表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/276

192話 忍び旅(12) 一難去って (6章本編最終話)

おかげさまで、小説を読もう!の「注目度ランキング」の1位になりました。

お馴染みの皆さんも、ご新規の皆さんも、ありがとうございます。引き続き、よろしくお願い致します。


それで、題目通り本話(192話)をもって、6章の本編が終了です。

次話から、少し長めの閑話に入ります。

「うまく行って良かったわねえ。レオンちゃん」

「そうだね。カッショ芋を作ってくれている人が、よろこんでくれてよかったよ」

 あのよろこびが、一過性なものにならないと良いのだが。販路がなあ。


 馬車で別荘へ戻ったとき、バルドスさんアデルがいる前で絶賛してくれた。それから、エルボランに行き、表向き駅馬車で王都へ戻る予定だったのだが。

 せっかくの旅行だったのに、芋のことで時間を取らせたということで、バルドス夫妻から、もう何日か泊まっていくと良いと言われた。そこで、1泊だけ伸ばすことにして、ラ・バルバロッテに戻って来た。


「でもさ」

「ん?」

「その立役者は、レオンちゃんな訳じゃない」

「僕じゃなくて怜央だよ」


「うう。まあそうなのかもしれないけれど。なんか、レオンちゃんが報われないのはなんだかなあって。それって私のせいだよねえ」

 やっぱり、気が付くか。


「まあ、ちょっとはね。でも僕の気の済むようにやってるだけだから、アデルは気にしなくて良いよ」

 もちろん、アデルの秘密を知られた、バルドスさんに恩を売って置く意味もある。


「そうなの? でもなあ。おかげで、私にはおばあちゃんができたけれど」

「へえ。そんなにベニーさんと仲良くなったんだ」

 アデルの血族としての祖父と祖母は、全員が亡くなっているそうだ。


「うん。レオンちゃんのことも知られているから。ある意味、ユリアさんの次にいろんなこと話せるかも」

「ふーん」

「あのさあ、レオンちゃん……」

「何?」

「レオンちゃんとのこと、おかあさんに話して良いかな?」

「ブランシュさんに? 賛成」


「いや、賛成って」

「前に、僕たち結婚って話が出たじゃない」

「うん」

「あの時は考えていなかったけれど、今はアデルと結婚したいと思っている。だから賛成」

 そうは言っても、歌劇団とアデルの契約を遵守(じゅんしゅ)するなら、あと1年あまりは結婚できない。その先の話だ。


「ほっ、本当に?」

「もちろん。だけど、僕も急ぐ気はないから、時期はアデルの都合に合わせてもらえれば」

「うれしい。レオンちゃん、大好き」

 ソファーで押し倒された


     †


「汗を搔いたし、お風呂に入ろうか?」

「うん。今日は私が洗ってあげる」


 そんなやりとりのあと、専用の浴場に移動した。

「へえ。この部屋には(屋外)にも、お風呂があったんだねえ」

 アデルが内風呂からつづく扉を開けて見ている。

 もう1泊することにしたのだが、ホテルの都合で別の部屋に移った。前の部屋より、高級な部屋なので、それ以外の設備も違っている。


「行こう」

 外かなあ?

 東屋(あずまや)のようになっていて屋根はある。壁はないけれど、周囲の庭にはもちろん生け垣があって、外部からは見えない。


 屋根の下に大きい岩を組んで作った浴槽があり、湯気を上げている。

「お先に」

 さっさとローブを脱いで、お湯に()かる。


「ずるぅい。ああ、寒い、寒い、寒い」

 アデルも飛び込むように入ってきた。

「あったかい。いいお湯だわ」

「ははは」

 湯の中で抱き合う。


「ベニーさん。2月の公演に来てくれるって」

「そうか、よかったね」


「ん?」

「何?」

「大きくなってない?」

「えっ? おっぱいのこと?」

「うん」


「ふふん。最近半年前に作った衣装が、きつくなっているんだよね。胸とか、おしりとか。胴回りはちょっと布が余りだしたけど」

 そう言われれば、そんな感じだ。

 胸から下は、水面の下だから見づらいけれど。


「それは大変だね」

「えっ、うれしくないの?」

「なんで?」

「いや、なんでって。男の子は大きいおっぱいが好きでしょう?」

「んんん。いや別に。小さくても大きくても、アデルの胸は好きだけど」


「うん。やっぱりレオンちゃんは、変わっていると思う。そういうとこが好きなんだけどね。ベニーさんも絶対放しちゃダメって言ってたし」

 女は、いくつになってもそういう話が好きなのだろうか。


     †


 翌朝。ホテルのフロントに来た。


「おはようございます。レオン様」

「おはよう。精算を」

「はい。少々お待ちください」

 あれ?

 受付(フロント)の人が、奥の部屋に入っていてしまった。しかし、1分もしないで戻って来た、別の人を連れて。


「支配人さん」

「ラ・バルバロッテに、ご宿泊いただきありがとうございました」

「こちらこそ。ありがとうございました」

「精算でしたね。2名様5泊で1セシルをお願いいたします」


「ん……んん? 1セシル(千円見当)って、言いました?」

 謹厳実直そうな支配人さんは、ほほえんでは居るが、冗談ではなさそうだ。

 いやいや安すぎる、ありえないだろう、その料金は。確かに、バルバスさんがもう1泊とは言っていたけど。


「はい。当ホテルの経営者より、宿泊料を頂戴(ちょうだい)しないようにとのことでしたが。全く頂戴しませんと、利益供与に該当する場合がありますので、大変恐縮ながら、1セシルを申し受けます。曲げてお願いいたします」


 いや。どっちかというと、こっちの方が恐縮するが。

「ご厚意に甘えようよ」

「あぁ……うん」

 小銀貨を1枚出した。


「では。こちら、明細と領収証です」

 166セシルで、165セシル割引と書いてあった。

 いいのかなあ。おっと切り替えよう。


「お世話になりました」

「またのお越しをお待ちしております」


     †


 馬車でエルボランへ送ってもらい、市場が開いていたので買い物をした。カッショ芋は大量にもらったので、それ以外だ。それから当たり前のように飛行魔術で王都へ戻って来た。まだ10時だ。

 路地裏に着地した僕らは、アデルの部屋に入る。


「ただいまっと。ふう。ラ・バルバロッテも良かったけれど。我が家もいいわ」

「ははは。そうだね」

 6日前にここを出たのが、昨日のような気がする。


「わたし、窓を開けてくるから、さっき買った物以外は、寝室に出しておいてくれる?」

「了解」

 勝手知ったるアデルの部屋。

 寝室に入って、預かっていた荷物を出庫する。

 ここの窓も開けておこう。


「寝室の窓も開けたよ。エルボランで買った物だけ持って来たけど」

「うん。ありがとう」

「これって、食べる物ばっかり?」

「そうよ」

「ユリアさんは、明日にならないと帰って来ないからね。私が明日の朝食まで作って上げる。ベニーさんに習ったやり方で、お茶を()れるからソファーで待っていて」

 そう言いながら、いつものように僕のローブを脱がそうとする。


「いや、ちょっと」

「えっ。何? 今日は泊まっていくって言ったじゃない」

 アデルの顔が曇る。

 エルボランに行く馬車の中で、ここにもう1泊していってとねだられた。


「泊まるけれど。ちょっとトードウ商会に行ってきたいんだ」

「えぇ、お仕事?」

「うん。そうだなあ。お昼までには帰ってくるよ」


「うぅぅ。わかった。待ってる」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2025/03/26 微妙に訂正

2025/04/09 誤字訂正 (ラクライさん ありがとうございます)

2025/04/14 誤字訂正 (高須こ~すけさん、ferouさん ありがとうございます)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ