開けるのに十年遅かったタイムカプセル
2024年3月中旬、俺に激震が走った。
辰真【なあ、俺達が埋めたタイムカプセルが見つかったって!】
龍雅【マジか!】
竜太【今さら?】
ラインで友人たちにそれを伝えると、俺同様に驚いていた。すぐさま龍雅が【マジで】と言う驚きのスタンプを大量に押してきた。
小学校卒業記念で俺達はタイムカプセルを小学校の校門近くの木の下に埋め、成人式の日に掘り起こして思い出に浸ると言うイベントがあったのだ。
だが確かに埋めたはずのタイムカプセルが見つからなかった。
成人式後も色々と手を尽くしたが、結局見つからず俺達は社会に埋もれ、溶け込んでいった。そんな日々を過ごしてタイムカプセルなんてクラス全員忘れて三十路を過ぎた頃、小学校の体育館の工事で見つかったのだ。
竜太が【出て来るのに十年くらい遅かったな】とラインのメッセージを出してきた。ここで俺達はある選択をしないといけない。
辰真【ところで今週の日曜日に、このタイムカプセルを回収するらしい。みんなも行く?】
龍雅【無理、その日は仕事!】
竜太【俺も仕事。と言うか、いきなりすぎて予定が開けられねえよ】
だよな。俺達の仕事は休日が不定期だ。そもそも突然、今週の日曜日に集合なんてこの年だと難しすぎる。
龍雅と竜太は家が近所だったので小さい頃から幼馴染で、今でも旅行に行くなど仲は続いている。だがさすがに今週の日曜日は集まれないので、今回は俺だけで行く事になった。
辰真【俺は休みだからタイムカプセルの回収に行くよ。ところでお前ら、タイムカプセルに入っている手紙、欲しい?】
竜太【処分して】
龍雅【いらないかも】
辰真【ですよねー。手紙は写真撮って『タイムカプセル回収』って言うグループラインのアルバムに載せるから、それで読むなり保存するなりしてくれ。グループラインに案内するから】
俺は竜太と龍雅を『タイムカプセル回収』グループに招待した。
竜太【それにしても、どうして今さらタイムカプセルが出てきたんだろうな】
龍雅【それな】
辰真【ちなみに、見つかった場所は使われていない体育館倉庫らしいよ】
龍雅【はあ? 全然違う所じゃん!】
竜太【校門近くの木の下に埋めたよな、俺達】
全然、違う場所にあって二人とも唖然としてしまった。
そして龍雅はこんなメッセージを残す。
龍雅【恐らく、俺達のタイムカプセルは何かヤバいものがあったんじゃないのか? この世界が崩壊するような、ヤバいものが! 辰真、この謎を解いて来てくれ!】
そんな壮大な理由じゃないだろうに。陰謀論者か。
だが別の所に埋められたのは一体なぜだろう? そんな疑問を抱きながら、タイムカプセル回収日になった。
*
久しぶりに小学校へ行ったが、大分小さいなと思った。ベランダに並ぶチューリップの植木鉢や窓から見える黒板など懐かしいものがいっぱいだが、校庭にある遊具が変わっていたり、校舎の一部が新しくなっていたりとやっぱり変化は見られる。
それもそうか、二十年以上も経っているんだから。
そう言えば、俺達がタイムカプセルを埋めた場所の近くに花壇が出来ていた。成人式の時、「こんなの無かった!」と騒いでいたな。だけどタイムカプセルが見つからず、バタバタしていたけど。
「へえ、これって子供達が作ったのか」
よく見ると砂で汚れているが成人式をする数年前に卒業した子供たちが記念に作ったようだ。柵の所が絵になっていて可愛らしい。
体育館の方を見ると一部が綺麗になっていた。確か今年、体育館の改修工事で倉庫を片していた時に見つかったようだ。倉庫の所は見れないだろうか?
「おい! 辰真!」
パッと振り向くとポロシャツとジャージを着た男性が走ってきた。ちょっと呆れたように「何やってんだよ」と言ってきた。
「思い出に浸っていた」
「嘘つけ、体育館に入ろうとしていただろ」
疑わし気に男性は見ている。俺は目を逸らしてハハハハっと笑う。
確かにタイムカプセルがどうして移動したのか調査しようと思って、入れたら、入ろうかなって思っていたけどな……。
「最近、うるさいんだよね。去年は不審者騒動があったから」
「え? マジで」
「マジ。もう犯人は捕まっているけどね」
そう言えば、学校の校門以外にも学校の入り口には、いくつもの柵がかかっている。これは俺達が卒業した後に作られていたと思う。今じゃあり得ないだろうけど、昔の学校は開放的で休日には近所の爺が散歩していたりしていた。
「大変だな、青木先生」
「やめてくれよ、お前が先生って言われると恥ずかしい」
うんざりするように青木は言った。小学校の先生をしていて同級生であり、今回【タイムカプセル回収】メンバーのリーダー的立ち位置の人間だ。タイムカプセルが見つかった時、卒業した小学校で教えていたのだ。そしてグループラインを作ったり、十年前のタイムカプセル捜索も結構、率先してやっていた気がする。
校庭の探索を終えて、青木と一緒に学校内に入る。中も随分と変わっている。
久しぶりに来てみると変化や変わっていない所が目に付く。まあ、多感な子供の時代の六年間を過ごしたのだから思い出と違っていると時間の流れを感じる。
そして一番変わったことは小学校に入るためには【来賓】と言うカードをぶら下げないといけない事だろう。
「昔はこんなカードを付けていたっけ?」
「最近はうるさいんだよ」
面倒くさそうに青木は言った。最近はうるさい事ばっかりのようだ。
ちなみに【タイムカプセル回収】メンバーは俺と青木を含めて五人。しかも三人は女性。しかも特に仲いいグループで無いので、三人とも無言でスマホをいじっている。
「そう言えば、龍雅たちは?」
「仕事で行けないってさ」
「まあ、ほとんどのクラスメイトはそうだろうな。仕事とか家庭とかあって遠くにいるから」
そう話していると一緒にいた三人の女性も友達の話しをしていた。みんな別の土地で結婚して家庭を持っていたり、仕事していたりと忙しいようだ。
「じゃあ、回収メンバーは俺達五人でやるのか?」
「いや、あと一人、待っている」
「すでにいるのか。誰だろう?」
「お前らの天敵だよ」
青木が不敵に笑いながら、そう言った。まさか……と、ちょっと冷汗が出てきた。
*
視聴覚室にタイムカプセルが置いてあるようだ。俺達はタイムカプセルを開けて、大人になった自分へ のメッセージを広げて、一枚ずつ写真を撮って、ラインのグループのアルバムに保存していく。五人いれば一時間くらいで終わるだろうな。
視聴覚室に入ると一人の白髪交じりの初老の男性が座っていた。眉間に深いシワ、不機嫌そうな顔、すぐに怒鳴りそうなへの字の口元。この顔は……。
「お待たせしました。前島先生」
「いや、大丈夫だ」
ぎゃああああ! やっぱり、鬼島だ!
鬼島、ではなく前島先生は短気ですぐ怒鳴るので、生徒達から非常に恐れられていたのだ。そして龍雅と竜太、なぜか俺はこの先生に目の敵にされていた。まあ、悪ガキだったからな。
「コラ! お前ら! 何やってんだ!」
二十年前なのに思わず幻聴が聞こえてきて、気が遠くなってきた。
ふと俺と目が合い、「あ、辰真か?」と話しかけてきた。無視なんて出来ないので「ご無沙汰してます」とだけ返した。
「あれ? 龍雅と竜太は来なかったのか」
「あいつらは仕事で来れないようです」
俺がそう答えると鬼島は「お前ら、ちゃんと社会人しているんだな」と感慨深そうに言ってきた。
青木は「今日はありがとうございます」と話しかけた。
「今も先生をやっているんですか?」
「いや、もう定年で辞めたよ。今は頼まれて中学の部活の指導員をしている」
青木と鬼島の会話を聞いて、また鬼島を観察する。子供のころの記憶よりも結構、白髪が多くなっている。しわも多いし老けたなと思った。二十年経っていれば、そうなるな。
心温まる再会を経て、俺達はタイムカプセルを見た。二十年の時を経て、タイムカプセルの缶は当然のサビだらけだった。蓋には布テープが張っているがカピカピになっている。
俺はちょっとこの箱に違和感を持った
「あれ? テープの色が違う」
「どうした? 辰真?」
青木が怪訝そうに言い、鬼島や他のメンバーも俺を見ている。すぐさま、俺はスマホである画像を出してみんなに見せた。
うちの家のアルバムから探してきたものだ。
「俺達、タイムカプセルを埋める時に集合写真を撮ったじゃん。その時の蓋を留めるテープってこう言った布テープじゃなくて、赤いビニールテープだったんだ」
青木たちが「あ、本当だ」と言って画像をじっと見る。一方、鬼島は疑わしそうな目で見て口を開いた。
「それって、あれじゃねえ? ファック画像って言う奴」
……何だよ、ファック画像って。色々と騒がせるから世間的にはファックかもしれないが。
「……フェイク画像ですか?」
「そう、それだ! お前らが消えたタイムカプセルの謎を解くため、フェイントをかけてそう言う画像を作ったんだよ!」
「しませんよ。大人だし、何より仕事で忙しいし」
「いや、俺は覚えているぞ! 給食のデザートのケーキを盗んだ犯人を特定するため、俺の机にデザートのソースをつけた事を!」
「だってあれは先生が犯人だったからでしょ! 認めないから、ソースをつけただけです!」
ここで青木が「まあ、まあ」と俺達をなだめた。
「落ち着きましょう! もしかしたら誰かが掘り返した時にうっかり箱が開いてしまって、代わりに布テープをつけたんでしょう」
「え……。と言う事は誰かがタイムカプセルを出して開けたって事じゃないの?」
「体育館の倉庫にあったって事は、誰かがすでに出しているって。それにうちじゃない小学校でも工事するとうっかりタイムカプセルとかが出て来るらしいです。その時にタイムカプセルを埋めた子の誰かと連絡取れればいいのですが、卒業していった子供の個人情報は数年で廃棄されます。それに異動で当時を知る先生もいない事も多いです。そうするとタイムカプセルの処分に困るんですよ」
そして青木は「今回のタイムカプセルはかなり運がいいんですよ。タイムカプセルが見つかった時に俺がこの学校にいたんだから」と付け加えた。
小学校の裏事情を聞いて俺はちょっと関心をしていたが、それでも疑問は残る。
だってついている布テープも地面に埋めた汚れがついているのだから。
つまり体育館倉庫に保管される前に誰かが掘り返して、また誰かが埋めたって事になるのだ。しかも俺達が埋めた場所は工事になっておらず、そのままだ。
そのことを指摘しようかと思ったが、また鬼島と争うのも面倒と思いやめておいた。
*
青木がタイムカプセルの布テープを慎重に取っていき、箱を開ける。
「お! 綺麗に保存されている!」
「大丈夫そうだな」
タイムカプセルって雨水が入ってダメになったり、一度開けられた痕跡があったから不安だったが俺達のタイムカプセルは綺麗に保存されていたし、誰かが弄った形跡も無い。
俺達が卒業した時の新聞や色あせている写真などを出していくと、俺達のお目当てのものが出てきた。大人になった自分へのメッセージだ。
メッセージを書いていた時は小学校卒業で二十歳になったら大人だと思っていた。でも更に十年が経過した三十代になった俺から見たら、二十歳なんてガキだと思える。
確かにお酒も飲めるし、車も運転できる、東京に行って一人暮らしが出来る。子供から見たら大人だろうけど、二十歳の俺なんてまだ子供だったなって感じてしまう。
何だろう、年取った気持ちになってしまう。まあ、二十歳から見たら三十代なんておっさんだけど。
感慨深くメッセージの紙を一枚ずつ広げて写真を撮ってラインのアルバムに載せる。
この行為に鬼島が「おい」と話しかけてきた。
「そのメッセージってネットに載せるのか?」
「はい。ライングループのアルバムに載せます」
「……ライングループのアルバム?」
どうやら鬼島、ラインの機能を分かっていないようだ。まあ、ファック画像を言った時からちょっと最新機器に弱い気がしていたけど。
女性三人でラインのアルバムについて説明する。どうにかこうにか理解したようだが、ネットに流すのは嫌そうな顔をしている。
「なんか変なことが書いてあると炎上するだろ」
「まあ、そうですけど。でも他のみんなは遠くに居たり、忙しいからメッセージを受け取れないんです。だからみんなで見られるラインでメッセージを公開するんです」
「というか、先生。大人になった自分へのメッセージで炎上する内容なんて書いてないですよ」
「普通の子供なら、な……」
そう言って俺の方を見た。どうやら悪ガキだった俺や龍雅や竜太の事を心配しているのだろう。
「俺も龍雅も竜太もインスタとかエックスとかやりませんよ」
「……エックス?」
「元ツイッターの事です。それにメッセージだって竜太は【バイクのレーサーになっていますか?】で龍雅は【大物芸人になって女優と結婚してますか?】ですので、まだ炎上はしません。ちなみに俺も【ゲームを作る人になっていますか?】です」
多分、これで炎上はしないだろう。子供の純粋な夢で炎上するほど、世界の人々の心は狭くないだろうし、もっと面白いトレンドを探すと思う。
ツイッターもうまく理解しているようにはみえないが、鬼島は「まあ、大丈夫か」と納得してくれた。だが「……先生のメッセージの写真は俺が撮らしてくれ」と言ってきた。
青木は不思議そうだったが、鬼島にスマホを渡して写真を撮る方法を教えてもらって撮った。先生達のメッセージは大きな模造紙で寄せ書きのように書かれている。だが書き間違えをしたのか一部だけ色が違っていた。
そして「じゃあ、俺は松木先生に話しているから帰るから」と言って先生のメッセージが書かれた模造紙を持って帰ってしまった。
鬼島、ではなく前島先生は出て行って、俺達はメッセージを撮っていった。
「なあ、青木が鬼島を誘ったのか?」
「違うよ。教頭の松木先生が教えたみたい。意外と先生同士って交友関係が広いんだよね」
「と言うか、あいつSNSに出すのを嫌がっていたな」
「生徒がSNSで炎上すると学校も巻き込まれるからな。どういう教育しているんだ! って」
青木がため息交じりでそう言う。最近はうるさいからな……とうんざりすると共に、俺達の時代にSNSが未発達でよかったと思う。子供の頃の俺達のやる事なす事を思い出すと、炎上不可避な物ばかりだ。
だが鬼島はすでに定年しているから、炎上で学校に迷惑が掛かる心配は無いだろうに。
「前島先生って俺達が卒業した後、一回問題になったんだよ。先生が注意したところ生徒が怖がって不登校になっちゃったって」
「最近の子は繊細だからな」
「辰真たちが図太いだけ。それで前島先生は別の学校に行っちゃったみたい」
「なるほどね。でも最近の子は怒鳴られることは無いからな」
「いや、前島先生は怒鳴っていないよ。授業中、立ち歩きが酷いからちょっと厳しく言っただけらしい」
「えー! それだけで?」
「本当に辰真達の神経の図太さを、ほんのちょっとでいいから見習ってほしいよ」
やっぱり繊細だな。最近の子達って。そんなんじゃ社会を渡っていけないぞ。
「俺が先生になりたての時、教員の勉強会で前島先生に会ったんだ。その時もあまり元気が無かったんだ」
青木は寂しそうにそう言ったが、ちょっと笑った。
「でもさっきの前島先生、昔みたいだったね。小学生時代の前島先生とお前らの掛け合い、面白かったな」
青木は遠い目をしてそう言った。
俺達がそんな会話をしていると、一人の同級生の女性が「そういえばさー」と話しかけてきた。
「私の親戚って樹木医なんだよね。木の病気を治す人って奴。それでタイムカプセルを埋めた所に在った木が枯れる可能性がある話しがあったらしいよ。木の幹に大きな空洞があるからって。でも前島先生が色々と手伝ってくれたみたいで会ったらお礼をしておけよって言われたんだったけど、忘れちゃったな」
「じゃあ、あの木があるのは前島先生のおかげ?」
「うん。あの時は、うちらのタイムカプセルがあるから木を守ってくれたのかなって思ったけどね……。タイムカプセルが無かった時はあれ? って思ったけど」
「じゃあ、俺達がタイムカプセルを掘り起こす前の話しか」
「うん、そうなんだ。一度、親戚の人に聞いたんだけど肥料を埋める時、タイムカプセルが出てこなかったって」
俺はラインのアルバムに入れた先生方のメッセージを見た。やっぱりメッセージの一部に紙が貼っている。案の定、鬼島こと前島先生の所だ。もしかして……。
色々と考えを巡らせて俺は「なあ、青木」と話しかけた。
「先生が撮ったメッセージ、ちょっとピンボケしていない?」
「あー、本当だ」
「もしかしたら、先生はまだ帰っていないからメッセージを回収して俺が撮るよ」
青木の返事を待たずに、すぐさま一階の職員室に向かう。鬼島はまだ教頭先生らしき松木先生と話していた。
「お……前島先生。すいません」
危うく、鬼島って言いそうになって冷汗かいた。気を取り直して、俺は話し出す。
「先生が撮ったメッセージのピントが外れていたので、もう一回だけ撮り直してもいいですか」
「はあ? え、ああ、いいぞ」
そう言って模造紙を渡してきた。
よし、と思いながら視聴覚室へと向かう。……なぜか、鬼島もついてきたけど。
「こちらでメッセージを処分しますけど」
「はあ? 持って帰るよ。こういう物は安易に処分するのは忍びないからな」
昔の感性なのか、それとも……。
視聴覚室に戻って、俺は模造紙を広げる。そして俺は「ん?」と紙が貼られた部分を俺は見るとちょっと笑ってしまった。
「あ、おい! さっさと撮れよ」
「あ、すいません」
そう言いながら、俺は写真を撮った。
そして「先生、これって……」と紙が貼られた場所を指差すと、鬼島はバツの悪そうな顔になった。
*
タイムカプセルのメッセージの写真をすべて撮ってラインのアルバムにすべて収めた後日、俺は龍雅と竜太に消えたタイムカプセルの謎が分かったから飲み会しようと持ち掛けた。
居酒屋ではなく俺の実家で集まりお酒とおつまみを持ち込んで、飲み会を始めた。居酒屋の方が好きだけど、誰かが聞いていたら不味いからだ。守秘義務って言う奴さ。
「つまり鬼島は俺達のタイムカプセルを掘り出して自分のメッセージを直したのか」
「木が病気だからって言う建前で、木の医師が来る前に掘り起こしたのか」
俺はクスクスと笑いながら「そうなんだよね」と言った。
俺達の時代でもマズイ言葉だったけどSNSが無かったから問題は無かった。ところが今の時代だとうるさい。なので別の紙を貼ってメッセージを変えたのだ。
龍雅がビールを飲みながら、「はあ、みみっちい事するぜ」と言いながら話し始めた。
「と言う事は、鬼島は自分が書いたマズイメッセージが隠せていないから、俺達のタイムカプセルを別の所に埋めたって事?」
「いや、違うんだよね」
「え? 違うの?」
「木の治療の後に少し離れた所に埋めたんだ。でも鬼島が別の学校に行ってしまった後、その離れた場所に今度は花壇を作る話になって、また俺らのタイムカプセルが出てきちゃったんだ。その時にいた松木先生は何年前のタイムカプセルか分からず、体育館倉庫に保管しておいたんだって」
そうタイムカプセルを成人した俺達が掘り起こそうとした日に見た、あの花壇。そこは俺達が卒業した時は何もない場所だった。そこに鬼島は埋めて、学校を去った後、花壇を作ることになってしまったのだ。更に倉庫に保管しておいたはいいけど、松木先生はその事について一応別の先生に伝えたが、その先生は忘れてしまったようだ。
「はあ? 全然、出来ていないじゃん! 報連相!」
そう言って龍雅はぐびぐびとお酒を飲んだ。
「それで松木先生も小学校を去って、誰もタイムカプセルを知る人間が小学校に居なくなってしまったんだ。そして俺達が成人式で探したんだけど……」
「見つからなかった」
と竜太が呆れた顔で答えた。
これが俺達のタイムカプセルが無くなった真相だ。
俺達の思い出は変わらないけど、小学校はずっと同じではない。毎年とはいかないけど、ちょっと改築や新装したりと変化している。
そして先生達もずっと同じ学校にいない。当時を知る人が居なくなってしまえば、分からなくなってしまう。こうしてタイムカプセルは俺達の知らない間に別の所に行ってしまったのだ。
数奇な運命でようやく見つかったタイムカプセルだったが、今回埋めた子供の青木が先生になっているなど、当時を知っていた人間が揃っていたから真相にたどり着いた。運が良かったと言える。
さて、気になる事はまだある。
「ところで鬼島は最初、なんて書いたんだ?」
竜太が意地悪そうな笑みを浮かべながら聞いてきた。
ラインのアルバムにある鬼島のメッセージは一部紙の色が違う位しか分からず、最初になんて書いたのか分からない映りになっている。ちょっと書き損じたんだろうなって思う位だろう。
だが実物はちゃんと透けて見えた。
龍雅はニヤニヤ笑いながら呟く。
「炎上必須なメッセージだろうな」
二人の期待に応えないといけないな。
俺は「まあ、黙っていろって言われたけど……」と前置きをして言った。
「【悪ガキ共】さ」
答えた瞬間、全員が吹き出した。
「確かに今じゃ、炎上だわ」
「ははは、よく言われていたよな。悪ガキって」
「まあ、卒業の予行練習の時まで怒鳴られたからな」
「何だっけ? 龍雅が卒業生退場の時にクラッカーを鳴らしちゃったからだっけ」
「そうそう、それで卒業式の時に持ち物検査もして……」
「やった、あり得ねえよな。俺も鬼島も……」
思い出話も酒の肴にして、俺達の飲み会は続いていった。
誤字脱字報告、ありがとうございます




