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Death Simulator -注)これはデスゲームではありません  作者: kouzi3
第1章 ~チュートリアル
13/41

(13) チュートリアル<7> レベルアップ・クエスト

・・・



 「それも絶対ダメだよ!ルーは認めないからね!」



 う~ん。とアスタロト6は困り果てる。


 取りあえず、経験値の貯まり具合は別として…レベル的にはイシュタ・ルーの方が上だということが分かったため、アスタロト6はイシュタ・ルーとパーティを組んだ。その結果、マッド・スライムぐらいなら、息の合ってきた二人のコンビネーションで何匹ポップしようとも、あっという間に退治できるようになってきた。


 ということで、余裕ができてきてからは、アスタロト6の名前をどうするか…という話題をしながら「村長の姉の魔法使い」=「レベルアップ認定試験の試験官」を探す旅を続けている。


 「…どうしてダメなのさ?もう100個ぐらいボツになってるけど…」


 マッド・スライムをやっつけては名前候補を言い。ボツにされては、またマッド・スライムをやっつけるという繰り返し。誰かに売ってあげたいぐらいに経験値が貯まっていく。CPも結構貯まったような気がする。


・・・


 「そうですよルーさん。救済措置をどうするか決まったっていうから来たのに…全然、決まってないじゃないですか」


 そうなのだ。アスタロト6が名前を変更しても良いと決心して、ジウにそれを告げるようとシステム・コールを送ると、すぐさまジウが駆けつけてきたのだが…


 「私がどれだけ全力で走ってきたと思ってるんですか!?…もう、汗だくだくですよ。本当にもう。ちゃんと決まってから…そして、お使いの村に帰ってきて呼んで下さいよね。この広い『初試練の平原』のどこにいるのか…もう、探すだけで大変だったんですからね」


 そういえば、「おつかいの村」でアスタロト6だけが村役場の外に出現してしまった時も、ジウは村役場方面から走ってやってきた。どうやら、システムの担当たちは、どこへでも自由に出現できるというワケではないらしい。


 「もう、適当に『ちょんまげ・ボンバー』とかにしとけばどうです?」


 ジウが投げやりに言うと、イシュタ・ルーが


 「ダメ、ダメだめだめだめ…駄目っていってるでしょ!…んもう!」


 また怒り出す。


・・・


 「う~ん。動物系もだめ、魚類系もだめか…。じゃぁ、やっぱり初心に帰って神話系だよなぁ。悪魔の王ルシファーとか、格好良いかな?」とアスタロト6。

 「駄目」とイシュタ・ルー。

 「じゃぁ、ベルゼビュート…だめ?…ベルゼバブ…も駄目?」

 「駄目だめ」

 「…とすると…中傷者…ディアボロス…なんかはどう?」

 「…おしい!でも駄目」

 「おしい?…おしい…って何さ」

 「いいの!…はい、次。つぎ!」


 「では、サルゴン…とかはどうです?イシュタ・ルーさん」とジウが口を挟む。

 「う~ん。………ちょっと心が動くけど…でも、駄目!」

 「では、ドゥムジは?」

 「はぅ。魅力的な提案だけど………やっぱり駄目!」


 ふむ。「サルゴン」は、女神イシュタルに見初められた全世界の王の名だ。それから「ドゥムジ」は…確かイシュタルの愛人として神話に語られている男神だ。やっぱりイシュタ・ルーは、女神イシュタルをモデルに決めた名前なのかな?


・・・


 アスタロト6は、自分にその気はないものの…ひょっとして?と思う名前を尋ねてみることにした。


 「えっと。アスタルテとかアスタルトは、駄目だよね?念のための確認だけど」

 「駄目に決まってるジャン!…性別女だし…あたしと一緒の人になっちゃうよ?…い、一心同体ってのも魅力的かもしれないけど…やっぱ駄目!」


 むむむ。やっぱりこの女、神話にかなり詳しいぞ…。と思うアスタロト6。


 「そうかぁ…じゃぁアシュタロトも駄目かぁ…」

 「はぅ!…そ、それは…かなり…良いかも!…ロトくんが、それで良いなら…」


 な、なんだ?…アシュタロトだって女神…あ、いやアスタロトと同じ悪魔の名としてアシュタロトっていう表記もあったかも。アスタロト6は記憶を手繰る。…なるほど、悪魔系のアスタロト繋がりならいいのかな?…そういえば、アスタロトのギリシャ語名のディアボロスには「おしい」って言ってたもんな。


 「じゃあ、アスタロスとかアシュタロスにしようかな?」

 「駄目ダメだめぇ~。どうしてそうなるのよ。だったらアシュタロトで良いよ!」


 はぁ?…なんだ?…イシュタ・ルーの中の判定基準が分からない。アスタロト6は頭をひねる。


・・・


 その後も「40の悪魔の軍団を率いる強壮な大公爵」とか「ソロモン№29」などの少しひねった形のアスタロトの通り名を提案してみるが「だめ」。

 「水曜日の悪魔」は、召還されるという印象が手先みたい?…だから駄目だし、「地獄帝國大主計」は堅いイメージがあるからアスタロト6自身がちょっと気が乗らない。

 少し迷って、アスタロトの描かれる姿から「ドラゴン・ロバ」なんてのも考えたけれど合格は貰えなかった。


 いろいろ提案して、今のところイシュタ・ルーの及第点が貰えているのは「アシュタロト」と「アステロト」。


 「…なんか、聞き間違えてたり、打ち間違えたりした連中に…すぐに見つかっちゃいそうな名前だね。二つとも」


 う~ん。【ざしゅっ!ざしゅざしゅっ!】…っと、もう蜘蛛の巣を払う程度の無意識な感じでマッド・スライムを打ち捨てて倒しながらアスタロト6は途方に暮れる。


 「ねぇ…ルーは、いったいどんな名前だったら良いと思う?」


 神話に詳しいみたいだし、いっそのことルーに決め手貰うのもアリか?…と考えるアスタロト6。


・・・


 「うふふ。ルーが決めて良いなら…そうね…『イシュタ・ロト』なんてどうかな?」


 何それ?


 「なんか、イシュタ・ルーさんの婿養子になったみたいですね」


 ジウも呆れてイシュタ・ルーを見る。

 駄目だ。やっぱり自分で考えよう。アスタロト6は、再び知恵を絞る。


 「ねぇ。ジウに聴くんだけどさ。例のSNSソーシャルネットシステムって、ユーザー名検索って前方一致?それとも、途中に含まれるワードでも検索できるの?」


 通常のネット検索は、最近は非常に優秀で、連想検索なんかもできる優れものが多いが、SNSでのユーザー検索には、そこまで気合いの入っていないようなものも多い。ある程度は名前に心当たりがないと検索できないように、ワザと機能を制限している場合もあると聞いたことがある。


 「ふふふ。良いところに目を付けましたね。我が『デスシム』のSNS『Face Blog ER』では前方一致及び後方一致のみで検索が可能です。もちろん完全一致は当然にできますね。しかし…部分一致はできない仕様です」


・・・


 なんだ、最初にそれを聴いておけばよかった。と後悔するアスタロト6。


 「じゃぁ、真ん中になら『アスタロト』っていう名前を残しておいてもいいってことだよね?」

 「そう…いうことになりますかね?」


 と…なると、自由度が一気に増すよね。「ほにゃららうんたら・アスタロト・かんたらほにゃほにゃ」とか前後に長めにカムフラージュ用の名前を付ければいいんだから。何て言うか、アスタロト6は少し興奮してきた。ユリカゴス・チルドレンのアスタは、血族名を持たない。単なるアスタだ。小さい頃に、血族名がある子どももいると知って少しだけ憧れたこともあるが…その後は血族名を持ちたいと思ったことはない。持てるはずも無いからだ。

 でも、だから今まで発想に至らなかったが、シムタブ型MMORPG内でなら、血族名付きの2節からなる名前どころか、後ろにも付けて3節以上で構成された名前を名乗ることだって自由なのだ。


 何を当たり前のことを?…と別のユーザーには思われるに違いない。だって、目の前のイシュタ・ルーだって2節の名を持っている実例ではないか?…ジウは、アスタロトと同様に1節の名前だけど…ひょっとしてユリカゴス・チルドレンかな?

 とにかく、自分の名前のことに限って言えば、今まで全く1節構成以外の名前を考えたことが無いアスタロト6だった。


・・・

・・・




 「………はい。かしこまりました。では、現在のページIDを消去し、新たなページIDに全ての情報をコピーした上で、名前を今、指定されたモノへと変更しておきましょう。私にミスなどというコトはあり得ませんが…メイン・シナリオへ進まれましたら、ご自分でも『Face Blog ER』のご自分のページをご確認ください」


 アスタロト6の名前は、こうして晴れて更新された。どんな名前を付けたのかは…恥ずかしいから今は秘密…とのことだ。悪しからず。

 ただ、3節の名前で、第2節目に今まで通りの「アスタロト」という名が入っているという形だ。


 「ということで、ずっと『アスタロト6』が仮称となっていましたが、もう『6』付けるの超~面倒臭ぇ~…とのコトですので、名前も決まりましたし正式に…え?…誰が、こんな長い名前を…?………はい。分かりました。ということで、今後は『アスタロト』で行くそうです」


 だから…誰と話してるんだ?誰と?…とツッコミたくなるアスタロト。あ、ホントだ、元に戻ってると思うアスタロト。長いのが嫌だったらいっそアスタにすれば良いのにと思うアスタロト。


 「…アスタ…にしますか?」


 だから誰からのメッセージ?…と思うアスタロトだったのだった。


・・・


 「しかし、アスタロトさん。あなたのことですから、もっと奇抜な打開策を考えて提案してくるかと思いましたが…案外…普通の解決方法でしたね。ちょっと、拍子抜けですよ」

 「いや。だってさ『全ユーザーにステータス・ロックのパスワード設定を新たに認める』ようにしろとか、『リアルネームまで知られて初めてステータスを全開示にする』とか…考えたけど…さすがにそれは無理でしょ?」


 アスタロトの問いかけに、またしてもジウの顔が悪魔そのものの邪悪そうな…でもよく見ると単なる無表情という得も言われぬ表情になる。


 「…惜しかったですねぇ。それは特定のユーザー…例えばアナタだけを優遇するようなものではなく、全ユーザーに摘要される新ルールですから…本気で提案していたら…案外、承認されていたかもしれませんねぇ」


 ニヤリ…と音がしそうに口元を歪めて声を立てずに笑うジウ。だから、お前は時々妙に怖いっちゅうねん!…と心の中でツッコミを入れたくなるアスタロト。


 「ま。次か次のメジャー・バージョンアップの際に、私のノルマの一つとしてアイデア提案に使わせてもらいますよ。ごちそうさまです」


 図々しいジウの一言に、アスタロトは呆れて怒る気もしない。


・・・


 「ところで…お二人は、こんなところで、何をいつまでもマッド・スライム虐めに励んでいるです?」


 用件が済んで帰ろうとするジウが、別れ際に不思議そうな顔で問いかけてきた。


 「え?…いや、『村長の姉の魔女』に合うクエストの途中なんだけど…俺がエリアを東京都並みに広げちゃったから、地下ダンジョンの入り口が分からなくってさ…」

 「はぁ?」

 「いや、はぁ?…って言われても。こんなに広くて手がかりも無いし…」

 「はぁ………」


 いや…今度の「はぁ」は、呆れたって感じの「はぁ」だな。アスタロトは自分がまた何かやらかしたのか?と不安になった。


 「…イシュタ・ルーさん?…アナタは1回、そのクエストをクリアしてるでしょ?何やってんですか?」

 「だって!…ルーも、広くなっちゃったから入り口の場所が分からなくなっちゃったし…」


 またしてもジウが「はぁ…」と呆れた系ため息をつく。


・・・


 「何やってんですか…本当に…。アナタたちは。クエストを甘くみたのか、メイン・シナリオへ早く行きたいと気持ちが焦っているのか…そんなところなんでしょうけど…RPGの基本を忘れてやしませんか?」


 RPGの基本?…シムゲ廃人を自認するアスタロトに今更基本を語るとは!…と憤ろうにも、もうかなりの長時間、この「初試練の平原」をうろついている実績があるから文句の一つも返せないアスタロト。


 「もう…しょうがないですね。二人とも、送って差し上げますから、一緒に『おつかいの村』まで帰りましょう」

 「え?…じゃぁ、こっちの方向じゃ全然なかったってことだ?…やっぱり」


 それに対してジウは、チッチッと舌を鳴らして指を振る。


 「知りませんよ。私だって入り口の場所なんて。…もう、すぐその丘の向こうに口を開けてるかもしれませんけど…」

 「え?本当?…じゃぁ…ちょっと走って見てくる………はぁはぁ………無かった」

 「はい。気が済みましたか、じゃぁ帰りますよ」


・・・


 …連れて帰る…と言うから期待したが…結局、3人で歩いて「おつかいの村」へ向かうだけだった。


 「私だって歩きたくて歩いてるんじゃないですからね」


 何も言っていないのに、ジウがアスタロトに向かって何度も怒る。どうやら、このゲームでは、システムサイドの担当者といえども決して万能ではないようだ。


 やっとの事で「おつかいの村」まで帰ってくると、ジウは二人を振り返って引率の先生の如く、こう言った。


 「はい。では、ちゃんと村人から話を聞いて情報収集してきなさい。始め!」


 おふっ!…アスタロトは、ここに至ってやっとRPGの基本とは何かを思い出した。そうか…「聞いて聴いて訊きまくれ!」。1に情報収集、2に情報収集…3、4が無くて、5に情報収集。そうでした。それがRPGです。


 イシュタ・ルーも頬を赤らめて恥ずかしそうに聴き込みに協力してくれて、小さな村なのであっという間に情報は集まった。…というか、イシュタ・ルーは一度この聴き込みをしたんじゃないのですか?…的な目でアスタロトは見てしまう。


 「ちっちゃなエリアの時は、適当に歩き回ってたら入り口があったんだもん」


 ふくれっ面で可愛らしく拗ねるイシュタ・ルー。


・・・


 二人で集めた情報は、こんな感じ。


 「村の東側へ向かって300mほど行くと大きな杉の木があるのじゃ」by農民A

 「最近、地面の下から変な声が聞こえてくるよ」byスリの少年(更生済み)

 「魔女の伝説を知ってるかい?毎朝、杉の木の向こうに太陽が重なるのをみて、意味もなく笑ってるって話だぜ?」by農民B

 「コケコケコケ」by鶏モドキ

 「この間、魔女のおばちゃんの家に遊びに行ったよ!おかし貰った!」by幼児

 「ワシの妹に手紙を届けてくれるってのはお前さんかい?…頼んだよ。ワシの妹はレベルアップ認定試験の試験官もやっておるから、道すがらスライムを倒して経験値を稼いでから行くと良い」by村長


 …ガックリ。な、なるほど、聴き込みをしてから行けばマッド・スライムたちが無駄な血を流すことも無かったってことなのね。…と脱力するアスタロト。


 「そういうコトです。ちなみに、アナタが殺しに殺しまくったマッド・スライムくんたちの数は1万匹弱です。あとで『Face blog ER』のご自分のプロフィール欄を見てみてください。アスタロトさんの称号として『マッド(狂った)マッド・スライム虐殺魔王』の略の『MMS虐殺魔王』と表示されているはずです」


 うお。称号システムも採用されてるのか…と仰け反るアスタロト。


・・・


 村人たちの話から入り口の場所を推理する。


 まず、幼児でも魔女の家に遊びに行けるということは、モンスターとの遭遇の可能性がやたら低い村から直ぐの場所?…っていうことかな?


 それから、杉の木の向こうに朝陽が重なるのを毎日見るわけだから…東の杉の木の向こうに朝陽が登ったその東側に延びる影の先………なんだ?杉の木よりも村の側に入り口はあるのかな?


 そんで、その杉の木は、村から東へ300mほどのところ。仮に面積拡張の影響を受けたとしても、3Km程度の距離か…。


 で、この地下から変な声が…っていうのが全然関係無い情報…のワケがないから、おそらく魔女かダンジョン・モンスターの声だと思うけど…幼児が遊びに行けるってことは、そんなに恐ろしいモンスターがいるとも思えないし…。


 アスタロトでなくても、これだけの情報から判断すれば同じ答えに至るだろう。


 「村の東。出てすぐに入り口があって…そんで、村の真下にダンジョンがある!?」


・・・


 はい。正解でした。


 ジウ的な説明によると、既に何人ものユーザーによって達成されているクエストの正解ルートであるため、「観測者の効果」によって魔女のダンジョンの入り口までのルートは確定されており、だから面積拡張以前と同じ距離…村の出口からの目と鼻の先にあるままだった。


 地下ダンジョンについても、同じ理由で広さは変わらず。というか、そもそも村の下という位置設定のため…そういう意味でも変わりようがなかったということだ。


 フィールドにあれだけマッド・スライムがウジャウジャとポップするのも、地下ダンジョンには一匹もモンスターが出ないからだ。そりゃぁ…幼児が遊びに行けるワケだね。


 では、なぜ地下ダンジョンなどと呼ばれるかというと…


 「良く来たねぇ。私を退治に来たのかい?けへへへへ」


 不気味に笑う村長の姉魔女。手紙をポケットから取り出すまで、魔法でチョイチョイ攻撃を仕掛けてくる。チョっ…アブ、危ないって。と、焦りながら手紙を取り出すアスタロト。


・・・


 手紙を読むと、急に優しい表情に変わって「よかろう。試験に受かれば、ソナタの望むレベルに認定してあげよう」と歯の一本しか残っていない口を大きく開けて笑う。


 で?…認定試験って…これが?


 レベル2への認定試験は…な、なんとペーパーテストだった。「本当に試験を受けるハメになるとは…とほほ」…アスタロトは脱力しながら、システム・コンソールの出し方やら、GOTOSやGOTSSに関する諸知識などについて答え…そして、あっさりレベル2へと認定される。


 はれ?…え?えっ?えぇぇぇぇぇ?…何?コレ?


 「何にも起こらないジャン?」とアスタロト。

 「うん」と可愛く頷くイシュタ・ルー

 「どういうこと?」

 「…ワシから説明しよう。フィールドでモンスターと戦えば、実際にそのモンスターの攻撃パターンを読んだり、攻撃回避の腕が上がったり、体力のステータスが向上したり…特殊な技術を覚えたり…技を工夫したり…と強くなっていくじゃろう?」

 「うん。まぁ、そりゃあね」

 「…じゃから、普通に実力やステータス的には、シームレスに潜在的には常に向上しておるのじゃよ」


・・・


 「えぇぇぇ?…それじゃぁ、レベルアップ・ボーナスとか、そういうのは無いの?」


 普通…【ちゃらららっちゃっちゃぁ~~~~】とか派手なファンファーレの音とかがして、HPの上限が増えたり、MPが増えたり、いろいろとステータスの数値が上がったりとか…場合によってはボーナス的に新しいスキルが使えるようになったり…そういうのがあるよね?…とガッカリするアスタロト。


 「当たり前のペーパー試験を受けただけで、そんな都合の良いことが起こるわけ無いじゃろう。この欲張りの欲しがり屋さんがぁ…お前のような奴には『欲張りの欲しがり屋』という称号をプレゼントしてやるわい」


 やめてぇ~~~~!という心の叫びにも関わらず、アスタロトのステータス(称号)の欄に、先ほどの「MMS虐殺魔王」に加えて「欲張りの欲しがり屋」というのが新たに加わった。


 つまりは、レベルアップ認定試験というのは、ステータスの数値向上だけでは、自分が今どのぐらいの強さなのかが分かり難いということで予備的に導入されているレベル確認システム的なイベントらしい。


・・・


 「レベル2への昇級、おめでとうございます」

 「わっ」


 気が付くと横にジウが立っていた。…このエリアなら自由自在に出現できるようだ。


 「それでは、お二人は共にチュートリアルを終了したということで、これからメイン・シナリオへと旅立っていただきますが…心の準備はよろしいですか?」


 またしても、無表情なジウ。だから怖いって。


 「…私からお送りできる…最後の助言ですが、レベルアップ認定試験は、意味がないと思われるかもしれませんが…なかなかに奥深い仕組みとなっていますから…よく考えて活用してください。レベルが低いと見せかけて、実は実質的には最強レベル…というのもなかなか格好良いロールですが、実は、認定試験によってはレベルアップ・ボーナスやレア・アイテムをゲットできる場合もあります」


 な、なんと。それは悩ましい。アスタロトは、実を取るか格好良さを取るか悩む。


 「さぁ。お行きなさい」


 ジウのその言葉と同時に、アスタロトとイシュタ・ルーの二人のシステム・コンソールのSNS欄に、自分のページへのリンク・バーナーと、検索用ページへのリンク・バーナーが追加される。


・・・


 そして、他のユーザーを感知できるようになったことを肌で感じられるような、明確な空気感の変化があった。


 そして、また忽然とジウの姿がかき消える。


 「ご健闘を…。アナタたち二人には、我々一同…期待し…注目していますから」


 消える寸前に、そのような言葉を囁くようにつぶやいたジウ。


 しかし、メイン・シナリオの開始に、胸一杯の期待と緊張を感じるアスタロトとイシュタ・ルーの二人には、その声は聞こえなかった。


 二人の…本当の冒険が始まる。


・・・

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