表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

2章 成長の火

森の中に入ってみたがいつも通り、静かな森のような感じがした。

 奥に行くにつれて横にいるスクさんが怪訝な表情になっていく。

「どうかしたんですか?」

 スクさんは周りに注意を向けながら答えてくれた。

「数日前から、奥に行くにつれて静かすぎるんだ」

 静かすぎる。普段と変わらないように感じるがこれが違和感なのだろうか?

「オルはここまであまり来ないよな、分からないだろうが、ここらへんは鳥たちや動物たちの声が聞こえるんだよ。俺はそれが好きなんだ」

 言われて見ると確かにいつもは村が見える所までしか入らない。

「普段は楽しそうなところなんですね。そう言われると見てみたくなるな」

 スクさんは優しい表情をする。

「あぁ、来るといいよ。しかし今は」

 周りをぐるっと見るスクさん。

「声どころか全く動物の痕跡すらも消えている。アイツラが普通に付いてきているだろ」

 スクさんが生徒達を親指で指す。

「歩きやすいってことだ。いつもなら足跡とか、急に動物がでてきたりで、普段より大分遅くなる」

 言われてみると確かに足跡がない。森に入って動物を見ていない。

「グルッセルの時はどうだったんですか?」

 二ヶ月前にも魔物が森に来たときがあった。あの時も同じだったのだろうか?

「あの時は、動物たちは怯えていて動けなくなってたみたいだったよ。今回は逃げていなくなった感じがするね」

 この静けさでそこまで分かるのは正直すごい。村ではおっとりしているから、森に入ってからのスクさんのイメージがガラリと変わった。そこで前にいる先生が合図をする。予定の位置に着いたのだろう。全員が手筈通り別れて行く。

 僕は腰にある剣の柄を握りしめた。柄の先には切っ先も鞘もない。

「オル、そんなに緊張するすることはないよ。君なら問題なく倒せるはずだ」

 先生が魔法の授業のように、優しく話しかけくれた。

「そろそろだよ」

 僕は柄を腰から取り外した。

「いたよ」

 先生が教えてくれた先には角が生えたうさぎが数匹いた。

 どうやら獲物を探しているようだ。

「オル、あそこにいる魔物は任せましたよ。私の予想だとちょっと先に住処があると思うのでそこに向かいます」

 僕は頷いた。先生は走り出すと、同時に歌うように軽やかに呪文を唱え始める。

「風はわれの友、風は私であり、私は風である。ウイングステップ」

 先生の足元に風が集まってきて、先生のスピードは一気に上がって魔物の目の前を通り過ぎていった。魔物は何が起こったか分からず風が吹いた僕の方を向いて襲いかかってきた。

「先生の期待に答えないと」

 僕は一度深呼吸をして心を落ち着かせ、剣の先に意識を集中する。

「火は己の一部、火は自ら生まれ、そして広がっていく。フレイムソード」

 柄の先から少しずつ火が生まれて剣の形を形成する。僕は魔物に向かって走り出した。

 ホーンラビットは、剣が現れたのもお構い無しに向かってきて、角を僕に向かって突き刺してきた。僕は後ろに下がって避けて、そのまま一匹、炎の剣で切る。

「単調だね」

 先生の訓練は、もっと頭を使わたないと一発も当たらない。それに比べてラビット達の動きは単調で子供のようだった。

「先生が言った意味が分かった」

 ラビット達は一匹倒されて僕に敵意をむき出し、さらに襲いかかってきたが、動きは簡単であっという間に全員倒してしまった。

「ちょっとくさいな」

 ラビット達の遺体は炎の剣で切った事もあり、焼けたツンとした嫌な匂いがした。僕は先生の所に走った。

 先生の所に着いた頃には先生も終わっていた。先生の足元には数十匹の魔物の遺体があった。

 僕が倒した時と違って、剣で倒したのだろうか。辺りを血の匂いが満たしていた。

「先生、遅かったですか?」

「オル、ちょうど良いところに、来ました。近くでレコルとスクも戦っているみたいです。オルはレコルの所に向かってください」

 先生が指を指した先には何も見えなかった。きっと魔法で周囲を探索したのだろう。

「分かりました」

 僕は指示を出された所に走り出すと、すぐに戦っている音が聞こえてきた。

「レコルさん。手伝います」

 レコルさん達は、致命傷はないが苦戦しているようだった。ざっとみた感じさっき僕が倒した数より多そうである。

「オル。助かる」

 みんな普通の剣ではホーンラビットの攻撃を防ぐのがやっとの感じだ。

「レコルさん達は防御に徹して注意をそらしてください」

「分かった」

 僕は再びフレイムソードに意識を集中し、防御の合間を縫って攻撃をして、徐々に数を減らしていく。

 最後のホーンラビットを倒したあとレコルさんが心底驚いている声をだした。

「えらく早く片付いたな」

 レコルさんだけではなくここにいる生徒二人も呆気にとられていた。

 その後、先生達も合流して魔物を一掃できたようでみんな安心した様子だったが、先生だけはみんなとは逆の表情をしていた。

「先生どうしたんですか?」

「グルッセルだけかと思ったんですが、今回のことといい他にも魔物がいるかも知れませんね」

 先生が魔物の死体を見ながら、怪訝な顔をする。

「どういうことです?」

「思い過ごしかもしれませんが、一度ギルドに相談することにします」

 先程までは晴れていたが、急にポツポツと雨が降り出した。

 ホーンラビットを退治した次の日。先生の提案で村の周りに塀を立てることになった。村の人達からは少し不安な声が聞こえたが、先生が、

「念の為です。あくまでも念の為ですので、安心してください」

 と説明したので、それ以上は何もなかった。

 先生は塀の計画を立てギルドに手紙を送り、村の周辺になにか違和感がないかを調べる事を決めた。

読んでいただきありがとうございます。

オルの成長と魔物を倒した後の新たな疑問。

楽しんでもらえたら嬉しいです。

ご意見・ご感想お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ