光闇戦線11
十一、守れなかった悔しさ
和勝が目を覚ますと、ある部屋にいた。その部屋が龍福家の部屋だということだけはわかった。部屋の扉には張り紙が貼ってあり、「俺が開けるまで部屋から出ることは許さん」と書かれていた。和勝は友を失ったことへのショックで何もする気が起きなかった。そして、封印の影響なのか、――の顔も名前も思い出せなくなっていた。和勝が部屋にあった布団に寝転び丸くなっていると、窓を叩く音がした。和勝はゆっくりと起き上がり、窓の方へ行き、窓を開けようとするが、鍵がかかっていて開けられなかった。
「鍵かかってる?そのままでいいから聞いてもいい?」
その声は偉零だった。
「偉零か。怪我大丈夫なのか?思いっきり蹴られてただろ」
「ちょっと痛いけど、大丈夫。和勝は大丈夫?」
和勝は正直大丈夫ではなかった。身体の方ではなく、精神的ショックが大きかった。しばらく黙り込み、気づいたら質問の答えとは違うことを口にしていた。
「ごめんな。二人のこと、守れなくて」
「え?」
「俺がヘマして見つかったんだ。それに、あのクソ親父と全然戦えなかった」
「それをいうなら俺のほうが足手纏いだったよ!」
「俺は強いんだからちゃんと守らなきゃいけなかったんだ。偉零のこともあいつのことも」
「俺も守れなかったんだよ。和勝だけの所為じゃない」
「いや、偉零は弱いんだから、俺がちゃんとしなくちゃいけなかったんだ」
「なんだよ、それ」
偉零は傷ついたような、少し怒っているかのような震えた声で言った。そこからしばらく沈黙が続いた。和勝はその沈黙が嫌になり、偉零に言った。
「偉零、悪い。もう一人にしてくれ」
「…わかった」
偉零はそう言って帰って行った。和勝は1週間ほど部屋から出してもらえず、偉零も会いに来ることはなかった。部屋から出て、久しぶりに偉零に会ったときは普段通りだった。しかし、――のことはあまり二人とも口に出さないようにしていた。楽しい思い出もあるが、嫌な記憶を思い出したくないと無意識に思っていたのだ。
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和勝は――との思い出を思い返し、表情が曇った。偉零も同じような表情をしている。二人にとってあの日のことは相当悔しい出来事だったのだ。二人は何も言わず龍福家の家に向かって歩き出した。