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E話

一方、ある街の中、リネートは衛兵に連れられていた。木でできた台に乗せられる。

「この者は首長を暗殺し、この街を乗っ取ろうとした疑いがある。このもの……反………」

衛兵の一人が話し出す。途中からはなぜかうまく聞こえない。と言うか、意味が理解できない。なんだろう。なんだ。そうだ。なんだ。よく分からない。

「よって、只今を持って火炙りにする。」

そうか、死ぬのか。死ぬのだな。思えば最初から、私の味方はいなかったのかもしれない。かもしれない?いや、初めからいなかったのだ。私が生まれてきたあの日から。仲の良かったあの衛兵も、一緒に遊んだ近所の友達も、心の底ではいつも私を嫌って、さけずんで、醜いものとして思っていたんだ。だからと言って何かすることもできないし、する気も起きない。


足元が熱い。いつのまにか柱に縛りつけられ、柱の下には烈火が舞っている。夕焼けの街の真ん中。私は今日死ぬのだ。そう、消えてなくなるのだ。…………あつい。あつい。あつっ熱い。熱い。熱い。アツイ。アツイ。アツイアツイアツイアツイアツイアツイ。

「       」

いつのまにか、聞いたこともないような醜い奇声を発していた。目の前は赤くなり、その先に黒い他人がたくさんいる。ゆらゆらと揺れて、、、あれ、なぜこんなに私は冷静なんだろう。痛い。熱い。苦しい。自分の体の感覚は無くなっていく。それなのに、なんでこんなに心は静かなのだろう。閑かなのだろう。

「………」


クラリスから話を聞いて3日ほど、リネートはまともに人と話すことができなかった。口が滑ってあの話をしてしまいそうだったからだ。周りからは

「どうしたのリネート、最近変だよ。」

「きっと魔女に呪われたんだよ。」

なんて言う声が聞こえてくる。実際本当に呪いなんじゃないかとさえ思ってしまう。他人に話すと死んでしまう恐ろしい呪いだ。気にしても仕方ないと割り切っているが噂というものは怖い。リネートはあまり家から出なくなった。


それから2日後、家の近くに衛兵が来た。いつも一緒におしゃべりしている、あの、優しいおじさんだ。今日も見回りだろう。だがリネートはどぎまぎしていた。寂しい。でも、後ろめたい。そんな灰色の心情だ。いつもは飛んでくるリネートが今日は来ないので不安に思ったのか、衛兵は家の前までやってきた。

「おうい、いるかぁー?」

そんな気の抜けた声がしてくる。返事はしない。できなかった。

「いないのか?おーい入るぞー。」

恐怖で一瞬身構えそうになった。が、そんなものはすぐに吹き飛んだ。彼の顔を見た途端安心してしまった。涙が溢れて、止まらない。

「何があったんだ。」

彼の少し緊迫した声がした。


暗く狭い牢の中。誰一人いない。自分を除いては。喑冷がこちらを伺う。うるさいほどの静けさだ。窓はなく日は降らない。寒く、ジメジメしている。吐息や衣擦れの音が闇に溶けて、帰ってくる。歪んで、ぼやけて帰ってくる。階層自体はとても広いみたいだ。寒い。ただ寒く、そして暗い。手先足先を見ることも満足にはできない。話してしまった。あのおじさんに。そしたら国家冒涜なんたらって言う罪で捕まってしまった。よくわからない。学校ではこんなの習ってない。それに、せっかく仲良くなれたと思ったのに…。どうしてみんなにバラしちゃったんだろう。


一体どれくらい経ったんだろう。寒い。体が動かない。ちょっと前に顔も知らない衛兵がご飯と水をくれた。それでも、光が当たらないここの寒さは凌げない。一体いつまでここに入ればいいんだろう。……神様ごめんなさい。約束守れなくてごめんなさい。たくさん謝るから、もう許してください。もうここは嫌なんです。どうか、どうかお慈悲をください。どうかお願いします。


足音がする。人が来たんだ。もうここから出してくれるんだ。きっとそうだ。微かな希望が生まれる。しかしそれは、すぐに押し潰された。

「来い。お前には大量の罪が着せられている。“質問室”まで来い。」

そう言って引き連れられ、歩かされる。階段を降り、いつまで続くかわからない廊下を歩く。あかりは衛兵が持っているランプだけ。進んでいくと少し錆びた鉄のような匂いがしてきた。奥に一つのドアが見える。冷たげに立っている鉄のドアだ。


「座れ」

そう指示されて乱暴に鉄の椅子に座らされる。その椅子は、肘掛けの部分と椅子の足に謎の突起?みたいな物体がついている。冷たい。全身に冷気が染み渡る。自分の体が氷になっていくみたいだ。

「ッッッ…」

思わず声を漏らしてしまう。その途端、大きな音と共に視界が変わった。後から痛みがついてきて、顔を殴られたのだと言うことがわかった。呆気に取られて声が出なかった。何かするでもなく、衛兵は部屋を出ていく。不穏な静寂が身を包む。


しばらくして、衛兵と一人の男が入ってきた。衛兵は椅子から離れて部屋の隅に座っていたリネートを見て、そして男の方に目をやった。


「情報提供に感謝します。」


なぜ捕まえるのかは知らない。知ったところで意味なんかない。言われたことを遂行するまでだ。生きていけるのならなんだってする。ただ、これはいくらなんでもひどすぎる。上申しようかとすら思った。しかし、正義感の強い同僚は”事故死”してしまっている。結局何を言っても、自分の命の方が大切だ。

「………」

心を痛めている自分に、自分が一番驚いた。まだ良心が残っていたのか、と。この世界の闇に触れ、染まり、幾人もの人を殺して、中央衛兵に一目置かれてきた自分に、まだ人を想う心があったのか。そうか、思えば殺してきたのは男の大人が多かった。

「       」

悲鳴が聞こえる。熱を感じる。焦げる匂いがする。今、数歩後ろで少女が焼かれているのだ。生きたまま。その華奢な体は拷問で見るも無惨になった。そして今、焼かれて、苦しんで、死に向かって最後の抵抗をしている。それでも、厳しい顔を崩してはいけない。思えばあいつ、名も知らぬ少女は、あいつの親は夜逃げしたのだ。心優しい少女を置いて。いつまでも税を納めに来ないので、無理矢理にでも徴収しようと向かった。そこで一人になったやつを見つけた。それから、街の巡回をしていても、話しかけてくるようになった。俺は人殺しの目をしている。自分でも自覚している。衛兵なんだから仕方がないが、そんなやつに話しかけにくるんだ。周りの大人からは気味悪がられていた。しかし周りからなんと言われようとやつは駆け寄ってきた。俺もしどろもどろしながらも対応してやった。


あいつはある時、泣いていた。何かに縋り付きたいが、できない。そんなふうに恐怖に怯えて泣いていた。そして、聞いてしまった。


上に報告したのは俺自身だ。ああ、どんなに信用されていたことか…。それを全て裏切って、報告した。あいつからは悪魔のように見えただろう。連行したのも俺だ。だが、それが仕事だ。悪く思わないでくれ。久しく忘れていた懺悔と言う気持ちが湧き上がる。『今にでもこんな仕事は辞めてやりたい…』初めての感覚だ。俺はこれしか生きる術を知らないんだ。すまない。そして、さようなら。

半角文字って使えないんですね。


描き始めはいいけど途中から詰まってきてしまう…

力尽きました

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