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155話 多人数魔術戦闘競技会(4) 青天の霹靂

霹靂(へきれき)とは雷または雷鳴のことだそうで。手書きでは、書きたくない字だなあ。

 これが狙いか───

 

 刹那、横へ飛んだ。

 数瞬前に僕が存在した空間へ、衝撃弾が殺到。


 ちい。

 勢いを逃さず、芝に片手を突くと、世界が1回転していく。


 彼らの狙いは、2段構えだ。

 (コート)の中央に密集して、僕の衝撃弾を外周に居る選手が肉の盾となって防ぐ。衝撃弾が魔壁が展開する前に直撃して彼らは敗けとなるが、覚悟の上なのだろう。死ぬわけではないからな。

 そして、彼らが発動した障壁魔術は今だ残存している。それが内周にいる者の魔術発動の時間を稼ぐ。


 側転しつつも、彼らの前に展開した発動紋から衝撃弾が追ってくる。そう、発動紋を発現するより、追撃する方が短時間でできるのだ。術式を組み替えた(ラグ)、彼らの発動も許したか。いずれにしても反則すれすれのやり口だ。


 だが。

 彼らの上空に再び(もや)が生じると、頭上から衝撃弾が降り注いだ。

 そう、13人になった対策、発動紋と人体の干渉を避けるための射線を水平から垂直への変更が効果を発揮した。


 彼らの衝撃弾の攻撃が途切れた。

 くっ───


 10人を倒したが、その余韻(よいん)に浸る間もなく。別角度で大量の衝撃弾が飛来した。

 中尉だ。

 彼の誇りに掛けて、上級生が倒れるまで、僕への攻撃を控えたのだろう。

 避け続けていても(らち)が明かない。こうなれば、攻撃こそ最大の防御。迫り来る衝撃を(かわ)しつつ、中尉へ衝撃弾を放つ。

 むう。


 彼は、突如自らの腕に宿った光で弾いた。

 彼の至近で放ったにもかかわらず、障壁で防がれたのだ。内心で舌を巻きつつ、迫り来る数十発もの回避、反撃を継続。


 どう感知するのか、3発も防がれた。全て射線を変えたというのに。

 中尉の腕に備わった、光の盾で阻まれる。


 知らない魔術だ。分析したくなるが我慢だ。油断すれば、待つのは敗北。

 致し方ない。このままならじり貧だ。

 単発では当てられない。


(シールド)

 足を止めると、攻め寄せる連弾。目前で弾き飛ばす魔壁───


 包囲、並行発動、そして飽和射出。


 脳内システム上で、目まぐるしく制御ブロックが飛び交い、瞬く間に術式が組み上がる


統合(ユニティー)───プラクティス改:照準≫


 中尉の周囲に幾何学模様が浮かび上がる。

 それを感知したが、彼は瞬足で加速。が、もう遅い。

 だが発射指令が(ひらめ)く数瞬前。中尉はのめった。


 はあ?

 あわてて攻撃を中断する。

 彼の首から提げた魔石が点滅を始めたからだ。


「試合終了!」

 審判の宣言とともに旗が上がる。


 何が起こった?

 中尉が振り返った先───腕を伸ばした女子が居た。

 そういうことか。


 中尉は大きく口を開いたが。

「ふん」

 吐息が漏れただけだった。


「わっ、私を無視するからよ!」

 そう。カタリーナ嬢の存在が、頭から抜けていた。

 10人との攻防、中尉との戦い。

 考え付く暇がなかったのだ。もしかしたら、中尉もそうだったのかもしれない。


「151番、163番、勝ち残り!」


 くう。

 せっかく起動した術式が無駄になってしまった。

 まあいいか。ともかく本選も終わった。


 中尉は一瞬後輩を(にら)み付けたが、首を振ってコートから退出した。先輩たちも力なくぞろぞろと退出したので、僕も外に出る。


 ディアとベルが居たので寄っていく。

「おめでとう」

「うん。ありがとう」

「あと一歩ってところで、あの子に良いところを持って行かれたね」

 微妙に怒っているようだ。

「ちょっと、ベル」

 そうか。やるせなかったのは、少しそういう成分もあったのだろう。


     †


「おめでとうございます。閣下」

 6735教室の青い輝きは、既に消えていた。


「ふむ。面白い物を見せてもらった。そうか。今度あれに会ったら褒めねばならぬだろうな」

「そうですな」


「閣下……そろそろ」

 壮年の男は、随員を振り返ってうなずく。

「うむ。では、われらは引き上げるとしよう。見送りは結構だ」

「はっ」


 教室から、5人余りの人物が退出していった。


「どうみるね。ミディール先生」

 計器を見ていた技能学科長が、正対した。

「はあ、それが……」

「んん?」

「発動紋の配置が自在のようで、驚きました。どうやって照準を付けたものか」

「確かにレオン君の魔術制御は、怖ろしいばかりだが。それだけかね」

 学部長は、やや意地の悪い笑みを浮かべる。


「彼女がゲオルギー君を撃たずとも、彼は四方からの攻撃を避けきることはできなかったでしょう」

「まあ、そう卑下することはない。技能学科首位が理工学科生に倒されなかったのだから」

「はあ、しかし。わが学科に欲しい人材には違いありませんが」

「無理だな。リヴァラン先生も、彼の業績を放しはしないだろうね」


     †


「3人の本選勝利を祝して乾杯」

「乾杯」

「いや、水だけどな」


 競技会を終えて着替えた僕たちは、学食で再び集った。


「レオン、無粋なことを言うなよ。お昼だから仕方ないだろう。でも疲れたよね」

「僕とディアはそんなことは……」

 ベルが口を(とが)らせた。

 ディアも笑ってうなずく。教練場でからかわれたから、反撃だ。


「ふん。どうせ、私は1敗したわよ、110番(中尉)にやられて」

 そう。僕とディアは1戦で勝ち抜けたが。ベルは組み合わせが悪く、1敗してしまった。その後は危なげなく勝ったが。

 気にしていたのか、ガツガツと取ってきた料理を食べ始める。


 そのベルが何かに気付いた。

「えっ?」

 振り向くと意外な人物が立っていた。


「隣。良いかしら?」

「あっ、ああ」

 別に拒む理由はない

 カタリーナ嬢が僕の隣に座った。

 何も持っていないところを見ると、明らかに一緒に食事をということではない。

 ん? 何だか、周りと目が合うな。もしかして、こちらをうかがっているのか?


「あなた、2年のレオンという名前だそうね」

「そうだが」

 何の用だ?

「理工学科だったとはねえ。1年生が知らないはずだわ」


「あなた。なかなか失礼な子ね」

「ふむ。誰かと思えば、私が倒した110番に倒された人」

「ぐっ!」

 ベルが(うめ)く。


「それで、理工学科の2年生に、何かご用かな?」

「もちろん。用もなしに、こんなところには来ないわ」


「こんなところ……」

 ディアが眉をひそめる。


「単刀直入に言うわ。レオン、見事だったわ。私に魔術を教えなさい!」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2024/11/09 誤字、脱字訂正、微妙に加筆

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