魔法少女のウォーゲーム⑥
「貴公ら、すみれ殿を知らぬか?」
そこには、艶やかでさらさらと風になびいて濡れ鴉色の長い髪、真っ白でしゃきっとしたワイシャツ、髪とは対照に鉄壁でピクリとも動かないプリーツスカート、白い脚にピタッと吸い付き縛るかのような黒いニーソックス、長い靴下の半分を覆うかのような茶色いブーツ。
圧倒的で高圧的で淑女的な存在感をかもし出し、凛々しい顔をし、太刀を持って屹立していた。
「アイラさん」
莉音は初めてアイラとの遭遇したことを思い出す。あの時と変わらない姿。
「莉音、美春、千代子、変身だ。戦闘が始まる」
マキャファートは三人に言い放つ。
「え、え?」
美春は狼狽する。戦うべきなのか。この土壇場で。
「美春、変身だ」
千代子が美春にそう言い、スマホの魔法少女アプリの変身アプリをタップし、グリーンの遊撃の魔法少女に変身した。
「わ、わかりました」
美春は千代子にそう言われると、スマホの魔法少女アプリの変身アプリをタップし、イエローの電撃の魔法少女に変身した。
「戦闘は避けられないのね」
莉音はそう呟き、スマホの魔法少女アプリの変身アプリをタップし、ピンクの回復の魔法少女に変身した。
「美春、共振システムだ」
「えっ、どうやってです?」
「これを君に渡す、アクセプトと唱えるんだ」
マキャファートは美春にすみれのスマホをポイッと渡した。それを美春がナイスキャッチするとすみれのスマホを胸に掲げて唱えた。
「アクセプトッ!」
すると、ぱあぁと赤い電子的な粒子を舞い咲かせ、美春を包み込んだ。
美春はサブ属性とサブ特異性をゲットした。
■美春の属性と特異性
【メイン属性】
電気属性
【サブ属性】
熱属性
【メイン特異性】
『波』
【サブ特異性】
『エネルギー』
「これで、美春は一時的に『電磁爆発』が使える」
「ふぇ!? そうなんですか!?」
美春は混乱するものマキャファートの言うた電磁爆発を覚えた。これで一時的ながら美春は電磁爆発を使える。
「……そうか、すみれ殿は自らのスマートフォンに逃げ込んだのか」
アイラは太刀を横に払った。その刀身から血飛沫が散る。
「私は、アイラ・ミカラギ・スタインバーグ!
真に国家を愛する者だ!」
「HPにMP変化は無し」
志穂はレベル1にレベルアップした。しかしパラメーターにはなんの変動もない。
「でも、やることは一つ」
志穂は初音川の河川敷から学校へと移動する。おそらく、みんなは学校にいる。アイラは学校に行くはずだ。すみれを探しに。
「ハッ!!」
志穂は気合いを入れ学校の坂を上る。志穂には蒸気のように沸き上がる蒼いオーラを纏っていた。そこには殺意もあった。
「っ!?」
志穂が坂を上り終えると、そこは運動場が見えていた。
「アイラ!!」
「はああぁ!!」
志穂はアイラと莉音たちが戦闘をしている光景を見て叫んだ。
アイラはまず太刀を地面を斬り裂くように振り下ろした。
アイラのスキル、アースブレイクだ。
アースブレイクは地中に潜っている敵などを斬りつける効果があり、地割れを起し相手の地上での動きを封じる。
攻撃担当の千代子を牽制する。
「っ!?」
千代子はそのアースブレイクの衝撃を跳び躱した。
「はっ!」
美春がアイラの自由を奪うように電撃波を飛ばす。
「くっ」
しかし、アイラはそれをさらりと避けた。外套のない今は、受け流すことができない。避けるしかない。
「でああぁ!」
避けたところを志穂が突進してアイラを斬りつけにかかる。
「──!」
しかし、アイラは銀色の光をした太刀でそれを受け止める。
その銀の輝きは、真上に振り上げた。
キーンと金属のぶつかる音が響く。
「ほう、貴公か」
蒼いオーラが華麗に舞う。
斬撃を受け流した衝撃の余韻に志穂の髪が揺れる。
アイラの太刀の向こうから、双眸が少女を見据えている。
ブルーの連撃の魔法少女がアイラの前に立っていた。
「間に合ったかしら?」
「志穂ちゃん!」
「しーちゃん!」
「志穂!」
莉音、美春、千代子の三人がそれぞれ志穂の名を叫ぶ。
「これで、魔法少女『五人』が揃ったね」
マキャファートが言う。データ化したすみれも含めた言葉だ。
「回復、近接、妨害、遊撃、戦略……揃って……か」
アイラは志穂から距離を取るようにぴょんと後ろへ跳んだ。
「いいだろ。まとめてかかってこい!」
アイラのその挑発を戦闘の合図となった。
「はああぁ」
「でああぁ」
志穂が突進してアイラを斬りかかる。
千代子は地を蹴り、アイラを殴りかかる。
「無駄だ」
突然にアイラの足裏に爆発が起きる。神速、自分を挟み撃つ魔法少女たちに、斬撃を大上段から振り下ろす。
志穂、千代子もろともの斬撃と広範囲のアースブレイクを起こす。
「ぐっ」
「ぐわっ」
志穂と千代子はアイラの斬撃を受け大ダメージを被った。
しかし、莉音の防御魔法によりHPを1残す。すかさず、莉音は回復魔法で二人のHPを全回復させる。二人だけではなく、地面の亀裂もまるでなかったことのように回復させる。
「美春、電磁爆発をやるんだ」
「えっ、でも……巻き添えに……」
「いいんだ。大丈夫。莉音の回復魔法があるから」
「…………」
美春はそのマキャファートの言葉にドン引きをした。巻き添えにしてもどうせ回復する。マキャファートには倫理感というものが抜けていた。それに美春は不快感を感じざるをえなかった。
「美春、やって」
マキャファートは有無を言わせぬ眼差しで美春を見つめた。
「……わ、…………わかりました」
美春はそれを渋々承諾し、手を天に掲げ電磁爆発をアイラに放った。
「パルスッ!!」
バチバチっと電竜がアイラに向かってうねり、爆ぜた。
「ぐっ!」
電気を帯びた爆発がアイラを直撃し、爆風と爆熱が志穂と千代子にも振りかかる。
「きゃあ」
「くぅ」
同士討ちになったが、すかさず莉音が回復魔法で二人を回復させる。
「つぅ」
アイラは電磁爆発のダメージと追加効果の麻痺で、身体が痺れた。
(まずいな……回復魔法の永久機関がある限り)
「やぁああ」
志穂は姿勢を低くし、跳ぶ。横の回転斬りをアイラに繰り出す。
「っは!」
アイラはあえて、それを受ける。
「っはあっ!!」
鋭く一声、アイラが咆え、カウンターとして志穂の腹を深々と刺し貫いた。アイラの太刀が背中まで一気に抜ける。
「ぎゃあああ!」
志穂は悲痛な叫び声を上げる。
アイラは刺し貫いた太刀を抜き払い、血飛沫を上げる。
通常なら、致命傷だ。志穂は即死していただろう。
しかし、莉音の防御魔法によりHPを1耐えて、すぐさま回復魔法により全回復する。
斬っても、刺しても、何もなかったように全回復する。
(これじゃあ、まるで……物量作戦じゃないか)
莉音の回復魔法という、圧倒的な補給。
アイラに比べたら劣るが、近接、遊撃、妨害の攻撃。
アイラとっては致命傷にはならないが、それがいつまでも続く。
ギブアップゲームとなっていた。
どちらかが諦めるまで戦闘は続く。
(畜生が)
アイラはまだまだ戦える。
美春による麻痺で身体は十分に動けないが、まだ戦える。
しかし、持久戦ともなればアイラが圧倒的に不利だ。
となると、根競べ。
どちらが諦めるか。
アイラは諦めないが、志穂たちも諦めない。
志穂たちには莉音の回復魔法という最強の補給がバックについてる限り強く出る。
「私はアイラ・ミカラギ・スタインバーグだ!」
アイラが咆える。それに志穂が答える。
「それが、どうしたァア!」
「くっ」
アイラに絶望が頭によぎった、その時。
「おっと、お前は一人じゃないぜ」
「ちょっと! アタシに黙って行くんじゃないよ!」
「待たせたな!!!」
「助太刀いたす」
「あの……あの……頑張ってください////」
「さっさと帰りましょうか……」
「やれやれ、見ちゃいられねぇな」
「これを使いな!!」
「雑魚は俺に任せろ!」
「オレサマ アイツ キライ タオス!」
「ホッホッ、年寄りの力を侮るんじゃない」
「おにーちゃん、受け取って」
「俺を置いていこうったってそうはいかねえぜ!!」
「べ、別にアンタの為じゃないんだから」
「報酬は山分けよ♪」
「お前の背中は俺が守る」
「ぼくだってやれるんだ!」
「フッ……」
「敵戦力、解析完了しましてよ!」
「俺との決着がつく前に死なれちゃ困るだけだ」
「まったく世話がやける野郎だwww」
「クピー!クピピー!」
「派手に行くぜええええ」
「アイラ隊長、恩返しますよ」
「アイラ隊長のためなら、死んでもいい」
「み、みんな」
そこには、かつてアイラの部下たちがアイラのピンチに駆けつけた。
ざっと、500人以上はいるだろうか。
一人一人がアイラのために全てを捧げる。
それが、アイラの人望だ。




