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3章 異変

僕は先生に言われ、ディミと街道沿いを調べていた。

「この一週間、特に何もないね〜」

 ディミの声は相変わらず緊張感のない声で安心する。

「そういえば、この間の魔物騒ぎの時、活躍したんだって〜」 

「この間ってホーンラビットの事?」

「そ〜。レコルさんが言ってたよ〜」

 あんまり活躍した気はしてないが、他人が評価してくれるのは嬉しいことである。

「あれ、その反応聞いてない?」

「聞いてないよ」

「そっか、言ってよかったかな?」

 僕は軽く笑った。

「さぁ、どうかな?」

 話していると、目的の川沿いが見えてきた。

「結局何もなかったね」

「そうだね」

 川の近くには特に何もなく、桟橋も質素なものがあるだけだ。桟橋を渡って数時間歩けば隣町があるが、僕は数えるくらいしか行ったことがない。

「そしたら戻ろうか?」

 僕はくるっと振り返り道を戻ろうとしたが、ディミが川の方に向かって行くのが見えた。

「ディミどうかしたのか?」

「一応、川も調べて見ようと思ってね〜」

「川ねぇ、見た所変わった所なさそうだけど」

 ざっと見てみたが太陽の光が反射して綺麗なものである。

 ディミは川の水を触ったり、コップに注いで匂いを嗅いだりしている。少し待っていると、ディミは不思議そうな表情をした。

「どうかした?」

「う〜ん。少しぬめりがあるように感じるんだよね〜」

「ぬめり?」

 僕も触ってみるが、特に変わった様子は無さそうである。

「僕にはわからないな」

「そう?一応他の人にも聞きたいから汲んで帰るね〜」

 ディミが水筒の水を捨てて川の水を入れ替えた後、僕達は村に帰った。僕達は報告もあるので先生の家に向かって歩いていると、家の端に収穫した作物が綺麗に積んであるのが見えた。

「今年は収穫祭どうするんだろうね〜?」

「そういえば、そんな時期だね」

 例年なら冬に入る前に今年の収穫の感謝と来年の収穫に願いを合わせ、村全体でお祭りをしていた。

「どうだろうね?お祭りの話はなんか聞いた?」

 ディミが首を振った。

「魔物なんかこの村に出ることないからね〜。しかも二度も!それどころじゃないよね〜」

 ディミは少しさみしそうに赤く染まりかけた空を見る。

「できたらいいな」

 うん。と小さく頷くディミ。

 話しているうちに先生の家に着いた。扉を開けるとスクさんと先生が話していた。

「二人とも、おつかれさん。なんか変わった事あったか?」

 スクさんがこちらを向いて様子を聞いてきた。

「僕は何も感じなかったけど、ディミがちょっとあったかな」

 ディミが一歩前にでる。

「気のせいかもしれないけど、水が少しおかしい気がするの。オル、コップをお願〜い」

 僕は台所からコップを持ってきた。ディミは汲んできた水をコップに注ぐ。

「これ川の水なんですけど、少しぬめりがあるような気がするんです」

「ぬめり?」

 スクさんがコップの水を触ってみる。

「普通の水みたいだけど、ヴィンセントさんどうだい?」

 スクさんは僕と同じ意見だったようだ。コップを渡された先生は同じように触った後、コップに集中するように目を閉じた。魔法を使う時のように意識を集中しているように見える。

 先生はゆっくりと目を開ける。

「ディミさんが言ったように、ほんの少しだけどぬめりがあります。よく気づきましたね」

 先生は、僕達をみた。

「川に魚達は見かけましたか?」

 急に言われて、考えてみたが覚えている範囲では一匹も見てない隣のディミも、はっとしている。

「おそくらこれは魔力による影響ですね。この水には薄く、魔力がある。人には影響はないが、魚には効果が絶大みたいですね」

 先生の言っている言葉の意味がわからなかった。

「魔力ってなんですか?グルッセルの時も言ってましたよね?」

 魔力という言葉は、魔法を使う人にとっては、知っていて当然のことだが普段の生活には馴染みの無い言葉だった。僕も魔法を習い始めて初めて知った。

「魔力っていうのはですね、私達人間が持っている目に見えない肉体の一部のようなものです。私やオルはイメージしたものを魔力をつなげて形を作っているんです」

 ディミが不思議そうな顔をしている。

「簡単にいうと手や足を動かす時なにか考えますか?」

「考えないです」

「それと一緒で普段は気にしないでいいってことです」

 ディミの表情がますます困ったことになってきた。

「気にするなディミ、俺も良く分かってない」

 横にいるスクさんが、苦笑いをしながら入ってくる。

「魔力は人間にはありますが、動物にはない事が分かっているんです。他の生き物の中に入ると普段と違う反応をするんです」

 先生が少し息を吸った。

「死ぬか魔物になるかどちらかなんです」

 ディミが驚いた顔をする。

「詳しくはなぜそうなるかわかりませんが、私は一種の適応反応かと考えています」

「その魔力がなんで川に流れているんですか」

 先生は首を振った。

「そこなんです。普通は魔力は人間の外にはでない。たまに魔力を帯びた花が生えることがあるんです。川ならそこから染み出している可能性もあるんですが、今回は範囲が広いんです」

「俺達が行った東の森の端でも、魔力の影響で少し土が腐敗しているような感じだった」

 スクさんが横から説明してくれた。

 先生が難しい表情をする。

「このことから考えると、範囲を広げて調べないと行けないので、人手が欲しいです。スクさん。近隣の村に応援を頼めたりしますか?」

「事情を話したら手伝ってくれると思うよ」

 話を聞いていると、先生が手紙を出している事を思い出した。

「先生、ギルドに何か頼んでたんじゃないんですか?」

「頼んではいたんですが、数人しか来ないと思います。思ったより規模が大きそうだからそれだけだと足りないでしょう」

 そこで後ろの扉をノックする音がした。 

「先生、僕でますよ」

 扉を開けると僕より少し身長が高い知らない男が立っていた。腰には剣が見える。

「ここにヴィンセントさんがいるって、聞いたんだけどいるかい?」

 ハキハキとした良く通る声だった。

「あぁ、君が来ましたか」

 後ろの方で先生の声がして、近づいてきた。

「はい。お久しぶりです。先生」

 男は先生に向けて一礼する。

「オル、さっき話したギルドから人間です。君の兄弟子に当たるのかな。グロス・ライカーです」

 先生は後ろの方を見る。

「グロス、来たのはあなただけですか?」

「先生の依頼と聞いて、一足早く来ました!」

 グロスさんは自信満々な態度で話した。先生は深い溜息を着いた。

「相変わらず、周りをみないですね」

 グロスは少し落ち込んだ様子になった。

「でも、今回は良しとしましょう」

「すいません。あと先生、先に行くことでギルドから手紙を預かって来ました」

 グロスさんはポケットから手紙を取りだした。

「ありがとう。さ、グロスも中に入ってください。みんなに紹介します」

 先生はグロスを家の中に入れた。

「彼はグロス・ライカーといいます。私がここに来る前に教えていた弟子の一人です。魔法は使えませんが魔力くらいなら感じる事はできます。後は自分でできますね」

 先生はグロスさんを前に出るように促し、渡された手紙を読み出した。

「先生の弟子のグロスだ。剣士をしている。ブロンズの冒険者だ。よろしく」

 グロスは先生の方を向いた。

「先生このくらいでいいか?」

 手紙を読んだ先生は、顎を少し触って難しい顔になっていた。

「少し厄介なことになっているようです」

 先生が僕に手紙を渡し、読むように促された。僕は手紙に目を通した。

『今回と似たような事例が現在三箇所発生している。調査の為に今はほとんどのメンバーがギルドを離れている。以来では十名ほ

どと書いてあったが、グロス含め五人位だと思ってくれ』

読んでいただきありがとうございます。

調べていくうちに深まる謎、そしてギルドから来た兄弟子。

物語にどう揺らいで交わっていくのか、楽しんで下さい。

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