光闇戦線12
一二、五大光家
「これから五大光家の会議を始める。全員、揃っているか?」
和勝と偉零が戻ってきてすぐに会議が始まった。進行役は聖家の当主だった。
「都和だけ来ていない。あいつはどこで何やってるんだ。S級ともなろう男が」
龍福家の当主で、和勝の父である龍福和平が言った。光力を使える能力者にも闇獣と同じように階級があり、Aが強くDが弱いというふうになっているが、Sは飛び抜けて強い能力者が持つ階級だ。S級は現在五人いて、和勝もその一人である。
「流石龍福の血を持つ者、集合時間も守れないんですね〜」
二条家の当主が煽るように言った。
「東雲家の血筋でもあります。失礼なこと言わないでください」
東雲家の当主が言った。
「そうは言ってもS級だ。龍福家にはS級が二人もいるんだ。二条家には一人しかいないだろう」
和平が言った。
「はいはーい!それ、僕のことだよね?僕、S級だもんね!和勝くんとどっちが強いかな?」
大きく手を上げた黒髪に青い眼の女、二条三花が言った。僕、と言っているが女である。
「それは俺の息子に決まっているだろう」
「えぇー、でも、僕の方が歳上だし、経験積んだると思うんだよね」
「たった一年だけだろう」
「皆さん、静粛に」
それまで黙っていた聖家の当主が言った。
「まず、話しておかなくてはいけないのは、弱まったと思っていた闇獣の力が、最近強まってきたのです。長らく見ていなかったS級の闇獣の姿も探索班から見たという連絡が来ていました」
探索班とは主に闇獣から守る結界の外で活動している部隊だ。
「ギリギリ壊されなかったのですが、結界に強い攻撃をされた形跡がありました」
結界を張ることができる能力を持つ東雲家の当主が言った。
「結界を強化しなければ壊されるのも時間の問題だな」
「そうですね。早めに手を打たなければ。宗方家の予知の新しい情報はありませんか?」
聖家の当主が宗方家の当主に聞いた。
「どういう意味なのかは分かりませんが、予言の言葉を最近聞きました。言いますね、『四人の光の使者が協力者と共に光の玉持ちて闇の王を滅さん』」
「光の使者?」
「光の玉?」
部屋の中で困惑の声が飛び交った。
「光の使者とやらを見つけなければならないようですね。怪しいと思う人物がいればご報告を。まあ私たちに判別する術はありませんが」
「でもまあ予言が俺たちにできそうなことじゃなかったし、今まで通りやっとけばいいだろ」
「二条は相変わらず適当だな」
二条家の当主の言葉に和平が呆れたように言った。
「とりあえず私たちにできることを今まで通りやっていきましょう。闇獣の力が強まっていたとしてもやることは変わりません。他に話しておくことはないですか?」
話すことがなかったようで、五大光家の話し合いはこれで終わった。
*****
「…光雅くん、早く帰るよ。五大光家の人に見つからないように…」
話し合いが終わった途端、右大が言った。右大がすぐに動き出したので、光雅も後を追いかけた。右大は龍福家の家を出て、しばらく走った後、ようやく止まった。
「…ここまでこれば、大丈夫そう」
「見つかったらそんなに怒られるんですか?」
「…わかんないけど、五大光家の人たちは僕みたいな一般人と一線引いてるとこあるからね。それに、左紀ちゃんに見つかったら、話し合いごときで心配しないでくださいって怒られそうだし。心配して何が悪いって感じなんだけど…。そりゃただの話し合いだし、なんも危険なことないかもしれないけど、僕が気づかないうちに何かあったら嫌じゃん…」
「宗方先輩がすごい大切なんですね」
「…だって僕にとっては恩人…みたいな者だから…」
「恩人?」
「右大、お前また覗き見してただろ。光雅もついてきやがって」
光雅と右大が話していると後ろから声がかかった。振り向くと、和勝がいた。
「和勝先生、やっぱバレてた?」
「あんま舐めんじゃねぇよ。普通に気づいてた。見てたんなら聞いてたよな、予言」
「あの光の使者?みたいなやつ?」
「そうだ。俺はその一人がお前だと思ってる」
「え?」「…え」
光雅と右大が驚きで声を上げる。
「なんでそうなんの?俺、光力のことも最近知ったばかりなんだけど、光の使者も初耳だよ」
「それはお前の体が光でできてるからだ」
光雅と右大は和勝の言葉に一瞬固まり、そして、
「はあぁぁぁぁぁぁ」
叫び声を上げた。