ごのきゅう 男子会
ゼンチさんのすがすがしい告白に笑いながらも、ヤマガミさんも納得したらしく、ゼンチさんは事前の検査ということでポッテさんの元へと向かっていった。
「結局検査はするんですね。」
「いくら神の力といえどこの世で発揮するには相応のリソースが必要ということさ。それが同じ神の力に対抗するものであるなら、なおさらね。」
ヤマガミさんは湯飲みに残ったお茶をぐいっと飲み干して、やや乱暴にちゃぶ台に置いた。
「さて、そういうわけで待っている間に男同士の会話といこうじゃないか。」
「そもそも、お前は男でいいのか?」
ゼンノーさんがそもそもなことを言い出した。ヤマガミさんは表情一つ変えない。
「正直言ってもう覚えていない。『全知』なら知ってるだろうが、まあ俺には教えてはくれんだろう。」
「そもそもなんでそんなに嫌われて……じゃなくて、なんでそんなにゼンチさん、というか『全知』に執着してるんですか?」
嫌われてる理由はなんとなく分かる。逆にストーカーが好かれる理由もあまりないだろう。
「うーん、執着する理由、か。色々あるが、そうだなあ。一つには『神能』の中でも『全知』が特別であるということがある。」
「特別?」
いまいち分からない。これまであった『神能』はどれも特殊で、どちらかというと『創造』の方が現実離れしているように思えた。
「特別さ。『全知』だけが、この世界で永遠でいられる。」
確かにゼンチさんは『全知』になってからずっとあの姿だと聞いている。
「でも、それならヤマガミさんも、その、不老だって聞きましたけど。」
「それは俺が『創造』を使いこなしているだけで、次の『創造』がそうとは限らない。それに、俺が言いたいのはそういうことじゃない。『全知』となった者は『全知』の中で生き続ける。死してなお、新たな『全知』の中でこの世に影響を与え続ける。それが永遠というものだよ。」
そういえばさっきもゼンチさんの中に『全知』がいたと、そんな話をしていた。
「でも、それがどうして『全知』を追いかける事に繋がるんですか?そんなの今更じゃ。」
「おっと、二人とも質問したんだから次は俺の番。与えれば、その後に受けることができる、というやつさ。」
ゼンノーさんの方を見るが、ゼンノーさんも諦めたようにお茶を飲んで待ち構えている。まあそれがフェアーってやつなんだろう。
しかしヤマガミさんの方は空になった湯飲みを転がして遊んでばかりいる。
「あの、質問はないんですか?」
「ん?いや、何聞こうかなって思ってね。そうだなぁ……やはりここは『神能』でもない普賢くんに質問しようかな。」
む。やっぱり『神能』持ちは『神能』持ちと関わりあいになることが多いのかな。
「普賢くん、君はどうしてあの『全知』と共にいるのかな。」
「なぜって、雇ってもらったからですかね。」
端的に返したら、思いのほか驚かれたようだ。眉間に皺を寄せて眉をピクピク動かしている。
「あまり雇われたことがないから分からないのだけど、雇い主が自分のことを何でも知っているというのは嫌じゃないのかい?気持ち悪いとは?」
「うーん、まあ時々そういうところから攻められるのは理不尽に感じますけど、まあもう慣れましたよね。」
「……そういうものなのか。」
そういうものだと思う。人間、慣れればたいていのことはなんとかなるものだ。ともあれ今度は僕らの出番だ。
そう思っていたら、ポッテさんが戻ってきた。
「我が主、準備出来ました。」
「そうか。それじゃあお二人にはもうすこし待っててもらおうかな。」
それでヤマガミさんも奥の方に消えていった。
こういう時、ゼンノーさんはあまり話さないんだけど、このときは珍しく口を開いた。
「シンは、本当に俺たちのことなんとも思ってないのか?」
「ん?さっきのことですか?」
真面目な顔したゼンノーさん。こういう表情も久しぶりだ。ゼンチさんが変わったこともあって少しナイーブになっているのかもしれない。
「ゼンノーさんにしてももゼンチさんにしてもも、僕が知ってるのは『神能』を持ってる二人だけですし。確かに少しは変わってますけど、でもサトリさんにしてもヤマガミさんにしても変わってますからね。」
「二人も『神能』持ちだけどな。」
「あ、そうでしたね。まあ僕の周りには非日常が集まるなんて前に言われましたし、僕にとってはそれが普通なんですよ。たぶん。」
ゼンノーさんが優しく笑った。なんだか照れくさくなってついつい話を続ける。
「それにほら、ゼンチさんも言ってましたけどゼンチさんって『全知』があって初めて」
「自分で言うのはいいけど他人に言われるのは許せないもの、なーんだ。」
振り返ればゼンチさん。ポッテさんや笑いをこらえているヤマガミさんもいる。
「さ、もう暗くなる。よかったら今日は泊まっていくといい。」
「いいえ、帰るわ。普賢くん、タクシーを――」
ゼンチさんの言葉を遮って、ヤマガミさんがスマホの画面を見せてくる。左上のアンテナは県外。そうか、ここは山の中だったな……。




