MP1844京6744兆0737億0955万1616もあれば永久機関!
1844京6744兆0737億0955万1616。この数字はレベル255の魔法少女のMPである。レベル255という最高レベルの魔法少女であるが故の数字で最大数値である。しかし、最高レベルであっても最大数値であっても最強ではない。この魔法少女は、攻撃魔法を持たないからだ。攻撃魔法を持たないのは、少女の性格から起因してるのであろう。
これは、そんな優しくもおぞましい魔法少女の物語である。
雲一つない澄みきった青空の下、二週間前に中学二年生になった莉音は友人である志穂と一緒に下校していた。
「ねぇ志穂ちゃん、ちょっとスタダに寄ってかない?」
そう言って莉音は志穂を誘った。スタダはスターダストコーヒーの略で珈琲店である。最近日本に上陸したということで中高生の間ではトレンドになってた。
「そうね、ちょっと寄ってみようかしら」
そう志穂は返し、二人はスタダに向かった。下校の寄り道として、珈琲店に行ってコーヒー一杯飲む。いたって普通の80年代女子中学生の日常だ。
二人がスタダに向かう途中に空から一筋の光線が二人に向かって落ちてきた。その光線から一体のネズミが現れ出てきた。黒い円錐形の耳ゴツゴツとした躯黄色と黒の縞模様の尻尾。ミッ〇ーとピカ〇ュウを足してドラ〇もんで割って機械をラッピングしたようなネズミだ。そのネズミが二人にこう言った。
「助けて!悪いやつに追われてるんだ」
いきなり空から落ちてきて発した第一声がそれだ。二人は何が起きたか訳もわからず目を丸くしてた。
「君!魔法少女になって僕たちを助けて!」
そう莉音に向いてネズミは懇願した。
「えっ魔法少女って」
「魔法少女になって悪いやつら倒して欲しいんだ。君ならすごい大魔法少女になれるよ!」
莉音はそう言われても何がなんだかわからなかった。けど、何か危ないことはを感じることはできた。このままでは、いけない。そう思い莉音は心を決め、ネズミに訊いた。
「どうすればいいの?」
「まず、これを持って変身アプリを押して変身すれば魔法少女になれるよ。あっあと横にあるのが電源ボタンね」
そう言って渡されたのは、四角い物体。まるで、ブラウン管テレビを薄く小さくしたような四角い物体だった。
莉音は言われた通りに横にある爆弾マークのボタンを押した。すると真っ暗な画面が明るくなり小さな四角いマークがいくつも羅列していた。そこに丸みを帯びた矢印が上下二つ逆の方向を向いてたマークがあった。
それを直感で変身できるものだと莉音は思いそのマークを押した。
すると謎の光が莉音を包みいつの間にかフリフリスカートのピンクコスチュームに着替えてた。
「えっえぇええ何?何なの」
あっという間の出来事で状況が把握できないでいる。
「それはコスチューム。君のね」
そうネズミが説明した。
「ちょっとちょっと待って、ねぇこれはどういうことなの?」
それまでことの成り行きを見ていた志穂が口を開いた。
「魔法だよ魔法」
ネズミは簡単に答えた。簡単に理解できないことを。
「あっそれと君の上に表示されているバーは君のMPね」
莉音は自分の上を見た。そこには、緑色の長いバーと数字が羅列していた。
「君のMPは…すごい!1844京6744兆0737億0955万1616もある‼」
「「えぇええーー」」
二人は声をそろえて叫んだ。あまりにも巨大な数字に驚嘆したのだ。二人はロールプレイングゲームを知っている。この時代ファミコンブームであのゆくゆくはビッグタイトルとなるRPGが出ててある程度のシステムはわかっていた。というより似ていた。
「あれっ?HPがない…」
気付いたのは志穂だった。
「えっ私って死んでるの!?」
「いやっ違うよ。正確にはHPは体力や生命力じゃなくてヒットポイントだよ。だから仮にHPがあったとしてHPが0になったとしてもそれは死んだことにはならない戦闘不能とか気絶だよ。そして、君はHPというものが存在しないだけだよ」
「存在しない?」
「存在しないが故にダメージがない。攻撃が効かないというより攻撃の事象が消滅する。君は最強の絶対不沈艦だよ」
「「…………」」
二人して絶句する。倒れないということの本当の強さに圧倒されている。そこでふと、志穂は一つ疑問に感じた。
「じゃあどんな攻撃が莉音にはできるの?」
「いや、彼女には攻撃魔法は持ってないよ」
「「えっ!?」」
二人して驚いた。倒れはしないけど攻撃はできないこれは一体どういうことか?
「彼女は回復魔法と防御魔法の二つしか持ってない。でもこれでも十分強いよ。回復魔法は魔法で破壊されたもの回復できる。仲間のHPだって全回復できる。そして防御魔法は仲間の残HPを上回るダメージを受けるさいに必ず1だけ耐えることができる。このふたつを駆使すれば永久機関にだってできる」
「「…………」」
またしても二人は絶句する。倒れないことの本当の強さ。それすなわちギブアップゲーム。ギブアップゲームは敗者を決めるゲームであり勝者はいない。このゲームのルールは簡単、どちらが諦めるかだ。つまり諦めたほうが負け。負けと認めたほうが負け。その負けを認めさせるには相手にこいつには絶対勝てないと思わせること。そうやって心を折る。絶望的に圧倒的に。
永久機関が相手ならどうやって勝てるだろうか。いや勝てない。いつかわからないが諦めるまで続く。永遠に。
「まぁでも長く時間をかけるよりさくっと片付けたほうがいいよね。ところで君もなってみないか?魔法少女に」
そう志穂に向かって言った。
「えっ私が魔法少女に……」
志穂は考えたが……
「なろうよ志穂ちゃんも」
莉音が魔法少女になろうと誘ってきた。志穂の回答を待たずにネズミは四角い物体を志穂に渡した。
「はいっ。これはスマホと言うんだこのスマホの横にある電源ボタンを押して変身アプリを押せば変身できるよ」
そして、志穂は意を決してスマホの変身アプリを押した。すると謎の光が志穂を包みフリフリスカートのブルーコスチュームに着替えた。
「おお、志穂ちゃんかわいい」
「そっそう?」
志穂は莉音に誉められるとふいに上を向いた。そこには自分のステータスがあった。
「レベル2!?HP112!?MP159!?えっ私のステータス低すぎ」
「まっ格差だね。よくあることだよ」
そうネズミがバッサリと言った。
「よくあることなの!?」
「当たり前だよ。生まれながらスタート地点が違うのにさ」
「うう。じゃこれどうやってレベル上げるの?スライム出るの?経験値どのくらい必要?」」
「レベル上げたければ経験値を貯めること。経験値は数量じゃなくて個数だから、経験値のかけらが必要だね」
「経験値のかけら!?なにそれ!?ってか数量じゃなくて個数!?なんで!?」
「ちまちまスライムを10年倒し続けて得たレベル100とさくさくといろんな強敵を10ヶ月で倒してきたレベル100とは一緒にしないでもらいたいね。価値が違うから。だから数量じゃなくて個数」
「じゃ経験値のかけらはどうやって手にいれるの?」
「さぁ、わかんない。恐らくそれは君が知っていることだと思う君の経験によるからね」
「わかんないって……」
「ちなみに君は攻撃魔法はあるよHPも存在するしね。」
志穂は腑に落ちないもののなんとか納得しようとした。
そして、ネズミは二人の前に出た。
「僕はマキャファート。悪いやつに追われてここまでやって来た。そんな悪いやつを倒すため君たちの力を借りたいお願いだ」
マキャファートは頭をぺこっと下げた。
そして、二人は声を揃えて言った。
「「もちろん!!」」




