光闇戦線10
十、苦い記憶
和勝は気がつくと、窓は一つもなく、扉は一つしかない部屋に倒れていた。横を見ると偉零が自分と同じように倒れている。和勝は父親に殴られたことを思い出し、急いで起き上がり扉を開けようとした。しかし、扉には鍵がかかっており、開かなかった。
「くそっ!」
和勝が怒鳴りながら鍵がかかっている扉を開けようとしていると、偉零も目を覚ました。偉零はすぐに状況を理解し、和勝と力を合わせて扉をこじ開けようとする。しかし、何度やっても開かなかった。そのとき、誰かが扉の前を通り、扉の向こうの音を気にしたのか、誰かいるの?と聞いてきた。その声は和勝の四つ下の従兄弟である都和だった。都和は従兄弟ではあるが、東雲と龍福の間に生まれた子供なので、東雲家に住んでいる。
「都和!ここを開けろ!」
「和勝?わかった、ちょっと待ってて」
都和はそういうと一旦扉から離れ、どこかに行った。しばらくすると戻ってきて、扉を開けた。鍵を取りに行ってくれていたようだ。和勝は扉が開いた瞬間、すぐに駆け出し、――がいそうな東雲家の地下に向かった。偉零は都和にありがとう、とお礼を言い、和勝を追いかけた。東雲家の地下では闇獣の封印が行われている。和勝たちが地下へと続く階段の近くまで来たとき、五大光家の能力者たちに行手を阻まれた。和勝はすぐさま能力で風や電気など作り出し、能力者たちに対抗する。和勝はこの頃から並の能力者たちには余裕で勝てるほど強かったが、敵の数も多く、偉零を守りながら戦ったので、かなり手こずった。時間はかかったが、なんとか全員倒し、地下への階段を降りる。地下は暗く、ろうそくの微かな光が道を照らしていた。和勝と偉零はとりあえず道に沿って歩いてみる。牢屋のような場所があり、その中に闇獣たちがいた。闇獣たちはピクリとも動かず、牢屋の中に蹲っている。かろうじて息はしているのだが、生気が全く感じられない。――の姿は見えなかったので、和勝たちは奥へと進み続ける。そのとき、――の悲鳴が聞こえた。和勝たちは足を速め、悲鳴が聞こえた方へ向かった。たどり着いたところにいたのは、一つの牢屋の前に立った和勝の父と封印をかけようとしている東雲家の能力者だった。牢屋の中には――の姿が見える。
「来たか。バカ息子」
和勝の父親は振り向いてそう言った。
「父さん、やめろ!そいつは闇獣だけど、いいやつなんだ!」
「闇獣にいい奴なんぞいるはずがない。いつも言っているだろう。さては、お前が息子に余計なことを吹き込んだな」
和勝の父親がちらりと偉零の方を向いたかと思うと、偉零は和勝の父親に蹴られ、吹き飛ばされていた。偉零は衝撃で意識を失った。
「偉零!…何すんだてめぇ!」
「二条家の分際で息子に関わってきた罰だ」
和勝は父親の言葉に苛立ち、光で刀を作り、父親に斬りかかった。刀は避けられたが、電気を纏わせていたので、その電気が僅かにあたり、父親の動きが鈍る。和勝はその隙に封印をかけている東雲家の能力者にも斬りかかり、封印を止めようとする。しかし、すぐに体制を整えた父親に腹を蹴られ、吹き飛ばされてしまう。和勝はギリギリ意識を保ち、起き上がる。そのとき、牢屋の中が鋭い光を放ち始めた。――が悲鳴を上げた。封印がもうすぐ完了してしまうようだ。和勝は最後の力を振り絞り、風と電気と火を合わせた球体を作り、思いっきり東雲家の能力者に向かって放った。その攻撃は東雲家の能力者には当たらなかった。和勝の父親が腰につけていた刀を抜き、球体を斬ったのだ。牢屋の中の光が消え、――が少しも動かなくなった。和勝がここに来るまでに見てきた闇獣と同じ状態だった。
「うわぁぁぁぁぁぁあ」
和勝は叫び、いつのまにか意識がなくなっていた。