電撃魔法少女
イルヴァがアイラの部隊に配属された時、最初に行う授業があった。
『人を殺すことの授業』である。
人を殺すことのはいけないことなんて、子供でもわかる。
しかし、ここは軍隊であり、軍人だ。
戦争というのは人を殺すこと。
多く人を殺せば英雄だ。
但し、敵に限る。
では、その敵とはなんだ?
敵国の軍人だけではない。
国賊も敵だ。
いざ、決起になった暁には、国賊を何人も葬る位の心意気が必要になる。
一人十殺。
君側の奸を誅せ。
魂を国家に捧げろ。
それらが、アイラの教えたこと。
きっと、一生涯かかってもわからないであろう。人を殺すなんて。
でも、殺らなければならない。
そんなこと、普通の人には一回もないだろう。
軍人は違う。
殺すし、殺される。
殺されることのなんらかをアイラは知っている。
だから、アイラは嫌がる。
殺されることを。
いっぱい殺すことしたきた故に。
「これは、『エスケープ』危ないと思ったときに使え」
アイラがイルヴァに渡したのはエスケープという小さなボタンを持つ機械。
エスケープ、名の通り逃げることが出来る。
アイラは敵前逃亡については認める考えだ。
相手があまりにも巨大な敵の場合、逃げずに戦い続けるのは犬死に繋がる。
逃げることもまた、重要である。
「いいか、イルヴァ。絶対に死ぬなよ」
「はいっ!」
美春は帰り路に着いて、少し考え事をしてた。
このあと、お風呂に入って、ご飯食べて、明日の準備をして、寝てとそんな他愛もないことを考えてた。
「君が美春だな」
「えっ?」
美春は声のする方に顔を向けた。
クールな表情、濡れたボブカット、なんともこの場には似つかわない黒いマリンスーツ。
美春は怪訝な顔をする。それもそうだ。
対して、イルヴァは冷静な表情で美春を見た。
可愛らしい幼そうな顔、綺麗な金髪のツインテール、服は制服、スクールバックも持っていた。
「あっあの、私が美春です」
「そうか、探した」
「…?もしかしてファンの方ですか?」
「まぁ、そんなところだ」
「そうでしたか、ありがとうございます」
美春はぺこっと頭を下げた。
しかし美春、ありがとうございますと頭下げる必要はないし、あと危ないし、気を付たほうがいい。
けど、美春は素直ないい娘だからつい頭を下げちゃう。
「君の歌声はマズイ」
「??」
「君の歌声は人々の心を惑わす」
「えっ、あーあの」
「君の顔もそうだ、気の瞳も見てると電撃が走る」
イルヴァが美春を褒め称す。
しかし、ただ褒めてるわけではない。
「君は、非常に危険な存在だ。素質もある」
「ど、どういう……」
「だから、決めてもらおう。
アイドルを辞めてもらか、
死か」
そう言ったあとイルヴァは背中から槍を出し構えた。
その槍を美春に向け言った。
「十秒やる、言え」
美春の顔に一瞬にして緊張が走る。
イルヴァは、カウントダウンを始める。
10、9、8、7、6、5、4、3、2
美春は目の前の出来事を受け入れない。
いきなりすぎて、わけがわからない。
身体が強ばって動かない。
1、0
カウントダウンが終わった。
同時に美春も自分が殺されることを直感した。
そして、そのままイルヴァが構えた槍を美春に目掛ける。
しかし。
スパーンと槍の柄を真っ二つに切れる音がした。
はっとイルヴァは周りを見渡す。
自分から右方向に、魔法少女となった志穂がいた。
イルヴァが志穂を視認出来たと同時にパアァと電子的な粒子が空間に広がった。
電磁フィールドだ。
電磁フィールドが展開してやや遅れてマキャファートと莉音が駆けつけた。
イルヴァは、莉音のことをアイラからの報告を聞いている。
MPが1844京6744兆0737億0955万1616もある。
圧倒的な量であることはイルヴァも重々承知だが、攻撃はないとも知っている。
攻撃するのはあっちの志穂だ。
志穂の攻撃魔法はとても低火力だ。
それに、燃費も悪い。
志穂の攻撃魔法をなんとかすれば、大丈夫だと踏んでいた。
イルヴァは真っ二つに切れた槍を捨て、再び背中から新たな槍を出した。
「大丈夫!?」
「はいっ私は大丈夫です」
志穂は少女の無事を確認すると、攻撃に移った。
「やぁーー」
志穂の攻撃魔法は連撃すればするほど威力、ダメージが上がる。
それは、際限なく青天井だ。
キーン。金属と金属のぶつかる音がした。
イルヴァの槍と志穂の刀だ。
しかし今度は、志穂は吹き飛ばされなかった。
連撃の判定は刀が相手の身体にヒット、もしくわ武器にヒット。
そして、僅かな間に次の攻撃をヒットすれば、連撃の判定を受ける。
怯んでしまっては連撃の判定は下らない。
故にMPが116消費される。
「だぁーー」
再び志穂から次の攻撃が繰り出される。
キーンと再び金属と金属がぶつかり合う音がする。
そして、連撃判定が下る。
しかし、連撃はするが、ダメージに繋がってはない。
相手の身体に当たらなければダメージ判定は下らないのだ。
「なるほど、このまま連撃を続けてダメージを高騰し続け、一発でも当たればってわけね」
志穂は確認を口に出す。
その説明は正しかった。
武器の場合、武器のHPは存在せず、急所があるだけだ。
その武器の急所に当たることなれば武器は破壊される。
もっというと武器として使い物にならなくなる。
しかし、急所にさえ当たらなければ武器として使い続けることが出来る。
この場合、槍という武器は生き続ける。その槍が生き続けている限り志穂の刀とぶつかり合い続ける。
ぶつかる度に連撃の判定は下し続ける。
故に、志穂の刀の与えるダメージ量は高騰し続ける。青天井に。
そして、一発が大ダメージになりうる。
その事を踏まえ、志穂はまた攻撃に移る。
だがしかし、
「……っっ」
イルヴァは跳び避けた。
軽業のように、志穂の刀を見切り、宙を舞った。
志穂は斬撃の勢いのまま身体を縦回転させ、受け身をとった。
そして、連撃が終了したことを告げる判定が下った。
残りMPは43になった。
イルヴァはわかっている。
志穂の強みは連撃だ。
連撃をすればするほど強くなる。
ならば連撃させなければ、どうなるか?
答は簡単である。
志穂の連撃が止んでマキャファートはプランBに移行とした。
プランAはこのまま志穂の攻撃、連撃をし続け、それをサポートする莉音が回復魔法で回復し続ける。
しかし、これには時間がかかる。
アイラの時は察っして、撤退してくれたがイルヴァはそうとは限らない。
なにせ、今回は一般人がいる。
あまり、長いこと魔法を見せるわけにもいかない。
ならば、どうするか?
「ねぇ、君」
「えっはい、わ私?」
「そうだよ。君名前は?」
「み、美春」
「美春、魔法少女になってくれないかな?」
「えっえ?」
「今この状況見てわかるでしょ。どういうことになっているか」
美春は、今の状況を確認するように周りを見渡す。
ブルーのコスチュームをした、魔法少女が刀で相手を斬りつけようとしている。
ピンクのコスチュームをした、魔法少女が手を前に出してブルーのコスチュームした、魔法少女を回復している。
そんな感じで解釈していた。
「美春、君の力が必要なんだ!」
そして、マキャファートはスマホ出し美春に渡した。
「それは、スマホ。横にある電源ボタンを押して立ち上げて、変身アプリをおして魔法少女になって欲しいんだ」
「えっ、えっ?スマホ?アプリ?」
「僕が指示するから、お願いだから、」
マキャファートはあの言葉を言う。
「僕と契約して魔法少女になってよ」
その言葉を言った刹那、大量の槍が飛んできた。
十数本の槍が一列になってマキャファート目掛けて飛んできた。
しかし、マキャファートは横跳びしかわした。
イルヴァはアイラの指示通り、マキャファートを美春から離そうとした。
イルヴァはマキャファートを目掛けたが、美春はそうは思わなかった。
美春は自分に目掛けて飛んできたものだと思った。
そして、決断する。
この危機的状態、自分が取るべき行動は一つ。
魔法少女になる。
美春はマキャファートが言ってた通りにスマホの電源ボタンを押しおそらく魔法少女の変身アプリであろう矢印のマークを押した。
美春の身体を包むように黄色の粒子が舞い、イエローのコスチュームを身に纏った。
「……っぁあ」
イルヴァは瞠目した。
美春を魔法少女にしてしまった。
アイラからの命では、これ以上魔法少女を生んではいけないとだったのに。
魔法少女を生んでしまった。
「ふぁあ、これが魔法少女?」
美春は自分の身体をまじまじと見やった。
「美春、君には攻撃魔法がある。やるんだ」
マキャファートは槍を避けながら叫んだ。
「えーと、こうかな。えいっ」
美春は手探りながらも人指し指を一本立てるとバチっと電撃が走る。
そして、電撃波が周りに拡がりイルヴァにヒットした。
「んっあああ」
イルヴァの身体に電撃がヒットし、苦悶の表情をする。
イルヴァにとっては、電撃は弱点である。
主に水に覆われてるために電気を通しやすく電撃のダメージは通常の人間に比べ倍増する。
そして、イルヴァは先の電撃波の追加効果によって、身体が痺れる。
「くっ」
イルヴァは痺れで、ガクッと膝をつく。
痺れの状態異常の効果は、スピードの四半減、たまにの行動の不能。
志穂の連撃をかわしてきたイルヴァにとっては致命的であった。
「美春、相手の動きを封じるんだ!君の攻撃魔法には、攻撃だけではなく、妨害もある」
イルヴァはもう、動き封じられている同然だったにもかかわらず、マキャファートは更に動きを封じろと指示した。
マキャファートに言われた通りに美春は、腕を天に掲げ電撃を出した。
電撃は龍のようにうねりながらイルヴァの四方に落ち四本の電撃の柱ができていた。
その電撃の柱から、なかの人物を捕らえるように横に薄い一閃の電撃が走る。
もう、イルヴァには逃げ場はない。
マキャファートは仕留める気であった。
「志穂!今がチャンスだ!」
マキャファートはこのままイルヴァを捕て、志穂の攻撃魔法で連撃し続け、嬲り殺すつもりだ。
「だぁぁあ!」
MPを莉音によって回復してもらった志穂は再び連撃を始めた。
先程とは違って、一撃、二撃と身体にヒットする。
たちまち志穂の連撃はダメージ量は際限なく高騰していく。
そしてイルヴァのHPへのダメージは複利のようにどんどん累積していく。
志穂の刀は米の字を描きながら斬って斬って斬っていく。
それにイルヴァは反撃できない。
少しの時間はあるものの痺れでスピードは落ち、たまにの行動不能よって動けなかった。
イルヴァにとって美春が魔法少女になってしまったことは誤算だった。
それも苦手な電気属性。
電撃の魔法は後々危険だとイルヴァは考える。
電気の汎用性はとても高い。
現代の電気製品の頼っている社会を見るとだ。
本当は、魔法少女になる前に潰さなきゃならなかった。こんな、危険な魔法少女は。
「ちくしょう」
イルヴァはボソッと吐いた。
己の運のなさを嘆いたのか。わからない。
みるみるイルヴァのHPが減っていき半分になると、イルヴァは決意した。
ここらが、使い時か……。
イルヴァは自身の持つ機械に見やった。
危なくなったら使え、と言われたもの。エスケープ。
イルヴァはエスケープのボタンを押す前に辺り一帯を見回した。
連撃をし続ける魔法少女。
それをサポートし、自分の動きを封じ込める魔法少女。
二人の魔法少女のHPのとMPの回復をし続ける魔法少女。
三人を指示しながら自分は安全地帯にいる悪魔の顔をしたネズミ。
どう見ても分が悪い。
そして、イルヴァはエスケープのボタンを押した。
すると、白い電子的な粒子が舞いイルヴァを包みどこかへと行ってしまった。
「「「!?」」」
三人は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をした。
目の前で何が起こったのかわからないからだ。
「あれ、あいつは?」
志穂は混乱していた。
さっきまで、斬り続けていた相手がいきなり、いなくなったからだ。
「エスケープだね」
マキャファートは答えた。
「えっ?エスケープ?」
「そう、エスケープ。つまり逃げたってこと」
マキャファートは三人の前に出てしゃべった。
「ヤツラはエスケープできる。再び現れる頃には対策してくるだろう。
そうやって、攻撃、逃亡を繰り返してくる」
「えっ、また来るんですか?」
美春は驚いた。そりゃそうだ。美春にとっては初めての敵だし、自分は襲われた。
また来ればとなると、嫌になる。
「うん。ヤツラはしぶとい」
「ええぇ」
美春は落胆した。
その表情を見て莉音は言った。
「あれ、もしかしてアイドルのみはるん!?」
今の空気をまるで読めてない。
「あっ、はい!そうです!」
「かわいい(ノ≧▽≦)ノ」
抱きィィ…と莉音は美春を抱き締めた。
ファンとしてはいけない行為である。
「うゎ、ぷ。」
「こら、莉音!美春が苦しがっているでしょ」
志穂は無理やり莉音を美春からひっぺ剥がした。
「はぁ、君たち仲いいね」
マキャファートはそう言って百合百合しい三人を見やった。




