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レベル255の魔法少女  作者: パラドックス
第三章 世界改変
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黒板のジャングル②


 キーンコーンカーンコーン。昼休みのチャイムが鳴る。学校は昼休みになり、大勢の腹を空かせた生徒共が食堂へと急ぐ。食堂にある購買部のチーズテリヤキ月見グラコロバーガーを買いに殺到する。


「おばちゃん、TTGバーガー1ダース!」


「はいよ」


 莉音は購買部のおばちゃんからチーズテリヤキ月見グラコロバーガーを1ダース手に入れた。


「やった、やった」


 莉音は意気揚々として予約した食堂のテーブルに着く。そこにはクリームプリンが8つとミルクプリンが6つとマンゴープリンが4つとキャラメルプリンが2つとピラミッドを形成してあった。


「何バカなことをしてんのよ、莉音」


「あっ志穂ちゃん」


 志穂は昼休みになり莉音に会いに来た。

 莉音について調べるために。

 そして、言わねばならぬために。


「こんなに、プリンを買ってどうするのよ」


「もちろん食べるよ」


「そう」


 莉音が目の前にあるプリンとハンバーガーを腹の中にドンドンと入れるなか志穂は話を切り出す。


「ねぇ、莉音」


「ふぁひ、ひほひゃん」


「ああ、口のなか空にして言って」


「なぁに、志穂ちゃん」


「莉音は私のステータス見える?」


「うん、見えるよ」


 莉音はレベル255であり、表示されるステータスも隠しステータスもすべて見える。

 最初の頃と違って増えたのは、【特性】適応化と【必殺技】源始の一撃


「そう、やっぱりね」


 莉音に言われたのは魔法少女に主に関係ある事柄だ。腹へり度や清潔度や健康度などはあまり魔法少女とは関係ない。


「それで、莉音」


「うん」


「私もあなたのステータスを見ているのだけど」


「うん」


 志穂はレベル2で最低限のステータスしか見られない。相手のHPやMPや経験値しか見られない。レベルが低いとレベルも属性もロールも見られない。


「あなた、MP減ってるわよ」


「ふぇ?そりゃ回復魔法を使ったから減るんじゃないの」


「違う、そうじゃなくて。表示されてるの」


 最初の莉音のMPは1844京6744兆0737億0955万1616だった。

 しかし、最初のアイラ戦で崩壊した建物を回復するとき莉音のMPは減り、その時のMPは1844京6744兆0737億0955万1615となった。

 この時、減ったのは1ではなくて1に満たない数字である。0.000000……というとても低い、超ローコストである。

 それがレベル255の魔法少女の特権だ。

 レベルが高い故にMPが増えるし、ひとつひとつの魔法の使用コストも減る。

 アイラ戦からこないだの広々域の回復魔法まで莉音のMPは1844京6744兆0737億0955万1615だった。

 何度か回復魔法をしたが1844京6744兆0737億0955万1615のままだった。それは減ってないのではなく1に満たない数字で減り続けていてる。けれど表示されるのは1の位まででそれに満たない数字は表示されない。だが、志穂は表示されていると言うた。

 

「莉音のMPが1844京6744兆0737億0955万1614になってるのよ」


「ふぇ?」


「1もこんなにハイコストに減っているのよ」


 志穂の感覚は狂ってきた。自然数の最小の数字である1をハイコストだと思うなんて。それでもまだ莉音のMPは1844京6744兆0737億0955万1614もあって全然ハイコストとは言えない。割合的には超ローコストである。


「まぁ、たしかにハイコストかもしれないけど。まだ全然あるんじゃない。1844京もあるだし」


「違う、そうじゃない」


「えっ?じゃあどういうことなの」


「……それは、」


 志穂は迷う。衣咲の言う通りであれば、莉音は……


 あと、1844京6744兆0737億0955万1614回も『世界改変』を行える。


 本当に、衣咲の言う通りに世界が混沌とする。


「とにかく、あんまり広範囲に回復魔法を使わないで」


「えっ?どうして」


「やっぱり、一般人からしたら変なのよ。いきなりこんなに復活するなんて」


「でも、敵が壊したらどうするの」


「少しだけにしてあとは人の力で直していくようにして…………」


「でも、それだと回復スピードが間に合わないんじゃないかな」


「えっ」


「志穂ちゃんの言う通りにすると、仮に一般人の復興スピードを30日とするとして、敵が壊しに来るペースを7日とすると、多くの被害が被るよ」


 莉音の言うことは正論だった。


「いや、でもそんなに敵が毎週くるとは限らないし」


「たしかに志穂ちゃんの言う通り、毎日来るかもしれないね」


「…………莉音?あなた皮肉を言ってるの」


「いや、そうじゃないよ。でもなんで全力で回復魔法を使っちゃいけないのかなーって」


 莉音は的確に志穂の揚げ足を取っていた。

 

「…………人間が莉音の回復魔法なしでは生きられなくなるのよ」


「えっ?」


 志穂の言い分では莉音の問いにしっかりと答えてない。そんなことを言うのであれば現代人は鉄道や車なしで遠出は出来ないし病院なしでは病気や怪我を治せない。原始人の時代には戻れないのだ。何も寄りかからずに頼らずにアテにせずに生きるのは。


「……別に私は誰かの役に立つのなら」


「そうじゃない!」


 志穂が声を荒らげた。


「いや、莉音ごめん。でもそれは、きっと間違う」


 強い奴に頼ること、優しい奴に甘えること、それが当たり前だと思ってる奴は一体何様だ。

 志穂はこの世界のことを色々と知っている。


 ボロ布を纏った孤児たちが、一団となって飢えているアフガンの難民キャンプ。

 コンゴの内戦が終わったあと、道端に打ち捨てられた人々。

 ローマで盛り上がった市民たちの、反グローバリズム30万のデモ。

 民族浄化の名の下に、虐殺が続くダルフール。

 70億円もの年俸を手にする雇われ経営者の下、生活保護以下の資金で働くアメリカの社員たち。

 街では食料が溢れているのに、その隣で飢餓に苦しむスラム街の住人。

 子供を犬のようにロープで縛り付け素っ裸の子供が親の仕事が終わるまで繋ぎ留められている。

 わずか2000円のために子供を売り渡す人間。

 すぐ隣に、何人もの人間を奴隷の如くに使役し、自由を享受する大金持ち。

 ホームレスや貧困にあえぐ人たちを放置して、我が物顔で闊歩する人たち。

 この世界の自由は、大金持ちのためにある。


 きっとこんな腐った世界を変えるのなら、莉音の回復魔法による世界改変が必要かもしれない。けど、


「きっとどうやっても悪は出てくるわ。もし善人の集団にたった一人でも悪人が交じれば、その集団は必ず悪に染まる。決して、悪を放逐することは出来ない。それを受け入れなければ、人間は前に進めない。貧困を撲滅することもできないし、不幸な人々を救うことも叶わない」


 莉音は黙して志穂の言うことを聞いていた。


「莉音の回復魔法のやろうとすることは正しい。だけど正しすぎる。人々から不幸を取り除こうとしている。でもそれじゃあダメなの。

 正しすぎるのはダメなの。正しすぎても人々は不幸になる。

 きっとそれは人間の心の底のいる悪よ」


 莉音の回復魔法に頼る人間こそが敵で悪と志穂は言うが。


「それでも、私は」


「………………」



「それでも、私は人々を助けたい。私の回復魔法は魔法少女を回復し人々の復興をする。

 それが私の役割」



 莉音はそう言って、テーブルから席を立ちまだ半数のハンバーガーとプリンを残して食堂を去った。



「はぁ、ダメだったか」


 志穂は莉音の残したチーズテリヤキ月見グラコロバーガー3つとクリームプリン4つとミルクプリン3つを平らげた。


「合わないわね。ハンバーガーとプリンは」




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