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レベル255の魔法少女  作者: パラドックス
第二章 第一版世界
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ラピュータ会談⑩


「すみれ」


「すみれ!!」


 マキャファートと志穂がすみれを呼ぶ。

 志穂は必死に叫ぶ。

 対してマキャファートは少し気怠け気味に言う。

 

「あっあっ、あの」


 すみれは迷っている。

 それまで五人の魔法少女とマキャファートというチームがとれていた。

 しかし今そのチームは崩壊している。

 いきなり突きつけられた現実。

 どちらに付くか。


「ぁっ、ぁ」


 客観的に見れば、すみれと志穂は同僚や仲間だが、すみれとマキャファートは上司と部下だ。

 力関係は目に見える。

 魔法少女としての志穂のレベルは低い。

 今まで指揮官として指揮を執っていたマキャファートはそれなりの実績がある。

 どちらと離反すれば損か得はわかるだろう。


「くっ」


 マキャファートから離反すればそのあとの嫉妬というか報復はあるだろう。

 マキャファートには魔法少女を産み出すしか能力はない。

 報復としてのミサイルや魔法は飛んでこない。

 しかし、


「ぅぅうう」


 すみれにも心苦しいものがある。

 育ててくれた指導者というわけではないが、そのような気持ちはある。

 すみれはチラッと莉音と美春と千代子を見やる。


「ぁ…………」

「っ…………」

「……………」


 莉音は両サイドを見、美春は志穂をどうして?と言いたげな顔をして見、千代子は虚空を見てた。

 三人とも何も発しない。

 発っせない。


「…………っ」


 すみれは三人からの助言を頼ったが、それは無かった。

 とても心苦しく嫌な空気が部屋を包んだ。

 その時──


「ネズミ、一人で行くがいいだろ」


 アイラだった。


「……なんだい?」


「すみれ殿を巻き込む必要はないと言っておるのだ」


「…………」


「列強に入るためとはいえ、重ね重ねの乱行。

 許しがたいものだ。

 それにすみれ殿を巻き込ませるな」


「…………」


 列強としての資格に超越通貨の有無がある。

 別にライセンスとしての資格というわけではない。列強としての立場である以上その立場に相応しい振る舞いをしろということだ。

 超越通貨が手に入れば列強として扱われるとマキャファートは思うだろうが、それだけで列強として扱われない。

 政治的、軍事的、経済的な基盤が必要でもある。

 しかし今のマキャファートはすみれというMADボムがあり、それは軍事的に見れば強力なカードで外交的にもそうで、それらからさらに超越通貨を加えようというなら……列強として見る者もいるだろう。


「ヤツの言うことを聞く必要はない。行くよ、すみれ」


「あっ……」


 マキャファートが再びこの部屋から出るぞと催促をする。

 

「すみれ!!」

「すみれ殿!」


 志穂とアイラは叫ぶ。


「あ、あの。その」


 すみれは困惑する。


「……はぁ」


 ため息をついたのはマキャファートだった。

 マキャファートはこんな状況に辟易していた。

 脅しとして歪曲してラピュータ全土をぶっ飛ばすと言ったが、まず今はすみれは魔法少女じゃない。魔法少女に変身してない。

 魔法少女でないすみれにMADボムは使えない。

 MADボムを今使うはずないだろうがとマキャファートは思う。

 

「すみれ、君が決めるんだ。僕は少しだけ待つよ。少ししたら僕はこの部屋を出る。」


「あっ……マキャファート」


 マキャファートにとってすみれは重要な魔法少女だ。簡単にその選択肢を棄てるはずがない。

 そしてアイラにとってはマキャファートとすみれが離反することはとても好都合だ。

 MADボムの驚異がなくなる。

 それさえなければ、こんなふざけた会談はなくなる。

 もう、怯えなくていい。

 そして暫しの間、無言の時間ができる。


「すみれ、決めたかい?」


「えっ、あっあの」


 すみれはまだ決めきれてなかった。

 こんなことを簡単に、すぐに決めれるはずはなかった。


「……じゃ、僕は行くね。地上に戻るよ」


 そう言ってマキャファートはドアの前まで行った。


「……別に君たちと別れるというわけではない」


 その言葉は逃さないと言っているのかはわからない。


「もし、僕が必要な時はスマホに連絡をとってよ。スマホは君たちにあげたものだ」


 マキャファートが必要な時、それすなわち魔法が必要な時。

 マキャファートの電磁フィールドが展開されないと魔法少女アプリは起動しない。

 一応ヴィルも劣化電磁フィールドを展開できるがマキャファートのように広大ではない。

 何より、壊される可能性もある。

 魔法少女アプリを起動できる以外はすべてマキャファートの劣化だ。


「これをいい機会として考えて欲しい。

 元はと言えばそこにいる黒髪の少女が僕を攻撃してきたところを莉音と志穂が助けてくれたんだよね。

 そしてその手先を送り込んできて美春を、千代子を……すみれを危ない目にあわせて」


 マキャファートの言うことの端々にはトゲがある。そして少し歪曲している。



「考える暇がなかったよね。

 なら今日、考えてみよう。

 これからのことも」



 マキャファートはそう言い残し部屋から出た。

 部屋から出ると眼鏡の黒服が突っ立てた。

 マキャファートは眼鏡の黒服を避けて通ろうとしたが通せんぼうをした。


「退けよ」


 眼鏡の黒服は依然として動かない。


「会談は終わった。退け、腰巾着」


 マキャファートがそう吐き捨てると眼鏡の黒服はそっと身体を壁に寄せた。

 マキャファートはつかつかと廊下の真ん中を歩いた。








 マキャファートが去った後、部屋は静まり返っていた。


「…………これで、会談は終了ですね」


 口を開いたのはヴィルだった。


「あの、これは一体なんなんですか?」


 美春はアイラに訊いてきた。


「ネズミは会談を仕掛けてきて、今帰った」

「そういうことじゃありませんっ!」


 美春の語気が強くなった。

 それもそのはずなぜチームの分裂を唆すようなことをしたのか、美春はわからなかった。


「志穂ちゃんなぜ?」


 今度は莉音が志穂に訊いてきた。


「…………」


 志穂は黙りこんだ。無駄に話せば事態がややこしくなる。


「アイラさんは私と志穂ちゃんにとって敵だった。でもそんな遺恨なんてない。けど、」

「マキャファートの国を侵略したから?」


 志穂はある程度予想をしていたことを口に出した。


「そうじゃなくてっ!いやそうだけど……でも、その」


 莉音はなかなか言葉にできなかった。

 その言葉にできない莉音に代わり美春がアイラに訊いてきた。


「なぜ、侵略したんですか?」


「機密事項だ。答えられん」


 アイラは答えなかった。


「本当に侵略したんですか?」

「だから、答えられん」


 美春、千代子、すみれにとってはすでにアイラとの部隊と戦闘は始まっていた。

 その戦闘の始まりは莉音と志穂にあった。

 莉音の言い分にはアイラがマキャファートの国を侵略したから、だからアイラと敵対した。

 でも実際にはアイラに深い敵対心はなかった。

 同じく巻き込まれるように敵対した志穂もアイラに深い敵対心はない。

 どちらかというとマキャファートに猜疑心はある。

 はたして、本当にマキャファートの言う通りに侵略があったのか。

 もしそれが虚偽なら莉音が魔法少女になった、アイラと敵対したことの前提が崩れる。


「答えられないなら仕方ないです。けど、約束はしてください。もう戦闘はしないと」


「それは約束できん」

「何故ですか!」


「おそらく、戦闘はまだ続くだろう」


「そんなっ」


 美春は絶望な気持ちに堕ちた。そこには今まであった屈託のない輝かしい無邪気な笑顔はなかった。

 戦闘が続けば衝突があるだろう。そして魔法が魔法少女が必要になるだろう。


「貴公ら、一度決を採れ。ネズミに付くか否か」


 アイラは魔法少女たちの仲を崩壊させるわけではないがはっきりさせた方がいいと思った。

 

「アイラさんはまだマキャファートを狙うんだよね」


「……そうだな」


 莉音が口を開く、その思いは


「だったら私は魔法少女でいるよ」


 莉音は強く出た、はっきりと言葉にしないもののマキャファート側に付くと。


「私も莉音さんと同意見です」

「…………」


 美春も莉音と同じと言い、千代子は無言ながらも美春の肩に手を置いた。美春、千代子もマキャファート側に付いたというわけか。

 それをにわかに信じがたく思う志穂はすみれに問う。


「すみれはどうなの?」


「わ、私は…………わからない」


 すみれは決めきれなかった。さすがにこれをゆとりだと決めつけてしまうのは違うだろう。


「そう、別に今決めなくていいのよ」


 そう言って志穂は優しくすみれの肩に手を添えた。

 しかしこれで志穂とすみれはマキャファートと離反する側についたようなものだ。

 莉音、美春、千代子と志穂、すみれで対立したようなものだ。


「……、ヴィル帰りなさい」

「…………はい」


 アイラはヴィルを帰した。

 アイラは決を採らした責任として訊いた。


「貴公らに意見の違いはあるだろう。だがそれが貴公らになんだというのだ」


 魔法少女たちはアイラを見る。言葉は発しなかった。


「貴公らは女子中学生だ。それに夏休みだろう。変に構える必要はない」


 きっとアイラは、意見の違いで仲違いするようにはなってほしくないと言ってるのであろう。

 きっとその程度で壊れる仲ではないと確信しているから。



「青春をしろ。魔法少女たち」







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