種族値の差
「あ、あの色々と訊きたいことがあるんですが……」
「なんだい?」
「あなたは、一体何なんですか?」
「僕はマキャファート。魔法少女を産み出すもの」
「??」
美春は小首を傾げる。
「僕の国は悪いヤツラによって侵略されてる。おそらく今この瞬間も」
「えぇ!?それって、まさか戦争!?」
「どうだろうね、戦争と呼べるものかどうか。まぁ、ヤツラによって奪われた領土もある財産も国民も」
マキャファートは少し寂しそうな顔をした。
「美春、マキャファートに協力してはくれない?」
志穂が優しい声で言った。
「………そうですね。困っているんですよね。戦争は怖いですけど」
「大丈夫!みはるん!私がいるから!」
莉音はそう言うとまたしても美春に抱きついた。
「ぅゎ」
「莉音!だからやめなって」
抱きつく→苦しい→ひっぺ剥がすの勝百合の方程式が完成していた。
「うん、莉音はMPが1844京6744兆0737億0955万1616もあるからね。ずっと回復し続けるから倒れることはないよ」
マキャファートにとっては、莉音という存在はとても重要である。
「あれ、あんなに回復魔法使ったのに莉音さんのMPが1しか減ってない」
「あー美春気付いたか、それは高レベル者の優遇措置ってやつで……」
(あれっ、莉音さんって……ちょっと距離取られてる?)
「えーー!そうなんですか!?すごいです!」
「志穂ちゃんとは違う反応だ!」
「悪かったわね。ずるいなんて言って」
「しーちゃんはどうなんですか?」
(えっ、志穂ちゃんのことはしーちゃんって呼ぶの?)
「わ、私はレベル低いから。燃費も悪いし」(ってかしーちゃんって呼ぶのね美春は)
「そ、そうなんですか。じゃあ、私はどうなんでしょうか?」
「うーん、私はレベルが低いからHPとMPと経験値しかみえないから。マキャファート、どうなの?」
(あれっ、志穂ちゃん?私も隠しステータス含めていろいろわかるんだけど……)
「美春のレベルは37。HPは2400、MPは3675だね、経験値は、ああ…1/4個ある」
「えっ、経験値が四分の一ってどういうことですか?」
「経験値は数量ではなく個数で表すんだ。ちまちまスライムを(ry
で、経験値のかけらが必要なんだ。
かけらは4つ揃うと経験値が満タンになってレベルがアップする」
「そ、そうなんですか。個数ですか。」
「いや、ちょっと待て。なんで、私がこんなにも差を感じなければならないのよ!HPが112、MPが159まではいい。しかしレベルが35も違うだけでHPの差が2288、MPの差が3516というのはどうなの?
普通に考えては200前後位にならないの?」
「何を言ってるんだい?違うのは当たり前じゃないか」
「えぇ!?そうなの?」
「そうだよ。だって、志穂と美春は『種族』が違うじゃないか」
「種族!?いや、私たち同じ人間!日本人!大和民族!」
「……あのね、アイドルと金持ちを一緒にしないでもらえる?スライムとドラゴンの種族は全然違うだろ。そういうこと」
「いやいや、アイドルは仕事!金持ちはもともと!」
「志穂ちゃん、『金持ちはもともと』ってすごいことをさらっと言えるね」
「うっ、うるさいわね」
「僕からすると努力で手に入れたものだろうが、親から受け継いで貰ったものだろうが、関係ないよ。
どちらにせよ、自分を構成する一条件に過ぎないから。」
「え、えー。でも、」
「種族値ってものがあるんだよ。今の君には見えないだろうけどね」
「種族値!?」
「あと、努力値も」
「努力値!?」
「努力値は、どれだけ何かに努力を振ったかでステータスに影響が出てくる。
美春の場合はアイドルとかだろうね」
因みに、個体値というものは存在しない。これから出てくることもない。
それと余談ではあるが、種族値、個体値、努力値は公称ではない。基礎ポイントが公称。
「種族値、努力値の違いから生まれる差。それを不公平だと嘆いては困るよ。この世の現実はもっと不公平だよ。
生まれた国が、時代が、親が、性別が、人種が、違ったらなんて、思ってるだけで無駄だよ。
より良い人生にしようと努力した方が非常に簡単だよ」
「……ぅぅう」
志穂はぐぅの音もでなかった。
正論は、人を傷つける。
「あっ、みはるんのロールは……」
「妨害だね」
(えっ、マキャファート?なんで?私がみはるんに言おうとしてたのに。ってかマキャファートのほうが妨害だよ)
「妨害って、なんか嫌です。良いイメージがしません」
「そうかな?僕はこうも考えられると思うよ。
相手の行動を麻痺させる。それは、自分達にとっては有利に働くし、サポートにもなる」
「そ、そうかな?」
「そうだよ」
(まあ、アイドルってやつは人を惑わす。貢いだ金は戻ってこないし、なかには破綻するやつもいる。ほんと、人の生き路を妨害する。大概の人間は気づかないだろうけど)
マキャファートはマスコットの姿をしているが腹の中はマスコットらしくない。
「あぁ、それとみはるんの属性は電気だね。
因みに、私たちは無属性で今のところみはるんだけ電気属性なの」
「そ、そうなんですか」
美春は三回目のそうなんですかを言った。
「そして、特異性は『波』だね」
(また、マキャファートに取られた!?)
「と、特異性って何ですか?」
「その属性の特異なところ。
電気と言っても種類はいっぱいある。
発電なのか、蓄電なのか、放電なのか。
美春はおそらく電波が特異なんだと思う」
「そ、そうなんですか」
四回目。
美春はいろいろと訊きたいことを訊いた。
楽しい時間はあっという間に過ぎた。
……楽しい。
美春はマキャファートたちとの会話が楽しいと感じた。
美春はなかなか学校に行けず同年代の友達がいなかった。ぼっちじゃなくて、孤高だから。孤高。
だから、美春は自分の思いの丈をぶちまけた。
「あ、あの。私と友達になってくれませんか?」
美春は顔を朱に染め恥ずかしながらも言葉にした。
「もちろん!(ノ≧▽≦)ノ」
「ぅっゎぁ」
「はいーー、莉音、抱きつくのはよしなさい。」
またしても、莉音は嬉しくて美春を抱き締めた。そしてまたしても志穂がひっぺ剥がした。
「美春。私も、もちろんよ。また、明日学校でね」
「えっ、学校同じだったんですか?」
「その制服見ればわかるわよ」
電磁フィールドが解いたあと美春は制服姿に戻っていた。
志穂は私服だったが、莉音は制服でしたよ。
「ほら、もう今日は遅いからね。また明日」
「……はいっ!また明日ですっ(^^)」
「みはるーん、また明日ね」
莉音は志穂に襟首を引っ張っられて言った。
しかし、莉音は相当嬉しかった。みはるんの友達になれて、みはるんの家を特定してと。
美春は莉音たちを見送ったあと、マキャファートにも挨拶を言おうと振り返ったがもうすでにいなかった。
今夜の空は昨日と同じく非常に綺麗だ。
空にも地上にも一際輝くスターがあった。
一週間後。
「今週の第5位は」
パタパタパタパタ、ジャン。
「美春さんの『ビリラブ』です」
パチパチパチパチ
「おめでとうございます。第5位ですよ。先週から順位が上がりましたね」
「はいっ、ありがとうございます(〃⌒ー⌒〃)ゞ」
「土吉さん、みはるんなんだか輝いて来ましたね。先週とは違う」
「えぇ、ありがとうございます。私も嬉しい限りです」
マネージャーは先週、美春から友達ができたと報告を貰った。
おそらく学校が充実してきたのだろう。
それが、美春の原動力にもなっているだろう。
マネージャーは親心か、美春は成長したなぁと感心していた。
美春、より綺麗になったな。
「~♪」
マキャファートは街の電器店のテレビを見ていた。
見ていたテレビ番組は『頂10』
「なるほど、これは電波な歌姫だ」
マキャファートは何かを確信した。
「いやーそれにしても、電磁波を扱えるってことはX線とかで、人体を透過できないかな。妨害電波とか流してくれないだろうか。傍受でもいい。僕のなんて、ただ魔法が使えるだけの電磁フィールドだし」
マキャファートはあれこれ述べながら電器店を出た。
「まっ、ヤツラもなんらかの対策はするだろう」
マキャファートは高く跳躍した。
建物の屋根屋根を跳びながら。
「もう少し。もう少し、魔法少女が揃えれば」




