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レベル255の魔法少女  作者: パラドックス
第二章 第一版世界
64/93

台風の学校⑨

「…………お願い、出て」


〈RRRRRRRRRRRRRRRRRRRR〉


 志穂はすみれに電話をかけるが出ない。


「……すみれ…………」


〈RRRRRRRRRRRRRRRRRRRRプッツ〉


 そして志穂のスマホからお繋ぎできませんでしたという無機質なアナウンスが流れた。


「そ、そんな」


 志穂は落胆と絶望の声を漏らした。


「……すみれ」


「どうしたの?」


 そんな志穂に声をかけたのは衣咲だった。


「会長、すみれが……電話にでません」


「…………」


 志穂の言葉に衣咲にも緊張が伝わる。


「でも、まだ……そうなったわけではないのでしょ」


 そうなった、つまり土石流に飲み込まれたということ。


「でも、取るはずです。電話が鳴れば」


「どうしても、取れない状況だったんじゃない?」


「……どういう状況なんでしょうか。それは」


「えっ…………それは…………」


 衣咲はどうしても最悪のシナリオを避けたがる。まだ最悪のシナリオではないと言う。まだすみれの『遺体』を見つけてはないのだから。まだすみれが生きてる可能性がある。そう志穂に言い聞かせてる。


「とりあえず、いったん落ち着きましょ。それから冷静になってから考えましょう」


「………………はい」


 志穂は衣咲の提案をしぶしぶ受け入れた。


 そして、とぼとぼと莉音のもとに戻るときガチャと扉の開く音がした。

 千代子が美春をお姫様だっこして体育館にやって来たのである。

 これで体育館に魔法少女が揃った。すみれ以外。









「ぅ…………ぅ……う」


 土石流が流に流れ尽きたあと食堂のあった場所は土石と瓦礫の山になっていた。

 そして生き埋めになったマキャファートが一番初めに自力で生還した。


「ぺっ…………泥だらけだよ。僕は精密な機械なのに」


 マキャファートは土石の山から這い上がり雨に濡れた空気を久しぶりに吸う。マキャファートに呼吸は関係ないのだが。


「まさか、土石流になるとは…………想定外だったよ」


 マキャファートは敵による攻撃ならある程度予測は出来るが流石に自然災害は範囲外だった。

 

「まぁ、ある程度なら莉音に任せれば大丈夫なんだが…………」


 莉音の回復魔法は魔法少女だけではなく建物も自然も人工物もご都合主義的に回復できる。まるで時間軸が戻るように。しかし、


「…………絶命を無かったことには出来ない」


 いくらMPが1844京6744兆0737億0955万1615もあっても人を生き返らせることは出来ない。ヒーラーはあくまでも回復が役割で蘇生が役割ではない。


「一応、抜け道があるにはあるんだが…………」


 それは少し前にすみれが言っていた。人を生き返らせる蘇生魔法があると。それはスーパーマーケットで上級金貨にて売られている代物。


「とても高価であてにはならないが」


 超越通貨と日本円のレートが1スーパー円1円とするならば、上級金貨1枚は1000兆円である。10枚であれば1京円100枚であれば10京円である。京の単位になると流石に80年代の日本の総資産価値でも到底無理な金額だ。ちなみにリーマンショック前の2006年の日本の総資産価値は2787兆円とも言われている。そして2006年のアメリカの総資産価値を円に直すと、7503兆7000億円となっている。2006年の日本とアメリカの総資産価値を合算すると、1京0290兆7000億円となり、まぁ上級金貨10枚に替えることは出来なくもないがそもそもこんな資産価値を日本円に替えてくれるところはない。


「残念だけど受け入れるしかない…………」


 と、その時ガラガラと土石の山から石が転げ落ちる音がした。何かが、いや誰かが土石の山から這い出ようとしているいるのだ。


「っ!?すみれ!!」

 

 マキャファートが叫ぶ。その先には、


「…………ぅっ……うぅ」


 土石の中から這い上がってきたのは、ヴィルだった。

 ヴィルの顔や身体は泥だらけで息も絶え絶えだった。それでもふらつく足に気合いを入れなんとか立ちあがり前をマキャファートの方へと見据えた。


「…………ぁぁあ」


「ゾンビかよ……」


「…………私には改造能力がある。…………私は死なない。死ねない」


「フッ。そんなことがあるか。生きている限りいずれ死ぬ。それが早いか遅いかだ」


「…………そうか。私は改造能力で無理やり延命されているのか……」


「……軍が上がどういう判断で改造能力を施したのか知らないが、死ぬよ。仮にすみれのグラウンドゼロを受ければ確実に死ぬ。すみれのはそういうものだ。そこに矛盾は生じない」


「なら、機械であるネズミはどうなんだ」


「……機械だから、死ぬというのは正しくはない表現だろうけど死ぬさ。僕は核燃料で動いてる。もし核燃料が尽きたら動かなくなる。それが僕の死だろうね」


「…………なるほど核燃料だったのか」


「あぁそうさ。この耳のアンテナも電磁フィールドを展開するのもすべては核燃料で僕が動いてるから出来るんだ」


「…………えらく、ペラペラとしゃべるのだな」


「今際の際みたいだし。冥土の土産にも、とね」


「…………言っただろ私は死なないと」


 ヴィルが刺突の構えをする。


「だから、あり得ないて。死なないことはない。いずれ死ぬ。まぁ生き返えることもあるだろうけど一度は死ぬだろ

 死というものがわからないヤツが死を語るなよ」


「…………なら、その言葉を遺言にしてやる」


 ヴィルはマキャファートに向かって突進する。


「フッ。遺言は死んでから言えよ」


 マキャファートはくるりと宙返りしヴィルの剣撃を避ける。

 そしてそのままマキャファートはヴィルの剣撃を避け続けながら少しずつ足場の悪い土石流に飲み込まれた元食堂から遠ざかる。目指す場所は近くにあった体育館棟の一階の武道場だった。









 志穂はスマホを見続けていた。もしかしたらすみれがかけ直してくるかもしれないと。


「あの、莉音さん大丈夫ですか?」


「うん、みはるんのおかげでもう大丈夫だよ」


 美春は千代子から降りしっかりと立てていた。見たところ精神的なトラウマはないように見えるが安心してはいけない。

 それにもかかわらず美春は莉音の心配をしていた。いつもは莉音のことをさらっと躱し続けてきた美春だが流石に精神的にストレスを過度に感じた莉音を見ればそうはいかない。ちゃんと美春も莉音のことを心配できる良い子なのだ。


「ほらっ大丈夫だよ」


「わっぷ」


 莉音は美春をぎゅーと強く抱き締めた。今まではさらっと躱されたり、志穂にひっぺ剥がされたりしたが今回は何の邪魔なく美春を抱き締めることができた。


「もぉ~苦しいですよ莉音さん」


「えへへ。ごめんごめん」


 莉音はそう言って美春を解放した。


「……さて、皆さん集まったところで……」


 衣咲が何かを言おうとしたその時、


〈RRRRRRRRRRRRRRRRRRRR〉


 志穂のスマホが鳴った。

 はっとすぐさま志穂はスマホを見やるが電話ではなくメールの着信音だった。

 それでも志穂はすみれからの連絡だと信じてメールを開いた。そこには、



[レッドの魔法少女  LOST]



 という淡白な文章だけが打たれていた。


「何…………これ……」


 志穂はそのメールに現実が受け入れないままでいた。


「ちょっと見せて」


 衣咲が横から志穂のスマホを見る。そしてすべてを察したような顔をする。


「……志穂さん」


「いや、……会長……何も言わないでください」


 志穂は衣咲の言うことを阻止する。

 LOST……行方不明という意味でもあるがこの場合は違うだろう。


「志穂さん、すみれさんは…………」


「いやっ!!言わないで!!」


「すみれさんはもう、死…………」


 その時、


〈ドンッ!!〉


 何かが壁にぶつかるような音とガラスが粉々に砕ける音がした。


「……一階から聞こえたよね」


 莉音が言う。体育館の一階は柔道場や剣道場の武道場だ。今は誰もいないはず、それにガラスが砕ける音は一階の入り口のガラス扉だろう。ということは、


「誰かが入ってきた?」


 莉音は皆に確認するように言う。


「誰かって誰ですか?」


「敵かもしれん。マキャファートが電磁フィールドを展開しちょったき」


「「えっ!?」」


 千代子が言うと美春と莉音は驚く。こんなときに敵が来られたら…………。


「一応、見に行くというのも」


 衣咲はそう言い千代子と美春と莉音を促す。志穂はまだ現実を受け入れないでいる。


「あたしは行くけんど……」


「ちよちよが行くなら、私も行きます」


 美春はそう言って、スマホから魔法少女アプリの変身アプリを押しイエローの魔法少女に変身する。


「大丈夫かえ、美春」


「はいっ、ちよちよばかりに頼ってはいられません」


「……そうか」


「二人だけじゃ、危ないよ。回復役の私も行く」


 莉音はそう言って、スマホから魔法少女アプリの変身アプリを押しピンクの魔法少女に変身する。


「志穂ちゃんはどうする?」


「わ、私は…………」


「待って、莉音さん。志穂さんは私と二階にいる。それでいいでしょ」


「えっ……あっ……はい」


「そう。……わかった。じゃあ私たち行くね」


 莉音、美春、千代子は二人を二階に置き自分達は一階へと見に行く。もし敵が現れたら、すぐさま戦闘に入るつもりだ。


「行ったか」


 衣咲が呟く。


「それで、志穂さん」


「やめてください……会長」


「…………メールに添付してあるわよ」


「えっ?」


 志穂はメールの添付のところを押すすると、


「わっ何?」


 赤い粒子が舞い志穂を包む。その粒子は志穂の胸の中へと入っていく。


「……なるほど、志穂さんあなたすみれさんにただではあげなかったのね。『継承システム』」


「……何ですか、会長」


「継承システムは相続税や贈与税に似てる。生前にあげれば贈与税。死後にあげれば相続税。

 つまり、志穂さん。あなたはすみれさんに遺言状を書かせたのね。あなたが相続人になるように。違う?」


「そんな、私そんなこと」


「すみれさんは死んだ。その証拠に死後に継承システムが作動している。どうみてもあなたが一枚噛んでたのよ」


「私はすみれが死んでほしくはないっ!!」


「……おそらくそれは本当でしょうね。でも現実を受け入れなさい。あなたはすみれさんのデータを承け継いだ。自分のステータスを見たら?」


 志穂は自分のステータスを見る。レベル2の自分ではHPとMPと経験値ぐらいなものだと思ってたが、違った。


「あれ、何これ」


 志穂はあまり自分のステータスをちゃんと見てこなかった。故に以前ヴィルと交戦したときにえた特性の適応化があった。そして今、もうひとつ新たものを手に入れた。


「必殺技」


「そう、必殺技。レベル2のあなたにはいろいろと条件があるし本家のすみれさんの下位互換だけども、その名の通り」


 衣咲は語気を強めて言う。


「相手を必ず殺す技」




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