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64話 魔導アイロン(1) 分解

分解好きですねえ。自作PC作るのもある意味、分解が好きだからだろうし。

 翌日。水曜日なので、普通に大学へやって来た。1限目が終わり食堂に来た。


「よっ! レオン」

「こんにちは。ベルさん、ディアさん」


 テーブルに着くと、向かい合わせの席に2人がやって来た。

「ああ。今日は肉料理か、私たちは野菜だ」

 彼女たちとは並ぶ列が違って居たようだ。


「ん?」

 ベルさんの顔が素早く動く。


「ディア、襟元! レオンが見てるぞ」

「あっ、ああ」

 あわてて、ディアさんがシャツの襟ボタンを留めた。

 なんだか少し赤くなっている。

 言われてみれば、胸元の開襟具合が広かったかな。


「1限目は、たくさん走らされたからな。暑いのはわかるが。ちょっとはしたなかったな。レオンもだ!」

「えっ?」

「女子の胸元を凝視するのは良くないぞ」

「いや、レオンは悪くない。だ、男子として、そっ、その自然な反応だ」


 ふむ。ディアさんに理解があってうれしいが。

 なんだか。僕がディアさんの胸元を見ていたことになっている。確かにその周辺を見ていたが。


「まあな。14、5の男なんて、猿だって言うからな」

 猿?

 猿は絵本では見たことがあるけれど。ベルさんの言い方からして、侮蔑に違いない。


「いやあ、レオンはそんなことをしないよな?」

「ええと。何のことでしょう? エミリア周辺に猿は居なかったので」

「いっ、いや。ベル、変なことを言うな!」

「ははは」


「あと。僕が見て居たのはシャツの襟です」

「襟?」


「実は、魔導アイロンの改良を考えていまして」

「アイロン?」

「はい。いつもディアさんのシャツはパリッと伸びていますけど」

「おっ、おう」

 なぜか、ますます赤くなった。


「ご自身で、アイロンを掛けているんですか?」

 するとディアさんは、持ったスプーンをあわてて何度か口に運び、スープを飲み込んだ。


「ばっ、バカにするな。私だって、それぐらいはする」

 その横で、ベルさんは、やや下卑た笑いを浮かべている。

 ムキになって言うところをみると、寮に入る前はたぶんやっていなかったな。それでもリーアさんにお世話になっている僕に比べれば何倍も立派だ。


「そうですか。()きたいのですが、シャツのアイロン掛けをするとき、何か困ることはないですか?」

「おお? なんだ。本当にディアのでかい胸を見ていたわけじゃないようだぞ。残念だったな。うふふっ」

 ディアさんは、ギロッとベルさんをにらんでから、僕に向き直った。


「ああ。困ることな。そうだなぁぁ、慣れて来てはいるんだが。私もそれほど熟練ではないんだ。だから、その。失敗して、いったんしわが寄るとだ、そこがなかなか伸びなくてな」

「そういう時は、霧吹きで水を吹き付けてやると良いんだぞ」

「知ってるよ! ベル」

 あれっ? ベルさんも自分でアイロン掛けをやっているようだ。

 ちょっと意外に思ったが、表情には出さない。


 そうか。やっぱりしわか。ふむ。


「参考になりました」

「おう。何か知らないが、がんばれぇ」


     †


 昼食の後は、近くの購買部に行く。

 入口付近は、食料・飲料品と文房具の棚が並んでいる。向かうべきところは奥だそうだ。

 あった。

 魔道具品売り場。ベルさんが、結構な魔導生活用品が揃うとさっき教えてくれたのだ。


 ふむ。そんなに広くはないけれど、品揃えが良い。

 ローズル叔父さんの店よりも良いな。まあ、あそこは店頭には置いてはいないが、在庫はあるけどね。


 魔石に魔結晶は鉄枠のガラス棚に入っている。魔導コンロ、魔灯……あった。魔導アイロン。

 リーアさんから、昨日借りた物は朝に返したが、あれに比べると小さいな。たぶん中に入っている蓄魔力魔石が少ないのだろう。


 違う製品だが買っていくか。返したやつは、普段使っているので、分解も改造もできないからね。


 ええと。1台6セシル(≒千円)40ダルク(≒十円)か。結構良い値段だ。

 とはいえ、金には困っていない。


 木箱を両手に持って、会計に持っていく。

 40歳くらいの男の職員だ。

「ふたつ、お買い上げですか?」


「はい」

 なぜ、そんなことを訊くんだろう?

 1個しか買わないのに、2個は持ってこないだろう。


「教材用でしたら、伝票を持って来てもらえば2割引になりますが」

「いえ。個人で使う物です」

 なるほど、大学の購買部だとそういうことになるのか。

 個人用だが、ひとつは分解用、もうひとつは予備というか加工用だ。


「わかりました。では、12セシル80ダルクいただきます」

「はい」

 支払って購買部から出ると、ひとつは魔術で収納した。


      †


 2限目の初級魔道具製作講義が終わった。3限目は同実習だが、先週に3月までは免除と言われたので、それには出ずに61号棟の工作実習室に向かう。


 ここは、魔道具の内、魔石以外の製作や組立分解をする場所で、実習で使って居ない時間帯は、理工学科の学生は使用して良いことになっている。

 木工、金工の道具や工具、あと加工魔道具もあるが、使用するには1月に実施される研修を受ける必要がある。


 先輩だろう見覚えのない学生が数人居たが、方々に会釈して作業机を確保する。

 早速、お昼に買った魔導アイロンを、木箱から取り出す。


 まずは、入ってた簡単な取扱説明書を読む。

 本製品は、2型蓄魔力魔石を同時に2個使用します。満充填で、高温設定にて連続約1時間の使用が可能ですか。なるほど

 満充填に必要な時間は、ご使用の地域にて異なりますので、別表を参照ください、か。ふむ。竜脈の上かそうでないか、竜穴にある都市かどうかで変わるやつだ。


 なお同魔石は消耗品であり、おおよそ1年間使用できます。交換方法は。ここか、アイロンの後部分に小さな扉みたいなものがあり、爪で留まっている。

 これを外すと、青い魔石が見えた。2型蓄魔力魔石だ。

 指で摘まんでゆらすと、魔石が外れた。もう1個も同じように外すことがで来た。

 奥の方に、赤と白の魔石が見えるが、指が届かない。


 えーと。

 ここのネジを外して、持ち手とガワを外すのか。そうすれば、残りの魔石を外せるだろう。ネジ回しは……?


 辺りを見回すと、工具棚と()り看板があった。そこへ行って、工具を物色しているとすぐ横の扉が開いて、リヒャルト先生が入って来た。

「こんにちは」

「レオン君、こんにちは。今日は工作ですか?」


「はい。ちょっと魔道具の分解をしようと思いまして」

 合いそうなネジ回しがあったので、手に取る。


「へえ。何を分解するんですか?」

 何か()い付いてきた。


「魔導アイロンです。あそこでやってます」

 作業台に戻る。先生も付いてきた。


「レオン君。例の件ですが、すみませんね。どうも学部長が難色を示されているようです」

 魔導カバンの件だな。

 申請は学科長までは通ったようだが、よく分からないけれど学部長が許可を出してくれないようだ。


「いえ、そこまで急いでいませんので」

 実際のところ、収納魔術は不完全ながら問題なく使えているし。

 ネジ回しとすり割り溝の大きさが合った。回して外す。


「そう言ってくれると助かるよ」


「あっ、あれ」

 2個ネジを外してたが、持ち手が外れない。


「ああ、この手のは大体内側に引っかかる爪がありますよ。君から見て右側でしょう」

「はい」

 ガワの右側を探っていると、少し柔らかいところが有った。そこを押すとあっさり持ち手とガワが外れた。


「ありがとうございます」

 ふむ。中は結構スカスカだ。


「おおう。いや。ふーん。私もアイロンの中は初めて見たが。やっぱり典型的な3石構成だね」

「はい。制御用、加熱用、蓄魔力用ですかね」

「その通り」


「ところで、先生。実習は良いのですか?」

「うん。今日はターレス講師がご担当だから、私はね」

 そういえば、実習の指導は持ち回りっておっしゃっていたな。ジラー先生はご自身の工房もあるし、毎回は来られないだろう。


「でもまあ、そろそろ準備室に戻るよ。何か困ることがあれば……ああ、ミドガン君」


 短髪でやや背が低い学生が1人寄ってきた。

「はい、リヒャルト先生」

 近寄ってみると、腕が太い。僕の2倍くらいありそうだ。


「彼はレオン君と言ってね、1年生だ」

「はあ」

 先輩は、無遠慮に僕を見た。少し遠くで作業している他の2人もこっちを見ているようだ。


「ここを使う上で、何かとわからないこともあるだろうから。気に掛けてやってくれないかな」

「わかりました」

「レオンです。よろしくお願いします。先輩」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2024/01/20 わずかに追記。リヒャルトの口調を調整

2024/01/24 題目の序数変更

2024/03/24 誤字訂正(1700awC73Yqnさん ありがとうございます)

2025/04/09 誤字訂正 (布団圧縮袋さん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
この小説って、チーレムなんですか? 読み進めるてくると、主人公が会話しているのが、ほぼ女性しか無いのですが?申し訳程度に教師や家族、親戚の男性が出てくるだけで、交流も殆どなくて、違和感があります。 タ…
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