経験値のかけらを得る方法
アイラは次の作戦に出た。
マキャファートからの交渉の電報は受け取ったがそれを放置した。
条件を呑む必要はないからだ。
呑まずに何とかせねば。
「やはり、各個撃破か」
各個撃破、チームで戦う魔法少女にとっては痛いところを突かれる。
そもそも、戦隊ものと同じく5人で一つという部分があるからだ。
ロール、つまり役割がある。
回復役、近接役、妨害役、遊撃役、戦略役、と五つある。
この中で一番厄介なのは回復役、莉音だ。
莉音の回復魔法は永久機関であり、到底役割破壊は不可能である。
戦略役のすみれも曲者である。
すみれの魔法はMADボムと言われる大量広域破壊爆弾、一度でも爆発すれば尋常ではない被害を被る。
この二人は、無視出来ない程危険である。
だが、敢えて無視する。
何故ならば、莉音は攻撃しない。
すみれも攻撃しないし簡単には爆発しない。
無視出来ない程危険であるが無視出来る程確実である。
「であるならば、」
妨害役の美春、遊撃役の千代子は攻撃する。
美春は麻痺など状態異常。
千代子は持ち前のスピードでの動きやすさ。
単純な攻撃方法ではない。
「やはり、」
近接役の志穂は攻撃する。
美春や千代子のように複雑な攻撃方法ではない。
敵に近付いて、刀で斬る。
単純な攻撃方法だ。
気を付けなければいけないのが連撃である。
連撃すれば、するほど与えるダメージ量は増える。
要は連撃を止めてればいい。
「連撃を回避しつつか……」
アイラは次の刺客を送る。
もう、二度とイルヴァのように部下を失いはさせない。
「イルヴァが稼いでくれた時間を無駄にはさせない。絶対に!」
アイラの軍は開発に成功した。
マキャファートが使う電磁フィールドを人工的に発生させる。
その装置を。
しかし、マキャファートのように広大ではない。
でも、魔法は使える。こっちにも。
「頼むぞ、ヴィル」
「……イエス」
志穂は天月町にいた。
自分が住んでる町である。
天月町には大きな広場がある。
広場には噴水があり、緑もあり、広場の近くには川が流れてる。
広場のベンチに志穂はうなだれるように座っていた。
「……はぁ」
志穂は少し落ち込んでいた。
最初に莉音と一緒に魔法少女になった。
が、後から入ってきた美春、千代子、すみれに比べ劣っている。
自分の能力、存在に疑問を抱いてた。
果たして自分は必要だろうか。
「経験値も上がんないし」
経験値を上げるには、経験値のかけらが必要である。
その経験値のかけらはどうやって出るのかわからない。
経験値が上がらなければレベルも上がらない。
このままでは、志穂は最初に魔法少女になったものの最弱の魔法少女である。
「…………経験値のかけらの出現方法を知らないのか?」
「っ!?誰?」
「…………私はヴィル、お前達の敵だ」
「っ!?」
志穂はすぐさま構えた。けれど、マキャファートが電磁フィールドを展開してないので魔法少女に変身できない。
「…………まっ、そう焦るな」
「敵が私に何か用?」
「…………お前に交渉にきた」
「交渉?私に?」
「…………お前達にいるあの大爆発を起こす魔法少女……どう思う?」
「どっ、どうて……」
「…………危険だとは思わないのか?」
「それはもちろん思うわよ。でも、どうしろっていうのよ」
「…………殺せとまでは言わないが、使わせないようには出来ないか?」
「使わせないって、すみれに魔法は使うなって言うの?それともすみれを魔法少女にさせないとかチームから外せとでも!?」
「…………そのどちらでも構わないができれば確実なのを希望する」
「そ、そんなの……私には無理よ」
「…………それは残念」
「持ってしまった以上ちゃんと捨てる、いやちゃんと付き合う。その方法を考えずに持ってしまったから……とても難しい」
「…………ところで、本当に経験値のかけらの出現方法を知らないのか?」
「知らないわよ。何、あなたは知ってるの?」
「…………経験値のかけらの出現方法は……」
「…………ちゃんと負けることである」
「は、はぁ?どういう意味?」
「…………勝って経験値が上がるのではない。負けて経験値が上がるのではない。」
「いや、どっちよ!矛盾してるじゃない!!」
「…………負けて這い上がる。その者に経験値のかけらは与えられる」
「負けて這い上がる?」
「…………だから言っただろ。ちゃんと負けることであると」
「いや、何となくわらんない。勝って経験値を得られないの?」
「…………勝利には種類がある。横綱相撲での勝利が『勝利』だというのもあれば、そんなことをしてでも勝ちたいのかという『勝利』も」
「……ちょっと、具体例とか出して」
「…………例えば試合で相手と戦うとき、相手の飲み水に毒を入れ万全の状態にはさせなくする。相手を轢いて足に怪我をさせる。
そんな状態で試合をする。もちろん怪我をした足を狙いながら攻撃する。体調が万全ではないため防御も万全ではない。
それで、勝つ。果たして勝ってどうだろうか?後味の悪い勝ち方をして」
「いや、それルール的にダメでしょ」
「…………いや、ダメじゃない」
「なんでよ!」
「…………試合のルール上問題ない、あるとしたら大会のルール上に問題ある」
「?どういうことよ」
「…………試合のルールは試合開始ともに発動される。しかし試合前のことは試合のルールには適用されない。されるのは大会のルールだ。例えば大会期間中は相手の宿舎に出入りしてはいけないとか」
「なるほどね、飲み水に毒を入れたのは本人じゃなくて取り巻きの誰かというのもありえるし」
「…………そこまでしてでも勝ちたい勝利には誰も賛同など得られない」
「だから、ちゃんと戦って、ちゃんと勝って、……ちゃんと負けるのね」
「…………そうでなければ、本物は、経験値のかけらは得られない」
「……そう、そうなの」
「…………だから、お前は」
パァァと白い電子的な粒子が広場いっぱいに舞い踊り電磁フィールドが展開された。
「…………ちゃんと負けるべき」
「ん?」
マキャファートは感づいた。
アンテナが反応した。
マキャファート自身が出す電磁フィールドとは気色の違う感じがした。
「どういうことだ?」
マキャファートは謎に包まれていた。
何となく自分の出す電磁フィールドとは似ているが何かが違う。というより、劣化コピーのような気がした。
「まさか、ヤツラが……。まさかな」
だが、マキャファートの杞憂にはならなかった。
そのまさかになったのである。
イルヴァが稼いだ時間。
電磁フィールドの開発に注いだのだ。
その事をマキャファートは知らない。




