あの日見た銀杏
窓のない空気がこもった陰鬱とした部屋の隅
いつものように天井を見上げ、いつものように空想に耽る
いつか空を飛ぶ夢をみる
夢を追いかけた少女からの手紙を片手に
感じられなくなった四季の感動
それでも感じたい何気ない日常の雰囲気
愛おしい人が遠ざかっていくのに、手をふり返すことすらできなかった
胸に去来した虚しさは未だ満たされない
鮮やかな色をつけ始めた花びら
吹き荒ぶ風はいつのまにか止んでいたようだ
君が去って行った方角へひたすらに走り続ける
気づけばたどり着いたのはあの日誓い合った銀杏の木の下
世界には自分の居場所がない
だから、耳を塞いで目を閉じ、眠りについた
だが、それは間違っていた
自分が居たい場所がただわからないだけだった
塞いでいた耳には大地を踏みしめる音を
閉じていた目には宝石のような星空を
深い眠りには煌びやかな祭りを
諦めた君にはもう一度夢を
いつも私の世界にはあなたがいる
それなのに君は全てを偽りだと言う
愛なんて幻想で妄想だと言う
そして自身が孤独だと言う
そう言って何事からも逃げようとする
それならば私が書いているこの詩は何なの
君が静かに背中を押してくれたあの日の手の温もりは何なの
ねぇ、答えてよ