第三版世界
【3.091583】
「んっ、んんー」
早朝の静謐な空気が部屋に流れる。
「おはよう」
誰もいない自分の部屋で誰かに言った。
「よっと」
莉音が立ち上がると少しぐらっと揺れた。莉音は船中泊をしている。と言っても遠洋漁業に出ているわけではない。莉音は水上生活者だ。川におんぼろ船を停留させている。
「着替えなきゃ」
莉音の寝巻きは体操服だ。80年代の体操服はブルマだった。
そのブルマをは鼠径部を沿うようにぴたっと張り付いていて、ブルマ越しのお尻はプリプリしている。脚はすらりとしていて、ぷにぷになふとももにふにふにのふくらはぎ、くるぶし丈の白靴下を履いている。上半身は空気が出入りできるほどのエロいシワがあそこはおっぱいだからシワにならないと嘆いてる半袖の体操服を着ている。それらをひとつひとつ脱いでいく。上半身はするりと難なく脱げるけどブルマは下へと脱がなければならなくてパチッとピチッとブルマのゴムの弾性音をしながら脱がなければならなくて脱ぐのに一苦労二苦労せねばならない。ブルマを膝峠を越えるとあとは重力加速による自由落下でぱたっと落ちる。パンツでしょうか、いいえブルマです。女子中学生の下着姿。白のブラ&ショーツ。莉音は昨日の夜に用意していた学校の制服を取り、着替える。上半身は入り口は一つ出口は三つとなっていて着替えるのは普通だ。次は下半身。スカートは簡単にすぽんっと脚をくぐらせウエストのファスナーをギュッと閉める。すると莉音のウエストは「あっ」といやらしい声を喘ぎ逝く。莉音のスカートのヒダをヒダヒダっと踊らせ、莉音のウエストがイッたらもうこれで完成だ。
莉音は寝巻きの体操服から制服に着替えた。
「いってきます」
莉音は船の扉を開けると、ぶわっと朝の涼しい風が一気に船内に入り込む。
「いい気持ち」
莉音は船からコンクリートの岸へと跳び移る。
「君はとんでもないことをしたね。莉音」
「っ!?」
いつの間にか莉音の背後にマキャファートがいた。
「はぁ、どうして回復魔法を先行させなかったんだ」
「えっ!?」
「君が回復魔法を先行させずに、世界改変を先行させた回復魔法を行った。これがどういうことかわかるかい?」
「ちょっと待ってマキャファート、どういうことなの?」
「はぁ、何もわからないんだね」
「えっ?」
「君が起きるとき、何か見えなかった?」
「えーと」
莉音は朝起きたときのことを思い出してみる。そのとき自分が何を見たのか。
「あっ、何か数字。数字が浮かんでいたような」
「やっぱり、見えていたんだね」
「数字が何か関係しているの?」
「Ver3だよ」
「えっ?」
「第三版世界だよ」
「ん?どういうこと」
「8月下旬、9月上旬と立て続けに世界改変を行ってしまった。間隔が早いよ」
「だから、どういうこと」
「聞いて莉音。君はもう二回、世界改変を行ったんだ。前々回は回復魔法が先行しての世界改変だったけど前回は世界改変が先行しての世界改変になったんだ」
「ああ、思い出した。私、たしか部室棟を火事になる前に戻したんだっけ」
「……君に時間操作の能力はないよ。回復だよ。延焼した第一部室棟と全焼した第二部室棟を全回復させようとしたんだ」
「そうだ、それでたしか何かの疑いを晴らそうと事件そのものを無かったことにすればと……」
「何かの疑いじゃなくて誰かの疑いだよ」
「えーと、」
「千代子だよ」
「ああ、そうだった」
「やっぱり、いろいろと記憶が抜けてる。いや、継承しきれてない」
「ん?どういうことなの」
「とりあえず、学校に行くよ」
「えっ、ちょっと待って今日は祝日だよ。学校は休みなはず」
「いいから」
莉音はマキャファートに半ば強引に学校へ行けと言われると、しぶしぶながら学校へと行った。
「ほらっ、休みだよ」
学校の校門は閉まっていた。それは学校が休みだと言うことを表していた。
「跳び越えよう」
マキャファートはそう言ってぴょんと校門を跳び越えた。
「ええ、私も。スカートだよ」
莉音は私服という私服を持っておらず制服が私服となっていた。
「いいから、脚をかけて」
「もう」
莉音は校門にぴょんと上半身を飛び乗り脚を校門の上にかける。するとふさっとスカートがみるみると莉音の生脚を露出させる。くるぶし丈の白靴下と白い脚が見える。官能的にも莉音の脚はつるつるてかてかと光っていた。おそらく太陽光のおかげであろう。朝の日差しが莉音の脚を輝かせ朝の涼しい風が莉音のスカートをふわりと捲り上げる。その時、莉音の白いパンツがチラッと見える。なんとも元気な少女の象徴だろうか。ごくり
「わっ」
莉音は校門の上を越えようとしたその瞬間、ずるとバランスを崩す。
「いててて」
莉音はどういう物理法則をしたのか、尻餅をついていた。もちろん白いパンツが見え、まるでM字開脚でもしているかのように。
「ほら、早くして」
「もう、ちょっとは心配してよ」
マキャファートが急かすと莉音は立ち上り校舎へと向かった。
「ねぇ、マキャファート。どこに行くの?」
「ついてきて」
マキャファートはただひたすらに校舎へと向かう。いや、校舎ではなく体育館へと向かう。
「体育館に何か用なの?」
「…………」
マキャファートは無言で答え、体育館裏へと行く。体育館の裏は……
「えっ!?」
莉音は刮目した。
「全半焼した、第一第二部室棟だったところだよ」
そこには旧校舎でも部室棟でもない。
「何も……ない」
更地になっていた。
「莉音。君が世界改変を起こしたせいで部室棟は消えた。ううん、正確には取り壊された。この世界では夏休みに旧校舎は耐震問題を理由として取り壊された」
「……なんで」
「君が世界改変を行ったからだ。そして、デウス・エクス・マキナがご都合が起きた」
「なんで、そんなことは……」
「千代子が疑われた原因はいろいろある。もともと学校での評判が良くなかったもあるだろうが、何より部室棟が燃えてしまったのがいけない。
事の真相は不良たちのタバコの不始末が原因で部室棟は燃えた。その不良たちは前日に千代子にヤキをいれられ不満に思っていた。部室棟が火事になったのは予期せぬことだが千代子に擦り付けるのに都合が良かった。
生徒や教師たちは千代子ならやりかねんと思いその擦り付けを信じてしまった。第三者である警察はそのことに気づいてはいたけど事件を処理する前に莉音が世界改変を起こして、何もかもうやむやになってしまった。
うやむやとなった結果、事の最大の原因は部室棟と判断され、部室棟がなかったら火事にも冤罪にもならなかったと判断され、ご都合が起きた」
「そんな……」
「衣咲が生徒会長をひっぺ剥がされたのだって、衣咲が志穂たちを学校に呼んだからだ。会長の命令は一般生徒にとっては重いものだろね。しかしそのせいで台風の被害にあった。すみれが死んだし。もし、生徒会長ではなければ……ならすみれたちは来ないよね夏休みなのに学校なんて」
「…………」
「とりあえず、こうなってしまったのは仕方がない。受け入れるしかない。本当なら警察が上手く処理して千代子は無罪になるはずだっただろうけどね」
「…………」
「……莉音、今度は回復魔法を先行させてね」
「…………」
莉音は無言で答え、マキャファートはどこかへと跳んで行った。




