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女王様のオマケ  作者: 神無月 愛
第二章  この世界を知ること
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第五話 「却って平和なのかも知れないね。」

 そんなこんなで種族のことを知って数日。意識して周りを見回してみて知ったのは、人族(レン)というものが意外といないのだということ。

 ただし、それ言うならどの種族も純粋な血統は少ない。けれど他の種族間の混血児はだいたい中間の特徴が出るのに対して、人族との混血では動物の特徴が出ないことはまずありえない(特徴が薄くなることはあるが)。そのため、何の特徴も持っていないのは限りなく純粋に近い人族のみであり、結果としてとても少なく見えるのだ。メイドのキャシーさんもパティさんも、少なからず人族の血は引いているらしいけど見た目で獣人だって分かる特徴あるもんね。

 種族の話をして以来、キャシーさんは尻尾をそのまま垂らして歩くようになった。わたし達の感じ方がとりあえず分からないので一応隠していたらしい。と言ってもメイドさんの衣装はロングスカートなので、今までとたいして変わらないけど。パティさんはボンネットの中に押し込んでいた耳を出すようになった。他のメイドさんや、騎士さんの一部の人達も。思った以上に色々な人がいて、見ててちょっと楽しい。

「ああ、ロブくんのその毛束ってタレミミだったの?」

「はい。私は兎族(トゥズ)ですので。」

 うさぎね。確かにどことなく小動物っぽいわ。その時わたしの脳裏に浮かんだのは、どこか気弱そうな目をした赤茶色のドワーフウサギ。もちろん彼らは完全な動物の姿に変身できるとかそんなのは無いけど、もしうさぎバージョンの姿もあったらこんな感じなんだろうなって。うう、撫でくりまわしたい……いややらないけど。

「お二人のいらした世界には、人族しかいないのでしたよね?」

「うん。人種の違いも、肌や髪や目の色が違うくらい。体型の違いも多少はあるけどベースは一緒だし。」

 わたしは、ちょっと色が違うだけで差別が起こってきた人間の歴史を思う。こんなに色々違いまくる世界のその辺の事情ってどうなってるのかしら。

「種族も男女も、個人差の前では無意味な事です。」

「そうなの?」

「ええ。同じ種族、同じ性別だからといって同じことができるとは言えませんし。人それぞれ自分の能力に合ったことをすればいいのです。」

 女より男の方が力があるとは限らないし、同じ種族でも同じ特徴を持っているとは限らない。混血と純血で獣の特徴の強さや霊力に差が出る訳でもなければ、同じ日に生まれた兄弟でさえ同じ能力ではないこともある。例外だらけのこの世界で、種族や男女といった大きな括りは殆ど意味をなさないのだ。

「ここまで人それぞれバラバラだと、却って平和なもんなのかも知れないね。」

 ある程度「同じ姿」がいてまとまれるからこそ、「違う姿」を排斥しようという動きが生まれるのかも知れない。

 それに、これだけ見た目が様々なら、感じ方や考え方が違っても当然って思えるもの。人間というものはどうやら「同じ集団に属しているのに皆と違う」というのを極端に嫌うようだから。自分と違う、理解し難い人を見ると、人は何かしら自分と違う理由を見つけて安心しようとする。これはただのわたし個人の自論だけど、今までのわたしの人生、たった二十年ぽっちでもう思い知ってる。

「もうっ、スーちゃんってば! 沈んでる沈んでる戻ってこい!」

「……っと、危ない。」

 頬をぷにっと両手で挟まれて、わたしはなんとか我に返った。最近、わたしの思考回路が負の方向へ転がり出すと、歌鈴が敏感に察知して止めてくれるようになった。うーん、自覚が出てきた途端、鋭くなったわね、次期女王様。姉たるわたしもしっかりしなきゃ。

「セーフ。ありがとリンちゃん。危うく負のスパイラル突入して奈落の底突き抜ける所だったわ。」

「落ち始めてから底に着くまでが早すぎない!?」

 まずいなー、ツッコミポジションまで取られてしまっては、わたしの立場がないぞ。

「このままではわたしの存在意義というものが……。」

「いやっそんなこと言わないで! 存在意義あるからぁ!」

「いいのよリンちゃん、気を遣わないで。わたしなんて所詮、王位継承権もないただの人だから。」

「スーちゃんってば!」

 ちょっと芝居がかった調子で言ってみたら、涙目で怒鳴られました。ちょっとおふざけが過ぎたみたいです。

「ごめんなさい歌鈴さん冗談です。」

「冗談でも言っちゃ嫌だ……ぐすっ。」

 この子を泣かすと面倒なのは分かり切ってるんで、もうしません。ってか、こんな悪ふざけして妹泣かせている場合じゃないんだってば。わたしのアイデンティティーの問題は全く解決していないんだから。

 ようやっと機嫌を直した歌鈴が国王夫妻のもとへ呼ばれて行き、ひとり部屋に残されたわたしは、今度こそ本当に負のスパイラルに吸い込まれて奈落の底を突き抜けていってしまったのだった。

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