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31話 2次試験(1) 試験始まる

次話は、明後日(日曜)に投稿します。

 武道場の中に入ると、仕切りがあって受付と書いた立札が立っている。その前に5人が並んでいた。その後に僕も並ぶ。


 並んだ受験生を眺めると、意外と年齢がばらばらだ。まあ大学だからな。そういうものかもしれない。

 一番前は軍服だ。外で見た軍籍学生ってやつかな。もちろん合格したらだけど。

 直前の受験生が振り返った。女性だ。

 僕より2、3歳年上だろう。精悍でよく整った顔形だ。


 にっこり笑って会釈してきたので、僕も同じように返す。商人の子だから、自然に表情を作る瞬発力には自信がある。


 そんなことを考えていると、後から派手な、まるで踏み鳴らすような足音が聞こえてきた。振り向くと、軍人の一団だ。僕より結構年上そうに見えるけれど。


「貴官ら、列を開けろ。中尉殿だぞ」


 ええ!?


「ちゅ、中尉殿、こちらへどうぞ」

 一番前に並んでいた軍人が腕で指し示した。

 思い切りな不正だ。


 彼らが僕の横をずかずかと通り過ぎようとした時、さっき会釈した彼女が僕をさえぎるように立った。そして息を吸うと。


「あな……「君たち!」」

 女性受験生が止まった。


「何だ、貴様!」

 立ち上がった大人へ、軍人が居丈高に返す。


「試験官だ! ここでの行動は面接結果に反映することになっている。受験番号を言いなさい」

「ふん。軍がこの大学に多大な補助金を出しているのを知らぬのか?」


「だから何かね? 受験番号を!」

「貴様!」

「おい、出直すぞ」

「はっ!」


 当て付けのように大きな足音を立てながら、一団は武道場を出ていった。


「次。君は一緒に中へ」

「はい」

 先頭の軍人が仕切りの中へ入っていった。


「ふん。いい気味だわ」

 声の主と目が合った。


 さっき、試験官が割り込まねば、きっとこの人が苦情をまくし立てていただろう。


「それにしても、この大学の職員にも気骨のある人が居るようね」

 (きびす)を返して前を向いてしまった。


     †


 僕の順番になった。

 受験票を渡す。


「受験番号11-23番。エミリー伯爵領エミリア在住、平民。レオンさん。14歳。理工学科志望。間違いないですか?」

「はい」

 書類を確認している。


「それでは、これから適性検査と実技試験を受けていただきます。その後、問題がなければ、おそらく午後になると思いますが、面接を受けていただきます。よろしいですか」

「問題ありません」

「では、中へ」


 案内されたところは、やはり幕で仕切られた区画だ。


「では。よろしく」

 試験官だろう。白衣を着た壮年の男性がいた。受験票を見ている。

「はい。えぇと、レオンさん。机に寄ってください」

「はい」


 近付いた机の上には、黄銅の皿のような物と配管、それに紫色の魔石が上部にはまった筒状の器具が乗せられている。


「こちらは、レンナルト式魔力量計測魔導具です」

 へえ。杖以外の魔導具を初めて見た。


「その丸い天皿の上に利き手を乗せていただくと、計測が始まります。魔導具が、あなたの魔力を吸引します。ただ少量ですのでご心配なく。魔力吸引の勾配で、魔力総量を推定しますので、逆らうことなく、腕に力を入れないように」

「はい」


 へえ。勾配で推定するのか。時定数か何か使うのかなあ、面白いな。レンナルト式って言っていたなあ。どこかで調べられるといいのだけど。


 そもそも、僕がどの程度の魔力総量を持っているか知らない。昔モルガン先生には大したことはないと言われたけれど。あれから4年も反復訓練しているからなあ。人並みぐらいには伸びていて欲しいものだ。


 理工学科志望の場合は、人並み程度で可と受験要項に書いてあったから、まあ大丈夫だろう。


「それでは、計測します。利き手を置いてください」

「はい」

 冷たい。


「では息を大きく吸って、気を楽に」

 魔導具の上の魔石が光った。

 おお、なんか手から魔術を使った時のような感覚が。


「はい。終わりました」

 もう終わったのか。速っ。

 うわっ、なんか試験官の顔が険しい。少ないのかなあ、僕の魔力総量。


「はい。もう手を離していただいて結構です」

「あのう……」

「次は、あちらの区画へ」

「はい」


 どのくらいの量だったか、()きたかったんだけどなあ。後ろ髪を引かれつつ、指された方へ向かう。

 今度は、黒い幕で囲われた区画がある。その前にまた待ち行列ができている。椅子に座っているけれど。


 近付いていくと、端に座って居た人が僕を見上げた。

 さっきの僕の直前に並んでいた女性受験生だ。


「そこに座って待つそうよ」

「ありがとうございます」

 軽く会釈して、彼女の横に座る。


「時間が掛かるわよ」

「そうなんですか?」

 さっきのが適性検査だから、次は実技試験だ。


「5人たまったら、30分の実技試験を開始するって」

「へえ」

「さっき、だけど前の5人が入ったばかりだから、まだ30分は掛かるわ」

 待っている受験生は、僕でちょうど5人目だ。

 なんかこの人、そわそわしているなあ。ああ、そうか。僕と話して解消しようとしているのかな。僕も誰かに何かを説明していると落ちつくからな。


 僕も利用させてもらおう。


「まあ、でも、今日中に試験と面接が終わるってのは、うれしいですね」

「あっ、ああ、そうね」


「とはいえ、30分ですか」


 実技試験内容は、与えられた起動紋の魔術の発動時間を計測すると書いてあった。魔術は1種類ではなく、2種類だったよな。

 そうだとしても。なぜ30分も掛かるんだろう。


 おっ、試験官が出てきた。さっき軍人を叱りつけた人だ。


「お待たせしています。前の組の実技試験は今しばらく掛かりますので、この時間を使って試験の詳細内容をお知らせします」


 ん? 詳細があるのか。


「試験は専用魔導具を使って実施します。ここでは発動できたか、加えて持続的に魔術が継続できているかを評価します。魔術の強度は評価項目に入っていませんので、必要最低限で構いません」


 皆がうなずいている。試験の要項に書いてあったからな。


「ここからが詳細です。受験生の皆さんには。魔術起動紋が描かれた5枚の羊皮紙から、2枚を選んでいただきます。選ぶと言っても起動紋自体は事前に見ることはできませんが。選んだ2種の魔術を交互にそれぞれ1分間発動しつづけていただきます」


「1分間も!」

 2人となりの受験生だ。

 それにしても、回りくどい試験方法だなあ。


「専用魔導具には魔灯があり、魔術が発動しますと点灯します。1分間経過しますと消灯します。成功しますと鐘が鳴りますので次の魔術の起動紋に移っていただきます。ただし消灯前に発動が途切れると、失敗としてやりなおしとなりますので注意願います」


 ふむふむ。


「なお1度発動された起動紋の羊皮紙は、試験官が回収します。魔術は各5回交互に計10回発動していただき、その時間を計測いたします」


 ほう。10回もか……退屈だな。

 きっと発動が難しい魔術なのだろう。そうでなくては試験にならないよな。


「それで、3回目以降発動できない場合は、受験生から申告があった場合は、ふたたび羊皮紙を渡しますが、罰則として計測時間に1回につき3分が加算されますので、そのつもりで」


 なるほどね。


「言うまでもありませんが、計測時間は短い方が好ましい結果です。ただ、理工学科志望の場合は、直接の選考項目ではなく、あくまでも参考項目ですので、気楽に受験してください。なお、技能学科志望の方々は精一杯がんばってください」


「「「「「はい!」」」」」


「説明は以上です」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

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※魔導学部の学科は正しくは、魔導理工学科と魔導技能学科ですが、魔導を略して理工学科と表記する場合が多いです。ご指摘ありがとうございます。




訂正履歴

2025/03/29 誤字訂正(n28lxa8さん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
魔導学科志望じゃないんだ?なんか理工は制御ないから惹かれないようなことあった気がするので意外。
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