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レベル255の魔法少女  作者: パラドックス
第二章 第一版世界
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台風の学校④


「…………でません」


「……そう。莉音さんも忙しいのかな」


「いや、たしか寝ると言ってたような……」


「……もしかしたら寝過ごしているのかも」


「でしたら保健室に行きましょうか?」


「いえ、そこまでは。莉音さんも疲れているだろうから」


 そこで、志穂と衣咲の会話は途切れた。すると台風による豪雨が生徒会室の窓を強く叩いた。その音がひどく部屋に響いた。








 千代子と美春のいる教室は二人っきりだった。美春が黒板に白チョークで絵を描き始めてそれを千代子がうしろで優しい目で見ていた。

 外は激しい豪雨と暴風で大いに荒れに荒れていた嵐だったが教室はまったりとした空気が流れていた。

 千代子のスマホはニュースを付けっぱなしになっていた。



「……初音川が越流しました」

 【午前11時30分】


「濁水がもう川を越えて道路まで流れてきました。えー大変危険な状況です」


「ただいま入ってきました。えー千原町、栄原町に避難勧告が出ました。繰り返します…………」

 【午前11時35分】


 千原町は学校や千代子の住む商店街がある町で栄原町は美春の住むマンションがある町である。

 避難勧告は拘束力中のレベルである。強のレベルは避難指示で、小のレベルは避難準備情報となっている。

 避難勧告の場合近くの避難所を確認し老人や障害者などがいる世帯は避難をしてくださいということである。一般の人は避難しようがしまいが近くの避難所を確認してくださいということで通常避難所は公民館とか学校である。

 しかし莉音たちが通う学校は洪水などの水害には避難所にはならなかった。なぜなら近くに初音川が流れていたからだ。現在初音川は氾濫して河川敷はもちろん近くの道路まで冠水した。どうやっても学校に入れないのである。


「……こちら、地下鉄天月駅にいます。えーもう雨で駅構内は川のようになっています」


「……はいっ。えーお伝えしていますように台風13号の影響によって…………」








「…………これは、」


 ヴィルはその光景に驚愕した。

 目の前には川が流れていた。

 

「…………たしかここは学校の敷地内の階段のはず」


 ヴィルはマキャファートがいる学校へやって来たが台風の影響によって初音川が氾濫しすべてが川になっていた。

 学校の敷地内にある駐車場はもう川になり駐車場から学校の敷地内の通学路に続く階段は半分くらいまで浸水していた。

 ジャポジャポとヴィルが一歩一歩歩くたびに水に足を突っ込む音がなる。


「…………これでは足場がやられてしまう」


 ヴィルには千代子のようにスプラッシュジャンプはできない。つまり水面を跳ぶことはできないはおろかもう川底と言っていい地面を跳ぶことは難しいし歩き難いし走りにくい。


「…………だが、建物内に入ってる可能性がある」


 ヴィルはその可能性を信じゆっくりと気をつけて歩いた。










「……すみれ、とりあえず中に入ろう。ここは雨で濡れるしあと水もきてる危ないよ」


「そ、そうだね」


 すみれは自分がおバカなことをしてたこと恥じた。そりゃそうだあんなことをしてもし水に飲み込めれでもしたらシャレにならない。

 マキャファートに言われる通りすみれとマキャファートは食堂の中に入った。


「ところで志穂から聞いてるよね。継承システムのこと」


「う、うん」


「どうだった?」


「…………適合……してた」


「本当に!?」


「……うん…………」


「そうか、そうか」


 マキャファートは不敵に笑みを浮かべる。継承システムの件でここまでうまくいっている。

 ここで整理しておく。

 マキャファートは継承システムですみれの魔法であるMADボムを継承したい(?)らしい。

 しかし志穂やアイラは継承システムですみれの魔法であるMADボムを廃棄したい。


「マキャファート」


「ん?なんだい」


「私の魔法をマキャファートは……欲しいの?」


「くくく。何を言ってるんだい。そんなことは思ってないよ」


「でも、私を利用した」


「ん?どういうこと」


「ラピュータで会談の時に。私を脅しの道具として」


「…………そんなことはないよ」


「じゃあ、あのときの強気は……」


「それは交渉事だからだよ。強気な姿勢は見せるようにしなければいけないからさ」


「………………」


「……核兵器をなぜ人間は持ちたいと思う?」


 マキャファートは話題を変えた。


「隣の国が敵国が持っているから持たなきゃと思うらしいよ。インドが核兵器が持ってるからパキスタンもって核兵器を持つことになるよいずれ」


 マキャファートはなぜか未来のこと言える。いやもしかしたら想像で言っているのかもしれないが。


「すみれのMADボムは核兵器みたいなものだ。たしかに僕の国は侵略されて何か対策を考えなければいけない。けど敵国は核兵器を持っていない。故に僕が持つ必要はない」


「……備えあれば憂いなしとも言うよ」


「すみれは違うけど。核兵器なんて持ったらいろいろと管理が面倒だよ。

 使わないのに脅しでちらつかせて持ち続けるのはあまり合理的ではないよ。相手が核兵器を持っていたら最悪使うかもしれないから持ち続けるのとはわけが違うよ」


「…………」


「それに継承システムを買ったのは志穂だ。僕じゃない」


「じゃあなんで訊いてきたの継承システムのいろいろを」


「一応知っておかなきゃいけないからね。僕は君たちの契約者であるから、もし魔法が失うことがあればのことだよ」


「………………」


 その場しのぎのような回答だが理屈は通ってる。友達だからという友達なんて個人の主観でどうとでもなる存在より親だからという客観的な目で見る存在の方が法廷的には理屈が通りやすい。あまりマキャファートと議論し合うのは得策ではないだろう。



「だから──」



 ガチャっと閉めたはずの食堂のガラスの扉が開かれる音がした。


「…………そこまでだ。ネズミ」


 ヴィルが食堂に到着した。








「出てきなさい」


「出てきなさいよ」


(ひぃぃいぃぃぃ)


 莉音はヤスコさんとユリさんに探されている。

 レズってる二人を見てた可能性があるから犯人を探しだし処刑しようとしている。


(もぉぉおお。志穂ちゃんがこんなバッドタイミングに電話をしてきてぇぇぇえ)


 それよりサイレントマナーモードにしなかった莉音にもそれなりの失態でもある。普通学校ではマナーモードにしているだろうに。平成の学校では携帯が鳴ってしまっては最悪担任の先生または生徒指導の先生に放課後まで没収される。


「ベッドにはいないねぇ。ほかにもどこかに隠れる場所もないし」


「いや、灯台もと暗し。ベッドの下にいるかも」


 そう言って二人はベッドの下を覗こうとする。


(あぁ、もう……だめ)


 ──その刹那ッ!!


「ん?おいお前たちなんで保健室にいる!?」


「「せっ先生!!」」


 がらがらと保健室の扉を開けたのは二人の担任の梅宮が入ってきた。梅宮の担当は数学。若き日の理想を失った無責任な大人だ。中学生の頃天才であっても将来こんな大人になるのだろうか。 


「おい!お前たち早く帰れ!何やってんだよ」


「「す、すいません」」


「今台風だ。生徒だけで帰るのは危ない。俺が家まで送るから車に乗れ!学校を閉めるぞ!」


「「はっはい」」


 二人は梅宮に連れられて梅宮の車に乗った。梅宮は一応管理棟だけを見回ったあと学校を施錠して車に乗り二人を家に送った。

 莉音たちは学校に閉じ込められたのである。


(たっ助かったぁぁ)


 莉音は九死に一生を得たのである。

 そして志穂に電話をかけ直した。



「あっ莉音から」


 雨が窓を強く叩く音が響く部屋の中で志穂のスマホは鳴った。


「もしもし?」


「もぉお。志穂ちゃんなんでかけてくるの!私、本当に死にそうだったんだよ!」


「えっ、いや知らないわよ」


「あのね私はね、かくかくしかじか」


「それは莉音が悪かったんじゃない。さっさと出てくればいいことなんだし。そうしたらその行為がおこる前になんとかなったんでしょ」


「まぁそうかもしれないけど……」


「あぁそれと話があったの」


「はぁ。うん何?」


「電話を変わるね」


 志穂がそう言い衣咲を電話口に出した。


「もしもし、生徒会長の衣咲です」


「せっ生徒会長!?なぜ生徒会長が私に?」


「その話は生徒会室で話したいから生徒会室まで来てくれる」


「はっはい。もちろん」


「では待ってる」


 ぷつっと電話は切れた。


「…………生徒会長が私に話しって何だろ」


 莉音は不思議に思いながらも保健室を出て生徒会室へ向かう。

 保健室は管理棟にあって生徒会室は第二部室棟にある。まず管理棟から教室棟へ教室棟から体育館棟へ体育館棟から第一部室棟へ第一部室棟から第二部室棟へとかなり距離がある道のりだ。


「うゎ、台風がすごい」


 莉音は廊下の窓に打ち付けられる雨や風を見て言った。

 学校は梅宮によって施錠され敷地内外の範囲にマキャファートの電磁フィールドによって閉鎖された。

 電磁フィールド内は豪雨によって初音川が氾濫し道路も川になり学校内にも水が浸水していた。


「大丈夫かな学校」


 莉音は学校を心配するが自分達を心配しない。

 まぁ大丈夫だろう。

 水害だし。地震でもないし。

 たとえ大地震が来てもFPSやめられないのだろう。

 そんな安全神話が莉音の中学生の心にはあった。

 







 千代子のスマホは相も変わらずニュースをしゃべっていた。


「…………はいっ。今入ってきたニュースです。

 決壊です。初音川が決壊しました。えー近くの住人の皆さんは高台に避難してください。建物にいる方は二階などに上がって救助が来るまで避難してください。

 繰り返します。初音川が決壊しました。近くの住人の皆さんは高台に避難してください。建物にいる方は二階などに上がって救助が来るまで避難してください。

 決して諦めないでください。救助が来るまで待ってください」

 【午後12時00分】



 キャスターの声が危機感を帯びた声になった。 

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