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二十二話 《暴撃》

炎を纏う爪と手刀が交差する。


「《風切・天速》!」

「《焔纏い・烈火》!」


風を断つ手刀と炎を纏う爪がぶつかり、交錯し、弾きあう。


同時に周囲の地面や壁が切り刻まれ熱で断ち切られる。


百を越える連撃にも対応するのか……!


「《焔纏い・炎掌》!」

「《風切・凪斬》!」


ビオラの掌底を右足で蹴り上げ弾く。


同時に背後の壁が掌型に陥没し崩れ落ち、ビオラの背後の壁も切り裂かれ崩れ落ちる。


あっぶねぇ……!何て威力だ……一発でも当たれば確実に死んでしまうな。


「今のを弾きますか……!」


ビオラが驚嘆の声をあげながら拳を振るう。


拳を同じく拳で弾きながら俺は内心焦りが生じていた。


魔なる者と人間では身体能力に絶対的な差がある。そのため、同じ《天武》でも能力に差が生じる。


今俺が拮抗出来ているのは圧倒的な経験だ。忌々しいが、あいつとの修行が豊富な経験となって俺を支えてくれている。


だが……このままだと俺は負ける。能力的にも、確実に。


「《焔纏い・爆掌》!」


「ッ!!《風切・流天》!」


ビオラの両手から繰り出される掌底を両手の手刀で逸らす。


同時に掌から爆発が起きる。


「ぐおっ!?」


爆風に煽られ、大きく吹き飛ばされる。


立ち上がろうとした瞬間、焔の槍が肩を貫く。


「があああああああああああああああああああああ!?」


あまりの痛さに咆哮し、焔の槍を魔力で破壊すると同時に腹にビオラの蹴りが突き刺さる。


「ごふっ!」


「とどめ!」


壁に叩きつけられた俺に向けてビオラが手刀が振り下ろされ、胸が大きく切り裂かれる。


「死の業」


だか、これを待っていた。


「何を……ごふっ!?」


ビオラが口から血を吐く。


同時に身体に受けた傷が癒えきり、宙を舞う人形の一つが燃え落ちる。


「何を……したぁ!!」


「《人形骸》は俺が受けたダメージを相手に返す。まあ、発動トリガーが俺が死ぬほどのダメージを負った時だけだけど」


正確には俺の業を相手に押し付ける魔法と受けたダメージを無効化し相手に押し付ける魔法を合わせた呪詛返し。


業の押し付けのため傷そのもの押し付けれず、俺が死を回避したことで死ぬことはできない。


「さあ、まだ俺の命のストックは百を越えるぞ」


「なら……全てを燃やし尽くす!」


痛みで下がったビオラの腹に向けて水平に蹴りを放つがビオラは蹴りを躱し爪を振るう。


俺は爪を手の甲で弾き掌底を肩に叩き込む。


同時にビオラが焼ける手で俺の腕を掴みもう一つの手で拳を放つ。


「《暴破》」


拳が触れる瞬間、右手に魔力が流れ同時に衝撃波がビオラの肩に放たれる。


「ぐっ!?」


あまりにも突然の衝撃にビオラの体勢が崩れる。


腕から手が離れたことで俺は少し跳躍して距離をとる。


身体に受けた衝撃をストックして放つ《暴破》を使ってしまった。強力なカウンター技だが、初見殺しの技だからあまり使いたくなかったんだがな……!


「《焔纏い・滅進》!」

「《風切・追風》!」


体勢を戻したビオラの足が爆発すると同時に手刀を振るい肉薄したビオラの爪と交錯する。


《風切》の中でも起こりが最速の技とほぼ同速か。


「《風切・風断》!」

「《焔纏い・炎斬》!」


反転しながら身体を捻り、右腕を大きく回転させ風の刃を放つと同時にビオラも同じく炎を刃を放つ。


間の中間でぶつかり合い、互いの刃が弾かれる。

同時にビオラに接近し互いに足を踏み込み拳を握る。


ここまでくれば次に繰り出す技は俺もビオラも予測ができる。


「《魔拳》!」

「《魔拳》!」


自分の技の中で最も基礎的な技だ。


互いの純粋な拳が互いの胸を捉える。


同時に吹き飛ばされながら宙を舞う人形の一つが燃え落ちる。


「ごふっ!?」


その瞬間、立ち上がろうとしたビオラの口から血が溢れ落ちる。


今の一撃は心臓を潰すほどの一撃だったのか。だが、それが反射される訳だからな。


「はぁ……はぁ……!私は、必ず……お前を、倒す!」


「……マジかよ」


口から血を滴し、よろけながらもビオラは立ち上がる。


俺は起き上がりながら血の塊を吐き捨て、ビオラに驚嘆しつつ睨み付ける。


ビオラのおおよその狙いは分かった。


ビオラは何百と俺を殺すことで命のストックを全てを燃やすつもりだ。


《人形骸》の術理を強引に突破する手法だが最も苦痛を伴う手法だ。


これを可能にしていのは狂気の領域まで磨かれた信仰心。


故に、狂信者が引き起こす事件をこの国では『厄災』と呼ばれている。


「燃えろ……燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ!!」


ビオラの言葉に呼応するように身に纏う炎が燃え盛る。


俺はそれを見て冷や汗を垂らす。


「……魔力で発生させた炎を術者が耐えること自体は可能だ。だが、それはお前の耐久力を越えているぞ」


事実、ビオラの身体は炎に熱せられ少しずつ焼かれていっている。《天武》に回している魔力を最小限にし、炉にくべているのか。


「黙れ……!貴様に何が分かる……!拷問の痛みを!友が冷たくなったことを!凌辱の限りを尽くされた絶望を!お前ら王国に受けた仕打ちを!のうのうと生きるお前に何が分かる!」

「……そうか」


「貴様はここで殺す!貴様は聖典教会の絶対的な敵、ここで殺しておかなければ後に大いなる巨悪と成る!」


俺は涙を流しながら炎を纏うビオラに憐憫の眼差しを向ける。


今の言葉でだいたい掴めた。


ビオラは他の狂信者とは違い、完全に洗脳されている訳ではない。今までの積み重ねが彼女を狂信者らしく振る舞わさせているのだ。


「《焔纏い・煉獄》!!」


「《暴撃》!!」


青く燃える炎を纏ったビオラが飛ぶように疾走する。それと同時に俺も地面を蹴りビオラに肉薄する。


俺の持っている技の中で最も威力が高い技。


その術理は相手の魔力を喰らい、刹那の内に何百倍にも増幅し放つ絶技。


つまり、


「相手の魔力が多ければ多いほど威力を増すカウンター技」


煉獄の焔を貫きビオラの腹を捉える。


膨大な魔力が撒き散らされ突風となり、ビオラの身体が訓練所の壁に叩きつけられる。


あまりの衝撃に訓練所の壁が粉砕され、ビオラの身体が瓦礫の中に埋まる。


「ごほっ!」


俺は吐き気を覚えて口に手を当てて血を吐き出す。


流石に、あれだけの魔力を完全に喰らいつくす事は出来なかったようだな……。まあ、元よりこの魔法はただの人間が使う事を想定していないからな。


俺は口元に付着した血を拭い、ビオラが埋まった瓦礫を退かして瓦礫から掘り出す。


魔力が少なく流れも細く、肌が黒ずみ、息も荒い。


魔力欠乏症の典型的な症例だな。


「《聖符・マナ》《波動》」


魔法陣を展開して魔力欠乏症を治療していく。


みるみる内にビオラの状態が良くなっていく。


「何故……助けて……」


「別段殺しても良かったが……ま、気分が悪いだろ?」


「そんな理由で……」


ビオラは少し唖然とした様子だったかすぐに瞼を閉じて寝息を立て始める。


そんな理由ねぇ……ま、そうだよな。


さて、と。後はこいつを兵士たちに突き出すだけだが……待っているのは拷問と屈辱的な凌辱だろう。


理由はそうそう狂信者は捕まらないからだ。聖典教会の内部情報は軍部からしたら喉から手が出るほど欲しいものだからな。拷問に熱が入るのは仕方ない。


さて、どうしたものか……。まあ、俺が関係することではないけど、上手く言っておくか。


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