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main_1_日常

 綺麗な満月の夜だった。

 夜空には点々と星が輝き、月明かりは夜道を明るく照らしていた。

 少年――鷲宮悠月は父親に手を引かれながら何処かへと行く途中であった。

 今にして思えば、何故父親に手を引かれていたのかも覚えていない。

 ただ、時折吹く風が冷たくて、父親の手の温もりを離すまいと必死になっていたことだ

けは覚えていた。

「なぁ、悠月。お前は大きくなったら何になりたいんだ」

 唐突に、鷲宮仁は息子に問いかけた。

「何にって……どういうこと?」

 見上げなければ横顔を拝めないほど父親の背は高かった。

 表情は見えない。真っ直ぐに正面だけを見つめていて、何を考えての質問なのか幼い悠

月は意図を汲むことすらできなかった。

「どういうことって……うーん、そうだなぁ」

 仁は困ったように苦笑した。

 まだ言葉の意味すら理解できない息子にどう真意を伝えるかに頭を抱えた。

「お前がオレと同じくらいに大きくなって、あのお星様がもっと近くで見れるようになっ

たらどうするかってことだ」

 馬鹿である。幼心にしてみればより一層真意を把握できなくなったと断言していい。

 だが、父と同じくらいになったらという点で悠月はなんとなく理解できたらしい。

「お父さんと同じくらいになったらかぁー」

 そうして悠月は考える。数多ある星々を見上げながら将来自分が何に成りたいかを。

「僕、お父さんみたいになるよ! お父さんみたいな凄い“――――”に!」

 ノイズ。

 これは夢の中の出来事だ。

 遥か昔、物心すらついていない過去の記憶なら欠落くらいはあるだろう。

「……そうか。それは参ったな」

 ただ、その答えに父が心底悲しそうな表情をしたことだけは鮮明に覚えていた。

 けれど悠月はそれで気持ちを良くしたのか、興奮したように瞳を丸くしていた。

「ねぇ、お父さん。もうすぐ来るよ、――――お月様が。これで僕もお父さんみたいな―

―――になれるんだよね!」

 見上げる月が悠月の瞳に大きく映る。

 手を伸ばせばもう届きそうなほどに大きい月。

 それは只只、美しく蒼い満月であった。


「悠月……ねぇ、悠月、起きて。もう朝だよ」

「……なんだよ、玲愛。まだ学校に行く時間じゃないでしょ。もう少し寝かせてよ」

 ゆさゆさと体を揺さぶられて悠月は強制的に意識を覚醒させられた。

 妹の鷲宮玲愛。聞き慣れた声であった。

 黒のロングヘアー。肩より少し長い髪が垂れて悠月の頬に触れている。

 微かに良い匂いがするのは妹の手入れが行き届いている証拠か、朝の刺激にしては少し

強めであった。

「だーめ。今日はお父さんと朝稽古するって約束だったでしょ。お父さん、もう道場で待

ってるんだから」

「……稽古? 冗談でしょ。稽古はいつも夜にやってるんだ。朝なんて御免だね」

「はぁー。やっぱり忘れてた。お父さん、今日は帰って来るって昨日話したでしょう」

「やっぱり行かなきゃ駄目かな」

 ぬっと布団から顔を出して悠月は抗議の視線を玲愛に向けた。

 真正面、布団を挟んで数十センチと離れていない妹に対して。

「アタシに言わないで。直接お父さんに聞いてみれば? 怠慢で拒否るのは許さないんじ

ゃない。多分だけど」

 一瞬の静寂。やはり妹の整った顔は真近で見れば綺麗だ。

 兄である悠月だからまだいいものの、だからこそ悠月も兄としてここは注意せざる終え

ないだろう。

「あのさ。前々から言ってるけど起こす時にマウント取るの止めない? 重いし、柔らか

いし、ちょっと困るんだけど」

 女性に“重い”は禁句だろうがこれで妹の癖を直せるのなら儲けものだ。

 ビンタくらいは覚悟して悠月は禁断のワードを口にした。

「なに言ってんのいやらしい。妹に欲情する兄なんて聞いたことないんですけど」

「玲愛が聞いたことなくてもそう可笑しいことじゃないみたいだよ。兄妹での恋愛」

「しょーもな。くだらないこと言ってないでシャキっと起きる。お父さんに起こされるよ

りはマシでしょう」

 指の腹で悠月の頬をツンツンする玲愛。

 最後に指先でバシっとデコピンをかますと、窓際に向かってカーテンを開けた。

「ほら、早く行かなきゃ。時間、無くなっちゃうよ」

 部屋に差し込んでくる光に目が眩む。こうなれば仕方がない、と悠月は腹をくくった。

「仕方がない。行って来る」

「くくく……しっかり扱かれてきなさいよね」

 緩慢な動きで部屋を後にした悠月は二階の自室から一階のリビングへと向かう。

 階段を降りると炒め物をしている音と鼻腔を擽る肉汁の匂いがした。

 いつも通り母、鷲宮杏華が朝食の用意をしているだろうと悠月は察した。

「おはよう、母さん」

 リビングに入り、洗面所を目指すついでに悠月は杏華に挨拶をする。

「あら、おはよ~悠月!」

 悠月の姿に気がついて鷲宮杏華は振り向いた。

 背中まで伸びた長い髪が扇状に広がる。

 気の抜けそうなぽわーっとした口調がなんだか可愛らしい。

 二児の母だというのに老いを感じないその美貌と若々しさは日頃の手入れの成果を物語

っている。何時になっても可愛らしいとはご近所さんが言っていたことだ。

「今日のご飯はなに?」

「ベーコンエッグにサラダが少々。それとご飯とお味噌汁。あ、いけない。二人には鮭の

方が良かったかしら。つい仁さんに合わせちゃった」

「別になんでもいいよ。ご飯が食べられれば僕は文句ない」

「そう、良かったわ」

 簡単な会話を済ませて悠月は洗面所に入る。

 洗面台で顔を洗った後、脇に置いてあったコンタクトレンズを目につけた。

「よし」

 正面の鏡に映る自分の顔を見て悠月は心の中で活を入れる。

 手短に着替えを済ませて道場へと足を運んだ。


 その昔――鷲宮家の先祖は莫大な資金を投じて大きな武家屋敷を建てたという。

 何故、そんなことをしたのかは不明。

 武士の出だから武家屋敷を建てられたのだろうと父、鷲宮仁は言っていた。

 敷地内には日常生活を行う為の本宅と鍛錬を積む為の道場。離れに土蔵がある。

 推測するに四方を外壁で囲めるほどなのだからさぞ格式は高かったのだろう。

 今ではすっかり現代に馴染んでしまい、住まいも平屋だったものを二階建てに改築して

しまっているので内部構造はそこまで昔の面影を残していない。

 むしろ悠月としてはこのだだっ広い敷地を維持する方が悩みの種であるくらいだ。

 唯一救いなのは夏場であれば外でパーティーが出来ることくらいか。

 尤も、秋から冬場に差し掛かったこの季節で野外パーティーは無縁であるが。

 ともかく家族四人で住むには中々手に余る代物であることは間違いないだろう。

「遅かったな、悠月」

 道場には剣道着姿の父、鷲宮仁が居た。

 正座をして目を閉じている様子から察するに瞑想でもしていたのであろう。

 整えられていない頭髪に無精ひげというスタイルは誰がどう見ても親父のそれだ。

 しかし剣道着を着込み、整然と居座っていれば武士のそれとも見えなくない。

 事実、仁は悠月に剣の道を教える師範代であった。

「だって、いつもはこんな時間にやらないじゃないか。今日だっててっきり帰ってこない

かと思ってつい……」

「アッハッハハ! 違いねぇ。オレが帰ってこない方がゆっくりできて都合良かったか」

「そうは言わないけど」

「ま、せっかく起きたんだ。ちょっとは付き合えよ。こういうのも親孝行ってもんだぜ」

「なに言ってるの。まだ親孝行って歳でもないでしょう」

「いいから。ほれっ!」

 ぶぉんと風を切る音がした。仁が何かを投げて寄越したのだ。

 こんな道場で音が出るほどの質量を持つモノがあるとすれば相場は決まっている。

 悠月は無意識にソレを掴んだ。

「これは」

 しかし、悠月の予想は裏切られた。

 ここは剣道場だ。渡されるのは竹刀、或いは木刀だと考えていたのだ。

 彼が手にしているのは紛うことなき真剣。本物の刀であった。

 軽い気持ちで受け取るにしてはあまりにも重みが違ったのだ。

「父さん、どういうつもり。まさかこれでやろうって?」

「久しぶりの朝稽古だからな。脅かしてやろうと思ってさ。どうだ、ビビッたろ。マジモ

ンだぜ、それ。抜いてもいいぞ、特別に許可してやるよ」

 悪びれる様子もなく仁は肩を竦めた。

「はぁ……ジョークにしてはきついよ。おかげで目が覚めた」

「お、いいね。やる気だぁ。上がって来いよ」

 悠月は道場の中央まで歩いていくと仁に正対した。

 その手には竹刀が握られている。刀は道場の隅に置いてきた。

「なぁ、一応聞くけど真剣でやるのはやっぱ駄目か?」

「駄目に決まってるでしょ。あれは儀式の時にだけ使うって約束じゃないか。真剣での勝

負は受け付けてない。怪我したらどうするの」

「怪我しないようにやるんだよ」

「却下。居合いとかの稽古ならまだしも人に刃物は向けたくない」

 話を切り上げるように悠月は竹刀を構える。

 朝稽古とはいえ時間は限られている。やるならば早くしろという合図でもあった。

「お優しいことで。オレと違って随分優しい男に育ったもんだ」

 仁も観念して竹刀を構える。

 遥か昔。鷲宮家はこの道場を利用して独自に剣術の新たな流派を生み出した。

 一子相伝ではないが可能な限り内密に。

 世間には決して公表しないことを前提とした秘密の剣技を先祖代々、家訓として受け継

いでいる。

 鷲宮仁は鷲宮流の師範代。実力では悠月よりも圧倒的に上なのだ。

 悠月が勝てる道理はない。試合の結果はやらずとも見えていた。

「手ぇ抜くなよ、悠月。お前にはオレを超えてもらわねぇといけねぇからな!」

「出来ることならやってるよ!」


「あーあ痛そー。悠月、まーた負けたんだ。弱っちぃねぇー」

「うるさいなぁ。これでもやるだけのことはやってます」

 朝稽古の後、鷲宮家は家族揃って朝食を食べていた。

 玲愛が悠月を弄る光景もいつものと変わらない日常であった。

「アッハハハ、そんなにお兄ちゃんを苛めてやるなよ、玲愛。一応フォローしとくとこれ

でもだいぶ強くはなってんだぜ、こいつも」

「ふーん。でも負けは負けでしょう。アタシ、悠月が勝ったとこ一度も見たことないよ」

「はいはい、玲愛は良いよね。この前の弓道大会でも優勝でしょ。この分なら学科試験な

んて受けなくても特待生で昇級だ。おめでと」

「生憎とアタシは悠月と違って目がいいからね。いやぁーなんでも見えるって辛いなぁ」

 どことなく険悪な仲になっていく二人。

 それを見かねて杏華が声を上げた。

「はいはいはい。二人とも喧嘩はそこまで。仁さんもナチュラルに悠月を責めないの」

「えぇ!? 杏華さん、別にオレ怒ってなんかないよ。フォローだって言ったじゃん!」

 あたふたと仁が狼狽える。妻である杏華の前では仁は立つ瀬がないのだ。

「わかってますよ、仁さん。とりあえず、はい、あ~ん」

 仁の前に差し出されたのはイチゴジャムをたっぷり塗ったトーストだ。

 ご丁寧にも杏華はそれを手に取って仁の口元へと運ぶ。

 仁も嫌がることなく大口を開いてパンを咥え込んだ。

「えっ、いいの!? やったぁ! あ~ん!」

 この時、子供たちは心の中で思っただろう。『このバカップルめ』と。

 仲睦まじいことは良いことだがここまでされてしまうと気恥ずかしさの方が勝る。

 子供たちは揃って視線を逸らしていた。

「ふぁ、ふぉうふぁ。ふぉふぉふぃふぇふぁふぁ~!」

「食べ終わってからでいいから!」

 不意にパンを咥えたまま喋り出した父親を玲愛と悠月が同時に制止する。

 この父親、見た目は大人であるはずなのに随所で見られる所作がまるで子供なのだ。お

よそ父親の威厳が感じられないのである。

「うふふ、二人ともタイミングバッチリね~♪」

 一方の杏華は暢気に笑うだけ。子にも甘いければ夫にも甘い。

 そうなると必然、子供たち二人がしっかりしなければならないから不思議である。

 仁はバクバクと食パンを平らげて再び悠月たちに話しかけた。

「あのさ、天音ちゃんたちとは相変わらず仲良くやってんのか」

「あぁ、友達のこと?」

 玲愛が仁の意図を汲み取って答える。

「そうそう。最近俺、出張が多かったろ。なんだかんだ三ヶ月か。仲悪くなってねーかな

ぁーとか心配するわけよ。親としては」

「う~ん、別に普通じゃない。特別仲が悪いとかはないかな。ね、悠月」

「だね。相変わらずってとこ。最近はナオトも大人しいし随分平和だよ」

「あぁ~ナオト君なぁ。小せぇ時から悪ガキだからなぁアイツ。短気だし。まぁお前が大

丈夫っつーなら大丈夫か。安心した」

「悠月、そろそろ」

「もうそんな時間か。わかった。母さんご馳走様」

「はい、お粗末様でしたぁ~」

「ありゃ、なんだもう行っちまうのかよ」

 リビングの時計の針は午前七時を刻んでいる。

「最近は物騒ですから。貴方が犯人を掴まえるまでは早めに登校してもらってるんです」

「うへぇ~……夜勤明けにその言葉は利くなぁ杏華さん。こっちも頑張ってんのよぉ」

「子供たちが安心して登校できるように警察の方は頑張ってください」

「は~い、頑張りまぁ~す……」

「まぁ、父さんが心配するようなことはないよ。天音もナオトも元気にしてるし仲良くや

ってる。気になるなら直接本人に聞けばいいと思うよ」

 タイミングよく、玄関先で呼び鈴が鳴った。どうやら迎えが来たようだ。

 先行していた玲愛が家の玄関を開けると学友たちが姿を見せた。

「おっはよー、二人とも! 学校行こー!」

「ふわぁーあ……ウーッス、おはようさん」

 玄関前には二人の学生が居た。

 けだるそうに欠伸をしている長身の男が狼神ナオト。

 そして朝からハキハキと喋る快活な女の子が雨宮天音である。

 いずれも悠月と同じ高校、月見ノ原大学附属高等学校に通う生徒であった。

「いつもごめんなさいね。わざわざ家に来てもらってもらって」

「いえいえ、謝らないでくださいよお母さん。ウチは隣ですから、全然苦労なんてないで

すよ。もう慣れっこです!」

「オレは反対方向だから無駄に時間かかってんだけどな」

 ボソッと口にしたのはナオトだ。

 瞬間、天音の表情がムスっと強張った。

「もう、ナオト! あんた余計なこと言わない。そもそも無理矢理来させないとあんた学

校サボるでしょうが!」

「うるせぇなぁ朝から。このやり取り何回目だよ。もう悠月の母さんも飽きてるぜ」

「あんたがつまらないこと言うからでしょう!」

 まさにこれから言い合いでも始めるかというところ。

 ふと、ナオトが珍しい人物がいるではないかと目を光らせた。

「って、あれ。よく見たらオッサンがいるじゃねーか。珍しい!」

「おう! 相変わらずだな、ナオト君。ちゃんとイイコにしてるか」

「ケッ、うるせぇよ。なんかやつれてるけど少し見ない間に老けたか?」

「ほっとけって。夜勤明けで寝れてねぇだけだって。下手なこと言うとオマエんとこの親

父さんに言っちまうぞぉ?」

「ゲ……それは勘弁」

 仁はナオトの無礼を豪快に冗談で返す。

 天音も自分の言いたいことを仁が代弁したお陰で胸を撫で下ろしたらしい。

「父さん、もういいかな」

 今まで黙っていた悠月が口を開く。

「これでわかったでしょ、僕たちは普段通りだって。家に帰ってきてまで気を張らなくて

もいいんじゃない。刑事って仕事柄、無理かもしれないけど」

「ハッハ、悪かったよ、心配性の親父で。もう気にしねぇから好きにやってくれ」

 失敗したとばかりに仁は頭を掻く。

 ここ三ヶ月の間にニュースで話題になっている連続怪死事件が仁としては気がかりだっ

たのだろう。

 地元で起きている事件となっては尚更だ。親としては心配するのが妥当であった。

「おう、任せとけよ。オッサン」

「なにかあったらこいつを身代わりにするので大丈夫です!」

「んだとぅ!?」

「そういうことだから今日くらいは母さんと大人しくしててよね」

 玲愛は玄関に立てかけてあった大きな弓袋を持ちながら言う。

「十分に気をつけてね、みんな。行ってらっしゃい」

 杏華の見送りの言葉を聞くと悠月たちは学校へ向かった。


 午前七時三十分過ぎ。

 鷲宮家を出発した四人は自分たちが通う学校、月見ノ原大学附属高等学校へ向かう。

 悠月たちが住んでいるのは市を分断している中央駅を起点とすると西側に位置する。

 月高は駅を越えて東側。つまりめざましい発展を見せる新都の側にある。

 徒歩で目的地に行くとすれば所要時間はおよそ二十分。

 なだからな昇り坂を踏破した先が、彼らが共同生活を行う学び舎だ。

 暫く歩いて駅を越えてくるとさすがに活気も違う。

 学園都市にも制定されているこの市は東側に重きを置いているお陰でこうして駅を渡っ

ただけでまるで別世界にいるような感覚に陥る。

 寂れた西区、と揶揄されるのも致し方なしだ。

 ちなみに鷲宮玲愛は現在、月見ノ原大学附属中学校三年生である。

 この月中は月高と併設されていて、周囲には大学も幼稚園も設備されている。

 変化が乏しいと苦言を呈されればその通りだが、簡単な話がこの月見ノ原大学の一区画

は義務教育課程から高校、大学卒業までを一括で管理している。

 進級する際に発生する諸々のコストをカットできるということで最近では都心から引っ

越してくる人も珍しくなく、重宝されているとの噂だ。

 地元民からすれば余所者が来るせいでどんどん格差が広がっていくと暗い悩みの種もあ

るのだがそれは時代の流れでどうしようもなかった。

 映り往く町並みと人ごみを抜けて四人は学校の敷地内に入った。

 ここまで来ればすれ違う人は皆、学校関係者であるため安心もできる。

 一人だけ校舎が違う玲愛とは正門入り口で分かれなければならない。

「じゃあ先輩、アタシはこっちだからこれで」

 振り向いた玲愛に、天音は待ったをかけた。

「玲愛ちゃん。良かったら今日の放課後お茶しない。喫茶ノワール、いつものところで」

「いいですよ。もしかしてアレですか。林檎の新作狙いとか」

「そうそう! 是非ご賞味を~っ! って言われちゃって。ユウたちも行くからさ!」

「えっ!?」

「あぁっ?」

 女子会かと思ったら全く見当違いだったらしい。

 我関せずとしていた男たちは完全に虚を突かれたようで驚きの声を上げていた。

「ぷっ、あはははっ! 了解です。毒見は多い方がいいですからね。部活が終わったら、

そっちに顔を出しますよ」

「ありがとぉ~! 玲愛ちゃんってば話がわかるぅ!!」

 それだけ言うと玲愛は月中の方角へと歩いていった。

 ヒラヒラと手を振って見送る天音。

 つい咄嗟に閃いたこととは言え、二人をダシに玲愛を釣ったのを少なくともナオトは良

く思わなかったようだ。

「天音ぇ……テメェどういうつもりだ。ああん!?」

「なによ! だ、だってだってだってしょうがないじゃない! 他のお客様に毒見……じ

ゃなかった、味見させるわけにはいかないでしょう!? ほら、このメール見てよ。めっち

ゃ自信ありって書いてあるじゃない!」

「そりゃいつものことだろうがよ。自信あるっつって最初で美味かった試しがねーだろう

がよぉ……」

「でも、数をこなせばちゃんと美味しくなるじゃない。私たちがしっかりしないと!」

「しっかりしなきゃいけねーのは林檎の味覚だろうが!」

「あははは……」

 悠月は笑うしかない。

 喫茶ノワールとは、正式名称『喫茶シェールノワール』のことだ。

 悠月たちの憩いの場にして玲愛の後輩が看板娘をしているところ。

 マスターは別にいるが、とにかくその娘は創作料理が好きでよく試食を依頼するのだ。

 美味いかどうかはナオトのリアクションか解る通りだ。

 初動で文句なく美味い可能性は極めて低い。

 これはマスターである父親も頭を悩ませているところである。

「おっと、二人とも。話は後だよ。始業のチャイムだ」

「はぁ、今から飯抜いとこうかなぁ……」

 稀にこうして発生するイベントを除けば、鷲宮悠月の学校生活は大よそ平凡だった。


「では、ホームルームを始めます。皆さん席についてください」

 月高1年A組の担任、御津風鈴花の号令によって生徒たちはお行儀よく着席した。

 白のワイシャツに黒のリクルートスーツ。

 オフィスレディのような姿に加えて彼女は髪を短く切り揃えている。

 それを悪いとは言わないが十月上旬ともなればさすがに冷えるようで、壇上に上がった

彼女がまず最初にしたのは両手を温めることであった。

「えー、いいですか。これから話すことは皆さんにとっても重要な事ですからよく聞いて

おくように」

 鈴花は教卓に広げたプリントを器用に数えると順に人数分を生徒の席へと配っていく。

 これから語る内容には生徒全員、大体予想がついていることだろう。

「最近、この街で奇妙な事件が起きています。警察の調べでは通り魔だろうと推測されて

いますが被害者は十二人。先月が六人だったのに加えて同じくらい増えています。犯人は

未だ特定できていません。女性なのか男性なのかそれすらも不明です。それに伴って我が

高での対策として当面の間部活動を自粛します」

 それを聞いて、生徒たちがどっと沸きあがる。

 騒いでいるのは主に部活動をメインとしている学生たちであった。

「静かに。喜ぶところではありません。部活動をやらない代わりに期末テストの基準は厳

しくなりますからね、心しておくように」

 次の瞬間に湧き上がったのはブーイングだった。

 全く、学生らしい非常に解り易いリアクションである。

「それと十月三十一日にはハロウィンがありますが可能な限り一人での外出は控えるよう

に。当日は警備員も相応に配置するようですが何が起こるかわかりません。愉快犯はこう

した行儀に紛れて人を襲います。くれぐれも注意してください。では十分後に一時間目を

始めます。各自授業の用意をしておくように」


 それから授業は始まり、あっという間に放課後となった。

 秋の季節は日が沈むのも早い。

 午後四時ともなれば空はすっかり茜色に染まっていた。

 悠月たち三人は予定通り喫茶シェールノワールの扉を開いた。

 凛と透き通った鈴の音色が店内に響き渡る。

 店内は統一されたアンティークにブラウンを基調とした雰囲気作りがなされている。

 点々と灯っている照明もポイントだ。

 決して明るくはない。けれども暗いわけでもない。

 丁度よい光のコントラストが乱れた心を落ち着かせてくれるようだった。

「ようこそ、いらっしゃいませ。席は空いております。お好きな席へどうぞ」

 マスターである霧島賢哉が開口一番、お客様である三人を出迎えた。

「やっほーマスター、試食に来たよー!」

「ハッ、なーにが席は空いておりますだよ。基本客なんか来ねぇーじゃねーか」

「こんばんは。お邪魔します」

 口々に挨拶をする月高の面々。

 落ち着いた店内の雰囲気が一瞬に台無しになった。

「なんだお前達か。悪いが、今はハンドドリップ中だ。気が散る。黙っていろ」

「『心の乱れはドリップの乱れ』でしたっけ。凄いですよね、プロのバリスタって。憧れ

ちゃうなぁ~!」

「ブ……ッ!?」

 天音の一言に、賢哉は思わず吹き出した。

「え、マスター?」

「ご、ゴホン。いいから早く座るんだ。席はどこでもいい。店の前に立たれては迷惑だ」

「あー……すみません?」

「天音、ほら早く」

「う、うん」

 悠月に促されて、天音はいつもの定位置に向かう。

 一番奥のテーブル席に天音と悠月。カウンター席で二人に近い適当な場所がナオト。

 それが彼らのいつもの場所であった。

「林檎、お客さんだ。相手をしてやれ」

 店の中にある厨房に声をかける賢哉。

 暫くすると、ドタドタと悠月たちよりもなお騒がしい音を立てて店の看板娘が現れた。

「お客さんお客さんお客さんお客さん~!? 誰々誰々ダレダレだー!?」

 ガバッと厨房の暖簾を退けて現れたのは長い金髪を両サイドで結んだ美少女。

 月見ノ原大学附属中学校二年生、霧島林檎であった。

「ワオ! 雨宮パイセンだ。それにツッキーパイセンとオオカミパイセン! 試食に来て

くれたの!?」

「もちろん。主にこいつらが食べるわ!」

「……だと思ったよ」

 悠月とナオトが大きく落胆する。

 これもいつものことである。腹を括るしかないと二人は決意を固めた。

「じゃあじゃあすぐ持ってきますね。今回はドドーンとホールで作ってありますんで!」

「ケーキかよ……」

 更に二人はガクっと肩を落とした。

 林檎はご覧の通り快活で物怖じしない性格だ。

 故に作る物もいちいち景気が良いのだ。

「いつも悪いな。娘の我侭に付き合ってくれて。これは感謝の気持ちだ受け取ってくれ」

 三人の前に上品な香りが漂うコーヒーが置かれていく。

「マスター、これは?」

「喫茶シェールノワールのマスター霧島賢哉が自信を持ってお届ける最高級ブレンド。キ

リマンジェロだ」

「ハイハイハイハイ! お・待・た・せ・し・ま・し・た。名づけて林檎スペシャルデース!!」

 大きな皿に乗ったパウンドケーキが三人の前に並ぶ。

 多少の違いはあれどどれも似たような黄色をしている。見た目は美味しそうである。

「なんかどれも同じっぽいんだけど」

「ノン、そんなことはないよ、パイセン。ほらもうすぐハロウィンでしょ。だから見た目

をポチロンっぽくしようと思って。あ~ポチロンっていうのはカボチャね。英語でパンプ

キン。中身は色々混ぜてあるから、まっ、後は食べて感想を聞かせてよ♪」

 フォークやらナイフやらをたくさん渡される悠月たち。

 林檎は爛々とした表情で三人が食べるのを待っている。

 これもまた鷲宮悠月が過ごす日常のワンシーン。

 このコミュニティがあるのは酷く当然で、失われることはないものだ。

 パウンドケーキを食べるのに果たしてナイフは使うのだろうか、などとくだらないこと

で悩む余裕さえあった。

 そう、この時までは。


「――ッ!? なんだ、今のは」

 悠月がナイフをケーキの端にあてがったのとほぼ同時。

 どこかでなにかが裂けるようなビジョンがふと脳裏を過ぎった。

 ビジョン。幻覚、というからには当然、実際に目の前で起きた出来事ではない。

 事実、手に持っているナイフは何も切っていないし、フォークも何かを貫いてるわけで

はない。

 手付かずのパウンドケーキは綺麗に皿に鎮座していて、周囲を見渡せば悠月たちの小さ

な反応を逃すまいと林檎が目を光らせている。

 マスターである賢哉も天音もナオトも皆、無事である。

 と、すると脳裏を過ぎったこの幻覚は一体何か。

 否、幻覚とするならば余りにもこの感覚はハッキリとし過ぎている。

 これは間違いなく現実だ。悠月の本心がそう告げていた。

「ん、ツッキーパイセン、どうしました?」

「あ、いや……ごめん。ちょっと席を外すね」

「えっ? あっ、ちょ、パイセン。どこ行くのー!」

 人には直感というものがある。

 第六感、シックスセンス。呼び名は様々あるが、つまるところ有りもしないはずのモノ

すらも察知する能力だ。

 恐らく、長い人生を生きていれば誰しもが一度は体験したことがあるだろう。

 他の誰もが有り得ないと笑っても何故か自分だけは確信を持って是とするこの現象を。

 大乗仏教、唯識論における第六感。意識、直感は隣り合わせに第七感である末那識に触

れている。

 この直感を必ずしも否定できないのは我執と呼ばれる末那識に近しいが故だ。一度知覚

してしまえば、断続的に己に作用し続ける。

 こうなればもう、人は結果がどうであれ真実を知らなければ収まりがつかなくなる。

 悠月は足早に出口に向かう。

 偶然、お店の扉が開く。

「ん……悠月。どうしたの、なんか慌ててるみたいだけど」

 部活動に顔を出してから来たのだろう、姿を現したのは妹の玲愛だった。

「玲愛。ごめん、話している暇はない。お前はここにいろ。荷物は持って帰ってくれ」

「なんでアタシが。自分の分くらい自分で持って帰れば……って、ちょっと悠月!?」

 玲愛の静止を振り切り、悠月は外に躍り出る。

 結論から言えば、それが鷲宮悠月という少年の平凡な日常が崩壊するきっかけであり、

すべての始まりであった。


 直感だけを頼りにして悠月は日の傾いた月見ノ原市内を駆けた。

 人ごみを抜けて、普段通らない道を疾走する。

 歩を進める度に本能が告げていた。

「――近い。近づいてる。やっぱりだ。やっぱりあの違和感は本物だった」

 誘われるように右へ左へ。

 いつしか人の気配は完全に失せて代わりに夕日も差し込まない路地裏へと着いていた。

 悠月の表情が険しくなる。

 間違いなく、ここで何かが起きている。

 確証を得た悠月は迷うこともなく、路地裏の中へと消えていく。

 内部はまるで迷路のようだった。

 通路は思いのほか広いが、少し歩けば壁に突き当たる。

 割れたビンやら持ち手を縛られたゴミ袋などが散乱しているところを見るにどうやらこ

の場所は普段ゴミ貯めになっているようだ。

 そうして何度か曲がり角を曲がった先に――“大輪の華”が咲いていた。

「な――ッ!?」

 驚きのあまり悠月は声を失った。

 華、などと呼ぶのは些かおこがましい。

 夥しい量の鮮血がビルの壁一面を彩っていたのだ。

 華の根元には素材となった人の死体が転がっている。

 死体は動かない。

 だが、腹部からの流血が止まっていないところを見れば、この素材が命を摘まれてから

まだ時間が経ってないことは理解できた。

「人、なのか……アレ……あんなの人の死に方じゃあ……ないだろう」

 鼻腔をくすぐる血の匂いに、思わず吐き出しそうになる悠月。

 だが、こみ上げる不快感をなんとか悠月は抑え込んだ。

 それにしても、この死はあまりにも惨い。

 誰が一体、どういった経緯でこの殺人をやってのけたのか。

 詳しい事情を調べるには警察を頼るしかない。

「とりあえず、電話を。警察に……いや、父さんに電話をしないと……」

 震える手で携帯電話を操作する悠月。

 頼ったのは先は父親である仁だった。

「父さん、早く出てよ。早く……!!」

 もはや悠月はパニック寸前の状態であった。

 今すぐにでもこの状況から逃げ出したい。

 幾度と繰り返されるコール音が悠月の不安を更に押し上げる。

 永遠とも感じられる数秒が悠月の中で刻一刻と秒針を刻んでいく。

 正常な思考が完全に異常に塗りつぶされるかというまさにその時。

 背後で凛とした声が響いた。

「――ほう、これは驚きだ。まさかこの場所に先客がいるとはな」

 逢魔時。

 人が失せ、魔物が跋扈する昼と夜の境目にして、生者と死者が交わる黄昏時。

 濃く、暗い夕暮れを背景にして魔女、アルメリア・リア・ハートがそこにいた。


「あなたは?」

 悠月は端末を下ろしながら訊ねた。

「なーに、名乗るほどの者ではないさ。私はただの“情報屋”。最近この街で起きている

事件を追っていてね。偶然、道に迷っただけさ」

「そんな話を信じろと?」

「信じる信じないはお前の勝手さ。好きにすればいい。だがこちらの都合としてはお前の

自由行動を許すわけにはいかないなぁ」

 声に殺意が宿った。

 この女は危険だと本能が告げていた。

「くッ!!」

 咄嗟に悠月は背中に隠していた護身用の短刀を手に取った。

「……下手な気を起こすなよ、ガキが」

 言うな否や、外套の女は瞬時に距離をつめてきた。

 まるで獲物を狙うハヤブサだ。

 悠月が距離を離すよりも早く、女は自分の懐へと飛び込んできた。

 追える範囲で行動を抑制しようと応戦する悠月。

 父と長い修練を積んだのは、何も刀剣の扱いだけではない。基礎的な近接戦闘の類は全

て叩き込まれている。

 ただの通り魔程度であれば、悠月は素手でも撃退できる自信があった。

 刹那の攻防。腕力に差がある男と女との戦闘だ。

 見たところ相手は細身の成人女性。鍛えられている悠月が負ける可能性は限りなくゼロ

だった。

 が、結果はどうか。

「なッ、早い!?」

「お前が遅いんだよ」

 悠月は呆気なく、地に転ばされた。

 仰向けで叩きつけられたお陰で悠月はガハッとくぐもった声を吐き出した。

「僕を、どうするつもりだ……!」

「何もしないさ。お前は大切な同胞だ。殺すには惜しい」

「同胞? ふざけるな、僕はあなたなんて知らない。勝手に、仲間扱いするなっ!」

 組み伏せられても悠月の手にはまだ短刀が握られている。

 これも父との修練の結果か、悠月は素早く柄を持ち直すと名も知れぬ襲撃者に刃を振り

ぬいた。

 ――だが。

「なに!?」

 刃は彼女に届くどころか不可思議な空間で動きを止めた。

 悠月は力を弛めていない。むしろ一層の力を込めて今なお刃を届かせようとしている。

 しかし彼女の居る空間が悠月の介入を許していない。

 例えるならばそれは風の鎧であった。

「無駄だ。まだ目覚めていないお前に私を止めることはできない」

 カチカチカチと持った短刀が震えている。

 握る力を緩めれば呆気なく刀は吹き飛ばされてしまうだろう。

「くそっ……なんで!!」

 これは夢か幻か。

 悠月の双眸には有り得ない光景が視えていた。

「茶番は終わりだ」

 女は空いている片足で悠月の腕を蹴り飛ばす。

 短刀を持っていた持ち手を拘束をしなかったのはこの為か。

 不意を突かれた悠月はいとも簡単に短刀を手放した。

 短刀は蹴られた方向に向かって裏路地の遥か彼方に吹き飛んだ。

 勝敗は決した。これ以上、悠月に対抗できる手段は無い。

 もし仮に、この襲撃者が昨今話題となっている連続怪死事件の犯人ならばこれで悠月を

血祭りにして終わりだ。

 しかし、現実はそうはならなかった。

 女は満足したように笑みを浮かべると、あろうことか悠月の拘束を解き、死体のある方

へと進んでいった。

 女は悠月に背を向けて現場を視察する。

 どうやらこの女は本当に情報収集の為だけにこの地へ足を運んだようだ。

「なんなんだ、あなたは一体」

 命のやり取りから一転。

 梯子を外されたような感覚に陥った悠月はつい緊張の糸を解いて訊ねていた。

「だから情報屋だと言ったろう」

「違います。あなたの名前です。その様子だと僕のことは知っているんでしょう?」

「一応な。知りたくはなかったが」

「だったら教えてください。一方的に知っているのはフェアじゃないでしょう」

「ハッハ! お前、面白いな。この状況で気になることがそれか。てっきり恐れをなして

逃げるかと思ったが……度胸だけはあるみたいだな」

 女は右耳に触れるとなにやらボソボソと喋り出す。

「ライカ、今回の被害者はどうやら大腸をやられたらしい。まとめておいてくれ」

「ちょっと、聞いてるんですか!」

「亡霊がいる気配はない。逃げたか。それともこの男が始末をしたのか……」

「ッ……あの!!」

「はいはい、聞いているよ。うるさいガキだなぁ」

 女は自分で吹き飛ばした短刀を拾うとヒョイっと悠月に投げて返した。

「アルメリアだ。アルメリア・リア・ハート。英国生まれの魔女にして……おそらく、一

番の嫌われ者だ」

「魔女……?」

「別に覚えなくていい。お前の日常には不要な情報だろうからな」

 魔女はくるりと踵を返すと夕日に向かって歩み始める。

「着いて来い、鷲宮悠月。此処を出るぞ。こんなところじゃあ電話をしたって誰も来れや

しないよ。ちゃんと元の世界に戻らないとな」


 警察が現場に到着したのはそれから二十分後のことだった。

 二人が裏路地に続く入り口で待機する中、警察官が見たのは一角に咲く大量の血痕。

 しかし、二人が見たはずの死体はどこにもなく、あれだけ散らばっていた臓物は肉片一

つ落ちていなかったという。

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