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33話 2次試験(3) 忌まわしき面接

面接に良い思い出がないっす(結果はともかく)。

 学食(学生食堂)というところを堪能した。

 一緒に食べたディアさんは量が多いわと言っていたけれど、僕にはちょうど良かった。値段も安かったし。


 ディアさんは準男爵家のお嬢さんだそうで。政略結婚させられるのがいやで大学を受けたそうだ。魔術は伯母さんが魔術士なので、その人から教えてもらったと言っていた。

 そのあと、合格したらまた会いましょうと別れた。


 14時になって、面接の時間になった。


「受験番号11-23。レオンです」

「どうぞ、お掛けください」


 なんか既視感が来た。怜央の記憶だろう。

 ひとつ置かれた椅子。その向こうに3人の面接官が座っている。年配が2人、もう1人は、例の軍人受験者を一喝した人だ。若そうに見えるけれど、偉い人なのかな。


「では、面接を始めます」

「はい」

「では、まず本学、サロメア大学の志望理由を答えてください」

「はい。僕は商人の子なのですが、3男なので独立する必要があります。身を立てる術として一番興味を持てる魔術について、学べる学校としてサロメア大学があると知り志望しました」


「わかりました」

「レオンさんの1次試験結果は、全体で2472人中、上位から7番目、魔導学部志望者でも2番目です」

 おぉぉ。思ったよりかなり良い成績だ。


「しかし、科目で大きな差がありますね」

「そうですねえ。算術と物理がなんと満点にもかかわらず、国語はともかく、史学がもうひとつですね。ご自身ではどう受け止めますか」


 ううん、一段と。


「はい。どうも自分が興味を持てる方面には、突き詰められるのですが」

「つまり、史学には興味が持てないと」

 うっ。


「算術と物理に比べれば」


「まあいいじゃないですか。本学はまんべんなく及第点という優等学生を望んで居るわけでなし。特にわが魔導学部としては」

 おっ。


「しかし、学部長」

 学部長!? だったのか。若そうに見えて、すごく偉い人じゃないか。驚いた。


「ああ、わかっている。そんなことよりもだ。レオンさんは、なぜ理工学科を志望したのかね?」

「えっ」


 むぅぅ。

 魔術を改造して制御したいから。

 言うのは簡単だ。しかし、モルガン先生によると、そこに至ることができているのは、わが国(セシーリア)の研究者でも少数らしい。うそにならない程度にぼやかそう。


「ある()で読んだのですが、魔術は起動紋と術者の感覚で操作しているが、術式の段階でもっと細かに制御できるとありました。つまり魔道具や魔導具に可能性を感じます。それが学科の志望理由です」

「その考えは悪くない。しかしだね。君の実技試験結果によれば。魔術の発動速度記録を見れば一目瞭然だ。これまでに相当な魔術訓練を積んでいるだろう?」


 何が言いたいんだ?

「はい。まあ」

「ならば、理工学科より技能学科ではないのかね?」


 えっ、そっち?

「さっきも答えましたが。興味です。魔術を行使するよりは、魔術そのものに興味があります。ですから、理工学科を志望しました」

 技能学科は魔術をどう使うか。つまり魔術士ヘの道、一直線だ。


「しかしだね」

「学部長お待ちください。受験者ヘの志望変更圧力は、厳に慎むことになっています」

 おっ、助け船が来た。


「わかっているとも、事務長」

 こっちの人は事務長か。


「無論、志望変更を強制するものではない。ただ理由を知りたかっただけだ」

「学部長。あなたらしくもないですよ」


「ううむ。それすら許されないとなれば、もはや言うことはない」

 ええぇぇぇ。そっぽを向いてしまった。


「そうですか。わかりました。では2次試験の結果と面接結果をお知らせします。学部長、よろしいですな」

「うむ」

 学部長が横を向いたままうなずいた。


「レオンさん。2次試験の適性検査結果に問題はありませんでした。面接結果を含めても十分な水準に達しています。したがって、サロメア大学魔導学部魔導理工学科への入学を認めます」


 おおお!


「合格証明書と1次試験成績証明書、入学同意書、それから入学要項を事務棟1階窓口ですぐお渡しします。詳細は要項に書かれていますので、ここでは要点のみ説明します。まず入学手続きが必要です。同意書に署名の上、8月末日までに提出してください。郵送でも結構です。レオンさんは未成年ですが、同意書は契約書ではありませんので、保護者の了解は不要です」


「はい」


「また学生寮への入寮の必要があれば、希望書の提出期限は同時期までです。それから、本学と直接の関係はありませんが、王国奨学金を希望する場合は、窓口に申請書が置かれています。領政府ヘの申請は、各政府の役所へ問い合わせ願います。要点の説明は以上です。何か質問は?」


「ありません」

「そうですか。おめでとうございます」

「ありがとうございます」


     †


「同意書を受理しました。他にご用はありますか?」


 事務棟1階の窓口に移動して、受け取るべき物を受け取った。

 同意書は、サロメア大学以外への進路は取りません、ちゃんと卒業まで通いますという意思を示すものだ。

 何の問題もない。あらかじめ父様と母様から任せると言質は取ってある。

 この場で署名して提出した。


「そこにある、王国奨学金の申請書と馬車鉄道路線図というのをもらってもいいですか?」

「どうぞ」

「ありがとうございました」


 奨学金の件は、父様と母様の意向を聞くことになっているから、無駄になるかもしれないけれど。不要になったら捨てれば良い。

 もうひとつ、路線図なるものを手に取った。

 王都には、交通機関として馬車鉄道というものがある。鉄のレールの上を、鉄の車輪の馬車を走らされる物だ。決まった経路しか走らせられないけれど、一度に20人位乗れて辻馬車より料金が安いらしい。


 馬車鉄道の存在は、コナン兄さんから聞いて知っていたのだけれど。どこを走っているかわからなかった。そもそも、王都のどこに何があるかは余り知らないし。

 ただ、辻馬車でここに来る時までに、何回か擦れ違ったし、これから王都に住むことになるのだ。知っておいた方が良い。


 へえ、こんなにたくさん路線があるんだ。

 中央区を避けて区をまたぐ路線が縦横に数路線、あと東区、南区、西区には区内を回る環状路線がある。


 あてっ!

 背中をたたかれた。

 振り返るとディアさんが居た。


「レオン。ここに居るってことは合格したのね!」

「はい。おめでとうございます」


 彼女は満面の笑みだ。合否を聞くまでもない。

「へへぇ。ありがとう。10月から同級生だね」

「はい」

「楽しみだわ。じゃあ、またね」


 1人同級生に知り合いができたな。まあ彼女は技能学科だけど。

 それにしても、実技試験って30分掛かっても合格できるんだなあ。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

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叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2023/11/07 少々表現変え

2025/02/15 誤字訂正(1700awC73Yqnさん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
1次試験の7位って、史学みたく微妙な得点もありつつ複数教科の総合点で上位ってことだと、優秀でも解けないような問題が混ざってたりして。 前世持ちでも、ベースは今世の14歳で事前情報がほとんどない状態だか…
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