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レベル255の魔法少女  作者: パラドックス
第一章 魔法少女たちのロール
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背後で爆発音

 千代子とすみれは離れていくイルヴァを追っていた。すみれは千代子のスプラッシュジャンプで水面を跳んでいる。

 すみれは魔法少女に変身しているが魔法はまだ使えない。何故ならばMPが9回しかないからだ。不用意に魔法は使えない。

 千代子は魔法少女に変身しているが攻撃魔法を使っても届かない。何故ならば基本殴ることが攻撃魔法なのだ。飛道具もない。

 イルヴァは水面を跳んで後退していた。新長門から遠くへ離れていく。とても遠くへ離れていく。そして止まった。

 止まったかと思うと今度は海中に潜り込んだ。

「やまった!海中に潜られた」

 千代子が奥歯を噛みしめながら言った。

 千代子はアースブレイクを持たない。故に海中に潜り込まれると打つ手がない。千代子はフロートフットにより太平洋上に浮遊している。潜ることは出来ない。

 すみれは千代子が高く跳躍しないと魔法を出せない。というより出さない。出すことを許されてない。二人とも打つ手なしだった。

 イルヴァが海中に潜り込んで少し、ゴゴゴという低い唸り声のような音が海上に響いた。その直後、地震いや海震が起こった。

「な、なんだ?」

 千代子は嫌な予感をしていた。丁寧にも嫌な事が起こりそうなフラグを次々と立てていた。そして、そういう嫌なことは当たるもんだ。

 千代子とすみれが何もできずにただ何かを待っていると、ザザザと二人を囲うように数メートルの水柱が立った。千代子とすみれは逃げられない。

 数メートルの水柱が立ったあと、イルヴァが海上に浮上してきた。

「これで潰す」

 イルヴァはそう宣言すると高圧の水が放出する腰に巻いた射撃物を二人に向けた。

「千代子、すみれ!今だ!跳べ!!」

 すみれのスマホからマキャファートの声が聞こえた。それと同時に千代子はスプラッシュジャンプで海面を大きく跳躍し、ダブルジャンプで空中を大きく跳躍した。

「上に逃げるか」

 千代子はダブルジャンプで水柱を跳び越えた。その刹那に共振システムを解除しすみれをイルヴァ目掛けて落とす。千代子はすみれを落としたあとイルヴァとの距離をとるためスプラッシュジャンプで後退した。再びイルヴァの術中に嵌まらないためにも…………。




 すみれは千代子から共振システムを解除されたあと自由落下によってイルヴァに向かって落下していた。

 そしてすみれはマキャファートに言われた通りに『魔法』を使う。イルヴァとの距離を目一杯詰めて。その距離はほぼゼロ。





 イルヴァは少し焦った。海中に沈み込ませた高圧の大量の水が円周を描くように放出する射撃物が千代子には空振りした。

 二人の退路を断った後に海上からは高圧の大量の水を放出するつもりだった。状況が悪ければ海中に潜り込んで逃げ、それから有利に運ぶように海上に再び浮上する。

 そういう運びだったが、仕方ない今は目の前の敵に集中する。

 イルヴァはすみれを向かい撃とうしていた。





 マキャファートは志穂と一緒に戦艦新長門にいた。マキャファートの指示で上手く事を運んでいた。指示通りにいっていたなら今この瞬間千代子はスプラッシュジャンプで逃げてるだろう。すみれはイルヴァの目の前で魔法を使っているだろう。

 全てはマキャファートの計画通り。





 莉音と美春は魔法少女に変身していた。電磁フィールドが展開していたのもそうだが、志穂からメールで戦闘が始まったと知らされていたからだ。

 それまでの二人は莉音が一方的にイチャイチャしていた。それを美春がうざがっていた。

「みはるん。どう?」

「わかりません」

 莉音と美春は航空母艦新信濃にいた。ここからじゃイルヴァはどこにいるのかわからない。戦闘の状況が全くわからないのだ。

「でも、一応莉音さんは防御魔法をしてください。それと回復魔法も」

「うん、わかった」

 莉音は念のために常時防御魔法と回復魔法を展開していた。MPは1844京6744兆0737億0955万1615と表示されている。これでも一応減ってはいる。

 しかし減っている数が1より低い数字で減っているために、まるで減ってないように見える。MP表示は1の位しか表示されないからだ。

「皆さん無事だといいんですけど」

 美春は心配した。何か嫌な予感がするからだ。





 志穂は不安だった。

 自分は共振システムがない。それはいいとして、甲板に出ているもののイルヴァの姿が見えない。戦闘がどうなっているかわからない。

 迂闊に新長門を進めさせて探しに行くのはやはり危ない。どうしたものかと悩んでいた。

 志穂はマキャファートのほうに向いていった。

「今どうなっているの!?」

「…………信じるしかない」

 マキャファートはそう意味深な言葉を言って煙に巻いた。


 その刹那、後で大きな爆発音がした。志穂は驚きながら振り返った。






 すみれはゼロ距離でイルヴァに魔法を使った。

 その一瞬世界は終わった。否、始まった。

 オレンジ色の一閃が目を覆う。

 オレンジから血のように真っ赤に染まった。

 真っ赤に染まった火球が目を覆うと今度は全身を覆った。

火球は次第に膨れ上がり人工のミニ大陽になる。

 赤、赤、赤、赤、血、血、血、血、死、死、死、死。

 死の閃光があたりいっぱいに拡がると、ようやく遅れながら耳を劈く轟音、いや爆音が轟いた。

 海上で死の大陽が拡がり続けると同時に放射状に拡がる一閃の衝撃波が海上を襲い津波を創る。

 白、白、白、白、血、血、血、血、死、死、死、死。

 白い波飛沫、泡飛沫、血飛沫が混ざり、真っ白の死の真円が拡がり拡がり、拡がり続ける。

 同瞬間、爆発によって爆風の勢いが圧が押し退け押し潰す。

 その皺寄せは海水に渡る。海水は軽く600メートルは越える水柱が立っていた。水柱は真円の円周を沿うように天高くそびえ立ち、泡白い水飛沫が水蒸気が巨大ドームを造っていた。

 巨大ドームの水柱はみるみる高く上がり上がりきるとドームの屋根を突っ切るように黒煙が黒雲が現れだした。ブラッククラウンだ。

 大気中での莫大な熱エネルギーの局所的且つ急激な解放が起こり上昇気流が生じた。

 熱、熱、熱、熱、圧、圧、圧、圧。

 上昇気流が外気を巻き込み天国へ逝く。逝く。行く。

 なかには天国へ逝けないものもいる。そんなものは漂う。ドームの屋根を内から這う。這っては逝き、這っては逝きを繰り返し回転し雲の火球を創る。

 気化、気化、気化、気化、忌化、忌化、忌化、忌化。

 大陽は昇る。急に昇る。急上昇する。急上昇するとともに冷却する。気化した物質や周囲から吸い込んだ水蒸気が凝結し、ドーナツ状の還流運動をする雲の塊が舞い踊る。踊り子は二人いた。

 もくもくと白煙は立った。雲雲と黒煙は立った。雲の柱だ。

 火球が上昇、それは圧勝であった。圧昇であるが故、忌圧が気圧差から大量の空気が乱入闖入し、水蒸気を含んで上昇。雲の柱だ。

 上空に達すると冷却され、水平方向に粒子が拡散し拡散し拡散し、重力に負ける。雲の柱だ。

 キノコ雲だ。

 軽く200万トンは越える水柱が水飛沫が霧散し無惨にもキノコ頭が現れた。

 キノコ雲は天高く昇る。だが、海水蒸気は留まる。漂う。水蒸気は雲になる。

雲、雲、雲、雲、苦も、苦も、苦も、苦も。

 雲はキノコ雲のスカートになった。

 キノコ雲の頭は黒かった。

 黒、黒、黒、黒、雲、雲、雲、雲、苦も、苦も、苦も、苦も。

 キノコ雲の高度が軽く40キロを越える更に超える。キノコの笠も100キロは越す。超す。殺す。

 火球は強い上昇力を持っているため積乱雲と同じように雷や雨を伴い黒い雨が降る。

 雲中、雨中に血と肉片の残骸や塵などが含まれる。

 即死だった。

 爆死であった。

 生き火葬だった。

 衝撃が走った。

 衝撃波が走った。

 ようやく空振が鳴り空気が震える。降る得る。

 そっか、これは現実だ。そう思うと耳は劈かれたはずなのにゴゴゴと空気は鳴いた。

 恐ろしいことだが、核融合はしておらず爆発しただけだった。


 それが私に何だというのだ。






 甲板上にいた志穂は爆風によって艦内に吹っ飛ばされた。

「ぅぎゃあああ」

 幸い海に落とされず、艦内に吹っ飛ばされたが全身を強く打った。全身に激痛が走る。呼吸も苦しそうだ。

 爆発は爆熱より爆風が危険だ。

 志穂は全身の痛みに苦しみながら気を失った。





「きゃああああ」

 美春は新信濃の甲板にいたが遥か遠くからやってきた爆風によって吹っ飛ばされた。幸いにも海に落とされず艦内に留まった。

 莉音はまったく微動だにしなかった。莉音の前では爆風でさえ消滅するのだ。

「みはるん!!」

 莉音は美春の名前を叫び美春に駆け寄った。





 閃光、津波、水飛沫、水柱、爆熱、爆音、爆風を全て目の前で千代子は受けた。

 千代子は水切りをする石のように海上を数回跳ねた。

 そして気を失った。だが、千代子にはフロートフットがあり海上で浮遊していた。

 千代子は太平洋上に一人、浮いていた。






 マキャファートは甲板上にはおらず艦内にいた。マキャファートも爆風に巻き込まれたが志穂のように気を失ったことはなかった。

 魔法少女の状態異常は麻痺以外にもある。

 気絶だ。あくまで状態異常であってHPが0になったわけではない。

「くくく、やっぱり。やっぱりすごいよ!すみれ!これが、これさえあれば勝てる!」

 マキャファートは笑った。勝利を確信した。

 いまだこのネズミは底が見えない。掴めない。



 そして、物語は分水嶺に入る。

 もう、戻ることは出来ない。






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