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5章 広がっていく世界

グロスさんが出発したと聞いて、僕達は慌てて準備をして出発した。先生と僕、ダリルさんと冒険者が二人、今朝方この村に他の村の冒険者がもう一人戻ってきていたのは不幸中の幸いだろう。それとなぜかディミがいる。先生はグロスさんが傷ついてしまっている可能性ある為に連れて行くと言っていたが、この間のグルッセルの件もあるし、不安はないかとディミに聞いてみたが、

「大丈夫だよ〜。実はオルに内緒で弓を習ったんだ〜。どうってことないよ〜」

 と、いつもの調子で弓の準備をしていた。僕としては心配だから残ってほしかったが、説得する時間もなかったので仕方なく一緒に出発した。

 しばらく馬に乗って草原に向かっていると、向かい側から走ってくる馬を見つけた。

「グロスが乗っていった馬だな」

 馬は僕達を凄いスピードで走り去っていった。先生は馬から降りる用に指示を出した後、呪文を唱え始めた。

「風は自由であり風は教えてくる。ウインドウサーチ」

 先生の周りに細い円が生まれ円は瞬きをするスピードで広がっていった。先生が良く使う魔法の一つで風に魔力を通わせて、その風が当たった対象の場所を把握する魔法らしいのだが、僕はイメージが全く分からなかった。 

「見つけた。ん?グロスと他に影が二つ?人と獣?」

 この魔法は風の辺りぐわいで、人か分かるらしく一度合った人は先生はだいたい分かると言っていた。

「先生?グロスさんはいたんですか?」

「いた事はいましたが、知らない影が二つあります。慎重に行きましょう」

 先生はみんなに指示を出して、ゆっくりと歩き出した。

 辺りが霧がかかり暗くなって来た。先生はピタっと止まり手を頭上に高く上げた。

「風よ我に答え、我の行く手を阻む障害を払わん。ハリケーンミスト」

 見たことない魔法だった。先生の手の先から渦巻く風が霧を吸い込んで広がっていき、あっという間に周りは明るくなった。

 辺りは草原が広がっていたが、一つ違和感があった。

「見つけました」

 先にはロープをきた人間と、鎧を着たような人間の四倍はあるだろう四足歩行の獣、手前には鎧をきた人間がいた。

「あそこの手間にいるのがグロスですが、何か様子がおかしいようですね」

 少し遠くて分かりづらいがグロスさんは立っているよんだ。遠目で分かるぐらいに、彼は力なく腕をだらんとしていた。その手には剣を持っている。

「あのロープの人間に聞いてみましょう」

 先生は走り出した。

「ウインドステップ」

 グロスさんの横を先生が通ると、グロスさんは剣を振りかざしたが、先生はひらりと避けて通り過ぎて行く。先生を追いかけようとしているグロスさんの目の前を、僕達の後ろから矢が飛んできた。

「援護するね」

 普段と違うディミの声が聞こえてきた。グロスさんの注意を引くのは十分だったようで、グロスさんは僕達の方にゆらりゆらりと不気味に歩いて来る。僕達は剣を構える。

「ダリルさん達は先生の所に向かってください。グロスさんは僕達がなんとかします」

 ダリルさんは少し迷ったが、フードの人間の方に行った先生が、魔物と戦っているのを見て走り出した。

「任せた」

 僕はコクリと頷き、腰のある剣の柄を持ちグロスさんに向けた。

「火は己の一部、火は自ら生まれ、そして広がっていく」

 グロスさんは冒険者達に向かおうとしたが、僕の周りの空気が変わったことに警戒してこちらに剣を構えた。

「己とは何か、己の体はどこにある」

 剣の柄に意識を集中する。

「フレイムソード」

 柄の先に火の剣が生まれる。僕はグロスさんに走り出した。剣の実力ではきっとグロスさんには敵わないはずだ。

「やっぱりな」 

 僕の攻撃は難なく剣で防がれてしまう。しかし以前見たグロスさんと明らかに動きが違う。直線的な動きで読みやすく斬撃も軽い。そして僕の魔法で作ったこの剣は威力が高く数回の攻撃で普通の剣は折れてしまう。その事に気づいたグロスさんは後ろに飛ぶが、すかさずディミの矢が後ろから飛んでくる。

「ディミも凄いな」

 グロスさんに外れはしたが、体制を崩す事ができた。その隙に僕はぐいと近づいて蹴りを入れてグロスさんを倒した。倒れると同時に剣も真っ二つに折れたようだ。

「普段ならこうも簡単にいかないだろうな」

 剣の腕も経験もきっとグロスさんの方が上だろう。まともにやりあったら、負けるのは確実だ。今回は運が良かった。

「オルはヴィンセントさんの助けに行って!グロスさんは私が縛っとくから」

 ディミの声で先生の方を向くと、先生達は苦戦しているようだった。魔物の足は二本足で立ち両腕と尻尾で攻撃しているようだ。特に尻尾の方は威力が高く地面が何箇所かえぐれている、攻撃自体は遅いせいかあまり当たっては無さそうである。

 しかしグロスさん達の攻撃も魔物の体が固く弾かれているようだ。

 僕は走り出した。僕のこの火の剣ならダメージを与えれるかもしれない。先生に常に言われていることだ魔法はイメージであると、自身を持つんだ。

 先生は魔物に攻撃をしつつ火の矢でフードの人間を牽制しているようで、フードの人間は逃げる事はできていないようだったが、魔物にも意識を集中できずにいるようだった。

 もう少しで攻撃ができるところまで来たが、冒険者の一人が鈍い音とともに僕の横に飛んできた。

「一発でこの威力か」

 冒険者はボロボロになり意識がなくなっていた。かろうじて息はしているようだ。僕は一回深呼吸して手中する。僕ならできるはずだ。あの魔物を切るんだ。

「先生、僕が倒します」

 僕は叫んで、一直線に魔物に向かっていった。

「オル!分かりました。みんなオルの援護を!」

「ふん。簡単に言ってくれるな」

 ダリルさんが鼻で笑った。もう一人の冒険者も苦笑いを浮かべる。先生が火の矢を魔物に向かって放つが、石のような額で弾かれてしまう。続いて左右からダリルさん達が挟むように剣を振るうが、赤子をひねるように手で防がれてしまう。だがその一瞬の隙で僕は近づきイメージする。この火の剣は熱くとても熱く何でも切れると。

「うぉー」

 魔物はこちらに気づくが反応ができず、僕は一気に振り落とした。

 魔物は真っ二つに割かれていった。

「全く。美味しいところを持っていかれたな」

 ダリルさんが鼻で笑った。

「おっと、あと一仕事だ」

 ダリルさんはフードの人間に向かった。僕も向かおうとしたが、体が鉛の様に重く動かない。

「後は二人にまかせてお前は休んでろ」

 冒険者の人が、肩を貸してくれた。

 フードの人間は逃げるのを諦めたようで、先生と対峙していた。

「せっかくあそこまで育てたのに、よくもやってくれたな」

「そんな事知りません。私の仲間に手を出した事は許しませんよ」

「あぁ、あの簡単に操れた男の事か、役立たずがあっさりやられおって」

 吐き捨てる用にフードは言った。

「大人しく捕まりなさい」

 先生の言葉に耳も貸さず、何か呪文を唱え始めるフードの人間を、先生は警戒するが、横から走ってきたダリルさんがフードの心臓を貫いた。

 貫かれたフードの人間はダリルさんを振り向いて、悲鳴のような声で、

「なぜ、あな」

 ダリルさんが剣を引き抜くとフードは絶命した。その時フードが外れて男だと分かった。

「殺す必要ありましたか?」

 近寄ってきた先生がダリルさんに訪ねた。

「何か魔法をするみたいでしたので、用心に越したことはないでしょう?」

 先生は渋々頷いた。

「ダリル、この男と知り合いでした?」

 確かに男はダリルさんを、知っているようだった。

「身に覚えはないですね。誰かと勘違いしたんじゃないですか?」

 ダリルさんも不思議そうな表情をしていた。

 それからこの場所を調べていると地面には魔法陣が書かれていていた。どうやらこの魔物に魔力を与えていたようだった。その魔力が漏れて周囲の森や川に流れていたのだろうというのが、先生たち含めた冒険者の意見だった。

 魔物を倒した次の日、グロスさんは目を覚ました。彼はあった出来事を聞いてとても反省していた。ギルドに帰っても独断で判断して、失敗したのでペナルティがあるだろうと先生は笑っていた。

 魔物を倒して数日後、魔物の脅威がないだろうと判断して、傷を負った冒険者を残して冒険者は帰っていった。後日なぜあそこに魔法陣を設置したのかを検証するための別のチームの派遣を先生は頼んでいた。

 そして僕は先生に呼び出され先生の家に着ていた。

「今回はよく頑張りました」

 先生に誉められたらどこか恥ずかしくなる。

「あの魔物はジュエルベアーと言ってシルバークラスの魔物です」

 シルバークラスは上級者の冒険者と同等のレベルだという。

「いや、皆さんのおかけです」

「それにグロスの件です。私のミスです。すいません」

 先生が頭を下げる。僕はどうしたらいいか困ってしまう。

「気にしないでください。あれは仕方ないですよ」

 しばらくすると先生は頭を上げて、まっすぐ僕を見る。

「そこでオルは今回の件どう思いましたか?」

 僕は心から感じた言葉を先生に告げた。

「僕は魔物の事も魔力の事も知らないといけないと思いました」

 先生は頷いた。

「僕はもっと世界を知りたいです」

〜終わり〜


オルのお話第2弾を執筆しました。

今回は魔力とは何か、オルはどんな生活をしているのかを書きました。

全5章、最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

5章は、オル自身が魔力を向き合い、そして自分は無知であることを知るお話でした。

もしこの先の話や先生の過去の話など、読んでみたい展開があれば、ぜひご意見・ご感想お待ちしています。

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