3、吸血鬼がついてくる
家に帰ろうと歩いていたら、背中に気配を感じた。
後ろを振り返ると、先ほど助けた吸血鬼の少女が恐る恐るといった感じでついてきていた。
どこまでついてくるのだろうと思ってそのままにしていると、家に着いてしまった。猫にでも懐かれてしまったような気持ちだった。玄関のドアを開けて家の中に入ろうとすると、少し離れた物陰から少女がこちらの様子を窺っている。
俺は仕方がなく少女に、
「よかったらお茶でも飲んでいく?」と声をかけた。
すると少女は嬉しそうな表情をして、「いいの?」と言って家に入ってきたのだった。
自分が言うのもなんだが、初対面の相手に気を許しすぎではないだろうか。
少女を居間に案内して、お茶を出した。
「先ほどはありがとう。私の名前はユーミィ」と自分のことを紹介した。「私はいわゆる吸血鬼なんだけど」と彼女は俺の指を見てくすりと笑った。「わかるよね」
俺は指を見た。先ほどの彼女が歯を立てた小さな痕がまだ残っている。
「俺の名前はアキラ」
「ふーん。アキラっていうんだ」
ユーミィは俺の家の中を見回して、
「しかし寂しい家だなあ」と呟いた。
本当は否定したいところだったが、それは自分でも日々思っていることだったので否定できず苦笑してしまった。しかしユーミィの続けた言葉は意外なものだった。
「気に入った」
「え?」
「また来てもいい?」
吸血鬼というのは寂しい家が好きなのだろうか。
「どうぞ。いつでも」
特に断る理由もないと思って俺はそう言った。
また来るといっても、一ヶ月後とかそれくらいだと思って気軽に返事したのだが、驚くことにすぐ次の日にも来た。そしてその次の日も……
結局、彼女はあれから毎日来ている。