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光闇戦線  作者: マキ
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光闇戦線4

四、壱樹と光雅


壱樹は自分の部屋に入り戸を閉めた。

『珍しいね。壱樹が人の頼みを聞くなんて』

壱樹の頭の中で声がする。

『身体が光でできてるなんて初めてみたからな。少し興味がある』

壱樹は頭の中で話しかけてきた人物に答えた。

『「興味がある」なんてそれこそ珍しいよ。龍の子を見たときも興味なさそうにしてたじゃん。』

『龍の子の存在は知ってたからな。光の身体は聞いたことも見たこともなかったし』

『確かに。けどオイラは光雅が光でできてることより、人となりが気に入ったなー』

『人となり?』

『うん。光雅って自分が何者なのかもわからず、ずっと1人で生きてきたんでしょ?それに、壱樹に初めて会ったときも同じ人間に会えて嬉しいってのは感じたけど、1人だった時期が寂しかったーって感じはしなかったからさ。1人で寂しがったりしないなんて珍しくない?』

『僕は1人が好きだけどな。まあずっとお前らがいたから本当に1人になったことないしわからないけど』

『そうだよね。でも、壱樹はオイラたちがいなかったとしても1人で大丈夫だったと思うよ。オイラは光雅から壱樹と似たような頼もしさみたいなのを感じた。だから気に入った!』

『まだ会って1日ぐらいだろ。人を見極めるのが早いんじゃないか?』

『そーだけど、壱樹は人を疑いすぎだと思う。依采ちゃんも言ってたみたいに歩み寄った方がいいんじゃない?』

『僕がしようとしていることは五大光家の考えに反することだ。僕が信用して目的を話したりしても敵になる人間の方が多いだろ』

『和勝班の人たちはそうでもないような気がするよ。だって和勝と偉零は弐樹(にき)のこと守ろうとしてくれたじゃん』

『そもそも弐樹があいつらと関わらなきゃこんなことにならなかっただろ。僕が二条家に戻る必要も弐樹があんな目にあう必要もなかった。話は終わりだ。そろそろ眠れ、参樹(みつき)

『…わかったよ』

そこから壱樹の頭の中で声はしなくなった。

―「和勝と偉零を守れ」―

壱樹は昔誰かに言われた言葉を思い出す。それは壱樹が昔から言われ続けている言葉だった。

(…うるせぇよ)

壱樹は心の中でそう呟く。そして任務前に仮眠を取ろうと目を瞑った。


 壱樹はインターフォンの音で目を覚ました。時計を見ると11時だった。光雅が来たようだ。壱樹は立ち上がり、ドアを開けた。

「おう、来たぜ」

ドアを開けた先では光雅が笑顔で待っていた。壱樹は了承したのは自分だが、本当に来たのか、と少し思ってしまい、短いため息をつき、

「行くか」

と言った。

「おう」

光雅は返事し、先に歩き出した壱樹の後をついていく。壱樹と光雅が向かったのは光雅が元々暮らしていた森だった。

「おお!俺が暮らしてたとこだ!」

「この森は闇獣が多いんだ。獣型のB級以上の闇獣も割といる」

「え、そうなの?俺、D級にしか会ったことないけど。C級にあったのも浪亜が初めてだったし」

「…そう言ってたな」

壱樹は修行場での光雅と依采の会話を思い出したが、どこか納得できていない様子で返事をする。

(この森は獣型のA級以上はそこまででないが、B級はうようよいるはずだ…)

壱樹はそう考え、『参樹、起きてるか?』と頭の中で呼びかける。

『起きてるよ。多分、光雅の光にびびってるんだよ。闇獣は強くなるほど光に敏感になるからね。今日の任務、東雲家の闇獣封印術の練習台にする獣型B級の闇獣を捕まえてくるんだっけ?光雅を連れてきたのは間違いだったかも』

頭の中で参樹が壱樹の疑問に答える。それを聞き、壱樹は「はあ」とため息をついた。

「何々、なんでため息?」

光雅は急にため息をついた壱樹が気になったが、頭の中での会話は光雅には聞こえていないので、その訳を知る由もなかった。

「紺丹」

壱樹がそう呟くと小狐が現れた。

「新野、悪いけど紺丹の空間の中に入っといてくれるか?」

「いいけど、なんで?」

壱樹は光雅の質問には答えず、光雅を紺丹の空間の中に入れた。光雅の姿が消える。壱樹は森の奥へ足を進めた。

しばらく歩いたところで鷹のような姿をした闇獣が3匹現れた。

(ちょうどいい、こいつらにしよう)

壱樹は東雲家に渡す闇獣を鷹のような姿をした闇獣にきめた。

「紺丹」

壱樹がそういうと、紺丹は光雅を異空間から出した。

光雅の姿が現れた瞬間、3匹の闇獣は一斉に光雅を威嚇し始めた。

「うわ、急に闇獣いるじゃん」

光雅は紺丹の空間から出てきたら闇獣に威嚇されたので、少し驚き、一歩後ろに下がった。

「壊龍」

壱樹は龍のような闇獣を呼び出した。壊龍は右腕と左腕で闇獣を1匹ずつ掴み、最後の1匹は噛んで動きを封じ、地面に叩きつけた。

「壊龍、戻れ。刄蜘蛛(ばくも)

壱樹は全長1メートルほどの蜘蛛のような闇獣を呼び出した。

刄蜘蛛は糸を吐き、3匹の鷹の闇獣を糸でくくりつけた。

「紺丹」

壱樹がそういうと、紺丹は「コン」と鳴き、糸で動きを封じられた闇獣を作り出した異空間に入れた。

「お、もう終わったのか。闇獣たちどうすんの?『闇躁光』ってやつ使うの?」

「いや、こいつらは東雲家に連れていく。東雲家は闇獣が入らない結界を作ったり、闇獣を封印したりできる家系なんだ」

「へー!じゃあそこに行って封印してもらうってことだな」

「そういうことだ」

壱樹と光雅は東雲家に向かった。東雲家はこの国を覆っている結界の東西南北それぞれの端に家が建っている。壱樹は1番近い北の家に向かった。東雲家に着くと、壱樹はインターフォンを鳴らす。インターフォン越しに壱樹は闇獣を連れてきたことを伝えた。インターフォンが切れ、壱樹たちは東雲家の人が出てくるまで待っていなければならないようだ。

光雅は壱樹の顔を見て驚いた。光雅は壱樹と会ってから見た表情はほぼ無表情だった。しかし、今の壱樹の顔には唯ならぬ殺気を感じた。それほど憎しみを含んだ表情だったのだ。

「壱樹!」

光雅は壱樹の表情を見て思わず名前を読んでしまった。壱樹はその声に反応し、横目で光雅を見る。

「お前、東雲家嫌いなの?」

光雅は思ったことをそのまま言ってしまった。壱樹は驚いて目を見開いた。

「なんで、そう思った?」

少し焦ったように壱樹が言った。

「いや、だって表情が…」

壱樹は表情に出ている気は全くなかったようで、さらに目を見開いた。

「別に、なんでもない」

壱樹はそれだけ言って光雅から目を逸らした。

「お待たせしました。闇獣を出してください」

東雲家の人が玄関から出てきた。壱樹は言われた通り紺丹の空間の中から3匹の闇獣を出した。壱樹の顔にはもう憎しみの表情はなかった。普段通りの無表情だった。

「あの、封印術ってどうやってるんですか?」

光雅は気になっていたことを東雲家の人に聞いてみた。

「それは、信頼に足る人物にしかお教えすることはできません。あなたはまだここへきたばかりだと伺っているので、もう少し任務をこなせば見る機会もあるかもしれません。しかし、あなたのことは疑っている人、警戒している人が多いのではないでしょうか、二条壱樹さん」

東雲家の人は最後の方の言葉を壱樹を見下ろしながら言った。

壱樹もじっと東雲家の人を見つめている。

「そうなの?壱樹はここで長いこと暮らしてるんじゃないの?五大光家の人間なんだろ?」

「そうですが。壱樹さんは生まれた時から二条家にいたのではないので、出生が謎でして。自力で扱えるようになるのは難しいと言われる五大光家の能力を完璧に扱えた状態で二条家に現れたので、ものすごく怪しいのです。DNAを確認したので二条家の人間であることは確かなんですけど、二条家を家出した人がいたのは70年ほど前でして、その人の子でしたらもっと年老いているはずなので誰の子?って感じなんです」

光雅はこんなに疑われているなんて気分悪いだろうな、と思い、少し壱樹に同情した。

「今日は任務ありがとうございます。私はそろそろ闇獣を家の中に入れるので、お帰りになられてください」

東雲家の人はそう言って頭を下げた。壱樹が歩き出したので光雅もそれについていく。

「壱樹が本当は敵だったとしたらさ、壱樹は闇獣の味方をしてるってこと?」

「まあそういうことになるだろうな」

「敵なの?」

「何でそんな直球に聞くんだ?嘘つくかもしれないだろ」

「嘘つくつもりだったのか?」

「いや、…人を襲う闇獣の味方になる気はないが、僕の目的を五大光家の人間が納得するとは思ってない」

「なるほど、五大光家の目的と壱樹の目的はちょっと反してるってことね」

「そんな感じだ」

「それって完全な敵ってわけじゃないんでしょ?ならいいじゃん。あ、俺お腹空いてきた。森でなんか探してこないとな」

「…学校に食堂という便利なものがある。そこに行けば食糧を探さなくても食事がとれる」

「便利だな!よし、そこにいこうぜ!」

「…行くか」

光雅と壱樹は2人で食堂に向かった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 光雅くんがちょっとずつ普通の生活に慣れていってるのが良いです!
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