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レベル255の魔法少女  作者: パラドックス
第三章 世界改変
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黒板のジャングル①


 まだまだ残暑の厳しい九月。学校は二学期に入った。

 新学期と新展開が始まる。


「どう?エリシア」


「はっきり言って無理ですわ」


 志穂は二学期に入ったものの学校には行かずに会社でエリシアとテレビ電話をしていた。

 志穂はあの後すみれの遺体を回収し天月総合病院の霊安室に移送した。無理やりでもすみれを生き長らえさせる気だ。


「最低でも5兆ドルは不可能よ。志穂。そんなのある程度の経済大国のGDPよ」


 エリシアの言う通りそんな額の融資は不可能だ。ちなみに2015年日本のGDPが5兆ドル位だ。ちなみに中国が10兆ドル、アメリカが17兆ドル位となっている。それと現在と80年代の円ドルの相場は違って、この小説では1ドル200円としている。プラザ合意は日本いじめでかなりの円高になっていて80年代の円ドル相場は1ドル260円から110円と150円位の円高が起こっている。


「まぁ、そうよね」


「たとえ、日本に未曾有の好景気が来てそのくらいの時価総額の会社であっても無理でしょ」


「……そんな素晴らしい会社を売るわけないし、買収を試みる会社もないでしょうね」


「志穂はどうしてそのような額が必要なんですか?」


「……まぁ、誰にも為せないことをやろうとしていてね」


 志穂は人を生き返らせることをはぐらかして言った。エリシアには隠し事をしたくないがオープンに話すのもダメだと思った。


「はっきりしませんわね。革命ですか」


「似たようなものよ」


「はぁ。殺されますわよ」


「でもやらなければいけないことがある」


「テロリストとして見られるわ」


「米ソ冷戦中にテロリストがいてもなんとも思わないでしょ」


「……朝鮮戦争・ベトナム戦争と代理戦争はありましたけど、東西雪解けもあってアメリカが勝つことは近いわ。そのあとテロリストとの戦いになったら真っ先に殺されますわ」


「…………そうか。…………戦争よ」


「……ん?何がですの?」


「戦争を仕掛けるのよ」


「……志穂?」


「そうか、なんで気づかなかったのかしら」


「志穂、バカなことを考えるのはやめなさい」


「ねぇ、エリシア。戦争に勝てば戦争賠償が貰えるのよね」


「あなたの国に日露戦争があったでしょ」


 日露戦争は日本の大勝利となったが、戦争賠償は貰えなかった。日本は戦時国債を発行してこれ以上無理という位まで発行した。そして日本海戦では日本の一方的な勝利だが海軍力をすべて出し尽くした。もう日本はこれ以上戦争を続けることが出来ない状態だった。経済的にも軍事的にも。

 しかしロシア帝国は海軍は壊滅だけどもまだこっちには陸軍がいる。戦争賠償を払わせたければ陸まで来いよと強気に出て戦争賠償を払おうとはしなかった。

 そして小村寿太郎はロシアの妥協案ポーツマス条約にしぶしぶ認め、賠償金は無しだが南樺太をあげるとなった。この屈辱的な内容を知り、怒りをあげた国民が小村は売国奴だと言い日比谷焼き討ち事件が起こった。

 故に日露戦争は日本の大勝利とは言わず、引き分け勝利とも言う者もいる。


「まぁ、たしかにそうだけど……」


「必ずしも戦争賠償が貰えるというわけではない。第一次世界大戦のドイツもそんな感じでしょ。西ドイツの求める猶予を認めたけども、東西統一はいつになるのかもわからないし」


 ドイツの再統一は90年である。それからドイツは借金を返済し続け2010年にようやく完済する。実に89年もかかったのだ。


「それでも、敗戦国は戦争賠償を払わなければいけない立場よね」


「世界経済が混乱するわ」


「……それほどの額を…………」


「ちょっと、志穂。聞いてますの?」


「ええ、聞いてるわ」


「いえ、聞いてないでしょ」


「大丈夫よ。あっもうそろそろ私、学校へ行かなくちゃ。じゃあねエリシア」


「ちょっと、志穂!……もう」


 そこで志穂から一方的にテレビ電話は切れた。


「なんで、気づかなかったのかしら。戦争賠償で1000兆円をふんだくればいいんだわ。……マキャファートに訊いてみなきゃわからないけど」


 志穂は何が壊れていた。ブレーキの他の何が。





 志穂はほどなくして学校に着いた。いつもの学校なのだが何が違うような気がしていた。

 何かはわからなかった。


 志穂が昇降口に入ると、千代子がいた。


「あっ千代子、おはよう」


「おはよう。ってそんな時間じゃあないがやけんど」


 時刻は昼になっていた。


「どいた?重役出勤かえ」


 千代子は冗談混じりに志穂に言う。


「ふふ。まぁそんなところ。って言う千代子はサボり?」


「まぁ、そんなところ」


 千代子はくるぶし丈のロングスカートを履いていてまるで不良な格好だった。というよりいつも学校はこの格好なのだが。

 しかし、千代子は見た目は孤高の不良みたいだが、不良ではない。そう孤高なのだ。女子中学生にしては身長は高く他の生徒からは威圧感があり恐れられている。故にあまり千代子は学校に行きたがらなかった。だが自分が魔法少女になって仲間が出来て、美春という大切な人が出来て、千代子は次第に学校に行くようになった。


「美春は?」


「テレビ番組の収録やと」


「あっそうなんだ」


 千代子は美春が学校に来ると自分も学校に行く。美春が行くから私もという風になっていた。

 美春のいない学校は千代子にとっては暇だろう。

 莉音は真面目に学校に行っているが、美春は仕事などで仕方なくがあり、千代子は美春がいればなどという気まぐれであり、志穂は学校と会社などと行き来しており千代子よりも気まぐれで学校に来ていた。


「じゃあ、あたしはちょっとブラブラしちょるき、何かあったら電話しいや」


 千代子はそう言って去っていった。


「ふふ。かっこいいわね千代子は」


 志穂は千代子の後ろ姿を見て言った。頼もしい人だと、志穂ではなくともわかるだろう。

 そして志穂は自分の教室に向かうがチラッと自分の教室を見る。


(うわぁぁ。授業やってるわ。入りにくい)


 こんな静かな空間にガラガラと遅刻生が来ると生徒たちは皆そっちへと見やるだろう。入りにくいし、恥ずかしい。


「しかたない、時間を潰すか」


 志穂は教室から遠ざかり教室棟の空き教室群の階に行った。

 ここは基本的に補習などで使われる空き教室だ。といっても普段は鍵がかけられている。空き教室には入ることは出来ない。


「トイレぐらいかしらね」


 教室の近くにトイレがある。トイレの出入口は扉などはない。トイレ中の個室に鍵つきの扉があるだけだ。

 別に志穂は用を足そうというわけではないがまぁスマホでの時間潰しのために入るだけだ。


「はぁあ」


 志穂はため息を吐きながら空き教室群の女子トイレに入った。その時、



「てめえ、誰に断って髪染めてんだよ」


「ごぼっかっは、これはもともと……」


「口答えしてんじゃねーよ」


「んっ?何だお前は」


「えっいや」


 志穂は女子トイレに入った瞬間後悔をした。

 不良たちがいじめを行っているのだ。

 女子のいじめは教室で起こってるんじゃない女子トイレで起こるんだ。


「っ!?」


 志穂は不良のクソ女共にいじめられている女子に驚いた。


「会長!?」


 いじめられているのは衣咲だった。


「はぁあ、こいつが会長。はっはっは。バカじゃねーの」


「あーあれだろ。生徒会長はあのマユゲジねずみ男だろ。こいつが生徒会長なわけねーよ。あーはっはっは」


「つか、お前さぁここは使用中だよ」


「…………」


 志穂はいきなりの危機に戸惑っていた。

 目の前でかつての生徒会長が和式便所の中に顔を突っ込まれているのだ。


「待って、会長を離して!」


「はぁあ?お前も便器に突っ込まれたいわけ」


「つか、お前はこいつの何?」


「その人は……」


 チラッと衣咲の方へ志穂は見やる。


「友達よ」


「ぷっはぁーはっはっは。こいつに友達が居んのかよ。あーはっはっは」


「だったら、金をだしな。10万。それで離してやってもいいけど」


「くっ」


 志穂は悔し声を出し、女子トイレから逃げた。


「ぷっ、あーはっはっは。おい、てめえのお友達逃げたぞ。あーはっはっは」


 それから下卑た声が女子トイレをこだました。


「はっはっはぁ」


(何なの)


 志穂は空き教室群の階から走り逃げ、スマホから用心棒にかける。


「もしもし、千代子」


「もしもし、どいた?」


「ちょっと空き教室まで来てほしいの」


「何ぃ?」


「いじめがあって、会長が……」


「わかった。そのリンチをあたしが止める」


 プツッと電話が切れた。


「はぁはぁ、千代子」


 志穂は頼もしい人を呼び、少し安心をするがまだ動悸は止まらない。


「なんで会長は生徒会長ではないの。わからない。なんで」


 志穂は混乱するばかりだった。衣咲はとてつもない手腕で学校改革を行い皆からクイーンと言われ親しまれている。ましてこんないじめられっ子なんてありえない。


「何なの?」


 志穂がそう呟くと千代子が走ってやって来た。


「志穂、大丈夫か」


「ええ、私はでも会長が」


「どこにおる」


「女子トイレに」


「わかった」


志穂と千代子は階段を駆け上り空き教室群の階に着き、女子トイレへと行く。


「おい、便器を舐めて掃除しろよ」


「いや」


「てめえ!」


 ゴンと和式便器の金隠しに頭をぶつける音がする。


「あーはっはっは」


 そしてクソ女共の下卑た笑い声がする。


「ちっ、ゴミが」


 千代子は怒りをあらわにする。

 そして、千代子は怒りの形相で女子トイレに入る。


「あっ?誰だ」


 不良が千代子に言う。千代子はそれを無視し怒りの咆哮をあげた。


「おんしゃーら、何しよぉらあ!!!」


 そのドスの効いた声で周りを一喝し黙らせる。


「な、何だてめえは」


 それに反抗するように一人の不良が言う。だがその声は震えている。恐怖に震えている。


「退け」


「あぁ?」


 不良は精一杯にメンチをきるが、


「退けちゃっ!!!」


 千代子の荒らげた声に不良は怯む。

 そして千代子は和式便器から衣咲を抱き上げる。


「失せろっ!!」


 千代子が目をギロッと睨み付け、不良たちは蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げた。


「大丈夫か」


「ええ、なんとか」


 衣咲の頭は便器の水で濡れていた。いや制服全体がズブ濡れていた。おそらくバケツかホースかで衣咲をぶっかけていたのであろう。


「会長」


「志穂さん。私は会長ではないわ」


「えっ、いやでも」


 志穂は戸惑うばかりである。何が起こってるのかわからない。


「一応、着替えちょこう。ズブ濡れやき」


「ありがとう。でもその前に、志穂さんと二人で話したいの。いいかしら」


「わ、わかった」


 千代子は衣咲の言う通りにし、女子トイレから出た。

 そして女子トイレに二人っきりになったところで衣咲は話を切り出した。


「志穂さん」


「はい」


「夏休みの台風の時に莉音さんが回復魔法を行ったでしょ」


「ええ」


「わずかに回復するならまだ誤差範囲だけども、それを大きく越えたわ。あの時の回復魔法は」


「それが、何か」


「もし、人智を越えた力であの水害が何もなかったようになったら、志穂さんならどうする?」


「えっ、いや、オカルトかなと」


「そうね、オカルトとして済ます人もいる。けどどうにかして暴きたい人もいる。だけど暴いてはいけないことよ。魔法なのだから」


「あのー。会長?」


「デウス・エクス・マキナが起きたの」


「はぁ?」


「あんなにぐちゃぐちゃになったにいきなりもと通りっておかしいと人は思うわ。だから何とも思わないようにした。されたの」


「……はい」


「莉音さんが回復魔法をして、『世界改変』が起きたの」


「…………」


「信じられない?」


「実感がわかないです」


「あなたは魔法少女だもの。そして私はタイムリープしてきた未来人。インサイダーの人間だもの」


「つまり、アウトサイダーの人間は記憶改変をしたの。誰が?」


「そんなのはわからない。けどあんなに広範囲に回復魔法で回復したら……それは何らかの『収束』が行われる」


「会長が生徒会長でなくなったのも、世界改変」


「そうよ」


「……そんな」


「マキャファートさんの圧縮タイプの電磁フィールドにより学校が著しく改変された」


「…………」


「あまり回復魔法に頼りすぎると世界改変を起こしすぎて、世界は混沌とする」


「……そんな」


「おそらくマキャファートさんはそれが狙いなのでしょう」


「っ!?」


 志穂は感じる。マキャファートの思惑が何となく感じる。


 マキャファートは世界を巻き込むつもりだ。



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