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光闇戦線  作者: マキ
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光闇戦線1

一、出会い


――遥か昔、闇獣と呼ばれし生き物が現れました。闇獣は闇の力で人々を襲いました。人々は闇獣に立ち向かう術を持っていませんでした。それを見かねた神様は5人の男に光の力を与えました。力を与えられた5人はそれぞれ別の能力を得ました。1人は傷を癒す力、1人は闇獣を封印するする力、1人は危険を予知する力、1人は闇獣を従える力、最後の1人は継承する力を得ました。5人は力を合わせて闇獣と戦いましたが、闇獣たちの力は強大でした。5人だけでは倒せないと悟った5人の男たちは封印する力で人々を守る結界を張り、家族をつくり、子孫に自分たちの力を受け継いでいくことにしました。いつか闇獣を殲滅できる日を信じて…――


「へぇ。こいつら闇獣っていうのか」

金髪の少年は森で拾ったボロボロの絵本を読んでつぶやいた。そして近づいてきた虫のような姿、しかし、虫にしては体が大きい生き物を叩いた。叩かれた闇獣は跡形もなく消えた。

 少年は1人森で暮らしていた。森で暮らし始めたのは2年前からだ。しかし、2年前より前の記憶が少年にはなかった。薄暗い森の中で輝いて見える少年の金色の髪に惹かれるように近づいてくる闇獣を倒しながら生きていた。少年は自分以外の人間を見たことがなかった。偶々拾った絵本を見る前までは自分と同じ形をした生き物がいるかどうかすら危ういと思っていた。絵本を見つけたことで自分と同じ形をした生き物、人間がいることを知った少年はそのことを少なからず嬉しく思っていた。

 少年は絵本を大切にしようと、絵本をリュックにしまった。このリュックは2年前森で目覚めた時から持っていた。どこで手に入れたのかは全く覚えていなかった。少年はリュックを背負い歩き出した。今日の食糧を探しに行こうと思ったのだ。そのとき、背後から何者かの気配を感じた。振り向くと狼の姿をした闇獣がいた。少年は驚いた。闇獣は2メートルほどの大きさだった。そんなに大きな闇獣には少年は出会ったことがなかった。少年は闇獣を倒そうと手のひらを闇獣に向けた。少年の手のひらが金色に光り、光の球体が出現した。その球体が闇獣に向かって放たれた。闇獣は球体を避け、少年に近づき、少年を爪で切り裂いた。少年を切り裂いた闇獣の爪は欠けたが、少年は腹を深く切り裂かれ、大量の血を流して倒れてしまった。

「痛っ!くそっ」

少年は立ちあがろうとしたが、腹の傷が邪魔をした。闇獣はもう一度少年を切ろうと腕を振り上げている。そのとき、狼のような闇獣の横から龍のような闇獣が現れ、狼のような闇獣に噛みついた。

「え」

少年は信じられない光景に思わず声を上げた。そして、龍のような闇獣の姿をよく見た。その後闇獣の背には小柄な黒髪の少年が立っていた。そのとき、少年は記憶上初めて自分以外の人間の姿を見た。

「お前、大丈夫か?」

黒髪の少年が問いかけてきた。少年は腹が痛くて仕方がなかったが、「大丈夫」と答えようとした。しかし、それはできなかった。答える前に少年は意識を失った。


―少年が目を開けると、周りの景色は全て金色だった。初めて見るところだった。しかし、少年はどこか懐かしさを感じた。少年がしばらく金色の景色を見渡していると、急に女の人が現れ、抱きしめられていた。金髪の長い髪の人だった。少年は急に抱きしめられ驚いたが、どこか自分がその温もりを求めていたような気がした。金髪の女性は少年を抱きしめながら耳元で囁いた。

「……お願いね。私の希望」

 その言葉を聞いた瞬間少年の視界は真っ暗になった。―


 少年は目を開けた。目の前には木製の天井がある。なにか暖かい柔らかいもの上で寝ているようだ。身体の上には真っ白いふわふわしたものがかけられている。少年は真っ白のベッドの上にいた。腹はもう痛くなかった。寝ている間に治ったようだ。

「お、起きたか?」

 横から声が聞こえた。頭を動かし、少年が声の方を向くと、赤い髪の男がこちらを見ていた。少年は赤い髪の男の背後に先ほどあった黒髪の小柄な少年がいるのに気づいた。

「あ、お前!さっきはありがとう!」

 黒髪の少年を目にした瞬間少年はすぐさま上半身を起こし、お礼を言った。長い間自分以外の人間を知らないままだった少年は初めて会った人間である黒髪の少年に特別感のようなもの感じていた。勢いの良すぎるお礼に黒髪の少年は顔を少し引き攣らせたが、すぐに無表情に戻り、

「うん」

 と、短く頷いた。

「俺は龍福和勝(りゅうふくわかつ)。そっちの黒髪のやつは二条壱樹(にじょういちき)だ。お前は?」

 赤髪の男が自分の名前と黒髪の少年の名前を教えてくれた。

「俺は新野光雅(しんのこうが)

 少年も名前を教えた。少年は名前だけは覚えていたのだ。

「光雅か。お前に聞きたいことがある。闇獣の爪が欠けていた。何か心当たりはねぇか?」

 和勝が聞いた。

「心当たりというか、そういうもんじゃないのか?いつも闇獣は俺の身体に触れたら勝手にダメージ受けてたんだけど」

「へぇ。そうなのか。もう一つ聞きたいことがある。何故結界の外にいた?」

光雅は和勝が言っていることの意味がわからなかった。結界とはなんのことだろうか。

「結界?ってなに?俺は気づいたら森の中にいてそこから1人で生きてきたからなんで森の中にいたのかわからないんだ」

「なるほどな。記憶喪失ってことか」

和勝はそう呟くと少し考え込むような素振りを見せた。

「お前、俺が教師をしているんだが、光力を学ぶ学校、光神高校に来ねぇか」

「光力?」

「光力もしらねぇのか。光力はお前が闇獣を倒すために使ってきた力だ」

あれは特別な力だったのか、と光雅は思った。光雅は自分が座っているベッドの敷布団を少し撫で、初めて会った人間である壱樹を見た。壱樹は視線に気づき、少し顔を顰めた。なんでこっちを見るんだ、と言いたげな顔だった。光雅はあの森で1人で暮らしていくより学校とやらに行ってた方がマシなような気がした。

「その学校、行くよ」

光雅はそう答えた。

「おお、それはよかった。学校の説明をしたいところだが、それは明日にしよう。まずはお前を部屋に連れて行かねぇとな。今日はゆっくり休んでくれ。おい、偉零(いお)、きてくれ!」

和勝に呼ばれ入ってきたのは青い長髪の男だった。

「どうした?和勝」

青い髪の男、偉零が聞いた。

「光雅を部屋に送ってやってくれ。こいつはこれから俺たちの仲間になる」

「わかった。行こう、光雅くん」

光雅はベッドから降り、偉零の後についていった。


「おい、クソガキ」

光雅たちが出ていったのを確認し、和勝が壱樹言った。

「なに?」

壱樹は「クソガキ」と呼ばれたことを少しも気にする様子はなかった。

「…あいつ、光雅はただの人間だと思うか?」

「いや、多分違う」

「だよな。身体に触れただけで闇獣がダメージを受けるなんて聞いたことねぇ」

和勝も壱樹も光雅がどんな生き物なのか予想はついており、それは2人とも同じ答えだった。しかし、お互いに考えた答えを口には出さなかった。

「はぁ、お前と2人きりとか嫌だし、さっさと部屋帰れよ」

和勝は壱樹に対して怒りを含んだ声でそう言った。

「うん。おやすみ」

壱樹は全く気にしていないかのように普通に返事をして部屋を出ていった。1人になった和勝は先程は口にしなかった答えをつぶやいた。

「あいつの身体は、光でできてる」


「光雅くん、ここが君の部屋だよ」

偉零はそう言って光雅の部屋の戸を開けた。光雅は部屋の中を見て、目を輝かせた。先程寝ていたベッドのような立派な家具たちが置かれていたからだ。

「おお、いい部屋だ!ほんとにここ使っていいのか?」

「もちろんだよ。君は明日から大変になるだろうから、今日はゆっくり寝てね」

偉零は光雅に笑いかけながらそう言った。

「そんなに大変なところなの?」

光雅は偉零の「大変」という言葉が気になり、偉零に聞いた。

「君がこれから所属する班は色々問題があってね」

「え、どんな?」

光雅は少しこれからの生活が不安になってきた。森の方が楽だったら嫌だな、と思った。

「さっき会った和勝と壱樹はすごく仲が悪いんだ。まあ、一方的に和勝が嫌ってるんだけど。」

「なんで?」

「それは、家同士の対立があるから…いや、違うな。多分、俺のせいだな」

偉零は俯きながらそう言った。光雅は出会ったばかりで3人の関係性がよくわからなかったが、人間関係っていろいろ大変なのかも、と思った。今まで他人と関わりのない日々を暮らしてきたので、上手く生活できるか不安になってきた。

「まあ、とりあえず今日はゆっくり休んでね。また明日」

偉零はそう言って去っていった。光雅はとりあえず部屋に入り、戸を閉めた。そして、すぐにベッドに寝転び、寝てしまおうかと思ったが、やめた。光雅は部屋の中を見て回り、お風呂を見つけた。今まで一度もお風呂に入ったことがなかったが、森の中にいたときは不思議と臭くなったりはしなかった。光雅は、普通の生活がわかっているかのように、風呂に入り、身体を洗い、部屋に置いてあった新しい服に着替えてベッドに入った。そして、目を瞑った。


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[一言] 続きが気になります!次話更新待ってます!後、主人公の人柄が好きです!
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