きつねとたぬき
私は赤いきつね派です。
山に棲むきつねとたぬきは、どちらの方が優れているのか、常に競っておりました。
今日もより人間を誑かした方が勝ち。そんな約束で村へと下りては人間を騙しております。
「おじいさん、オレだよオレ!」
「おばあさん、僕です僕!」
二人は年寄りからお金を巻き上げ、悦に浸っておりましたが、決着は着きません。そこで、村の外れに棲む、ちょいと変わった独身男を、女に化けて騙した方の勝ちと決めました。
きつねは幸の薄そうな女に化けて、弱々しく戸を叩きます。
「もし。ちょいと助けておくんなまし……」
男は戸を開け、きつねが化けた女を一目見るなり、「チェンジ!」と戸を閉めてしまいました。
「ククク……修行が足りないんじゃない?」
と、今度はたぬきが男の家へと向かいました。。田舎に居そうなぽっちゃりで安産型のお尻をした女に化けたたぬきは、強めに戸を叩きます。
「隣に越してきたぽっちゃりです!」
その声に男が戸を開けますが、男は顔をしかめます。
「……ギリチェンジ!」
戸が閉まると、きつねは笑い、たぬきは怒りました。
きつねが絶世の美女に化けて再度男の家へと向かいました。
「ほう、これはこれは美しい。だが、家事は出来るのかな?」
家に招かれたきつねが料理としてみると、それはそれは消し炭の様なゴミが沢山出来上がりました。
「……チェンジ!」
きつねは追い出されました。
次にたぬきが傾国の美女に化けて再度男の家へと向かいました。
「ほう、これは中々……して、料理の腕前は如何かな?」
家に招かれたたぬきは、必死で料理をしました。そして、普通に食べられそうな手料理を振る舞いました。
「ほう、これはこれで…………して、夜の方はどうかな?」
夜具に招かれたたぬきは、初めての伽に慌てふためき、逃げ出してしまいました。
そして二人は修行が足りないと悟り、山にこもって修行に励みました。
そして二匹は男の家へと向かいました。
「おやおや、美人が二人も……?」
きつねとたぬきは同時に男の家へと入り、豪華絢爛なご馳走を振る舞い、同時に夜を過ごしました。
そして朝になると、本来の姿を現し「騙されたなバカめ!」とからかって山へと帰りました。
しかし、二人は女に化けて男と交わった故に、妊娠になってしまったのです。
「ぼ、母性が沸いてくる……!」
「お腹の子が愛おしい……!」
二人は山を下りて、再び女に化けて男の家へと向かいました。
「あの時の女です。どうか貴方様の妻にして下さいませ」
きつねとたぬきは、男と三人で、子宝に恵まれ仲良く暮らしましたとさ。