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十八話 模擬戦

「……動きやすさは必要だが求めすぎるのは良くないと思う」


俺は着用したプロテクターの付いたボディスーツを感想を呟く。


手を開けたり閉じたりした後眉間に皺を寄せる。


全身にピッタリと張り付いたボディスーツは魔力の通りが良い素材を使っており魔力を通すと衝撃を緩和したり身体能力の向上や補助ができる。また、防刃、防火、防熱性も高い。


本来鎧の下にインナーとした着用する物だが練習や水上戦ではこれを使うらしい。


講義とはいえ、俺は制服でも良かったが……無駄に性能が良すぎないか?作った奴は絶対変態だろ。


講義のために訪れた訓練所では既に全員がこの姿をしていた。


「うぅ……恥ずかしいです……」


「まあ、ボディラインがくっきりと出るからな。……本来は鎧の下に着るものだから動きやすさを重視したのだろう」


恥ずかしそうにもじもじとするサクラに近づくと上目遣いで俺の顔を見てくる。


制服だと分からなかったがサクラはかなりメリハリがついた体型だったらしい。


そういえば、クラスの男どもがチラチラと見ているな。そういうことだろう。


「それでは、ペアを作ってください。体術試験のように自分の実力を出せるように」


フレイの号令と共に俺らは互いにペアを作り始める。


「やろうぜ」


「い、いや……止めておくよ。実力が違いすぎる」


クラスの男子に話しかけるとすぐに拒否される。


まあ入学初日でDクラス全員と喧嘩して全滅、戦意喪失した連中すらねじ伏せるとかしていたからな。しかも、かなり一方的に。


そんな奴と相手をしたって一方的にねじ伏せられるのが目に見えているからな。


「サクラ、一緒にやりあうか?」


「分かりました。……他の人たちはもう組んでしまったのでいませんし」


サクラは少し残念そうな苦笑いを浮かべる。


クラス人数は二十人、その中で女子は五人だから女子と女子で組んでいったら一人あまるか。


「それじゃあ……始めるか」


「……はい」


俺とサクラは後ろに跳び適度な距離をとる。


さて、サクラの実力はどれくらいなの……!?


「すぅ……ふーーーー」


深呼吸と共にサクラの眼差しが剣呑なものに変わる。


何時もの柔らかい雰囲気から狂気的な圧に変わる。


俺は冷や汗を掻きながら俺はニヤリと口角を上げ拳を構える。


さぁ……始めようか。


「《一条》」


「ッ!!」


俺が地面を蹴ると同時に猛烈な危機感が脳内で鳴り響く。


咄嗟に腕を楯にすると同時に衝撃で吹き飛ばされる。


「初見で防ぎますか……!?」


着地と同時に地面を蹴り一気にサクラに肉薄する。


「《砲拳》」


「ッ!!」


体当たりにも近い拳を打ち出す。


サクラは刀で拳を防ぎ、吹き飛ばされる。


すかさずサクラに接近し手刀を振り下ろす。


サクラは手刀を刀で受け止めて弾く。


《天武》は使えるようだな。しかも、かなり高水準だ。なら、加減しなくて良い。


「《大凪》!」


俺は地面を蹴りサクラに接近し右足を鞭のように垂直に振り降ろす。


サクラは刀を縦に構えて蹴りを受ける。


それと同時にサクラを挟むように斬撃が落ちる。


「あの……どう考えても殺しの技ですよね」


「防げてる時点で問題ないのでは?」


「……まあ、そうですけど!」


サクラの打ち上げるような蹴りを身体を反らして躱し右足を引く。


すかさずサクラの刀が振るわれる。


俺は《風切》を発動し振るわれる連撃を全て弾く。


「《月裂(つきさき)》!」


「《海鳴》!」


サクラが刀を上段に構えると同時に刀に魔力が宿る。


サクラが刀を振り下ろすと同時に両手に魔力を集中させ斬撃を弾く。


それと同時に訓練所の床が切り裂かれる。


原理は《大凪》と一緒。魔力の刃を得物に作り振り下ろすだけ。ただ防いだら魔力の刃で切られる訳だから魔力を纏わせて防ぐ技術も必要だな。


「うわっ!?」


「あの二人、レベルが高すぎるだろ!?」


衝撃で揺れる地面を蹴り、サクラの頬を殴る。


吹き飛ばされながらサクラは地面を蹴り肉薄し刀を切り上げる。


ボディスーツを易々と切り裂き傷口から血が漏れる。


「ぐっ……!」


「ははっ!」


俺は焼けるような痛みで下がる。


サクラは嬉しそうに笑い顔に付着した返り血を舐め再び迫ってくる。


「ちっ……!《波拳》!」


拳に魔力を込めて刀目掛けて拳を打ち出す。


刀と拳がぶつかり合うと同時に刀は粉々に粉砕する。


「……えっ!?」


「魔力の防御を過信し過ぎたな」


俺は足を踏み込み唖然とするサクラの腹を殴り付ける。


衝撃を緩和するボディスーツを貫きサクラの全身に衝撃が行き渡る。


「あっ……」


完全に行き渡ると同時にサクラの意識が落ちる。


確かに全力でやりあったが……ま、流石に向こうも俺も周りに配慮した上での全力だったからな、こうなるのは当然か。


そもそも、俺とこいつでは戦闘経験が違うからな。


「《聖治》……と、こいつはどうすれば良いですか?」


「えっと……治療棟に連れてってください」


「了解」


魔法で俺とサクラの傷を癒して背負いあげて訓練所を後にする。


治療棟は……げ、案外遠いな。さっさと運んでしまおう。


魔力を滾らせ足に力を込めた瞬間、首筋に噛まれたような痛みが走る。


咄嗟に背後を見るが誰もいない。


「……気のせいか」


「ん……?」


気にせず歩こうとしたところでサクラが目を覚ます。


結構本気で殴ったら一時間は起きないと思ったがすぐに起きたな。


「カイン……さん?」


「お前を治療棟に連れていくが……歩けるか?」


「いえ……身体がまだ痺れて……」


まあ、そうなるよな。


俺はサクラの言葉に納得しながら歩き始める。


《波拳》をまともに食らうと一時的に魔力の流れが不規則になってしまい歩くことも魔力を練ることも出来なくなる。


ま、あいつに言わせれば「初見殺しにしか使えない技」だけどな。実際、『一式』クラスの実力だと効き目薄いし。


「ありがとうございます……やっぱり強いですね……」


「まあな。……そっちも周りに配慮していただろ」


「まあ、そうですけど……ふふっ、やっぱりカインさんも気づいてたんですね」


「ああ」


サクラが優しく笑いながら俺の首もとに手を回し抱きついてくる。


同時に背中に柔らかい感触がボディスーツ越しに伝わってくる。


胸が押し付けられている気がするが……まぁ、気にする必要はないか。


サクラは嬉しそうだし、機嫌を損ねたくないしな。


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