09話 梅雨フェア
数日間の本社研修が終わり、通常業務に戻ると店頭には梅雨フェアなる〝梅雨の夜長はのんびり読書を〟とゆうポップがいたるところに展開されていた。店内児童書・絵本コーナーでは店員による読み聞かせイベントが開かれている。意外と好評のイベントで毎年1日1回だったのが、今年は午前・午後の2回に増やされ私も今年は読み聞かせに駆り出されることに。
「やっぱり雨だと客足減りますね。」
朝からマネージャーの伊東さんと明日から開催される読み聞かせブースの設営を行なっていた。彼は村瀬さんと同い年とゆうこともあり、まぁ、同世代ネタでは話しやすい人ではある。
「そうだね。梅雨ってのも大きいけど、最近じゃデジタルに移行傾向にあるから書店も何かとアクションしてかないと生き残れない時代ではあるよね。」
「確かに私も結構アプリ使ったりするときあります。でもやっぱり好きな本は紙で保存したい派ですよ。」
「俺はほぼタブレット派かな…。」
「うわ、書店員にあるまじき発言!」
やはり同世代は楽でいい。流行りの曲、ドキドキしたドラマ、アイドル…共通する経験を共感ができるとゆうのはそれだけで距離が自然と近くなるものだ。
「あー、また2人で楽しそうにしてる!」
「あぁ、鈴木さん、おはようございます。雨まだ結構降ってますか?」
「いやいや伊東さん、そこスルーしないで下さいよー。」
書店では昼夜問わず学生バイトが結構いるもので、鈴木めぐる(大学3年生)、彼女もその1人だ。鈴木さんは明らかに伊東さんに興味ありそうな…案外この2人はいい感じなのではないかな?
「じゃ、私カウンター入りますね!」
カウンターで手が空いた時間に、明日読み聞かせに使う絵本をいくつかピックアップした。幼児向けで短時間で読めるもの、季節ものを優先しつつ、私のお気に入りもリストに加えていく。
「こんなもんかな。」
リストを整理し伊東さんに渡すと、夜シフトの人に引き継ぎをしてスタッフルームで帰り支度を始めた。
「三崎さん、三崎さん、ちょっと聞いてください。」
ちょうど休憩中の鈴木さんが内緒話のポーズで話しかけてきた。私も何だか声のトーンを抑え気味に返事をする。
「どうした?何かわからないことあった?」
「はい!伊東マネの気持ちがわかりません!」
「ぶっ!え!?どうゆうこと?」
唐突な物言いに思わず誰もいないのに、周りを見回し吹き出してしまった。
「私、結構わかりやすくアピールしてるつもりなんですけど、いつもはぐらかされちゃって、もう脈ナシなのかなって!三崎さん、どう思いますか?」
そうゆうこと。てか、かなりオープンだな。若いってすごいわ。どうと言われても伊東さんとそんな話あんまりしたことないし。
「うーん。どうかな?彼女はいないって言ってたけど、一応マネージャーってゆう立場もあるし…。」
「三崎さんもはっきりしませんね。結局のところ、歳下だし学生だしはなから圏外ってことですか!?」
何故か私が責められてる〜(涙)
「私まだ学生だし、将来がどうこうって話は正直わからない子どもです。でも、伊東マネの仕事に対する姿勢とか人に対する気配りとか、尊敬もしてるし1番近くで見ていたいんです。…それなのにいつも大人は、大人はって線引いてくるし。」
子どもと大人かぁ…。
「子どもだとスタートラインにも立たせてもらえないって酷くないですか?距離とるにしても、『学生の私』ではなく、素直に『1人の女の子』として見てからにして欲しいんです!」
「素直に…そうだね。」
ふと思い浮かんだのは橘さんだった。数日前に彼から連絡が来ていたのにもかかわらず、本社研修やフェアの準備でなかなか落ち着いて返信できずにいた。
『この前はタオルありがとうございました。もし三崎さんの都合つく日があれば、叔父のレストランで会えませんか?』
手帳を開きシフト予定を見ると、たまたま今週の金曜、土曜で連休になっている。スマホを取り出し返信メッセージを作成する。
『返信遅くなりました。今週の金曜なら都合つきます。』
少ししてスマホを見ると橘さんから返信が来ていた。
『金曜19時、Pluieで待ってます。』
本屋さん新キャラ紹介
伊東勇吾◆185cm。A型。入社当時は本社勤務。2年前からマネージャーとして奈央と同じ職場に。3年間マネージャー研修を終えると本社に戻る予定。彼女なし。高校生のときテニスで全国大会出場経験あり。台湾ラーメンが大好物でちょくちょく名古屋まで足を運ぶ。
鈴木めぐる◆163cm。A型。バイト2年目の大学3年生。大学では外国語を専攻。将来は翻訳の仕事につけたらと思っている。新しいもの、可愛いもの、伊東マネが好き。
サブキャラの恋愛話の回でした。めぐるちゃんは伊東マネとうまくいくのでしょうか?大学生って大人のようで、将来の選択肢が無限にある子どもなのではないかなーと思う今日この頃。