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十六話 蹂躙

「ふわぁ……」


中庭の中央にある噴水の縁に座りながら欠伸を溢す。


戦いの場である中庭を見下ろしている同級生たちが窓から見下ろしている。


見世物ではないが……まぁ、そこら辺は一々文句を言うのは億劫だしな。


それに、魔力の気配がするな。状況から考えて《スカウトアイ》か。教師の中に使い手でもいたか。


壁をぼーっと見ていると強い気配を感じとる。


そちらを向くと校舎からDクラスの生徒が出てくる。


Dクラス生徒は全員金属製の鎧を身につけていた。


「練習用の鎧……ではないな」


「ああそうさ。これはミスリルだ」


豚の言葉に観客は喧騒に包まれる。


ミスリルは魔力を遮断する特殊な鉱石だ。また、加工次第では魔力を増幅させる事もできる。


王国の騎士が使用している鎧もこの金属でできる。


人数も合わさり、通常なら過剰戦力も良いところだ。


「ふざけるな!ただでさえ一人相手にこれはやり過ぎだ!」


「俺たちは一方的な虐殺が目的じゃないんだぞ!?」


周りから野次がとんでくるが豚どもはニヤニヤと気味の悪い笑顔を俺に向けてくるだけだ。


気にしていない事、いや文句を言わせないつもりか。


気色悪い。さっさと始めるとするか。


俺は立ち上がるとDクラスに殺意を向ける。


「さぁ……始めるとするか」


「ああ……かかれ!」


「「「「「「おおおおおおおおあおおおおおおおおおおお」」」」」」


豚二号の号令と共にDクラス生徒が一斉に剣を抜いて俺に押し寄せる。


怒気と怒声に包まれる中、俺は拳を握る。


一斉に押し潰せば楽に勝てる……とでも思っているのだろうか。


全くもって、愚か。


魔力を漲らせると同時に地面を蹴る。


高速で近付きながら腕を振り払い右翼を弾き飛ばす。


「……は?」


宙を舞う生徒たちに豚二号は呆然とする。


ミスリルは魔力を遮断する。だが、その衝撃は遮断されない。


《天武》の使い手である俺がミスリル程度で苦にはならない。


俺の左右をとった男子生徒が斬りかかってくる。


俺は避ける事はせず剣に当たりにいく。


「なっ!?」

「はっ!?」


俺の肩と膝に当たった剣はへし折れる。


俺は驚愕する二人に手刀を振り降ろす。


ミスリルの鎧は易々と切り裂かれ鮮血が舞う。


「《天武》を発動させた相手に傷をつけれるのは同じ《天武》を使ってる者かランクAの魔法だけ……ま、例外もあるけどな」


魔力遮断鉱石のミスリル製の武器や《魔武》を武器に纏わせる《武装》、聖典教会の粛清武装なんかだと《天武》の身体を傷をつけれる。


まぁ、ミスリル製の武器は聖魔教会の武器だし、《武装》は《天武》と同じくらい難易度が高い、粛清武装は論外と俺の身体を傷つけれる要素は全て潰れている。


俺は後退るDクラスの連中目指して笑顔で歩く。


ようやく分かったようだな。これはお前らが俺を蹂躙するのではない。俺がお前らを蹂躙するんだ。


それも、お前ら貴族がやるような越権的な蹂躙ではない。ルールに乗っ取ったものだ。


「文句は、ないよな」


呟きと共に俺は生徒の一人の頭を掴み地面に叩きつける。


やけくそで振り下ろされる剣を弾いて壊し、もう片方の手を腕を掴んで引き寄せ顎を蹴り上げる。


気絶した生徒の腕を手放すと同時に背面を振り向きながら腕を振るい火の玉を弾く。


意味のない攻撃だな。


地面を蹴り飛ぶように接近し魔法を放った生徒の腹に蹴りを叩き込む。


「ごっ!?」


蹴られた生徒はそのまま壁に叩きつけられ壁を凭れながら地面に落ちる。


さて、他の連中は……と。


「お、おい!何で出られないんだ!?」


出入口で見えない壁に阻まれている連中に近づくと手刀を振るう。


ミスリルの鎧を手刀が易々と切り裂き鮮血が散る。


「《聖治癒》」


魔法陣を展開し傷だけ塞ぐと残った連中の方を向く。


殺さないように傷だけ塞いでおいたし……さて、戦意は挫いたし、後は処理だな。


「《爪撃》」


残った連中に刹那で近付きながら爪で引っ掻くように手を振るう。


鎧を指が引き裂き、一瞬で血の海に変わる。


ふん……この程度で終わるか。


「あぁ、そういえばお前らがいたな」


中庭の隅で縮こまっていた豚二号と豚を見つける。


「く、来るな!来るなぁ!」


「な、何をしたんだ。僕らが何をしたんだ!?」


「……理解しなくていい。お前らは理解する価値もない」


泣きわめく豚の顔面を蹴り腹を蹴り壁に叩きつける。


壊れたように笑う豚二号の襟を左手で掴み持ち上げ顔面を殴る。


さて、これで全員だな。


「それじゃ、ポイントは有り難く貰うぜ」


そういって出入口から出る。


校舎の中に入るとサクラが駆け寄ってくる。


ま、やり方がやり方だし文句の一つくらい言ってくるかもな。


それくらいは甘んじて受け入れよう。


「カインさん、今すぐ制服を脱いでください!」


「はいぃ!?」


サクラの発言に周りに来ていた他のクラスメイトもぎょっとしてサクラに視線を向ける。


「お、おいサクラ。色々あるだろうけどセーブしろ」


「早くその服を洗わせて下さい!血の臭いが酷いです!」


血の臭い……あ、そういうことか。


俺の身体や服には返り血がかなり付着して元の色が分からなくなっている程だ。


確かに、これで後の時間を過ごすのは少し嫌だな。


「分かったが……ここで言うな。周りの目を見ろ」


「あ……」


周りの目を察したサクラは顔を真っ赤にして俯く。


やれやれ、周りの目を理解していなかったのかよ。ま、そこが可愛いところだと思うけどな。


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