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76話 家飲み(上)

誰かを招いての家飲み。最近していないなあ。


次話(77話)は明後日の金曜日に投稿予定です。

「やあ、いらっしゃい」

 午前10時過ぎ。下宿にディアさんとベルさんがやって来た。


「レオン、久しぶり」

「久しぶり」

「今日は、2人とも美しいですね」

「今日()とはなんだ、今日()とは?」


「いやあ。いつも魔術士のローブか、運動着姿ですからね」

「ははは。まあそうか」


 その声が聞こえたのか、奥からリーアさんが出てきた。


「お世話になってるリーアさんです。こちらは同級生のディアさんとベルさんです」

「よっ、ようこそ」

 リーアさんの顔が固い。

「こんにちは」

「こんにちは、騒がしくないようにしますので」


 リーアさんがすすっと寄ってきて、僕の腕をひっぱる。

「同級生と聞いてはいたが、女なのか」

 小声だ。


「ああ、僕の部屋は3階です。おふたりは先に行ってください」

 昇っていた。


「見ての通りですが」

「おまえというやつは」

 昨日も、アデルを送って帰ってくると、結構説教された。


「いや、本当に彼女たち()、単なる同級生ですって」

「じゃあ、なんでみんな美人なんだ」

「それは……まあ、偶然というか」


「くぅぅ。アデルを泣かすんじゃないぞ!」

「いや、彼女には今日来ることは言ってありますよ」

 何か(にら)まれた。僕が風邪で寝込んだときに意気投合したようで、リーアさんとアデルは認め合っているようだ。


「わかった」


 腕を放してくれたので、小走りで追いかけ、3階にたどりつく。


「すみません。今、開けます」

「あのリーアさんって人。なんだって?」

「んんん、同級生が来るとは言ってあったんですが、どうも男だと思っていたようで」


「まあ……普通そう思うよな」

 あきれ顔のベルさんの言葉に、ディアさんもうなずく。


「まっ、まあ、入ってください」

「「お邪魔します」」

「部屋は、まっすぐです」

 2人とも、辺りを物色している。


「こちらがお手洗いです……つきあたりに行きますよぅ」

 そう言ったにもかかわらず、2人は立ち止まった。

「こっちは?」

「寝室ですが」

「入っても?」

「おい、ベル!」

「だめです」

「えぇぇぇ……」

 えぇじゃない! 入ってどうするんだ。


 居間に案内した。

「広ーーい」

「確かに1人で住むには、ずいぶん広いわね」

 驚いたように、見回している。


「長椅子もあるし。こっちには、言っていたとおり、小さい台所まであるよ」

「うわっ、本当だ」

「いやいやいや。おかしいでしょ。奨学金をもらっている学生の住むところじゃないって。だいたい家賃はいくらよ」

 鋭いところを突いてきたな。


「さあ……」

「さあって、どういうこと。ねえ、ディア」

 ベルさんに気押されて、彼女もうなずいた。


「奨学金に入っているんですよ。家賃、光熱費、食費は」

「「うそぉ!」」

 まあ確かに、そう思うよな。


「でも、卒業してから、返済が大変だぞ」

「ですね」

 うなずいておく。返済が不要ということは黙っておこう。言ったら、怒って帰ってしまいそうだ。


「あと、変なのは」

「はっ?」

「部屋がきれいすぎるだろう。どう見ても1人住まいの若い男の部屋には見えない」

 偏見だ!

 例えばハイン兄さんは、すごくきれい好きだぞ。


「たしかに。ベルの部屋よりきれいだよな」

「おい、ディア」


「ベルの部屋はともかく。レオンはそこまできれい好きには思えないんだが」

 正解。

 どうして、そう判断したのか()いてみたい。だが今は。


「いやあ、さっきのリーアさんが、週2回掃除に入ってくれるんです。寝室まではやってくれないので。それなりです」

 最近は……なんか、アデルさんもここに来た時は、掃除し始めたからなあ。

 これからは、がんばらないとなあ、寝室も。


「へえ、ますます見てみたいんだけど。寝室」

「だめです」


「ふん。レオンは世話焼きの年上にコロッと引っかかりそうだけどなあ」

「ははは」

 引っかかるかどうかはともかく、好きになったのは事実だ。


「ディア、紅くなるな。おまえのことじゃない」


「そっ、そうか。まあ、ベル。今日は、レオンとの親睦を図るために来たんだからさ」

「そうだけどさあ」

「言いあっているうちに、お昼になっちゃうぞ」

「うっ、それは、そうだな」

「レオン。台所を借りるぞ」

 皆で、流しまで歩いていく。


「鍋とかの調理道具は? あるって言ってたよな」

「下の扉の中に入っています」

 2人がしゃがんでのぞき込む。

「おおぅ、本当だ。けっこうそろっているわ」

「じゃあ、始めよう。ああ、レオンはあっちで座って待っていてくれ」


「それじゃあ。おまかせします」

 3人で作業するには狭いしな。

「レオン。大船に乗ったつもりで、大丈夫だ」

 信用していないわけではないが、朝市場で肉串とかは買ってある。

 不要だったら、また後日に食べれば良いし。


 大丈夫かなあと思っていたが、意外と手際よく作られていく。

 主にディアさんがやっているが。

 ちゃんと調理を普段からしているようだな。ベルさんも参加はしているが、やっている作業は洗い物中心だ。


 ベルさんと目が合う。

「なんだ、レオン。言いたいことがあるなら、はっきり言え」

「はい。しっかり作業を分担されていて、すばらしいなと」

「だろ!」

 うれしそうだ。


「レオン、ベルを余り甘やかさないでくれ、野外演習では食料確保も課題になるんだ」

「野外演習?」

「演習は春だろう? まだ時間はたっぷりあるし。ディア、私と一緒の班になるよなあ」

「はいはい」


 理工学科には、野外演習なんて行事はなかったような気がするが。


「よし、ベル。この皿を運んでくれ」

「御心のままに」

 それから10分もしない内に料理ができあがり、皆で食卓を囲んだ。

 2人のグラスにワインを注ぐ


「それでは、レオン」

「僕がですか?」

「レオンの部屋だろう?!」

「はい」


「ディアさん、ベルさん。ようこそ僕の部屋へ。さっきから良いにおいがしているので。早速食べたいです。おふたりは、支障なく帰られる程度に飲んでくださいね。乾杯」

「「乾杯!!」」


「旨っ!」

「うむ。良いワインだな。瓶を見せてくれ」

「どうぞ。ベルさん」

 渡す。


「むう」

「どうした?

「いやあ、ブラウム村産だ。483年製……6年物だ」

「あと3本もあったが、すごいのか?」

「なかなかだ。逸品とまでは行かないが、少なくとも学生がガブ飲みするようなワインじゃないぞ」

 2人は、こっちを向く。そうか、貴族だった。ワインにも詳しいだろう。


「まあ。魔獣狩りで、少し(もう)かったので。いただきます」

「おお」

「レオン、ありがとう。でも、お金はしっかりためておかないと、あとで困るぞ」

「了解です」


「ディア、ディア。年上ぶった女は嫌われるぞ」

 ディアさんは、途端に顔を(しか)めた。


「おいしい」

 ディアさんの表情が戻る。

「そうか?」

 肉を焼いてから、辛めのソースで煮込んだようだ。酒が進む。

「いやあ。調理中の手付きから見て、おいしいんだろうと思っていましたが。やりますね、ディアさん」

「おっ、おう。ありがとう」


 紅くなった。顔に出やすい性格のようだ。

「そうなんだよ。ディアの美点だよな。残念ながら、貴族の間では余り自慢にはならないけどな」

 ディアさんもうなずく。


「そうなんですか? ここの館の主人である、男爵夫人の料理もおいしいですよ」

「えっ? ここは、男爵様の家なのか?」

「いえ。未亡人ですけどね」

「そうなのか」

「ちなみに、その男爵夫人は、料理の腕を自慢したか?」

 ふむ。


「されてないですね。趣味だとおっしゃっていましたが」

「だろう。貴族は、家事は召使いに任せるというのが表向きだ」

「正直なところ、准男爵家ではそうでもないが」

 そういうことか。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2024/02/21 題目に話数が抜けていた

2025/04/09 誤字訂正 (Ellさん ありがとうございます)

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