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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
始まりの雨
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06話 6月の村雨

大会も順調に勝ち進み、ついに決勝を明日に控え最後の調整に入っていた。


「いい玉きてるぞ。今日はこの辺にしとくか!」


「もう少し、今の感覚つかみたい。」


「オッケー、じゃあと10球!」


真田は1年のときからチームのエースとして投げてきた。俺は2年に上がるときに正捕手になり真田のボールを受けてきた。


「真田、明日はいいピッチング頼むな!」


「任せとけ。お前となら負ける気がしねぇよ。」


こうゆうところはさすがエース。俺もお前となら負ける気がしねぇよ。緊張と高揚で荷物をまとめロッカールームを出る。


「一馬くん!」


後ろから呼び止められ振り向くと蒼井がいた。真田がロッカールームから出てくるなり蒼井を見つけると、


「じゃ、お先。」


「え?…おい、真田!」


スタスタとその場を去る真田を追うわけにもいかず、蒼井の方に向き直る。


「明日ついに決勝だね!頑張ってね!きっと一馬くんたちなら優勝できるから。これ、ずっと渡せなくて決勝前日になっちゃったんだけど。」


蒼井から手渡されたのは勝守りだった。蒼井には今までマネージャーとしてチームを支えてもらってきた。なんとしても明日は勝たねぇとな。


「ありがとう!蒼井のためにも絶対優勝してくるから。スタンドで応援頼んだ。」


「…一馬くん…。うん、応援最後まで頑張るね!」



ー決勝当日ー


9回表4-5、1点ビハインド、東利大の攻撃。俺の2点タイムリーで形勢逆転。9裏を真田が三者凡退で締めゲームセット。

高海大5-6東利大 全日本大学野球選手権大会優勝。


試合後は祝勝会や取材などで忙しい数日が過ぎた。大会も終わり少しすると梅雨に入り練習も屋内中心になり少しだけ余裕が出来た。そんなとき前々から頼まれていた叔父のレストランでのバイトを1回きりとゆう約束で手伝うことになった。


「おー、一馬。ようやく来てくれたか。今日は本当に助かったよ。じゃ、早速これに着替えてこい。」


白シャツに蝶ネクタイ、黒ベストに黒パンツの王道ウエイターユニフォームに堅苦しさも感じつつ、少し気持ちも引き締まる思いだ。


叔父がオーナーシェフを務める『Pluie(プリュイ)』というレストランは口コミサイトで評判のいい店のようだ。リピート率も高く、イベントシーズンには予約も取りにくいらしい人気のレストランだ。


「まぁ、ざっとこんな感じだけど、分かんないことあったらすぐに他のスタッフ呼んでね。」


ホールスタッフの高木さんが俺の教育係らしく、ひと通りホールの仕事を教えてくれた。『まぁ、物覚えはいい方だし迷惑かけないように頑張るか。』


「で、早速今日は若いイケメンくんに大仕事だよ。」


なんとバイト初日の今日、たまたま入っていた誕生日のお客様に提供するケーキ運搬係を仰せつかったのだ。happy birthdayの曲が流れたら7番のテーブルにケーキを運ぶ流れで、『キラースマイルでお誕生日のお祝いを述べるとか完全に遊ばれてるな、俺。』


「2名様のご予約だから、ご夫婦かカップルの可能性高いかなー。」


と、ナイトマネージャーの槇さんが参戦してきた。


「俺にプレッシャーかけるのとかやめて下さいよ!」


開店と同時に半分以上の席が埋まり、その後も客足は途絶えなかった。なんとか前半戦を乗り切り、ついに今日の大仕事のときがやってきたのだ。店内にhappy birthdayの曲が流れ始め、キッチンからケーキを受け取り緊張しながら7番の席へとケーキ運んできた。


「こうゆうの本当に恥ずかしいんだけど!」


と、彼女らしき女性がビシッとスーツを着こなしているイケメンに小声で抗議しているのが聞こえた。その様子を微笑ましく見つめるイケメンは彼女とかなり仲の良さを感じた。恥ずかしいのかうつむいてしまった彼女の目の前にケーキのお皿を置き彼女に向かって最大限の笑顔を作った。


「お誕生日おめでとうございます。こちら当店からのサービスでございます。」


と声をかけると彼女はその言葉を聞き、顔を上げこちらを見上げた。ドクンっと鳴った胸の正体は何なのか、わからぬまま彼女を見つめ返した。くっきりとした二重に、色の白い肌。スラッとした指先、まさかあの時の…


「ありがとうございます。」


間違いないこの声のトーンは本屋の…、気づくと向かいには彼女を包み込むような笑顔の男性がいる。きっと彼女の誕生日を祝うくらい2人は特別な関係なんだと思うとなんともいたたまれない思いがわいてきた。


「では、ごゆっくり。」


そう声をかけるとその場を離れようとした。


「あ、あの!」


声に気づき振り返ると、席を立ち俺を呼び止める彼女がいた。一体どうしてここまで彼女に心揺さぶられるのか、俺はどうしても答えを出せない。


そのあと彼女から傘の話を聞いた。俺に気づき声をかけてくれたようだ。近々取りに行くことを伝え、自分の連絡先を渡した。彼氏のいる彼女とどうこうなろうと思うはずもないが、何故だかいつまでも彼女の瞳が頭から離れなかった。

ついにレストランでの再開をはたした奈央と一馬でした。しかし奈央を見守る康介の存在に気づく一馬。これから自分の気持ちを受け入れることができるのか。


一馬には蒼井、奈央には康介という同世代のよきサポーターがいる状況。今後も2人に大きく関係してきます。

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