04
後日。
キジハとススリ二人は、ツナギを加えてパーティーをやった。
それは、週末にキジハの借りているマンションでほぼ毎週行われた。
ツナギ:ススリってキジハさんと住んでんの?
ススリ:そうですよ。わたしの帰るとこはキジハさんの傍以外にないですもん。あれ~ツナギさん。もしかして羨ましいですか? 嫉妬ですか? でもダメですよ。キジハさん宅は男子のお泊まりがNGなんで。いくらぴえんしても“ダメ。ゼッタイ”なんだが。
ツナギ:薬物乱用防止の標語だろ、それ……。別にどうでもいいよ。二人が一緒に住もうが同じベットで寝ようが。
ススリ:そんなこと言って~、本当は悔しいんでしょ? 強がっていてもわかりますよ。
ツナギ:じゃあそれでいいよ、もう。
ススリ:ハッハッハッ! 男の一番じゃなくて女の一番でよかったわたし! 女しか勝たん!
勝ち誇るススリと苦笑いをするツナギ。
そんな二人を見て、キジハは満足そうに微笑んでいた。
ススリ:わたし、今が人生で一番幸せ! だってわたしなんかがキジハさんの一番なんだもん!
この光景が何ヶ月も続いたが。
ある日からキジハが家に帰らなくなった。
心配になったススリは思い当たるところを探し回り、早朝だろうが深夜だろうがキジハの知り合いへ電話をかけまくった。
ススリ:うえぇぇ……うぅ……。
ツナギ:いつまで泣いてんの。いくら泣いてもキジハさんは帰ってこないぞ。
ススリ:だってぇ、これだけ探してるのに見つからないしぃ……秒で連絡し続けても返事なかったんですよぉ。
ツナギ:むしろそれ、逆効果じゃないか……?
ツナギはススリのしつこさに思わず肩の力が抜けた。
だが、すぐに表情を引き締めて隣を歩くススリのほうを向く。
ツナギ:だけど、おまえの言うとおりだ。家に戻らないのには何か理由があるのかもしれないが、連絡がないのは明らかにおかしい。あの人らしくないよな。
ススリ:ですよね、グス……。や、やっぱり誰かに襲われたんじゃ!? あぁぁぁぁッ! ヤダヤダヤダヤダァァァッ! キジハさんを返してッ! わたしからあの人を奪わないでぇぇぇッ!
ツナギ:おいおい、道の真ん中で叫ぶなって。通報されるぞ。そしたらたぶん、誤解されて俺が捕まる。
ススリ:ヤダヤダ! ツナぎゅまでいなくなったらヤダッ!
ツナギ:ツナぎゅって……牛丼屋かよ、ガハッ!?
拍子抜けした表情になったツナギの頭に突然衝撃が走った。
続いてススリにも目隠しと猿ぐつわされ、無数の手が彼女の身体へと伸び、拘束される。
そのまま二人は車に乗せられ、どこかへ運ばれた。
気が付けば寝袋に入れられ、その上からガムテープでグルグル巻きにされている。
それからしばらく車で運ばれてどこかへ到着し、二人の目隠しと猿ぐつわが外される。
ツナギ:くッ!? あんたは……たしかタカなんとか……。
鷹尾:鷹尾だよ。忘れてんじゃねぇぞ。火傷女の性処理道具がよ。
ツナギ:ぐはッ!?
鷹尾が芋虫のように横たわるツナギの腹を蹴り飛ばした。
周りには鷹尾の手下の男たちが数人見える。
それから鷹尾はツナギの顔を踏み、同じく寝袋とガムテープで拘束されたススリへ視線を移す。
鷹尾:テメェがあの女のボディガードか。輪姦してやろうと思ったが、スミと傷だらけでそんな気も失せたわ。顔もヒデェしよ。地雷女ってマジでキモいな。
ツナギ:鷹尾さん、なんの用ですか? キジハさんを探してるなら無駄ですよ。あの人の居場所は俺たちも知らない。
鷹尾:なに勝手に喋ってんだ!? 肉奴隷が口きいてんじゃねぇぞ!
ツナギ:がぁッ!?
鷹尾がツナギの顔面を蹴り上げる。
それを見ていたススリの表情が強張り、激しく鷹尾を睨みつけていた。
鷹尾:別にテメェらがあの女の居場所を知っている必要はねぇ。連絡がつかなくて関係ねぇ。テメェらは餌だ。火傷女に金を持って来させるためのな。
ツナギ:連絡もつかないのにどうするつもりだ?
鷹尾:わかってねぇ、わかってねぇな、肉奴隷。あの女はテメェらを巻き込まねぇようにガラかわしてんだろ。んなこたぁちょっと考えればわかるじゃねぇか。テメェらを預かってるとか言やぁすぐ飛んでくるよ。
ツナギ:来ないかもしれないだろ。大体、俺たちは別にあの人の会社の社員でも部下でもないんだからな。
鷹尾:来るさ。あんな火傷だらけの女を抱ける男なんてテメェくらいだし、そこの女も似たようなもんだろ。笑える話、同類は集まるって言うからな。イキっててもあいつも女だ。ホストでも風俗でもない関係がどれだけ貴重かってだけの話で、寂しさに負けてすっ飛んで来るよ。
ツナギを踏みつけながら笑う鷹尾。
そんな鷹尾を睨み続けていたススリは、拘束された状態で身体を起こし、飛びかかろうとした。
だが、周囲にいた鷹尾の手下たちに取り押さえられる。
鷹尾:こえーこえー。そんな状態でもやる気かよ。
ススリ:ツナぎゅをイジメないで。それと、キジハさんにこのことを知らせるなんて絶対しないで。
ススリは左右から取り押さえられながらも、怯むことなく言葉を続ける。