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制御技術者転生 ─ モデルベース開発が魔術革命をもたらす ─【書籍予約中】  作者: 新田 勇弥
8章 青年期 青雲編I

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276話 アーキ茶(4) 商談事始め

いやあ、2025年も押し詰まってきましたね。本連載も今年最後の投稿です。

今後の投稿予定ですが。

金曜日の投稿はお休みをいただき、

新年初回投稿は一日前倒しして、1月5日(月曜日です)。

2回目の9日(金曜日)から通常のスケジュールに戻します。


今年もお読みいただきまして、ありがとうございました。

よいお年をお迎えください。

 9月中旬となった。

 いろいろなことが、並行で進んでいるから近況をまとめよう。

 冒険者ギルドの方は、幸か不幸か問題なく上級冒険者(スペリオール)に昇格したとの通知が来た。ギルドカードの更新に行かないとな。


 サロメア大学は同時に卒業したから、先輩呼びをやめることにしたイザベラさんとラナさんは、無事アデルとユリアさんが住んでいた集合住宅に引っ越ししたと聞いている。引越祝いは贈ったけれど、1回行かないとな。いや、女性の家だ、嫌がるかな。ちなみに個展を開きたいと言っているそうで、それについては代表にお任せだ。

 トードウ商会の仕事に忙殺されているが、大学の研究員も準備を始めている。

 さて。一番の取り組みは、アーキ茶だ。分析結果と共にアーキ茶の製法特許を、ヴィクトル弁理士の協力を得て、月頭には出願するとともに早期審査請求の手続きを完了した。

 また、食品ギルドに、茶葉製造販売の申請を出した。


 これからやるべきことは、製販の人脈造りだ。結構たくさん手紙を書いた。

 先ずは生産者として、パウロさんに、茶葉の採集を頼めるかと手紙を書いた。興味があるならそろそろ返事が来ても良い時期だが、今のところはまだだ。

 販売の方は、お客様として、リオネス商会にコナン兄さん宛と母様宛、さらにウーゼルクランに手紙を書いた。

 すべての手紙には、茶葉の試供品と淹れ方の例、それと茶の成分分析結果の抜粋を同封した。

 問題は製造と流通を統括してくれる企業だな。実はこれが一番難題だ。


「行きましょう」

「うん」

 代表に促されて、建物に入る。レナード商会と看板がある。代表が先行して、受付の人と話し始めたが、すぐ案内してくれるようだ。

 上か。階段を上って、応接室へ通される。

 げっ。

 中には面談を予約したオットーさん。それとレナード商会創業家の一員であり、オットーさんを婿養子に迎えたイレーネさんは、意外だったものの分からなくはなかったが。もうひとり予想外の人物が居た。

 なぜ、ここに居る?

 すまして座っているのは、エイルだ。

 そりゃあ、ここの一族だし。王都に居るとしても、商談だと伝えたはずだが。思わず横を見る。察した代表が、首を振った。知りませんということだろう。


「レオンさん、アリエスさん。ようこそ、お出でくださいました」

「こんにちは。オットーさん。時間をさいていただき感謝します」

 僕も会釈する。

「どうぞ、お掛けください」

 彼ら3人の対面のソファーに腰掛ける。


「まあまあ、レオンさん。立派になられて」

「イレーネさん。お久しぶりです」

 最後に会ったのは、王都に出てくる前だから3年以上前だ。立派……物理的に成長はしているが。彼女の方は、18歳か。昔からおっとり美人だったが、少し妖艶さが増してきているかな。


「レオンさんの活躍は、夫やエイルからよく聞いているわ。この前、サロメア大学を卒業されたのでしょう? おめでとう」

「ありがとうございます」

 この人の中では、僕はまだエミリアに居た頃の子供のままなのだろう。


「それでね……」

「イレーネ。昔の話もしたいのだろうけど。今日は、商売の話をされに来られているからね。それにアリエスさんもいらっしゃるし」

「ああ、ごめんなさいね。わたしったら。あっ」

 代表の方をじっと見ていたが、とりあえず彼女のことに触れることは思い留まったようだ。


「失礼致しました。本日のご訪問のご趣旨をお聞かせ願えますか?」

 代表と目配せする。

「はい」

「失礼致します」

 従業員さんが、お茶を持って来てくれた。カップは伏せてあるからまだ注いではないな。

「すみません。それを出すのは待ってもらって良いですか?」

 女性は怪訝(けげん)な表情をしたが、オットーさんがうなずいたので、茶器がのったトレーを置いて、部屋を辞していった。


「実は、今日のお話は、こちらの新しいお茶の件です」

「お茶ですか?」

 僕は懐から、紙の分包を取り出して開く。アーキ茶葉が出て来た。

「レナード商会で茶葉は扱っていますよね」

「はい。扱っておりますが……」

 オットーさんも少し不審そうな面持ちになった。ウチに原料を奨めにきたのか? そう思っているのだろう。


「ふむ。見たことのない茶葉ですわね」

 イレーネさんは、隣に居るエイルとは違って商会の後継者として育てられた人だ。婿は取ったが、自身も商品知識はしっかりしているのだろう。

「これはどんなお茶ですか?」

「それを明かす前に、まずは飲んでいただきましょう」

「オーナー」

 手を伸ばしてきた彼女に、魔導収納から出庫したポットを渡す。


 対面の3人はどこから出したと驚いているが、代表は無視して出してもらった茶器に、アーキ茶を注ぎ始めた。

「おおぅ」

「ああ、茶の色ですが、こんな物です。普通のお茶のように紅くはありません」

「なるほど。発酵はさせていないということですね」

 さすが、食品の玄人だ。言わなくても理解してくれる。


「どうぞ」

 まあ、何のお茶か分からないのに、そうそう簡単に飲める物ではない。

「では、僕が毒味しましょう」

 カップを取って、一息吹いて喫する。

「では」

 オットーさんも、カップをとって飲んだ。


「おおっ」

「どう? あなた」

「これは……砂糖は入っていないが、心地よい甘みがある。そして、すこし酸味があって、爽やかだ」

「じゃあ、私も」

 イレーネさんも、エイルもカップを持ち上げた。

「あっ! ふう」

「おいしい」

 これまで黙っていたエイルも思わずしゃべった。


「レオンさん。これは、何のお茶ですか。教えてください。私は飲んだことはないです」

 オットーさんが横を見たが、イレーネさんも首を振った。

「アーキです」

 オットーさんが片眉を持ち上げた。

「アーキですか」

「あの橙色の実よねえ」

 当然知っているよな。

「ええ。実ではなく、葉っぱですが。代表」

 うなずくと、ふたつの書類を出した。

「特許出願控えと成分分析結果……特許を出されたんですね」

「登録されれば、我が商会で独占販売できます」

 別の商会が扱いだせば、現状でも警告はできる。

 ざっと見た片方をイレーネさんに渡し、オットーさんは分析結果を見ている。


「ほう、これは。柑橘類の実を凌ぐですか、すごい成分ですね。それをお茶で飲めるのですか」

「ええ、分析を頼んだ教授も驚いていらっしゃいました。10月からぜひ本格的に研究をしたいと持ちかけられています」

「レオンさんは、これをどこで……?」

 イレーネさんだ。

「申し訳ありませんが。それについては明かせません。多分に偶然なところがあります」


「えっ、ええと。今日、私どもにお越しいただいたということは、こちらの茶葉をレナード商会で扱ってみないかということですよね?」

 イレーネさんが、そわそわしている。

「もちろんそれもあるのですが」

「と、おっしゃると?」

「こちらで扱ってもらうほどの量を生産する手段は、存在していません」

「では。いや、それはどういう」


「なるほど」

 夫が横で混乱するのを尻目に、イレーネさんは手を打ち合わせてにっこりと笑った。

「レオンさんは私どもと組まないか? 流通、販売の他、茶葉製造についても担え……そうね、出資しろとおっしゃるのね」

 ふぅむ。一瞬で見抜くか。

 優しくおっとりしているように見えて、鋭いところがあるよなあ。昔からそういう気はしていたが。横に居るエイルは、茶を飲みながらおいしいというのほほんとした顔だ。


「出資ですか?」

「はい。その通りです」

「わが商会は、権利と技術それに情報を持っていますが、大々的に茶葉を量産する手段を整える程の資本を有してはおりません」

 オットーさんが顔を引き締めた。

「確かにこの茶葉は魅力的です。しかし、製造となれば、わが商会でもさほど多くの事例をもってはおりませんから、慎重にならざるを得ません」

「あら。でも大きく商売を始めるときには、決断は必要だわ」

「いっ、イレーネ」

「本店……父に相談はしないといけないけれど。前向きに考えたいわね」

 おお、度胸があるなあ。


「はい。資本と言っても、どの程度の量を生産するか、それを決めないと投資額は決まらないので、この枠組みにご参加いただくのであれば、情報はお渡しします。お考えください」

「ふむ。枠組みとおっしゃると、他の商会にも声を掛けるわけですね」

「はい。その方が規模を大きくできると思います」

 代表がにっこり笑う。

「オットーさん」

「はい。レオンさん」

「今のところ、声を掛ける商会は消費する側。つまり茶葉を買ってもらう側に留めます」

「つ、つまり、製造から流通まではレナード商会にお任せをいただけるという……」

「はい。もちろん、オットーさんがやらないとおっしゃるならば、他を当たらざるを得ませんが」


「そっ、そうですよね」

「買う側というと、ご実家のリオネス商会かしら? そういえば喫茶レオーネを拡大するのでしょう。良い売りになるわ」

「ええ、誘いの手紙を送ってあります」

 本当に切れるなあ。この人。

「うん。いいわねえ。ちゃんと一族の繁栄も考えていて立派だわ……ふーん」

 イレーネさんが、妹の方を見た。

 何だ?


「エイル」

「ん……なに、お姉ちゃん?」

「あなた。昔から、レオンさんを好きだと言っていたわよね」

「なっ! そっ、そんなことは言っていないでしょ!」

 一瞬でエイルが真っ赤になった。うん。それはないだろう。さすがにエイルがかわいそうだ。


「あら、そうだったかしら? 残念ねえ。エイルにその気がないのなら、本店に言って、レオンさんのお見合い相手を探さないといけないわね」

「だっ、駄目よ! そんなこと」

 はっ? いや。お見合いは不要だが。

「あぁら。駄目なの? 変な子ねえ」

「いや、あの。イレーネさん?」

「うん。わたし、ますますレオンさんが気に入ったわ。見合い相手を見繕(みつくろ)うから楽しみにしていて」

「あっ、はあ」

 隣で笑っている代表は、後でとっちめよう。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2025/12/30 養子→婿養子 (たかぼんさん ありがとうございます)

2026/01/04 誤字訂正 (n28lxa8さん ありがとうございます)

2026/01/06 誤字訂正 (1700awC73Yqnさん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
久々すぎてエイルって誰だっけ?ってなって人物一覧見に行っちゃった
代表はそら笑うよ、オモロイもん。責めないであげて。
レオンの中ではアデル一択だし、修羅場か愁嘆場が不可避に思う
感想一覧
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