空間が歪んでいく。


「なっ、何!?」


「ご都合だよ」


 志穂が問うとマキャファートが答えた。

 ゴゴゴと音をたてながら、まるでどこかの時空に落とされるんしゃないかというほど、空間は歪み、ひねり、引きちぎろうとする。

 空間を限界まで引っ張り、最後にはプチンと引きちぎり、暗くなり、無になる。


 世界はまたしても、オーバーライドした。









【4.001089】


  第四版世界



 清澄の蒼に厚い黒雲がまばらに散っているという、なんとも不思議な晴天だった。

 そんな日の出も近い空の下、莉音と志穂は天月町の駅前のコーヒーカフェにいた。

 雨の名残にぬかるんだ地面と、独特の匂いのするアスファルトに向け、深いため息が漏れる。


「ふう……」


 かたりと、ブルマンをテーブルに置き、志穂は椅子に深く腰を掛けなおす。

 これからやらねばならぬことを思うと、ため息も出ようというものだった。


「大丈夫? 志穂ちゃん?」


 莉音が志穂を心配し声をかける。


「ええ、大丈夫よ」


 アイラとの戦闘の後、志穂はレベルアップした。

 レベル1からレベル0にレベル『アップ』したのだ。

 経験値のかけらを六つ手に入れ、経験値がたまりレベルアップした。


 志穂はアイラにリベンジを果たした。


 負けて這い上がらなければ、経験値は得られない。いやに現実的なシステムだ。


「莉音」


「何?」


「これから、インターネットで魔法を購入する」


「うん」


「購入するのは、転移魔法と蘇生魔法」


「転移魔法って?」


「電脳世界にいるデータ化したすみれを現実世界に転移し直す。下調べとして見たけど、下級金貨レベルだったわ。今ならスーパードルのレートが安いから、ドルを換金するわよ」


「それで、蘇生魔法は?」


「…………大本営に、戦争賠償を払ってもらう」


「……それで、いくらぐらい」


「目標は上級金貨よ。それは絶対に崩さない」


「……で、大本営ってどこなの?」


「それは、僕が話すよ」


「っ!? マキャファート!?」


「……どこからともなく、現れるのね」


「どこにでも、『ネズミ』はいるよ。あぁ、僕はキャラメルマキアートね」


 マキャファートは好物のキャラメルマキアートを頼んだ。志穂はこれからマキャファートが話すのだから仕方ないとそれを受け入れた。


「……それで、マキャファート。どこなの?」


「ロンドンだよ」


「えっ、志穂ちゃん。飛行機……」


「わかってるわよ。それで、この時代のなの?」


「……元帥まではそうではないけど、大将はいる」


「じゃあ、その大将は話の聞ける人なの?」


「フフ。『お土産』を持っていけばね」


「………………」


 マキャファートが気持ち悪い笑みを浮かべる。

 その時、注文したキャラメルマキアートがやって来て、マキャファートは嬉々としてそれを飲む。


「じゃあ、これからのことを整理するわよ」


 インターネットへ行き、転移魔法を購入する。

 その後、ロンドンに飛び、上級金貨を手に入れる。

 再び、インターネットに行き、蘇生魔法を購入する。

 蘇生魔法と転移魔法を使い、すみれを現実世界に生き返らす。


「わかった? 莉音」


「うん、わかったよ」


「それで、また元に戻るわ。……あの時に」


 志穂はふっと空を見上げる。

 何を見ているのだろうか。


「フフ。あの大将の驚く顔が楽しみだ」



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