光闇戦線16
十六、謎の石
男の斬撃が壱樹に当たる寸前、どこからか放たれた光の球体が斬撃に当たり、爆発した。壱樹は直接攻撃があったわけではないが爆発の勢いで吹き飛ばされる。何とか地面に足をつけて勢いを弱め、体勢を直した。
「おい、クソガキ無事か?」
和勝の声がした。先程の光の球体は和勝によるものだったようだ。
「致命傷にはなってない」
「はっ、そうかよ」
「お前、あれか?闇獣どもがやたら噂してる伝授光の使い手」
「へぇ。俺噂になってんのか。光栄だな」
「お前は俺の10%の力じゃ勝てないかもしれないな。俺はある罪を犯して、10%の攻撃力しか出せないんだ。もうすぐその期間も終わるけどな。今負けるのは嫌だからここは帰るわ」
男はそういうと姿を消した。
「あいつ、人型S級の闇獣だな。それもS級の中でもかなり強い」
和勝は男がいたところを見つめたままそう言った。
「先生!壱樹!大丈夫か?」
その声に壱樹と和勝が振り向くと、光雅と依采が走ってきていた。
「あ!壱樹くん、怪我してる。珍しい。大丈夫?」
「致命傷にはなってない」
依采の問いかけに壱樹はさっきと同じ答えを返した。
「でも、私の力で治してあげるね」
依采はそう言って力を使い、壱樹の怪我を治した。
「今日のS級のやつとか報告しなくちゃいけねーし、もう帰るか」
和勝がそう言って歩き出したので、依采と壱樹もそれに続く。
しかし、光雅が一向に歩き出していないのに気づき、壱樹は足を止めて光雅の方を向いた。
「新野?どうしたんだ?」
壱樹がそう言うと、光雅は地面に落ちた何かを拾った。
「この石、変な感じがしない?」
壱樹はそう言われて光雅の手元を見ると、一見普通の石のように見えるものがあった。
「いや、別に。ただの石にみえるけど」
「そう?なんか闇っぽいというか何というか。なんか変な感じするだよな」
「…新野がそういうなら、少し調べてみる。闇獣に聞いてみるから、それ、貸しといてくれ」
壱樹がそう言ったので、光雅は石を壱樹に手渡した。
「おーい!二人で何してんのー!」
依采の声を聞き、光雅と壱樹は和勝と依采のところへ向かった。四人で学校に行き、任務の後は授業があったので、授業を受けた。夕方になって授業が終わると、光雅は壱樹と途中まで話しながら寮の部屋に戻った。光雅は今日手に入れたスマホを少しいじったが、あまり使い方がわからなかったので、晩御飯を食べて、お風呂に入り、もう寝てしまうことにした。
トン、トン
どこからか音が聞こえる。光雅はその音で目を覚ました。
トン、トン
また音がしたので、その方向を見ると、窓があり、窓の外には紺丹がいた。
(この狐、壱樹の闇獣だ)
光雅はそう思い、窓を開けた。紺丹はコン、と一鳴きし、部屋には入らず、外の方に窓のふちから降りた。そして、尻尾を振りながら光雅の方を見ている。
(ついてこいってことか?)
光雅はそう考え、窓から部屋の外に出た。すると紺丹が走り出したので、光雅もその後に走ってついていく。紺丹は学校の校舎裏までくると、足を止めた。校舎裏には滅多に人が来ない。しかし、今は一人の少年が校舎裏に立っていた。それは壱樹だった。
「光雅!来てくれてありがとう!紺丹も連れてきてくれてありがとね」
壱樹の姿ではあるが、光雅への呼び方も話し方も光雅が知っている壱樹ではなかった。
「壱樹?お前、壱樹じゃないのか?」
光雅がそう聞くと、壱樹の姿をした少年はニッコリと笑顔を浮かべた。いつも無表情な壱樹を見ている光雅にとっては違和感しか感じない。
「オイラは、壱樹じゃないよ。壱樹の体ではあるけど!オイラは参樹!よろしく〜」
参樹と名乗った少年は元気にそう言った。
「参樹?壱樹と名前ちょっと似てるな」
「うん!だって兄弟だし!」
「何で兄弟なのに壱樹の体で話してるんだ?」
「うーん。元々は三つ子として生まれるはずだったんだけど、色々あって、壱樹の多重人格みたいになった!」
「…その色々が知りたいんだけど…」
「えー。説明するのちょっとめんどくさい!オイラには、その事より光雅に言わないといけないことがあるから!」
「言わないといけないこと?」
「うん。聞いてくれる?光雅が見つけた石のこととオイラたちのお願い」
参樹の顔がそれまで、無邪気で楽しそうな笑顔だったが少し真面目な顔になった。光雅はその顔を見て、参樹がこれから話すことは、参樹たちにとって、とても大事なことなのだと悟った。