表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/274

25話 1次試験

なぜ1次試験は学力ペーパーテストで、2次試験が実技なんですかね。コスト?

 馬車が停まった。

 既に何台か馬車が停まっているし、さらに後からも馬車が来ている。


 石畳の町並にある広場だ。


 数分間待っていると、馬車の扉が開いた。

「受験生の皆さんは、降りて待つように」


 ここはいつも外から仰ぎ見るエミリア城の中だ。僕は城壁の中に初めて入った。

 商会がお城のご用も承っているので、父様や母様は結構な頻度で入城している。母様は、伯爵夫人のお気に入りで、よく招かれているしね。


 30分程前、南通用門というところに集合した受験生は、大型馬車に乗せられて城内を移動して、ここまで来たのだ。


 前に座った同年代の子に続いて、僕も降り立った。

 むっ。うわっ。


「大丈夫かね」

「ああ、はい。大丈夫です」

 脚がもつれて、数歩よれたが何とか立て直した。


 なんだ、ここは。石畳に脚を着けた刹那、感電したようにしびれが来た。

 感じたことがない何かが、腹の底に湧いてくる。

 なんだか、魔力がみなぎってくるような。


 竜穴───


 そうだ。ここは竜脈の結節点の上にある竜穴だった。結界から出た時に感じた喪失感と逆だ。


「よし、全員降りたな。ついてきてくれ」

 この現象は気になるが、今は試験に集中すべきだ。

 馬車を降りた広場の縁を進み、石造りの大きな建物前まで来た。


 王立サロメア大学入学試験会場、同魔導学部入学1次試験会場。

 ここか。


 試験を受けることになってから、ビーゲル先生と対策の課題をこなして来たが、ようやく試験日となった。全力を尽くそう。

 建物に入り、長い廊下を2回曲がったところ。大きな部屋に通された。


「10分後に、試験を開始します。受験生は受験番号順に、席に座るように」

 試験官らしい。


「23、23……ここか」

 僕の席は後の方だ。

 ざっと、見渡すと受験生は50、いや60人位か。

 立派な作り付けの椅子の座面を前に倒して座る。

「ふう。おちつけ。レオン」


「それでは1科目目。これより国語と歴史の問題用紙を配る。ただし、開始と言うまで裏を向けておくように」

 配られた紙を、裏に向ける。

「解答用紙を配るが、まず受験番号と自分の名前を書きなさい」


 ふう……。


「では、試験を開始しなさい」

 紙がめくられる音が、そこかしこで響いた。僕は一呼吸置いて、問題用紙を裏返した。

 よし、やるぞ。

     :

     :


     †


「では、やめ! 解答用紙を回収します」

 試験官ふたりが回ってきて、それぞれの用紙を渡した。


 ふう。余り得意ではない科目だったが、7割位は答えられた。あとはなんとか埋めたという感じだ。

 残る科目は、算術と物理だ。


     †


「おかえりなさいませ。レオン坊ちゃん」

「ただいま」


 試験が終わり、商館へ帰ってくるとメイド頭(ゾルカ)に迎えられた。

「あのう、ビーゲル先生が、離れでお待ちになってます」

「そうなの? わかった」

 来られるとは聞いてなかった。

 カバンを自分の部屋に置くと、中庭を小走りで通り抜けて離れに行った。


「ビーゲル先生」

「おお、レオン君。まあ、座って座って」

「はい」

 長椅子に腰掛ける。


「その顔は、滞りなく受験できたようですね。お疲れさまでした」

「あっ、はい」

「いかがでしたか?」

「はい。算術と物理の方は、結構自信があるのですが、国語と歴史はまあまあという感じです。先生のおかげです。ありがとうございました」


「それはなにより。ですが、礼を言うのはまだ早いですぞ」

 ビーゲル先生は、怜悧(れいり)なモルガン先生とは対照的に、好々爺(こうこうや)という感じだ。

 礼は、合格してから言えということか。


「来月までは、まだ私はレオン君の先生ですからね。その、まあまあだったという方の問題を振り返ってみましょうか」

「えっ。あっ、はい」

「それで気になる問題は?」


「はい。ええと。歴史で紀元350年代の財政改革について。当時の主要政策を3つ挙げ、概略を説明しなさいという問いがありました」

「おお。なかなか込み入ったところをついてきましたね。ただ履修はしてあるはずですが」


「うっ、はい。テュロス教会領の削減と、塩の専売化にルートナスとの銀と銅の交換比率の見直しとは、一応書いたんですが」

「おお、それで正解ですよ」

「ですが、専売の税率と交換比率が思い出せなくて」

「それは微妙ですね……」


   † † †


 瞬く間に8月となり、王立サロメア大学からの封書が届いた。

 魔導学部入学第1次試験結果通知書と書いてある。


 手を洗い、一息ついてから、封を切った。


     †


「おめでとう。レオン」

「やったな、レオン」

「信じておりましたよ、レオンさん」


 夕食時に兄さんたちに、結果を披露した。

 父様と母様に、夕食前に伝えてある。


「ありがとう。いやでも、まだ1次試験に合格しただけだよ」

「そうか、2次の適性試験があるんだったな」

「適性試験なら大丈夫だろう、レオンなら」

「へえ、そうなんですね。2次試験はいつなんです?」


「今月の22日からです。義姉さん」

「王都だったな」

 満面の笑みのコナン兄さんにうなずく。


「そうか、3週間足らずか。とは言っても、王都まで4、5日掛かるからな」

「では、そんなにのんびりできませんね」

「そうだね」

 再来週(さらいしゅう)の初めには、エミリアを出発する必要がある。


「レオン」

「はい。父様」

 めずらしくにこやかにしていた、父様が口を開いた。


「ダンカンには、速達を送っておいた」

「ダンカン叔父さん?」

 父様のすぐ下の弟で、王都の支店長だ。


「うむ。王都で便宜を図ってもらうと良い」

 仕事が早い。


「ああ」

「支店には寮があるから、そこに泊まるように」

 夏休み中だから、大学の寮というところに泊まることができると書いてあったけど。そちらの方が安心かな。


「ありがとうございます」


 母様もうなずいた。


     †


「おはようございます」

 今日は、経理の手伝いの日だ

 少し早く仕事部屋に来たので、誰もまだ居ないかと思ったら1人居た。


ベガート(支配人)さん。とりあえず1次試験は合格しました。いろいろ、ありがとうございました」

 あれ。反応が薄い。


「まずは、おめでとうございます。会頭(父様)から伺いました。昨日はご機嫌がよろしかったので、その前から、そうなんだろうなあと思っておりましたが」

「ははは」

 そういうことか。


「私は経済商学部卒業なので、適性検査がある2次試験には役に立ちませんが」

「いえ、そんな。ここまで、助かりました」

「レオンには、助けてもらっていますからね、当たり前です。あっははは……」


 その時、扉が開いた

「おはようございます」

 ルッツさんが、部屋に入ってきた。

「おはようございます」

「おはよう」


「ところで、何か良いことがあったんですか?」

「えっ?」

「いやあ、支配人の笑い声が廊下に聞こえてきましたから」

「さあ、どうでしょう」


「えぇぇ、教えてくださいよ」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2023/10/24 少々加筆、表現変え

2025/03/26 誤字訂正 (毛玉スキーさん ありがとうございます)

2025/03/30 誤字訂正 (ギュランさん ありがとうございます)

2025/04/02 誤字訂正 (cdさん ありがとうございます)

2025/04/09 誤字訂正 (布団圧縮袋さん ありがとうございます)

2025/06/10 誤字訂正 (猫力学専攻さん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ