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制御技術者転生 ─ モデルベース開発が魔術革命をもたらす ─【書籍予約中】  作者: 新田 勇弥
8章 青年期 青雲編I

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275話 アーキ茶(3) 結果発表!!

副題は、某タレントさんの声で再生されます。

「やあ、レオン君。久しぶりだね」

 アレキサンドラ・マーキス。

 ヘルマンさんに念を押されたので仕方なく、ギルドの総合案内に出頭すると、30分待たされたものの、ギルマスの部屋に案内された。今はソファーで向かい合っている。彼女の後ろにはもはや付き物になっている、主幹が立っている。


「いやあ。ガライザーから人物照会が来たときは驚いたよ、あんなところで何をやっているのかってね。しかし、半日もしないうちに第2報が届いてね。さらに驚いたよ。ひとりで、牙猪(ファン・ボア)を狩ってきたってね。主幹!」

「はっ」

 主幹が回り込んで前に出てきた。


「先程買取係から報告が上がってきました。牙が切断された牙猪14体を確認。これはガライザー支部からの連絡にあった、17体討伐かつ3体は同支部で買い取ったとの情報と合致します」

「どうかね?」

 何を訊こうとしている?

「認める」

 ガライザーから、名指しで情報がきているのだ、否認する意味はない。

「了解した。主幹」

「では、今回のレオンへの処分を通達する」

 処分?


「レオン。君を、上級冒険者(スペリオール)等級に推挙する」

「はっ?」

 ふたりの顔を見たが、冗談ではなさそうだ。

「いやいや。この前、優良戦闘冒険者になったばかりだろう」

「その通りだが、優良戦闘冒険者は等級とは関係ない。慣例で初心者(ノービス)では推挙されないというだけのことだ。つまり優良戦闘冒険者の在任期間は、等級の昇級の制約とはならない」

「むぅ」


「ただし、上級については、わが支部のみの判断で昇級を決められない。来週の王都定例会議で推挙の上、承認される運びだ。ここ数十年却下された例はない」

 へえ。そういうことになっているのか。だが不要な知識だな。最初の事例にならないかな。

「辞退はしないと思っていいかな」

「いまさらだ。俺のやり方を認めるならば、引き受ける」

「貴様……」

 主幹をギルマスが手で制した。


「わかった。辞令が出たら……緊急連絡先の方にも写しは送るがね。速やかに窓口に申し出てくれ、ギルド証を更新する」

「了解だ。失礼させてもらっても?」

「ああ」

 軽く会釈して支部長室を出た。


     †


 壁の前に、楕円形の水面がゆれる。

「へへぇ。来ちゃった」

 夜、9時を回った頃、魔導通路を開くと寝間着姿が入ってきた。


「いらっしゃい。アデル」

「もう、夏も終わりかなあ」

「そうだねえ。来週は9月だし」

「はあ。また公演か。舞台は楽しいけれど……」

 そう。公演が始まると、土曜日にしか来られないと言っていた。まあ、しかたない。潤んだ目で見てきた。


 アデルに近付いていくと、彼女がわずかに腕を広げたところで、進路を変えて壁際による。

「座って。お茶を淹れてあるからさ」

「あっ、ああ、うん」

 ソーサーに乗ったカップを持っていくと、アデルは微妙な面持ちだった。

「どうぞ」

 出されたカップをのぞき込み、えっという顔で見た。

「なんか色が……」

 薄いと言いたいのだろう。


「このお茶は、こんな色なんだ。飲んでみて」

 先に僕が飲んで見せて笑う。

 アデルが、一口喫した。

「おいしい……けど。これって、お茶じゃ……あっ! もしかして、アーキの葉っぱなの?」

 ガライザーで内緒にされた記憶が繋がったようだ

「そう」

「へぇ……なんか、ちょっと甘いというか、後口が爽やかだわ。パウロ農園でもらってきた葉っぱなの?」

「そうだよ」

「ええっ? アーキの葉っぱでお茶が淹れられるなんて、よく知っていたわね」

「まあね」


「地球には、色んな植物で茶を淹れるハーブ茶っていう文化があったそうだよ。それで、アーキの葉っぱでもできるんじゃないかと思ってさ」

 それを思い付いてから、古代エルフの記録(アカシア)でアーキを調べると、葉っぱにもビタミンCをはじめとして相当に良い成分が含まれていると書いてあったのだ。


「そういうことなんだ。へえぇ。ちょっと待って。ここまで、お茶にするの大変じゃなかった?」

「結構試したよ。乾かし方や、揉んだり、焙煎したり、煮出したりしてね。僕というか、ウチのメイドたちに手伝ってもらった」

「ああ、私もやりたかったなあ」

 でも、なぜ誘わなかったのとは、言い出さなかった。 

 彼女は、既に次の舞台の準備を始めているからだ。

「じゃあ、お詫びにマッサージを念入りにやってあげるよ」


     †


 9月になった頃、大学の化学部から呼出を受けた。

 代表と一緒に、産学連携事務所へ行くと、ヴェカ教授が待っていた。

「こんにちは」

「こんにちは。レオン君、そして、アリエスさん」

 あれ?

 教授……なんか、前に会った時に比べて、顔色が良いよなあ。そんな気がする。目もややぱっちりしたような。

「まあ、教授。今日は一段と肌つやがよろしいですわね」

 おお、代表も同じように思ったらしい。

「そうなの。あれを飲むようになってから、寝付きが良くって。そのせいかしら」

 教授が、前のめりに迫ってきた。

 奥の小部屋に行くと、担当のベルナルドさんともう1人、年の若い男性教員がいた。白衣を着ているせいかもしれないが、なかなか切れ者感がある。


「そろわれましたね。では始めましょう。今回は正式の依頼ではないということなので、わが事務所は特段口を挟みませんが、記録だけは取らせていただきます」

 ベルナルドさんが、進行してくれるようだ。

 そう。代表が動いて少額寄付、500セシル(教授の月収よりちょっと安いぐらい)を納めたことにより、好意で分析をしてもらったという立て付けだ。


「では、説明して」

「はい。レオンさんから預かりました乾燥したアーキの葉から抽出した液、以後アーキ茶と呼称します。こちらの成分を分析した結果をまとめました」

 分析表と書かれた書類を渡された。


「概要から説明しますと、毒性は非常に低く、市販のお茶相当です。また成分自体も近いところはありますが、ラスコビ酸の含有量が非常に高く、柑橘類と比べても5倍以上でした。これは非常に良い効能と言えます」

 ラスコビ酸……地球ではアスコルビン酸、ビタミンCと呼ばれていた物だ。

「おおぅ」

「また、お茶に含まれる神経刺激物がほぼ含まれていません」

 カフェインのことだな。

「これは、簡単に言えば悪い面、良い面両面があります。覚醒感はないのですが、逆に睡眠を妨げません」


「ふむ。よく眠れる効果が、成分的にも証明されたわけだよ。身をもって実験して良かったな。あははは……」

 物は言い様だ


「ところで、レオン君。このアーキの葉でお茶が淹れられることをどうやって知ったんだ?」

「それは……」

「申し訳ありませんが、商会の秘密に関することなので」

 代表が、間に入ってくれた。


「あぁ。では、確認になりますが、今回の件は以上で終結したとしてよろしいですかな?」

「はい。トードウ商会として、異存はありません。ありがとうございました」

「いや!」

 えっ? ヴェカ教授だ。


「この試料は、非常にすばらしい効能を示したと考えている。化学科としては継続して研究したい。あなた方の承諾をいただければ、医薬学部に諮って正式の研究項目としたい」

「「はっ?」」

 正式?! 代表と顔を見合わせる。


「それは、願ってもないことですが……」

 そこまでは考えていなかった。研究となれば、学会に発表するだろうし、宣伝効果もあるな。

「あのう。本件については、私ども商会にて特許を出願して、下世話ながら商売にしたいと考えていますが」

「もちろん。化学科ならびに私に異存はない。おおいにやってもらって構いません」

 ふむ。


「わかりました。私どもも協力をさせてもらいます」

「うん。ついては追加の試料をいただきたい。またよろしければ秘密保持契約を結ぶので、茶葉にする製法を教えてほしいのだが」


     †


 代表と商会へ戻った。会議室でナタリアを入れて、今後のことを打ち合わせることにした。

「思いの外、話が進んでよかったですね」

「そうだね」


「それでは、実施すべき項目はなんでしょう?」

「ナタリア君。アーキ茶の製法特許は、私が書くよ。魔術じゃないから、ヴィクトル(弁理士)先生に頼むところは多いと思うけれど」

「技術面はそれでよろしいと思いますが、資本を集める必要があります」

「代表、資本とおっしゃいますと、わが商会が経営するということでしょうか?」

 ナタリアが訊くと、代表が一瞬こっちを見た。


「いや。トードウ商会の強みは、物を売らないことよ。権利使用を許諾するという形を変える気はないわ。オーナー。それで、よろしいですね?」

「うむ。ただ今回に関しては、ある程度の量でアーキ茶葉を生産する手段が今のところない。それを作るために資本が必要だから、そこまでは面倒を見ようということだ。資本家の中に移管先を入れることを考えたいな」

「移管先ですか。それに、施設と人員が必要でしょうから、そこそこ資本も大規模にせざるを得ませんが」

「そうだね。まあいくつか考えてはいるよ。それと、生産者の方にも乗ってきてもらわないとな。いずれにしても、本格的に動き出すのは、特許を出願してからだ」


「よろしくお願いします。オーナー」

「わかった。当座はウチのメイド諸君にがんばってもらって、茶葉を作らないとな」

 教授にも無心されたしな。茶葉自体は大量にもらったので、使った分の5倍以上は残っているから大丈夫だ。帰りに菓子でも買って帰ろう。


「承りました。エストさんへ指示と、皆さんに特別の手当を出すように致します。それと、アデレード館からも動員しましょう。数日前1人増員しましたので」

 へえ。そうなんだ。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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GAノベル殿より書籍が発売されます。

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訂正履歴

2025/12/27 誤字訂正 (布団圧縮袋さん、げろるどさん ありがとうございます)

2026/01/06 誤字訂正 (1700awC73Yqnさん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
メイドが一人増えたって?普通のラノベならハーレム要員が増えたってなるんだろうけど、ここのヒロインが彼女だから無理だなぁ……主人公がそれに満足して穏やかに過ごしてるからそっち方面は無しで別件でのフラグな…
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