台風の学校③
「…………魔法を得るつもりかも」
「……えっ?」
志穂の呟きに衣咲は訊き返す。
「マキャファートは魔法を得て、つまりMADボムを自分が自在に使えるようにしたいのかも」
「……継承システムを使って?」
「ええ」
「ちなみにそのMADボムの威力は?」
「マキャファートいわく、今度は12万500平方キロメートルの範囲で大爆発すると言ってました」
「なっ!?」
衣咲はその数字におののく。ツァーリボンバの約12倍の範囲の威力だ。
「……キムイルソン主席が聞いたら戦々恐々するどころかショック死……それとも核として手に入れたがるかも」
キムイルソンは72年から首相から国家主席に変わっている。80年代は70代と死去する82歳まで死期が近い。
「北朝鮮が核兵器なんてあり得ませんよ。会長は北朝鮮の技術力はご存じでしょ。開発も無理ですし」
「……拉致とか」
「……!?」
「まぁ核は闇の博士カーンがやるのだけど」
衣咲は志穂には聞こえないように小さな声で呟いた。
パキスタンでカーン博士が98年に核実験を行ってから北朝鮮は大きな分岐点となった。
2003年にNPTから脱退し2006年に最初の核実験に成功する。94年から2011年まで党より軍重視のキムジョンイル総書記が最高指導者になる。
そしてキムイルソン主席の時代に北朝鮮の日本人拉致事件が起こる。
69年にキムイルソンは日本人拉致を承認する発言をする。70年代と80年代に日本人拉致しそして77年に横田めぐみさんが拉致される。
2002年にある程度の拉致被害者が日本の地を踏めたがまだ完全ではない。
80年代は北朝鮮の拉致事件について恐怖があった。88年に日本政府は初めて北朝鮮の拉致だと認めたということもあって。
それと、この小説の時代設定は何年と明確にはしておらず80年代としていて、昨日は88年だったが今日は83年明日は86年と変動したりする。
「まぁそれは置いといて。マキャファートさんの所在は今知ってるの?」
「…………いや、ちょっとわかりません」
「そう。ではMADボムをすみれさんからマキャファートさんに継承システムで継承させることでいいの?」
「いや、それがいろいろありまして…………」
「?」
「まぁそれはおいおい話します」
「やぁすみれ」
「あっマキャファート」
マキャファートは雨でずぶ濡れのすみれに接近した。
「すみれはたしか志穂に聞いたんだよね。魔法のことを」
「あぁうん」
すみれは台風で興奮した顔から一転、顔を暗くした。
「ん?どうしたんだい」
「マキャファート。私、死んだらどうなるのかな」
「いきなり、どうしたんだい?」
「実は…………」
「実はですね、会長。私スーパーマーケットで見つけたんです」
「何を?」
「蘇生魔法を」
「…………」
蘇生魔法は名の通り人を蘇生させる魔法だ。
スーパーマーケットで買える蘇生魔法はとても高価で、最低でも上級金貨が必要だ。
ちなみに1スーパー円1円のレートでの上級金貨1枚は1000兆円になる。人の命は地球よりも重いと言うが、人の命をたったの1000兆円で生き返らせることができるのだ。それと、これはいわゆる課金魔法とも言えるが課金は運営がいてのことで課金とは言わない意味的にも。
「継承システムを買おうとするついでに目に入ったんです。でもとても高価なので無理でした。それであまり考えたくないことだけど……」
「可能よ」
「え?」
「すみれさんを一度死なせれば魔法少女ではなくなる。そして蘇生魔法で蘇生すれば、その時に魔法を失い女子中学生になる」
「…………」
「やっぱりって顔ね」
「……考えたくなかったですけど」
「すみれさんには話した?」
「……はい。継承システムを買ったあとに。すみれは気丈にふるってしたが内心はどうか」
「…………」
「ふーん。死んだらどうか、ねぇ」
「やっぱり魔法を失って…………」
「違うよ、すみれ。人は死んだら終わりさ」
「……マキャファート?」
「仮にそんな蘇生魔法があったとしても生き返る保証がない。そんな見切り発車でやってもらっては犬死にだ」
「……そうだよね」
「死んだこともないの死を語るなよ」
「ご、ごめん」
マキャファートの言ってることは矛盾している。まず死んだ人間はしゃべれない。故に語ることなんてあり得ない。一度死んだ経験から言うとなんて言うやつはいない。死人に口無しである。
しかしすみれはマキャファートに叱責されてそのことに気づかない。
「だから、生きて。魔法少女として生きて」
「うん、うん。そうだよね」
「…………それはそうと、継承システムなんだけど……」
「…………こちらヴィル。ネズミの展開した電磁フィールドを確認。即行で向かう」
ヴィルは上司のアイラへ報連相をし学校へと即行で向かい速攻でマキャファートを殺すつもりだ。
速さはどんなに速くても絶対にインフレしない。
速さや少なさは0にどれだけ近づけるかどうかだが行動する以上自然数のカウントになり絶対に0にならないし0より小さくはならない。
マイナスゲームだからだ。
逆に大きさ高さ多さは自然数のカウントをしてる以上ハイパーインフレを起こす。戦闘力とか。
プラスゲームだからだ。
「…………これ以上絶対にMADボムを爆発させてはならない」
MADボムはどんどんとインフレを起こす。爆発すればするほど範囲は威力は大きくなる。
「そう言えば莉音さんもスーパーマーケットにいたよね?知ってるそのこと」
「いえ、教えてはいません」
「そう、別に教えなくてもいいのだけど。でも莉音さんと話したいから莉音さんに連絡してくれる?」
「あの、何を話すつもりですか?」
「それは莉音さんが来てから」
「…………わかりました」
志穂はスマホを取り出し、通話ボタンをタップして莉音にかける。
まだまだヤスコさんとユリさんはレズっていた。
※残念ですが、運営からR18警告を受けました。
いや、本当にまだヤッてます。
莉音は自分の興奮を頂点にする、その刹那ッ!!
「~♪」
莉音のスマホの着信音が静かな保健室に大音量で鳴り響いた。
着信音は美春の最新曲『夏色のキョンシー』だった。
「「っ!?」」
(ちょっ!?)
ピリッと保健室の空気が張る音がした。
ヤスコさんとユリさんはすぐさま身体を音の鳴った方角へと向く。
「何!?」
「誰!?」
二人の鋭い声が莉音に突き刺さる。二人はすぐさま乱れた衣服を着直し戦闘体勢になる。
それもそのはず普段の二人は自分達が同性愛だということ隠して学校生活を送っている。もし同性愛だとみんなに知られてしまったら、終わりだ。いじめの対象となる。
とくに80年代は中学校の校内暴力はやばかった。それもホモやレズなどの同性愛なんてカーストはとても低い。男子なら焼却炉で文字通り焼きを入れられる、女子なら性的いじめで輪姦されたり。……ちなみに同性愛ではないが、高校でコンクリート……とか。
(ど、どどどどど、どうしよう)
莉音はハーレーダビッドソンみたいな吃りをしながら焦っていた。
「今の曲、おそらくラジカセから誰かが流したんだと思う」
「えっ、ということはずっとここにいたの」
「うん、この保健室は密室だもん」
密室の保健室に二人以外の人間がいると気づいた二人はベッドから降り犯人探しをする。
「どこっ!出てきなさい!!」
「そうよ!出てきなさいよ!!」
(無理、無理、無理、無理。出てこれないでしょこんな状況では。というか誰なのスマホにかけてきたのは)
莉音はスマホを見る。幸いガラケーみたいにボタンのカチッカチッとする音は出ずに電源をつけることができた。
そこには、志穂の名前が出ていた。
(しぃぃぃぃいほぉぉぉぉおちゃあああん!!)
莉音は志穂に対してこんなに憎いと思ったことはなかった。というよりタイミングが悪かった。
「ねぇ、見つけたらどうする?」
「口封じ」
(ひぃぃいぃぃぃい)
死人に口無し。
「そういえば台風よね」
「川も増水してると思う」
「もし、人が流れてたらどうする」
「台風だから近づけないでしょ」
(あわあわあわ。この人たち殺る気だ)
莉音は今日ほどピンチになったことはないと思った。




